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ソニー、モバイル分野で減損、'14年度業績を2,300億円の損失に下方修正。人員削減も
(2014/9/17 15:28)
ソニーは17日、モバイル・コミュニケーション(MC)分野における中期計画を見直し、2014年度第2四半期において、MC分野の営業権全額の減損約1,800億円を営業損失として計上すると発表。これを踏まえ、7月に発表した2014年度の連結業績見通しを修正。純損失を従来の500億円から2,300億円へと、約1,800億円下方修正。営業利益は1,400億円から、400億円の赤字に、税引前利益も1,300億円から500億円の赤字となる。売上高は7兆8,000億円から変更はない。
ソニーは、MC分野における実績や事業環境の変化などを踏まえ、7月にMC分野の中期計画の見直しに着手し、今回これを変更した。新しい中期計画では、以前の中期計画と比べて将来キャッシュ・フローが低くなると見込んでおり、MC事業の公正価値が減少。営業権全額の減損約1,800億円を営業損失として計上する見込みとなった。
従来の中期計画では、売上高の大幅な拡大を目指していたが、モバイル事業の市場や競争環境が大きく変化したことを踏まえ、事業リスクや収益変動性を低下させ、より安定的に収益計上が見込めるよう、MC分野の戦略を変更するという。
この変更には、一部地域における戦略の見直し、高付加価値ラインアップへの集中、普及価格帯モデルの削減といった施策が含まれる。また、2014年9月30日、および2015年3月31日を基準日とする中間配当と期末配当は無配となる。
人員削減も検討。“ポストスマホ”に向けた土台作りへ
午後5時から開かれた会見で、ソニーの平井一夫社長兼CEOは「1958年の上場以来、無配は初めてのこと。経営陣として、この状況を大変重く受け止めている」とした。
MC分野の中期計画見直しのきっかけについては、「モバイル事業の競争環境が、中国スマートフォンメーカーの躍進などもあり、劇的に変化している。その中で中期計画を見直し、事業の価値を再評価した結果、減損することとした」と説明する。
特に中国市場での中国メーカーの市場拡大による競争・価格下落などもあり、「商品軸・サービス軸も含め変化が激しい」と語る。「(Xperia)Z1、Z2といったハイエンド機種よりも、新興国における普及価格帯機種の売れ行きが芳しくなく、計画との乖離があった」と分析している。
それに対応できる組織作りも必要、との見方を示す。ソニーモバイルの構造改革についてはすでに着手しており、2014年中の完了を目指す。現状でソニーモバイルで15%、もしくは1,000人規模の人員削減を見込んでいる。ただし「進行しながら見ていく」と、増減に含みを持たせた。
代表執行役 EVP CFOの吉田憲一郎氏は、「中期計画の見直しにより、構成価値を見直した結果、営業価値は減損ということになった。ただし、今後の事業として赤字ではないので、無形固定資産は回収可能と判断している。今期第1四半期のモバイル減損ではブレイクイーブンとしているが、これには普及価格帯の在庫などの減損も含んでおり、今後工場や在庫などの大きな減損は予定していない」と説明する。
1,800億円の営業権については、2012年にソニー・エリクソンを買収した際の価値再評価に伴い設定された営業権13億ユーロ(当時1,650億円)を指すが、それが円ユーロ為替の変化によって、現在価値で1,800億円になっているため、とする。
モバイル事業にはリスクがある上で「慎重にやっていく」(平井社長)ことがベースになるが、その上で、ハイエンドと普及価格帯機種の商品ポートフォリオや、地域戦略を見直す。軸は規模を追う戦略からの転換だが、具体的な戦略については「競争戦略上の問題がある」として、詳細な説明を避けた。11月の経営方針説明の時期に合わせ、適宜説明していくという。「普及価格帯だけを見直してハイエンドは見直さない、ということではなく、商品ラインナップや商品投入時期まで含めて見直す可能性がある」と、ジャンルを限定しない見直しの過程であることも示す。
ただしそれでも、モバイルビジネスを軸とする戦略には変わりがない。
「モバイルは、ゲーム・ネットワーク・イメージングに続く大事な領域。スマートフォン事業も、まだ年率二十数%で伸び、年間13億台の市場がある。同時に、ポストスマホの時代が来た時、新しい領域に打って出ることができるビジネスに乗り出していくためにも、スマホで土台を作らなければならない。我々はこのジャンルを“モバイルセグメント”と呼んでおり、あえて“スマホセグメント”とは言っていない。エンターテインメントやゲームなども組み合わせ、どう利益を生んでいくかを考えている。ポストスマホがどうなるかもわからないし、ウェアラブルがそれなのかもわからない。だが、センサーなどの差異化技術、映画や音楽などのコンテンツを楽しんでいただくことの価値は変わらないため、ソニー全体で戦っていけるジャンルだと考える」(平井社長)と説明している。