ニュース

東芝、テレビは国内に注力し、自社開発/販売継続

青梅閉鎖。PCと家電は「他社と事業再編も」

 東芝は21日、テレビやパソコン、白物家電事業などの事業についての構造改革を発表した。その中で、テレビ事業は海外市場から撤退するが、国内の自社開発、販売を継続する方針が明らかにされた。また、PCや家電事業の構造改革も発表し、「他社との事業再編も視野にいれる」としている。

東芝REGZA「65Z20X」

テレビ事業の国内開発継続。年間60万台規模に

東芝 室町正志社長

 テレビなど映像事業は、国内事業では、人員削減等により固定費削減・収益力の強化を図りながら、国内向けの自社開発・販売を継続。海外事業は、自社開発・販売を終了して、東芝ブランド供与型ビジネスに移行する。

 国内テレビ事業においては、開発の効率化や、間接人員の削減により、収益力を強化。テレビは高付加価値製品に絞り、年間販売台数を約60万台(2016年度目標)とし、利益が出る体質に転換する。

映像事業の構造改革

 中国を除くアジア地域向けに、インドネシアでテレビを製造している、東芝家電製造インドネシア社を売却し、ブランド供与型ビジネスに移行。工場は中国スカイワース(Skyworth)に売却することで合意した。これにより、中国を除くアジア地域における映像事業は、Skyworthへのブランド供与型ビジネスとなる。

 また、エジプト エルアラビへのテレビ製造合弁会社と、販売合弁会社も非連結化する。ブラジルの映像事業も譲渡し、ブランド供与型ビジネスへ移行する。

 国内向けテレビの生産は大半が海外調達となる見込みだが、ホテル需要向けにカスタマイズされた製品のBtoB需要を見込み、一部の高画質小型製品を、青森県三沢市の東芝メディア機器で製造する。同社の組み立ては16万台規模を想定している。

 一連の構造改革で、'14年度末から2016年3月末までに国内外で約4,800人を1,100人規模にする約3,700名の人員削減を行なっている。国内人員についても約50名の再配置、早期退職を実施する。映像事業の構造改革費用は400億円。2016年度中の黒字化を目指す。

 テレビ事業については、「60万台という数字は、ミニマムなオペレーション。ただし、映像技術はこれからの東芝にとって重要で維持しなければいけない。固定費も1/3にし、海外の販売や製造からは、全面撤退する。来年度以降はある程度の収益を上げられ、今年度のような赤字はないと確信している」とした、

パソコン、家電は大幅見直し。「他社との事業再編も視野」

東芝 代表執行役 副社長 網川智氏

 パソコン事業は、BtoBを中核事業化し、BtoCは国内市場を中心にする。また、従来行なっていたODMメーカーへの開発、生産委託による水平分業を取りやめ、バイセル取引を廃止。プラットフォーム数も1/3以下に削減する。700万台規模から、300万台規模の体制に改める見込み。

 パソコン事業については、社内カンパニーのパーソナル&クライアントソリューション社を、100%子会社であるBtoB販売会社の東芝情報機器に、会社分割により承継させる。分社化は2016年4月1日を予定。「一層の軽量経営を実施し、他社との事業再編も視野に入れる」としている。

 また、パソコン事業で1,300名規模の人員削減を行なう。これは国内外の同事業関係者の約3割にあたり、早期退職優遇制度を実施する。PCの構造改革費用は約600億円を見込んでいる。

パソコン事業の構造改革

 家電事業については、国内外間接人員の削減や、国内首都圏拠点の集約、オペレーション効率化などの固定費削減策を図るほか、インドネシアのテレビ工場と同敷地内の二槽式洗濯機の自社製造、販売を終了。土地や建物とともにSkyworthに売却する。首都圏の拠点は現在の6拠点から3拠点に絞る。また、国内外で1,800名規模の人員削減を行なう。「他社との事業再編も視野にいれる」としている。

家電事業の構造改革

 東芝は段階的な構造改革を進めながらも、赤字基調のテレビ、パソコン、家庭電器について、課題事業としており、11月の決算発表でも「構造改革について、あらゆる可能性を制約を設けず検討中」としていた。

 なお、ライフスタイル事業グループの資産効率化のため、開発拠点の青梅事業所を閉鎖し、売却する方針。

東芝本社ビル

通期は純損失5,500億円。「家電からは離れなければならない」

 通期の業績予想も発表し、2015年度は、売上高6兆2,000億円、営業損益は3,400億円のマイナス、純損失は5,500億円。

2015年度業績予想
2015年度業績予想(セグメント別)

 本社組織も1,000名規模の人員削減を実施するなど、構造改革を強化するほか、内部管理体制強化や企業風土変革、事業ポートフォリオや運営体制見直しにも着手し、「新生東芝アクションプラン」を策定し、来期以降の中期経営計画に盛り込む。

 人員削減については、先に発表していた半導体とあわせて今年度の削減は10,600名規模となる。うち国内は5,800名で、このうち半導体のソニーへの移転や、配置転換を抜いた約5,300名は早期退職となる見込み。

構造改革による人員推移
事業ポートフォリオと事業運営体制の見直し

 アクションプランでは、強化事業領域を、エネルギー事業とストレージ事業と位置づけるほか、ヘルスケアの外部資本導入、小さな本社の確立などを盛り込んでいる。

 ヘルスケア事業の外部資本導入とは、具体的には東芝メディカルシステムズ(TMSC)の株式売却を念頭としたもの。同社が成長事業と位置づけ、利益を生んでいる部門だが、「グループ内では成長に制約があり、さらなる成長に必要な経営資源を確保する」(室町社長)としており、「既に何社かと話をしている。マジョリティ(過半数)は手放す。少なくとも50%以上、場合によっては100%の売却を考えている。今後話す会社との協議になる」と語った。

 また、NANDを含む半導体事業の分社化や株式公開については、「東芝にとって非常に重たい話。慎重にシミュレーションする」と述べた。

 今後の東芝の姿として、「少なくとも家電からは離れなければならない。メディカルからも離れなければならない。メモリはいまは厳しいが、将来的な向上が見込まれる。また、原子力についても、地球温暖化対策を含め、ある程度の新規建設が進む。その競争力を維持していれば事業としては成長する」と説明。まずは、キャッシュフロー重視の経営と、TMSCの売却などでによる財務基盤の改善を当面の最重要経営課題として、取り組むとする。

(臼田勤哉)