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東芝の'14年度は378億円の赤字。不正会計の修正額は計2,248億円に
(2015/9/7 19:15)
東芝は7日、経営刷新推進体制についての説明を行なうとともに、2014年度(2014年4月~2015年3月)の連結業績を発表した。同社では、不適切会計問題を受けて有価証券報告書の提出を2回に渡って延長しており、今回の提出となった。
東芝の室町正志社長は、「本日、2014年度の有価証券報告書が関東財務局に受領されたことをご報告する。株主、投資家をはじめとするステイクホルダーに、多大なる心配、ご迷惑をおかけしたことをお詫びする」とした。
新たな経営刷新推進体制として、取締役会議長候補には、資生堂相談役の前田新造氏、社内取締役候補者には、室町正志取締役会長兼代表執行役社長(代表執行役社長に就任予定)、網川智執行役員上席常務(代表執行役副社長に就任予定)、牛尾文昭代表執行役上席常務(代表執行役専務に就任予定)、平田政善代表執行役上席常務(財務部担当、CFO)を予定。
また、指名、報酬、監査の三委員会には、伊丹敬之氏(東芝取締役)、野田晃子氏(公認会計士)、池田弘一氏(アサヒグループホールディングス相談役)、古田佑紀氏(弁護士)、小林喜光氏(三菱ケミカルホールディングス取締役会長)、佐藤良二氏(公認会計士)、前田新造氏(資生堂相談役)で構成する。
「企業経営の経験などを踏まえて議長候補を選んだ。9月30日以降は、経営刷新推進体制として、監査委員会の直轄組織として内部監査部を新設。会計監査、適法性監査、妥当性監査、内部統制監査を行なう。また、執行役をトップとした経営刷新推進部、内部管理体制強化プロジェクトチーム、プロジェクト審査部という新組織を設置する。経営刷新に関わる施策を推進し、企業風土改革や内部管理体制の再構築および強化、工事進行基準案件の受注前審査や、受注後のコスト妥当性などのモニタリングなどを行なっていく」とした。
また、「不適切会計処理の問題は、経営トップが関与し、内部統制が無効化されたことが重要なポイントだった。再発しないような仕組みにすることが必要であり、仕組みのなかにしっかりと魂を入れなくてはならない。『魂を入れず』ということにならないようにする。それができているかどうは、しばらく時間が経ってから評価していただきたい」などと語った。
また、経営刷新委員会では、伊丹敬之氏を委員長とし、11人が委員として参加。9月上旬には取締役会の運営方法の見直しなどを議論し、9月中旬からは企業風土改革に向けて取り組みを議題にする。また、10月以降は新設する社内組織である経営刷新推進部で、具体化に取り組むという。
2014年度連結業績は378億円の赤字
一方、2014年度(2014年4月~2015年3月)連結業績は、売上高が前年比2.63%増の6兆6,558億円、営業利益は33.7%減の1,704億円、税引前利益は25.1%減の1,366億円、当期純損失は前年の602億円の黒字から、378億円の赤字に転落した。
東芝の室町正志社長は、「税引前損益では、8月18日以降の調査により、34億円減の修正となった。米国子会社工事進行基準案件など6件が修正対象になり、2件が修正不要と判断された。一方で、株主資本は1兆840億円となり、1億円を確保した」という。課徴金の引き当て、米国子会社における追加費用の計上、減損に伴う修正費用などが影響したという。
また、営業損益のマイナス要素では、パソコンのBtoC領域からの事業撤退、映像事業の海外撤退、訴訟関連費用で481億円のマイナス、STP(South Texas Project)の減損、半導体(ディスクリート)減損、家電の減損などで1,269億円のマイナスとなった。
過年度決算修正では、2008年度~2014年度第3四半期累計で、税引前損益修正額がマイナス2,248億円となり、8月18日の開示に比べてマイナス118億円修正となった。当期純損益修正額はマイナス1,552億円。
だが、「特殊事項を除く営業損益は3,454億円であり、実質的には573億円という大幅な増益になっている」(東芝 財務部・渡邊幸一部長)とした。
セグメント別の業績は、電力・社会インフラ部門の売上高が前年比11%増の2兆38億円、営業利益が130億円増の195億円。コミュニティ・ソリューション部門の売上高が4%増の1兆4,107億円、営業利益が16億円減の539億円。ヘルスケア部門の売上高が前年並の4,125億円、営業利益が60億円減の239億円。電子デバイス部門は売上高が5%増の1兆7,688億円、営業利益が302億円減の2,166億円。ライフスタイル部門は売上高が11%減の1兆1,637億円、営業損失が551億円悪化の1,097億円の赤字。その他部門は売上高が5%増の5,290億円、営業利益が41億円減の75億円となった。
電力・社会インフラ部門では、原子力、火力・水力、送変電・配電、太陽光発電など、すべての事業で増収。電子デバイスでは、メモリが販売数量の増加などにより増収となっている。また、ライフスタイル部門の赤字は、特殊要因がなくても実質ベースでも赤字になったと分析しており、「パソコン事業、テレビ事業は、構造改革が道半ばの段階にある。それぞれの事業が赤字を計上している状況にある」(東芝・渡邊部長)という。
一方、室町社長は、「エネルギー、ストレージ、ヘルスケアの3本柱が軸になることは変わらない。だが、これまでのように、これらを3本柱と呼ぶような、力の入った表現は控えたい。前社長である田中が打ち出したヘルスケアの大きな売り上げ目標についても、原点に戻って見直したい」としたほか、「年内には、構造改革の必要な事業に対しては、構造改革の方針を打ち出し、制約を設けない大胆な改革をしていくことになる。売り上げは、一時期に下がるかもしれないが、筋肉質な体質ができあがる」などと述べた。
また、構造改革の対象となるライフスタイル部門に関しては、「売却や撤退ということまで踏み込んだ話については、現時点では言及できない。現在、カンパニーのトップと話を進めている」と語った。
さらに、キャッシフロー経営に軸足を移行することを強調。「これまで社長月例と呼んでいた会議を、業績報告会と名称変更し、これを2015年9月から開始する。少人数で密度の高い会議を行ない、議事録は監査委員会に提出することになる。また、業績評価制度においては、2015年度からキャッシュフロー項目の配点を増加。一方で、事業収益の改善やコア事業に関連しない保有資産売却を、今後も加速していくことになる」とした。
資産売却では、7月22日付けでコネ社の株式を売却し、1,130億円の売却益を得たほか、8月31日付けでトプコンの株式を売却することを決定している。
なお、今回の発表では、2015年度の業績見通しは公表しなかった。「現在、不適切会計の影響について、営業面などの影響を慎重に見極めている状況であることから、2015年度の業績予想は開示しない」とし、同社では、「公表可能な状態になり次第速やかに開示する。できれば10月末に予定している上期決算発表の段階で、なんらかのメッセージを出すことを考えている」とした。
室町正志社長は、「40万人の株主、国内外の投資家、取引先、関係当局に対して、ご心配、ご迷惑をおかけしたことをお詫びする。社会的な責任を痛切に感じている。新経営体制により、東芝の信頼回復を目指していきたい」と述べた。
なお、臨時株主総会を9月30日午前10時から、千葉市の幕張メッセで開催する予定。不適切会計問題や過年度決算訂正に関する報告、取締役選任など16議案の決議を行なう。
さらに、9月14日に予定している第1四半期決算発表については、「発表できるように、なんとしてでもこの日の発表を死守したい」と語った。