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NHKのネット同時配信実験、平日朝にスマホ視聴ニーズ。権利確保に課題も

 日本放送協会(NHK)は、NHK総合テレビ放送をインターネットに同時配信する検証実験「試験的提供B」の結果を発表。同時配信に対する視聴ニーズや、実際の放送と比較した遅延、今後の課題などを明らかにしている。実施期間は'15年10月19日~11月15日で、参加者は9,898人。

インターネット同時配信のデバイス別の利用率(ネットクラブ実験参加者)
出典:NHK

 参加した9,898人のうち、調査会社を通じて募集した「一般視聴者」は957人、オンラインで自由に登録できる「ネットクラブ実験参加者」は8,941人。一般視聴者のうち8.9%が同時配信を利用し、ネットクラブ参加者の利用は66.4%だった。

 時間帯別では、平日の朝7時~8時台にモバイル端末(スマートフォン/タブレット)の利用が目立っており、「朝の通勤時間帯の移動中に視聴されたのでは」としている。

 ネットクラブ参加者の50代以下では、モバイル端末による視聴がパソコンを上回った。30代男女はモバイルが54%に対し、パソコンは30代男性が20%、30代女性が13%。20代以下は、モバイルが男性56%、女性48%に対し、パソコンは男性30%、女性12%だった。全体では、モバイル利用が43%、パソコン利用が35%となった。

 検証項目の「配信基盤と関連システムとの連携の負荷や、各種端末への対応状況の把握」については、放送と比較して25秒程度の遅延があったことを報告。「一般的なライブ動画配信と比べても大きな差はなし」との認識を示している。その他、システムに係わるトラブルは発生しなかったという。

 曜日別では、金、土、日曜日が他と比べて配信未実施の割合が高かった。これは、「スポーツなど権利処理ができなかった番組の影響」としている。

 権利処理に関する課題や対応策の運用状況については、権利処理によって配信できた時間が合計345時間57分で、配信対象の時間の78%だった。ニュースは94%、その他の番組は71%を配信している。

 配信未実施の理由のうち1/4は、番組やニュース項目に、契約上インターネット配信権がないもので、その他にも、制作から長い年月が経過し、権利者に確認できなかった番組も含まれている。

曜日別の配信実績
出典:NHK
ネット同時配信サービスに今後期待すること
出典:NHK

 今回の実験を行なって、ネットクラブ実験参加者に質問したアンケートでは、57.4%が「満足」、94%が「今後も利用したい」との意向を示した。

 一方で「ネット同時配信サービスに今後期待すること」については、最も多かったのが「NHK総合以外のNHK番組も見られるようにすること」で77.6%。続いて「見ることができない番組をなくすこと」で62.3%だった。その他、「すでに放送された番組を見られること」(56.6%)、「民放の番組も見られるようにすること」(45.3%)、「深夜や早朝にも同時配信サービスを利用できること」(40.8%)などの意見が多かった。

 NHKは'16年度も同時配信の実証実験を継続する予定で、「今回明らかになった権利確保等、様々な課題についても引き続き検討を進める」としている。

(中林暁)