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東芝、家電/PCで他社との事業再編へ検討加速。通期赤字7,100億円

 東芝は4日、2015年度第3四半期決算を発表。2015年12月21日に発表していた「新生東芝アクションプラン」の修正、および2015年度の通期見通しの下方修正を行なった。

室町正志社長

白物家電の売却先にシャープも選択肢

 会見で東芝の室町正志社長は、「大変遺憾ではあるが、12月に発表した業績予想を修正する。公表から1カ月あまりで大きな修正となったことを深くお詫びする」と陳謝。「新生東芝アクションプランは、東芝再生のために課題を抱えている事業については、構造改革などの必要な措置を、2015年度中に実施することが必須であるとしたが、今回の修正は不採算案件の引き当てや、棚卸し評価減、追加の負債評価減、構造改革費用の積み増しなどを織り込んだことが大きな要因。赤字事業の解消や財務体質の改善など、今後の成長に向けためどをつけるために、今年度中に最大限の処理を行ないたいと考えた。新生東芝アクションプランを完遂することで、東芝グループが新しく生まれ変わり、すべてのステークホルダーから再び信頼を得られるよう、引き続き先頭に立って全力を尽くす」とした。

通期業績予想(全社)
通期業績予想(セグメント別)
今後の成長戦略の策定、発表スケジュール

 ハードディスク事業については、収益改善を目的に、エンタープライズ分野に開発リソースをシフト。国内150人の人員を再配置および早期退職制度を実施する。ヘルスケア事業については、東芝メディカルシステムズへの外部資本導入に伴い、2016年3月末にヘルスケア社を廃止。重粒子線がん治療装置、ゲノム解析受託サービスなどはグループ内で事業を継続。リストバンド型生体センサーなどは、グループ内外への移管を検討。2016年3月までに事業の方向性を決定する。同時に国内で約90人の再配置および早期退職制度の実施を行なう。また、送配電事業は、「収益が大幅に悪化しており、海外拠点の閉鎖、縮小を中心に、国内への資源シフトを図る。具体的施策が決定次第、明らかにする」と述べた。

HDD事業の収益改善施策
ヘルスケア事業の見直し

 一方で、ディスクリート半導体、システムLSIも公表した構造改革を断行。「2016年度の黒字化を目指している。外部の協力を得て、事業価値を高めていく方策も視野に入れているが、終息や撤退を表明している白色LED、CMOSセンサー以外の事業は、売却したり、事業撤退は現時点は考えていない。とくにディスクリート半導体、車載・産業向けシステムLSIは事業を継続していくことに変わりはない。全力をあげて事業を立て直す」と強調した。

 新たな事業ポートフォリオと今後の成長戦略を含む全社の中期経営計画は2016年3月に発表する予定だという。

 さらに、白物家電およびPCの再編についても言及した。

 「公表している構造改革を確実に実行しつつ、他社との事業再編に向けて検討を加速させている。いまは、相手との交渉に注力している。私の気持ちとしては2月末までには、なんらかの方向性を伝えたいが、いまは話せる段階にはない」とした。室町社長が、白物事業およびPC事業の売却時期に言及したのは今回が初めてのことだ。

 室町社長は、「テレビを含む白物家電事業と、PC事業については、売却価格の交渉にまでは至っていない。白物家電事業の売却先として、シャープは選択肢のひとつ。だが、ディールが変われば、海外企業への売却も選択肢のひとつに入る。すでに固定資産の減損が終わっており、債務超過の引き当ても完了している。売却益は期待はしていないが、東芝メディカルの売却に比べて、利益が出たとしても非常に低いのは確か。また、売却においては、出資をしたとしてもマイノリティになるのは確かだ。それらはブランド使用の条件などで変わるが、まだそこまでの話はしていない。今後は、全員が移籍なのか、一部が移籍するのかという交渉になってくるだろうが、できれば居抜きで移籍してもらいたいと考えている」とした。

 また、「PC事業の売却については、一時は海外メーカーとも話し合いをしたが、いまは、海外メーカーへの選択肢の可能性は低くなっている」と述べた。

テレビは海外事業終息で6割減収。不適切会計問題の再発防止策も

 今回発表した2015年度の通期業績見通しの修正計画では、売上高は据え置き、6兆2,000億円としたものの、営業損益は12月公表値から900億円減の4,300億円の赤字、税引前損益は1,000億円減の4,000億円の赤字、当期純損益は1,600億円減の7,100億円の大幅な最終赤字見通しとした。

第3四半期業績
'13年度からの推移
概況

 室町社長は、「年金の運用調整などの周囲環境の変化などもあるが、2016年度にV字回復をさせるという上で、金融機関から今年度中に膿を出してもらいたいという要請があり、私自身も、来年度のV字回復を事業部に申し入れた。事業部からは、それに向けて追加の構造改革を実行したいという話も出てきた。大きな市況変化がない限り、今回、出した見込みを下回ることはないだろう。今回の修正は、来年度のV字回復への決意と捉えてほしい」とした。

 セグメント別の通期見通しは、12月公表値に比べて、電力・社会インフラの売上高が600億円増の2兆600億円、営業損益は550億円減の850億円の赤字。コミュニティ・ソリューションの売上高は据え置いて1兆4,100億円、営業損益は50億円減の350億円の赤字。ヘルスケアは、売上高、営業損益ともに据え置き、それぞれ4,400億円、150億円の黒字。電子デバイスは売上高が200億円減の1兆5,900億円、営業損益は300億円減の550億円の赤字。ライフスタイルの売上高は300億円減の8,200億円、営業損益は200億円減となる1,600億円の赤字。その他部門は、売上高が100億円減の4,900億円、営業損益は据え置き100億円の黒字とした。

 また、今回の計画見直しに伴い、役員の報酬返上や役職者の給与減額の緊急対策を、2016年2月から実施することも発表した。社長は引き続き90%の報酬返上、副社長はこれまでの30%から40%に引き上げ、専務、上席常務、常務も20%から30%に引き上げた。また、課長以上の役職者の給与を減額。課長級で月額1万円の減額になる。

 さらに、相談役制度を廃止するととともに、顧問制度の見直しを行ない、新たに名誉顧問を設けることを決定。また、指名委員会へのCFO人事同意権付与のプロセスを追加し、不適切会計処理問題の再発防止を行なう。

内部管理体制の強化などの取り組み

 「名誉顧問は、会社経営とは一線を画す名誉職であり、社外活動を通じて、会社のプレゼンスの維持、向上を図る。これまでは役員退任者が一律に顧問に就任していたが、これを廃止する。必要なミッションを有し、東芝として不可欠な人材のみ、指名委員会の同意を得て任命する」という。

 一方、第3四半期累計業績は、売上高が前年同期比6.4%減の4兆4,216億円、営業営損益は前年同期の2,017億円の黒字から、2,295億円の赤字に転落。税引前損益は前年同期の1,881億円の黒字から、1,610億円の赤字に、当期純損益は1,072億円の黒字から、4,794億円の赤字となった。

 セグメント別業績は、ライフスタイルの売上高は27%減の6,444億円、営業損益は282億円減の668億円の赤字。テレビおよびPCなどの映像事業が販売地域の絞り込みにより大幅な減収になったほか、損益面では、テレビおよび白物家電が第3四半期に改善したが、PC事業の悪化で赤字幅が拡大した。為替の影響を除いた実質売上高は前年同期比30%減になっているという。

テレビや白物家電、パソコンを含むライフスタイル事業
セグメント別業績
営業損益の分析
陶器純損益の分析
平田政善代表執行役上席常務

 第3四半期累計におけるテレビの売上高は、前年同期比60%減の611億円。家庭電器は2%減の1,658億円。PCは、27%減の3,655億円となった。「テレビは、海外での自社開発および販売の終息と、ブランド供与への移行により減収。家庭電器は海外は増収となったが、国内は減収となった。PCはBtoCの不採算地域からの撤退により減収になった」(平田政善代表執行役上席常務)という。

 電力・社会インフラの売上高が前年同期比1%減の1兆3,398億円、営業損益は前年の430億円の黒字から、1,026億円の赤字となった。原子力およびランディス・ギアが増収要因となったものの、送変電、配電、太陽光が減損により大幅に悪化した。コミュニティ・ソリューションは、売上高が2%増の9,929億円、営業損益は827億円減の635億円の赤字。照明事業が減収となったが、業務用空調事業が増収となった。ヘルスケアの売上高は4%増の2,988億円、営業損益は64億円減の68億円。北米におけるサービスや中国における機器販売のほか、主力となるCTを中心とした医用画像機器販売が引き続き堅調だったことで増収となったものの、将来の成長の前倒しを図るべく、診断機器を中心とした次世代開発研究と新規事業の先行投資などを増やしたことで減益になった。

電力・社会インフラ
原子力事業の事業計画
コミュニティ・ソリューション
ヘルスケア

 電子デバイスの売上高は7%減の1兆2,126億円、営業損益は1,694億円減の234億円。メモリの売価ダウンにより半導体事業が減少したほか、ストレージ事業も減少。さらにディスクリートの構造改革の影響により、業績が悪化した。その他事業の売上高は8%減の3,381億円、営業損益は21億円増の27億円となった。

電子デバイス
セミコンダクター&ストレージの主要事業
セミコンダクター&ストレージの四半期別営業損益

(大河原 克行)