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KORGの新ハイレゾ再生アプリやスキットル似のプレーヤー、「AK Jr」など

 5月16日~17日の2日間、東京・中野の中野サンプラザで開催されている「春のヘッドフォン祭 2015」。ここではアユートやKORGなど、15階の展示を中心にレポートする。

会場の中野サンプラザ

AKのエントリーモデル「AK Jr」に注目集まる

 超ハイエンド・ハイレゾプレーヤー「AK380」がイベント最大の目玉となっているAstell&Kern。AK380については、別記事でレポートしているが、アユートブースではそれ以外の展示にも多くの来場者が集まっている。

 5月29日に発売される「AK Jr」(エーケージュニア)は、「Astell&Kernのサウンドをより身近に、よりスマートに楽しむ」をコンセプトに開発されたエントリーモデル。価格はオープンプライスで、直販価格は69,800円(税込)に抑えられている。

シリーズのエントリーモデル、「AK Jr」

 64GBの内蔵メモリを備え、外形寸法約117×52×8.9mm(縦×横×厚さ)、重量約98gの薄型・軽量筐体も特徴。再生対応ファイルはWAV、FLAC、MP3(CBR)、WMA、OGG、APE、AAC、ALAC(Apple Lossless)、AIFF、DFF、DSF。PCMは192kHz/32bit(Float/Integer)まで対応するが、ネイティブ再生は24bitまでで、32bitデータは24bitへダウンコンバートしながらの再生となる。DSDは2.8MHzまでの再生が可能だが、PCM 88.2kHz/24bitへの変換再生だ。

試聴整理券が配られていた

 DACはWolfson製「WM8740」。USB DAC機能も搭載する。内蔵メモリは64GB。microSDXC対応のカードスロットも装備し、最大64GBまでのカードが利用できる。ヘッドフォン出力はステレオミニ×1系統で、上位機種のようなバランス出力機能は備えていない。

 AK380とAK Jrは試聴機も用意されているが、希望者が多いため整理券での対応となっていた。

 AKシリーズだけでなく、アユートが新たに取り扱うヘッドフォン・イヤフォンの新製品も多数展示している。

 DITA(ディータ)は、高品位なダイナミック型イヤホンを展開するシンガポールのブランド。多くのパーツを独自開発し、音質を追求しているのが特徴。5月22日発売で、イヤフォン「Answer」の直販価格は72,800円(税込)。一部店舗や直販サイトで数量限定販売される「Answer Truth」のマットゴールド(直販99,800円/税込)と、2.5mm/4極のバランス接続に対応させた「Answer Truth Balanced」(サテンブラック:同145,800円/マットゴールド:同149,800円)も同じく22日に発売する。

シンガポールのブランド、DITA

 「MASTER & DYNAMIC」は、本革やステレンススティールを活用したデザインが特徴の、ニューヨーク発のブランド。ヘッドフォンのアラウンドイヤータイプ「MH40」が5万円前後、オンイヤーの「MH30」が4万円前後、カナル型イヤフォン「ME03」が2万円前後、「ME01」が17,000円前後。

「MASTER & DYNAMIC」のへっdソフォン

KORG

コルグブースでは、今夏に提供予定のiOS向けハイレゾ再生アプリ「iAudioGate」を参考展示している。価格は未定だが、「他社のハイレゾ再生アプリと大きくは違わない価格になる予定」だという。対応OSはiOS 8以降で、iPhone 4s/5/5c/5s/6/6 Plusで利用可能。

iOS向けハイレゾ再生アプリ「iAudioGate」

 DSD対応のスタジオ用ラックマウントレコーダや、Windows/Macのプレーヤーソフト「AudioGate」などを手がけてきたコルグが、新たに開発したハイレゾプレーヤーアプリ。Windows/MacのDSD再生/変換プレーヤー「AudioGate」と同等の高音質再生エンジンを搭載している。

 DSDは2.8/5.6/11.2MHzのDSDIFF、DSF、WSDが再生でき、外部アンプなどとの接続時には、DoPによるDSDネイティブ再生も可能。iPhone単体での再生時は、44.1KHzもしくは48kHzに変換して再生される。

 また、192KHzまでのWAV、AIFF、BWF、FLAC、ALAC(Apple Lossless)、AAC、MP3再生も可能。アップサンプリング機能も搭載し、高品位な再生が行なえるとしている。

 さらに、Apple Watchアプリからのリモート・コントロールにも対応。ユーザーインターフェイスはiPhoneに最適化し、グラフィックイコライザも搭載。iOSのAirDrop機能やiCloud DriveやDropboxなどのクラウドサービスを利用してMac/Windowsからワイヤレスで楽曲を転送できる。

Apple Watch向けアプリも用意。リモート・コントロールができる
USB DAC内蔵アンプなどとの接続にも対応。DoPを使ったDSDネイティブ再生ができる

新たなハイレゾプレーヤーやストリーミングプレーヤーも登場

 新しいハイレゾプレーヤーの参考展示もある。中国のメーカー、Questyle Audioの「QP1」と「QP1R」は、192kHz/24bitまでのFLAC/WAV/AIFF/ALAC(Apple Lossless)が再生でき、DSD 5.6MHzもサポートするプレーヤー。

Questyle Audioのハイレゾプレーヤー

 純A級フルディスクリート回路の電流モードアンプ技術を採用し、ヘッドフォン出力はステレオミニ。ライン出力兼光デジタル出力も備えている。メモリ容量はQP1が16GB、QP1Rが32GBで、128GBまでのmicroSDXCカードを利用することもできる。3,300mAhのリチウムイオンバッテリを搭載し、最大10時間の再生が可能。

 筐体はアルミCNCシェル。ゴリラガラスを使っており、カラーはスペースグレーとゴールドを用意する。

スキットルによく似た、「ストリーミングプレーヤー」ことQuestyle Audioの「The Explorer X1」

 スキットル(ウイスキーなどを入れる携帯用水筒)によく似たハイレゾプレーヤーは、普通のプレーヤーではなく、「ストリーミングプレーヤー」とカテゴライズされている。Questyle Audioというメーカーの「The Explorer X1」というモデルだ。

 DLNA/AirPlay、無線LAN接続で、ネットワーク上にある音楽ファイルを再生できるポータブルプレーヤー。メモリも内蔵しており、そこから再生する事もできる。

 キャップに見える部分がボリュームで、その左右にステレオミニのヘッドフォン出力と、光デジタル出力を装備。底面にはUSB端子を備えている。

 DACはPCM1792を採用。192kHz/24bitまでのWAV/FLAC/ALACなどに加え、MP3/APE/WMAなどの再生も可能。ヘッドフォンアンプには、TPA6120A2を採用しており、出力は150mW。内蔵メモリは16GBか、64GBをラインナップするという。

RE・LEAF

 Hi-Vision LDやBlu-spec CDなどを開発した元ソニーの中山邦男氏が手掛けるブランド、RE・LEAFのブースでは、2つの新製品が参考展示されている。

 同ブランドでは既に、DSD再生やバランス出力にも対応したUSB DAC/ヘッドフォンアンプの「E1」を受注生産で販売している。価格は6月から改定されて190万円となる。

USB DAC/ヘッドフォンアンプの「E1」

 新製品の「Ea1」は、「E1」からDAC機能を省いたヘッドフォンアンプ。6月発売予定で、予定価格は170万円。外観的な大きな違いは、ボリュームノブに木製パーツを使っているところ。

 帰還型として世界初の「Current Drive(電流駆動型)」信号増幅回路を採用。従来必要とされたインピーダンスに依存するヘッドホン毎のゲイン切り替えが不要になるほか、高いドライブ能力と、原音に忠実な音場や高い解像度を両立できるという。

「E1」からDAC機能を省いたヘッドフォンアンプ、「Ea1」

 電源部には4重安定化電源と、コンデンサの癖を排除したという各増幅段電源駆動を採用。基板にも工夫があり、電源、グランド配線用の第2層、第3層には200μmの分厚い無酸素銅を使用。信号用に第1層、第4層は標準的には35μm以下のところ、銅厚約100μm、アナログ部はレジスト塗装をあえてしていない、筐体は航空機グレードのアルミニウムブロックからの削り出しとなる。

 これらは100万円を超えるハイエンドモデルだが、ポータブルプレーヤー向けに、リーズナブルかつユニークな製品も開発されている。「ヘッドフォンエフェクトプラットフォーム」と名付けられた製品で、プラットフォーム本体の「EFX-PF1」と、それに取り付けるカートリッジ型の「Blender」で構成される。

プラットフォーム本体の「EFX-PF1」と、透明なカバーを備えた部分がカートリッジ型の「Blender」

 「EFX-PF1」にはステレオミニの入出力端子が各1系統搭載されており、ポータブルプレーヤーとヘッドフォンの間に挿入するように接続する。「EFX-PF1」に装着した「Blender」には、コンデンサや抵抗などが取り付けられており、音楽がそれらを通って、ヘッドフォンに出力され、音の変化が楽しめる製品となっている。

 カートリッジタイプになっているため、ハンダ付けなどは不要でコンデンサや抵抗のセットを付け替えられる。

 最大の特徴は、デジタルなイコライジングやDSPの処理で音を変化させているのではなく、アナログな電子素子を通している事。倍音組成や僅かな歪、残存成分、位相などの変化が楽しめ、例えば、名機と呼ばれた往年のコンポに搭載されているオイルコンデンサを通して、独特のサウンドをヘッドフォンで再現するといった使い方ができる。

 カートリッジは、ベーシックな音質の「Pri-Fix」、デッドストックや中古部品など熟成した音質の「Vintage」、ユーザーの好みに合わせてサウドブレンダーがカスタムする「Custom」をラインナップ予定。6月に発売予定だが、価格は未定。受注生産になるという。

カートリッジのカバーを外したところ」

ラディウス

 ラディウスは、同社初のハイレゾ対応を謳うイヤフォン2機種をアピール。5月下旬発売で、価格は、低域の音圧などを強化した上位機種の「HP-NHR21」が1万4千円前後、同製品をベースに、聴きやすい低音に仕上げたという「HP-NHR11」が1万円前後。両機種ともカラーはブラックとレッドを用意する。

奥が「HP-NHR11」、手前が「HP-NHR21」

 いずれも13mm径のダイナミック型ユニットを搭載するカナル型(耳栓型)イヤフォン。再生周波数帯域は5Hz~40,000Hzをカバーし、日本オーディオ協会の定義(40kHz以上の高域再生機能)を元に“ハイレゾ対応イヤフォン”としている。スタジオ収録の音源に近い繊細さと臨場感を余さず表現できるという。

 共通の特徴として、High-MFD(high magnetic flux density system)構造を採用。ダイナミックドライバのボイスコイルから漏れる磁束をマグネットの反発磁力によって閉じ込め、磁束密度を高めることで感度や音質の向上を図っている。平均感度は約4dB向上(同社製品比)、音質面ではトランジェント(過渡)特性に優れ、高域から低域まで、ディテールを損なわずクリアで歯切れの良い音質を実現したという。さらに、低域の再現性を高めるバスポート構造により、振動板の動作を最適化した。

SOUNDWARRIORなどその他のブース

 エレキットでお馴染み、イーケイジャパンのブースでは薄型のディスクリート構成のポータブルヘッドフォンアンプを参考展示。信号経路にオペアンプを使わず、個別の部品を使用して音作りをしたハイブリッド構成のアンプ。半導体を使っているが、入力部のFETに三極管特性を持たせる事で、真空管を使用したアンプのように二次高調波を付加させ、「聴き疲れしない音作りをしている」という。

 ゴールドムンドジャパンでは、ヘッドフォンアンプ「Telos HDA Headphone Amplifier」の新バージョンを参考展示。既存モデルとの違いは、DSPを追加し、頭内定位を和らげる広がりのある再生を行なうモードを備えている事。秋頃の発売を目指しているという。

参考展示されたディスクリート構成のポータブルヘッドフォンアンプ
ゴールドムンドの新ヘッドフォンアンプ
ORBのブースでは、2.5mm 4極のバランス接続ケーブルの試作機を参考展示。イヤフォン側の端子はMMCX。このケーブルをベースにしながら、外側のアミのカバーを外し、入力プラグなどをAKマークの刻印があるパーツに変更した“AKシリーズ向けモデル”も試作中。この違いで、音も若干2モデルで異なるという
米AudioQuest初のヘッドフォン「NightHawk」の試聴機も注目を集めている。50mm径のバイオセルロース製のピストン式振動板を採用。ハウジングには「リキッドウッド」という新素材を使っている

 城下工業は、Sound Warriorブランドの小型コンポ「SW Desktop-Audio」シリーズに、新たに追加されたクロックジェネレータ「SWD-CL10」を紹介。6万円ながら、TCXO(温度補償水晶発振器/0.28ppm)を備えており、ワードクロック信号を出力。さらに、より高精度な10MHzルビジウムクロックやGPSクロックなどを外部から入力し、 44.1/48/88.2/96/176.4/192kHzのワードクロックを生成する事もできる。

最上段にあるのがクロックジェネレータ「SWD-CL10」

 SW Desktop Audioシリーズでは、CDトランスポートの「SWD-CT10」と、USB DACの「SWD-DA10」の2機種が、BNCの外部クロック入力を備えている。この端子に「SWD-CL10」を接続し、高精度なクロックで同期動作させることで、より高精細な再生ができるという。

(山崎健太郎)