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キヤノン、現実とCGを自然に融合する「MREAL」の新HMD。高精細/広角化、900万円

 キヤノンは、現実映像とCGをリアルタイムに融合するMR(Mixed Reality/複合現実感)を実現するシステム「MREAL(エムリアル)」の新製品として、ヘッドマウントディスプレイ「MREAL Display MD-10」を5月25日より発売する。既存モデルに比べて広画角/高精細化しており、価格はシステム全体で900万円。購入する企業などのニーズに合わせたシステム構成を提案する。

MREAL Display MD-10

 ディスプレイとビデオカメラを備えたヘッドマウントディスプレイ(HMD)や位置計測システムなどで構成し、PCで現実映像とCGを合成できる技術をシステム化した「MREAL」は、自動車メーカーなどの製造業での設計/製造部門において、デザインや設計データを実物大の3D映像で確認し、試作回数やコスト削減を可能にする業務支援ツールとして利用されている。新製品のMD-10は、'12年7月発売の従来機種や、'14年2月発売のハンドヘルド型の上位機種となり、広画角/高精細化。自動車本体など大きな立体物のデザインの確認から、細かい部品を用いた作業の確認まで、幅広い用途で検証できるという。

MREALの活用例

 MD-10の画角は、水平方向で約60度(従来機は約41度)/垂直方向で約40度(同31度)となり、ディスプレイ上に映し出す面積は従来機種の約2倍に拡大した。室内など狭いスペースでも、自動車の外観や内装のデザインを近距離から確認できるほか、広い視野角を必要とする大型部品の組立検証でも効果を発揮するという。

 また、解像度も現実映像で約1,700×1,060ドット、CG部分で1,920×1,200ドットで従来機(現実映像で約400×300ドット/CG部分で1,280×960ドット)から約2.7倍に高精細化。現実に近い映像で見られるだけでなく、ネジのような細かい部品をCGにはめ込むことで作業性を検証可能。実寸大で臨場感のある3D映像を通した検証が行なえるとしている。フレームレートは最大約54fps。

 「MREAL」は、組み立てやメンテナンスの検証時にCG映像の中に自分の手を映し出し、作業性や操作性を確認できる。この検証に新たなソフトウエアを別売で用意して利便性を向上。CG映像上に手を映し出す際には、ノイズを従来機種に比べ約20%削減し、スムージング処理も適用。手の輪郭のちらつきを低減し、滑らかに表示する。これにより、組み立てやメンテナンス作業の検証時には、手とCGの位置関係をより自然な感覚で把握できるという。

CGと実物の手を融合した映像例

 同ソフトでディスプレイの位置合わせにマーカーを使用する際は、必要なマーカーの登録を一人で短時間に行なえる「オートマーカーキャリブレーション機能」や、センサー/マーカーの設置が難しい狭い室内でも、撮影空間にある画像の特徴を活用する「空間特徴位置合わせ機能」が利用できる。

 このほかにも別売のアプリケーションと連携した仮想検証が可能。ディスプレイ装着者自身の操作で、CGの表示/非表示の切り替えや、CGの断面表示、CG間の距離計測が可能な「3D-UI機能」や、CG同士の接触を判定する「接触判定機能」との組み合わせにより、手や工具を用いた検証が行なえる。

 建築向けビューワー「BIMx」のシーンを、ディスプレイ上で移動や視点変更をしながら検証することも可能。また、生産設備向けのCAD「iCAD」で作成した製品の組立工程を、ディスプレイ上で確認できる。

 「組立てシーケンス検証」では、製品の組立工程を順番にディスプレイへ表示可能。そのほか、空気の流れをCGで3次元化する「気流シミュレーション」の構築も行なえ、試作前の段階で気流を把握しながら部品の配置を検討できる。

 MD-10は付属ユニットで頭部へ装着できるほか、手に持って使うことで多人数でも共有しやすいハンドヘルドユニットを別売で用意。

別売のハンドヘルドユニット装着時

 ディスプレイとコンピュータをつなぐケーブルは直径約4.5mmで従来機種の半分程度となり、長さ10mで約320g。従来機種の1/3程度へ軽量化した。

 「MREAL Platform」の操作画面をクリックすることで、光源により異なる白の色合いを調節可能な「ワンクリックホワイトバランス設定機能」や、シャッター速度とゲインの調節により、自動で現実映像の明るさを調節できる「自動露出補正機能」も備える。ホワイトバランスと露出は手動設定も可能。

 消費電力は定格約48Wで、通常動作時は約36W。ヘッドマウントユニットを含む外形寸法と重量は、約236×245×139mm(幅×奥行き×高さ)、約1,040g(ケーブル除く)。

(中林暁)