パイオニア、iPodデジタル入力対応の2.1chスピーカー

-フルデジタル処理で高音質化。環境音とのミックスも


11月中旬発売

標準価格:オープンプライス


 パイオニア株式会社は、iPodとのデジタル接続に対応した2.1chスピーカーシステム「NAS5」(XW-NAS5)を11月中旬に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は49,800円前後の見込み。カラーはメタリックシルバー(S)、メタリックブラック(K)、ルベライトレッド(R)の3色を用意する。

 iPodなどのメモリ大容量化に伴い、手持ちの曲の多くをポータブル機に入れているというユーザーを想定した製品。デジタル入力対応により、屋内でもiPodを高音質で楽しみたいというニーズに応えるという。

 一体型スピーカーとしてiPodデジタル入力に対応する製品は他社からも発表されているが、発売時期としては「カジュアル商品として初期のデジタル対応となるのでは」(同社ホームエンタテインメントビジネスグループAV事業部 企画部 オーディオ企画課 一樂淳史氏)としている。

 なお、海外においては9月に行なわれたIFA 2009で発表。NAS5は上記3色のほかホワイトモデルも展示されたほか、NAS5の下位モデルとしてFM非搭載のNAS3もラインナップしていたが、国内では現時点でこれらの販売予定は無い。

左からメタリックシルバー(S)、メタリックブラック(K)、ルベライトレッド(R)。実際の製品では、さらに光沢を持たせるという

内部フルデジタル処理で高音質化を図っている

 NAS5は、15W×2ch+30W(サブウーファ)のデジタルアンプを内蔵したアクティブスピーカー。iPod用のDockコネクタを天面に備え、装着したiPodの音楽を、iPodのDACを通さずにデジタルのまま取り込み、NAS5内部でフルデジタル処理することにより、アナログ処理による劣化を抑えた高音質再生を実現している。

 また、コンポーネント/コンポジットの映像出力端子も備え、iPodのビデオや静止画の出力も可能。映像/音声ともに対応するiPodは第3世代以降のiPod nanoとiPod classic/touchで、第2世代nanoは音声のみ対応する。なお、iPhoneやiPhone 3G/3GSの接続時は、アラートに従って「機内モード」をONにすることで再生できる。

 ステレオミニ入力も備え、他のプレーヤーとの接続も可能。さらに、同社から発売されている別売Bluetoothユニット「AS-BT100」(実売8,000円前後)を追加することで、iPod touchや携帯電話などA2DP対応機器からのワイヤレス音声伝送も可能となる。本体にFMチューナも搭載。また、時計表示と目覚まし/スリープタイマーも備え、タイマーの音源はiPod/FM/ビープ音から選択可能。

背面。コンポーネント/コンポジットの映像出力やステレオミニのアナログ音声入力を備える底面。中央がサブウーファ、右にバスレフポート別売Bluetoothユニット「AS-BT100」接続時

 もう1つの特徴として、同社がプロデュースしているサイト「Sound Lab.」の音源から、6種類の環境音を本体メモリにプリセット。波の音や小鳥のさえずり、レコード針のスクラッチノイズなどの音を再生できるほか、iPodや外部入力、FMの音声にその環境音をミックスして再生するというユニークな機能も備えている。ミックス時は、iPodなどの音源とは別に環境音のみのボリューム調整もできる。

天面の操作ボタン部。iPodドックを使わない場合のカバーも備えている
 スピーカーユニットは、2.6cm径のセミドーム型ツイータ/5.2cm径コーン型ミッドレンジと、底面に配した10cmコーンのダウンファイヤリング式サブウーファで構成。エンクロージャはバスレフ型。再生周波数帯域は50Hz~30kHz。独自DSPを用いた高音質化機能「アドバンスドサウンドレトリバー」も搭載。圧縮フォーマットの音源もCDクオリティ相当で再生できるとしている。

 消費電力は30Wで、スタンバイ時は時計と目覚ましタイマーON時が1W、OFF時が0.5W。外形寸法は420×210×148mm(幅×奥行き×高さ)、重量は5kg。

 会場でiPod touchの再生音を試聴したところ、筐体サイズのイメージを超える力強い低音が印象的。また、女性ボーカルの響きも強力な低音に負けず、心地よく感じられた。また、見た目以上にしっかりとした重量とも相まって、小型製品で心配されるエンクロージャの鳴きも抑えられていた。


付属リモコンデザインコンセプト背面に丸みを持たせたラウンド形状となっている


■ 「ありそうでなかった高音質とデザイン」

 製品化の背景について、ホームエンタテインメントビジネスグループAV事業部 国内営業部 AVマーケティング課の加藤彰久氏はJEITAの統計を元に、「オーディオ機器の市場全体が縮小する中、デジタルオーディオプレーヤーが好調に推移しており、オーディオ市場トータルでのパイは変わらず、音楽を楽しみたいというニーズの量に変化はない」とする一方で、「音を楽しむスタイルの多様化は顕著になっている」と指摘。

ホームエンタテインメントビジネスグループAV事業部の加藤彰久氏

 iPodの登場以降、室内ではコンポやPCで、屋外ではiPodでというスタイルが主流だったのに対し、より大容量のメモリを持つiPodが主流となったことで「iPodが家のパソコンと同等の曲数を持つ“メディア化”している。そこで、屋外だけでなく室内でも手軽にiPodで聴くというニーズが生まれる」と述べる。こうした中で、iPodスピーカーの市場規模が右肩上がりで成長している傾向は今後も続くとの見通しを示した。

 また、加藤氏は「従来のiPodスピーカーはコンパクトで低価格なものが多いが、デザインや音質にこだわったものは今の市場には無い」と言い切る。新製品のデジタル入力対応や、内部でのデジタル処理などの高音質化と、光沢を持たせたデザイン性の高さに触れながら「今までにありそうでなかったiPodスピーカーシステム」と自信を見せた。

 一方、同社AVアンプなど、他の製品でもiPodのデジタル入力対応が進んでいることへの差別化という点では、一体型にすることで他の機器との接続を不要とし、よりカジュアルに高音質が楽しめることを強みとする。また、筐体を2重構造としたことで不要な振動を抑えるなど、「一体型によるデメリットも無くした」としている。

国内オーディオ市場の推移(JEITA統計)iPodスピーカー市場の成長と今後の予測iPodのメモリ容量増加による「メディア化」をスピーカーの成長要因ととらえる


(2009年 10月 15日)

[AV Watch編集部 中林暁]