地デジコピー制御の新方式含む第6次中間答申を提出

-年内に技術仕様策定とライセンス機関を準備



 総務省の情報通信審議会第22回の総会が7月10日に開催。「デジタルコンテンツの流通の促進」などについて第6次中間答申がまとめられ、地上デジタル放送のコピー制御にかかわるルールの担保手段(エンフォースメント)などについての、見直し計画などが提出された。

 「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会(デジコン委員会)」で検討されてきた、地上デジタル放送のエンフォースメントについては、この中間答申が、今後実際に作業を進めるうえでの目標となる。

 現在の地デジでも利用されているB-CAS方式は、元々2000年のBSデジタル放送開始にあわせて導入されたもので、その後2003年12月にスタートした地上デジタル放送でもこの方式を踏襲していた。

 しかし、「テレビの小型化が困難」や「低価格化の障害」など、製品の選択肢を狭めているとする指摘が多くなされていること、B-CASの一社独占による透明性に疑問を呈す声が増えてきたことから、改善するよう第5次中間答申で提案され、デジコン委員会で1年に渡り議論が続けられていた。

 今回提出された答申でも、基本的には委員会の中間とりまとめを踏襲しており、B-CASとの併存を前提としながら、技術開示方式を開示した新しい方式を「できるだけ早期に運用開始することが望ましい」と記されている。

 


■ 年内に技術仕様をまとめライセンス機関を準備

 中間答申では、「利用者に対し、B-CASと並ぶ新たな選択肢を拡大することが望ましく、可能な限り早期に、選択肢の具体化と、その導入を図る必要がある」との基本方針をまとめており、下記の2つの方向性が定められている。

 一つは、従来のB-CASカードの小型化/事前実装の推進、そしてもう一つがコンテンツ保護にかかわるルールを遵守する全ての人に対し「技術仕様を開示する」という新しいエンフォースメントの仕組みだ。

 新方式は、著作権保護などの技術仕様をソフトウェア/チップ化し、機器に組み込むもの。その技術仕様を“開示”し、ライセンス発行/管理機関により、ルールを順守する機器メーカーや半導体メーカーなどに提供する。導入時期については「2011年7月24日のデジタル放送全面移行の時期までに、できるだけ可能な限り早期に運用開始されることが望ましい」としているが、具体的な日時は示されていない。

 導入へのスケジュールは、「技術方式・運用規定の策定」→「ライセンス発行・管理機関の準備/設置」→「放送局送信設備改修/受信機開発、製造」→「運用開始」となる。このうち、ARIBにおける標準規格の策定とDpaにおける運用規定の策定、およびライセンス発行機関の準備については、年内の完了が目標とされている。

 



■ 受信確認メッセージで議論も

 情報通信審議会の委員からは、「新しい方式の導入は非常に難しい。B-CASを残すのであれば、B-CASと競争関係になるような同じような組織を作って競争を促進すればよかったのでは?(服部委員)」との意見も出た。

 デジコン委員会の主査で、中間答申案を報告した慶應義塾大学の村井純教授は、「組み込み型テレビや受像機の小型化など、物理的な大きさにも課題があった。また、例えば今のシュリンクラップ契約(ユーザーがB-CASカードの封を開くと、契約に同意したとみなすという現行方式)で、ユーザーがユニットバス用テレビにカードを入れるのか、という議論もあった」とし、契約形態や組織についての改善とともに、ソフト/チップという技術的な改善も必要だったことを説明した。

 高橋委員は、「また、前回(第57回のデジコン委員会)の委員会で、“受信確認メッセージ”について話が出た。受信確認メッセージは入れないが、そのためのスペックは入れるという点は残念に思う。“限定受信”のための余計な機能。最小限の機能をと要望していのだが」とし、「取材してみると大手の会社ではそうでもないというが、海外や中小の会社にとっては開発コストが増えて参入へのマイナスという」と指摘した。

 村井教授は、「“メッセージを入れる”かは決めていないが、これまでと同様に機能は入っている。ただし、地上デジタル放送の青(B-CAS)カードで受信確認メッセージを使ったことはない。スペックをそのまま継続するという技術仕様で、運用とは切り離して考えている」と説明。また、従来方式と技術仕様を大きく変えると、機能の利用時に改修が必要になるなど問題についても言及した。

 受信確認メッセージについて議論が起きたものの、「21世紀におけるインターネットの政策の在り方」などの答申事項とともに、答申内容自体は承認された。


(2009年 7月 10日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]