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Bluetoothを高音質/低遅延化する「aptX」。CSRが説明

Spotify対応の新ソリューション「VibeHub」も

 CSRは、Bluetoothの高音質コーデック「aptX」や低遅延技術「aptX Low Latency」など、ワイヤレスオーディオに関する記者向け説明会を開催した。aptXのほか、DLNAやSpotifyなどに対応した、新ホームオーディオソリューション「VibeHub」も紹介した。

 CSRは、省電力のBluetooth Smart(BLE)などのBluetooth関連技術に強みを持ち、高音質コーデックとして知られるaptXやaptX Low Latencyも同社の技術で、10月にスマートフォン向けチップセットで知られるQualcommが買収を発表している。CSRは、オーディオ(Voice & Music)のほか、自動車、イメージング、Bluetooth Smart(BLE)、位置情報(GPS)などの領域を中心に事業展開しているが、今回は、オーディオ関連技術を中心にプレゼンテーションが行なわれた。

Bluetoothを高音質化するaptX

ジョニー・マクリントック氏

 aptX技術のセールス&マーケティングを担当するJonny McClintock(ジョニー・マクリントック)氏は、aptXの歴史について説明。1990年にADPCMの研究をベースに第1世代のaptXコーデックが開発され、放送業界やプロオーディオなどの分野で採用。高い音声品質を維持したまま、スタジオと送信機を専用線で往復約20msの低遅延で伝送できることなどが評価され、長野オリンピックなどでも利用されたという。また、ジュラシック・パークなどDTS採用映画館のコーデックとして採用されたほか、ポストプロダクションやADRなどの現場でも採用されていた。

 現在普及拡大しているaptXは、Bluetooth用音声コーデックとして、5年前から展開しているもの。Bluetoothの標準コーデックとなる「SBC」の音質の低さを改善するために、独SennheiserがaptXを採用したのがきっかけとなり、HTCやMotorola、Appleなどに採用が拡大。現在は約300のライセンシーと、350以上のSinkデバイス(受信機器)、約150のSourceデバイス(送信機器)を展開しており、Android 4.x以降のスマートフォンの75%がaptXに対応。合計で約10億台のaptXデバイスが存在するという。

DTSに採用されたaptX技術
BluetoothでのaptX応用はSenheisserからの要請から

 最近の事例としては、ソニーモバイルのXperiaへの採用や、車載用のヘッドユニット、Windows Phone 8.1のGDR1でaptXエンコーダに対応したことなどを紹介。さらに、「象徴的な製品、ブランドが対応した」としてソニーの新ウォークマンAシリーズでの採用をアピールした。

aptXのライセンス先

aptXの音質優位性とは? 読みは「(どちらかと言えば)アプトエックス」

なぜaptXが必要か

 「高音質コーデック」と呼ばれるaptXだが、マクリントック氏は、その仕組について解説。aptXは、Bluetoothの標準技術であるSBC(Sub Band Coding)の音質改善を図ったものだが、SBCは、Bit Poolというデータ転送量を調整する仕組みがデバイスによって32〜52まで幅があり、この違いが音質に悪影響をおよぼすという。特に昔の製品では、Bit Poolが32の製品が多く、それにより、「弦楽器の高域がこもったようになる」、「原音に比べS/N比が悪い」、原音に比べ「THD+N(全高調波歪)値」が悪いといった問題があるという。

 また、aptXは、聴覚心理を利用した情報の間引きなどは行なわず、ADPCM原理を利用してオーディオの全周波数をエンコードするため、原音の再現性という点で、SBCやAACに対して優位性があるとする。

比較テスト

 マクリントック氏は、周波数応答特性の比較や、第3者テストの評価結果などを提示し、SBC(最高音質のBit Pool 52/328kbps)よりもaptX(354kbps)が優れていると説明。実際に、同社独自のデジタルアンプ技術「DDFA」を使ったオーディオシステムでの比較デモも行ない、aptXの高音質をアピールした。

 なお、マクリントック氏によれば、aptXの読み方は、「アプトエックスでもエーピーティエックスのどちらでも良い。あえて選ぶならアプトエックス」とのこと。

aptXとSBCの比較デモも実施

低遅延「aptX Low Latency」はテレビへの導入でも注目

コーデック毎のBluetoothレイテンシの違い

 また、音質以外のaptXの特徴が「低遅延」。SBCでは220ms(±50ms)、AAC 128kbpsでは120ms(±30ms)の遅延(レイテンシ)が発生するが、aptXの場合は70ms(±10ms)に抑えているという。

 SBCの場合は、データをSBC Frameとして分割し、Bluetoothパケットとして伝送されるが、Bluetoothパケットが満たされるまでデコードは開始されない。一方、aptXでは、aptXという小さなデータ単位で順次伝送し、Bluetoothパケットが満たされるのを待たずにデコードを行なうため、遅延を抑制できているという。

SBCは全パケットが届いてからデコード
aptXでは順次デコードを行なうためレイテンシが少ない
aptX Low Latencyも

 またaptXよりさらに遅延を抑えたaptX Low Latency(LL)も用意しており、aptX LLの場合は遅延を40ms未満を実現する。これは、ゲームや、テレビなどのリップシンク(映像と音声の同期)が重視される製品での採用を目標とし、さらなる低遅延化を進めたもので、パケットの効率的な取り込みを進めることで低遅延性能を強化した。

 現時点では、B&WのBluetoothスピーカー「T7」やデノンの「DSB-100」、クリエイティブ・メディア「Sound Blaster E5」などの採用事例がある。CSRでは、Bluetoothスピーカーやスマートフォンだけでなく、ゲームコンソール、テレビ、サウンドバーなどの対応強化を目指しているという。特にテレビにおいては導入意欲が高いとのことだ。

テニスの音声をワイヤレス出力すると、aptX LLだとボールを打った瞬間に音がするのに対し、SBCだとプレーヤーがボールがネットのあたりで打った音がするという比較動画を紹介

ホームオーディオ新提案「VibeHub」

VibeHubを担当する Ben Terrel (ベン・テレル)氏

 Bluetooth以外のワイヤレスオーディオ技術として提案しているのが「VibeHub」というネットワーク・ソリューション。ネットワーク対応のスピーカーで、無線LAN経由でオーディオ出力したり、スマートフォンから操作したり、複数のスピーカーを制御することができる技術となる。

 スマートフォンからBluetoothや無線LANで操作できるスピーカーが増えているが、VibeHubはそうしたワイヤレススピーカーをさらに統合された形でマルチ利用したり、Spotifyのようなストリーミング音楽サービスの対応を強化したソリューションといえる。

VibeHubの特徴
ホームネットワーク内でVibeHub機器が連携
App Support

 CSRが提供するリファレンスキットには、Sonataと呼ばれるメインチップと、Wi-Fi、Bluetoothモジュールなどを集約。機器メーカーは、同キットをベースにワイヤレススピーカーやVibeHubアダプタなどを簡単に開発できるという。

VibeHubのリファレンスキット

 DLNAやUPnPに対応するほか、AirPlayにも対応。iOS/Androidスマートフォンアプリの開発キットも提供し、同モジュールをアプリに組み込むことで対応のコントロールアプリを開発できる。

 ユーザーは、BT/Wi-Fi対応のスマートフォンからスピーカーを操作でき、NASやPC、スマートフォンなどのホームネットワーク内の音楽を出力できるほか、SpotifyやDEEZERのようなストリーミングサービスの出力としてVibeHubスピーカーを選択できる。

 また、マルチルーム配信機能の「SyncLock」も用意し、ホームネットワーク内のVibeHub対応スピーカーであれば、制限なく同時にワイヤレスオーディオ出力できる。各スピーカーの遅延時間は7.5ms以下で、2015年第1四半期に提供予定のVibeHub Ver.2.0では2.5ms未満に抑制する。

VibeHubのリファレンスキット
アプリでSyncLock再生。別室のスピーカーのボリューム操作なども可能
VibeHub対応のBRAVAENのスピーカー

 VibeHub/SyncLockの対応オーディオフォーマットは48kHz/24bitまで。96kHz/24bitなどのハイレゾについては、SyncLockのマルチルーム配信には対応しないが、1対1の配信には今後対応していきたいとしている。

 対応機器としては、BRAVENがワイヤレススピーカーを開発中で、12月に発売予定。ただし、現在のバージョンではSpotifyなどのストリーミングサービスには対応しておらず、ストリーミングサービス対応はVer.2.00以降となる。

(臼田勤哉)