地デジの新保護方式の開始スケジュールで議論

-技術仕様は年内~2010年初頭に。中間答申で目標設定



 総務相の諮問機関である情報通信審議会は23日、「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会第55回」を開催した。

新方式導入におけるライセンス発行・管理機関の全体相関図

 従来と同様に、地上デジタル放送の著作権保護方式(エンフォースメント)の見直しについて議論。これまでの委員会では、現行のB-CAS方式の放送を継続しながら、「選択肢の多様性」と「保護の仕組みの透明性」を前提に新方式を導入することを検討してきた。

 新方式は、ソフトウェア化して機器に著作権保護機能などを組み込むもので、その技術仕様を“開示”し、ライセンス発行/管理機関により、ルールを順守する機器メーカーや半導体メーカーなどに提供する。

 この「ソフトウェア方式」について現在同委員会傘下の技術検討WGにおいて議論が進められているが、「2011年7月24日のデジタル放送全面移行の時期までに、できるだけ可能な限り早期に導入」という点で一致しているものの具体的な日時は今回も提示されなかった。


導入に向けたプロセス

 導入へのスケジュールは、並行して進めるものもあるが、基本的には「技術方式・運用規定の策定」→「ライセンス発行・管理機関の設置」→「放送局送信設備改修/受信機開発、製造」→「運用開始」となる。これらの目標日時が明示されないため、「何がクリアされると日時が入るのか?(河村委員)」などの意見が多数出た。

 放送局の代表からは、「今回の一番大きなネックは、放送局送信設備の改修。ダビング10のようなウルトラCはできず、全放送局の設備を運用しながら、(放送の)空きを探して改修しなければいけない。それにはどんな仕様で方式が最もいいのか、きちんとイメージができないといけない。ただ、最初の段階である“技術方式・運用規定の策定”は、今年(2009年内)から来年の頭には案ができるのではないか(関委員)」とした。

 また、「100点満点の技術はありえない。技術/運用規定の策定で一番重要なのは、バランス。それを“このレベルでいいですか”と、WGなり、委員会で説明して、合意いただきながらやる。すでにある資産を利用して、技術/運用規定を作っていく。そうなれば、次のステップ、製造、運用の契約のイメージができる。ここも(委員会などの)了解を得ながら並行してやっていく(関委員)」と説明した。

 機器メーカーからは、「製品が発売できる環境を早期に整えてもらいたい、というところで、WGで喧々諤々やっています。放送局の設備が終わらないと、受信機は発売できない。受信機は運用規定が決まれば、おおむね開発に着手できる。ただし、鍵の問題があるので、ライセンス管理機関との契約が必要。これができないと、契約もできない。だから開発にGOがかけられない。よって技術方式策定からライセンス方式策定までをいかに縮められるかが、いまのWGの議論。大事なのは透明性とセキュリティ、受信機開発の実効性の3点。そこがクリアされれば、あとは腹をくくってやるだけ。特に今回ソフトウェアなので、おそらく問題なく開発は追いつくだろう。物理的に大変なのは放送設備の改修。もう一回ぐらいWGをやれば、村井主査の腕力により、おおむねの時期は提示できるのではないかと期待している(田胡委員)」と見通しを示した。

 また、新方式導入の進行について「慎重すぎる。時期を出したら、なにがなんでもやらなければならないというトラウマみたいになっているのではないか。目標時期だけでも示してがんばるというのを示すような、マインドをもってほしい(浅野委員)」との意見も出た。

 委員会と技術検討WGの主査を務める慶応義塾大学の村井純教授は、「どれが決まらないから、何も決まらないという関係ではなく、全体が決まっていてそれを微調整するということと考えている。(7月の中間答申前に)もう一回委員会があるが、その時には最高の精度で、正しい数字を出したい。最後の瞬間まで精度を上げたいと考えている」と説明。中間答申で、開始目標を設定する方針を明らかにした。


(2009年 6月 23日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]