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音楽が“美味しく聴ける”モニターヘッドフォン、ULTRASONE新境地「Signature FUSION Open Back」を聴く
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2025年4月3日 08:00
“プロ用モニターヘッドフォン”という言葉にグッとくる皆さんこんにちは。私も大好きで、“プロ用なのでパッケージも簡素な白い箱”だったりするとニヤニヤするタイプ。細かい音が聴き取れたり、音色がニュートラルだったり、良いとこは様々あるものの、その一方で、「ゆったりと音楽を楽しみたい」という時には、あまりマッチしないヘッドフォンが多いのも事実。
「モニターらしいサウンドでありつつ、リスニングも楽しめるヘッドフォンがあればいいのに」と思っていたところ、まさにそこを追求した製品が登場した。それが独ULTRASONEの新モデル「Signature FUSION Open Back」だ。
「リスニングにも使えるってことは、10万円とか高価なのでは?」と身構えてしまうが、価格は55,000円と、そこまで高価ではなく、プロ用モニターっぽい価格帯に抑えられているのも注目ポイント。
実際に聴いてみよう。
Signature FUSIONを開放型にしただけのモデル……ではない
Signature FUSION“Open Back”という名前からわかるように、このヘッドフォンはモニター用ながら、ハウジングが開放型になっているのが特徴。
また、“Open Back”という名前なので、当然“Open Backじゃない通常モデル”として密閉型の「Signature FUSION」(44,000円)という製品も昨年登場している。すると「なんだ、Signature FUSIONのハウジングを開放型にしただけか」と思ってしまいがちだが、結論から先にいうと、内部も付属ケーブルも、そしてサウンドも大きく違っており、“まったく別物”と考えて良い。
まず、Signature FUSIONとSignature FUSION Open Back 2機種に共通する特徴から見ていこう。
2機種に共通する特徴
搭載するユニットは、「鮮明でパワフルな低域レスポンスの獲得と全域での高解像度再生を実現した」45mmチタンプレイテッド・マイラードライバー。これは、Signature FUSION開発時に、新たに作られたドライバーだ。
イヤーパッドを外すと、バッフル板の向こう側にドライバーが見えている。板には様々な形状の穴が空いており、そこに不織布のようなものが貼られている。これらを使って、サウンドをチューニングしているのだろう。
注目は、バッフル中央にある石のようなもの。横から見ると、出っ張っていて、黒曜石のようにも見える。これはDDF(Double Deflector Fin)と呼ばれるパーツで、ここに音が当たると、中低域が部分的にマスキングされて指向性を持つようになり、面的な出口分布が変化。ヘッドフォン特有の、頭内定位を緩和し、前方に置いたスピーカーから聴いているかのようなサウンドに変化させるという。
音楽信号に電気的な処理を加えて頭外定位を実現するのではなく、あくまでアコースティックな工夫なのが特徴だ。なお、このDDFは、指向性のある中高域の信号成分は、ほとんど変化させないという。
このDDFや、ユニットの配置など、複数の技術を組み合わせ、自然な音場空間を作り出す技術の総称が「S-Logic 3」であり、ULTRASONE独自技術の代表格だ。
Signature FUSION Open Backの特徴
Signature FUSION Open Backも、搭載しているユニットは同じで、S-Logic 3やDDFも搭載している。
一方で、ハウジングは密閉ではなく、写真を見るとわかるように、幾つものスリットを設けた開放型になった。この開放型化に伴い、開放型用のチューニングを改めて行なったそうだ。
さらに、細部も進化している。
モニターヘッドフォンらしくケーブルが着脱できるのだが、Signature FUSIONのヘッドフォン側コネクタは2.5mm 4極で、バヨネットロック⽅式だった。差し込んでから、少し回してロックするアレだ。
Signature FUSION Open Backではこのコネクタが、3.5mm 4極のスクリューロック式になった。3.5mmになった事で、ケーブルの汎用性も向上したほか、差し込んでからクルクルと回すことで、より強固に固定できるようになった
Open Backに付属するケーブルは以下の3タイプだ。長いケーブルが、Signature FUSIONは2mのカールケーブルだったが、Signature FUSION Open Backは3mストレートケーブルになっている。
- 3mストレートケーブル6.3mmプラグ(ストレート)
- 1.2mストレートケーブル3.5mmプラグ(ストレート)
- 1.4mストレートケーブル4.4mmバランスプラグ(ストレート)
イヤーパッドも変わった。Signature FUSIONはシープスキンレザーだが、Signature FUSION Open Backはスエードタイプのメモリーフォームになった。このイヤーパッドは、内径も大きくなっており、空間表現を向上させるほか、長時間の使用でも疲れにくくなっているそうだ。
実際にSignature FUSIONとSignature FUSION Open Backを着け比べてみると、かなり装着感は違う。
どちらもモニターヘッドフォンらしく、側圧はしっかり目で、ホールド力は高く、首を動かしたくらいではズレる気配もない。
Signature FUSIONはシープスキンレザーなので、肌触りは良好で、耳周りの肌と一体化するような感覚だ。耳周りの密閉度合いは、人によって異なると思うが、筆者の場合は耳の裏側の下の方が、少し浮いてしまう印象だ。
それに対して、Signature FUSION Open Backのイヤーパッドは内径が大きくなり、メモリーフォームになった事で、耳裏側の下部にもピッタリフィットする。素材もスエードで、ラグジュアリー感がある。ザックリ表現すると、“Signature FUSIONはモニターヘッドフォンらしい装着感”、“Signature FUSION Open Backはラグジュアリー寄りの装着感”という印象だ。
インピーダンスは32Ω、再生周波数帯域も8Hz~40kHzと共通だが、出力音圧レベルが少し異なり、Signature FUSION Open Backが98dB、Signature FUSIONが104dBとなっている。
Signature FUSION/Signature FUSION Open Backを聴き比べる
ユニットは同じで、大きな違いはハウジング密閉型か、開放型かという点。まずは密閉のSignature FUSIONから聴いていこう。プレーヤーは、Astell&Kernの「A&ultima SP3000」を使い、4.4mmバランス接続している。
Signature FUSIONで「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を再生すると、モニターヘッドフォンらしく、ハイスピードで軽やかなサウンドが耳に入ってくる。バランスとしては、やや高域寄りで、低域はそれほど強く主張しない。
アコースティックベースの低音は、余分な膨らみが無く、タイトでシャープ。ベースの筐体で増幅された中低域の響きは控えめで、弦がブルブルと震える様子はハッキリと聴き取れる。
ピアノの左手(低音)も、描写が細かく、指運びが脳裏に浮かびそうな解像感だ。低音自体の沈み込みはしっかりと深いのだが、中低域の押し出しが控えめなので、軽やかで、サッパリとした低音だ。
「米津玄師/KICK BACK」は、エレキベースがうなりをあげる激しい楽曲だが、Signature FUSIONで聴くとベースの低音が軽やかでハイスピードに突き抜ける。鈍重な低音ではなく、余分な響きを削ぎ落としたようなソリッドな低音だ。そのため、ベースラインがどう動いているのか、面白いように聴き取れる。
中高域も分解能が高く、ボーカルの口の動きや、歌い出しのブレスも描写が細かい。「こんな音まで入っていたのか」と、気がつく事も多い。
モニターヘッドフォンとしては文句はないが、リスニング用として聴いてみると、1つ気になるのは、高音の質感がドライで、少し硬質に聴こえる事。これは、分解能を追求した結果なのかもしれない。
モニターヘッドフォンとしては、頭内定位はキツくなく、S-Logic 3の効果を感じる。ただ、リスニング用ヘッドフォンと比べると、音像は近く、音場の広がりも限定的だ。
では、Signature FUSION Open Backに切り替えるとどうなるだろう。
密閉型から開放型になるので、聴く前は「さらに低音がタイトになるのかな?」と予想していたのだが、実際に聴いてみると、予想と真逆の音が出てきて驚く。Signature FUSION Open Backの方が、低域がパワフルなのだ。
「月とてもなく」のアコースティックベースも、低音がよりパワフルで、音像も肉厚になる。かといって、響きが余分に増えてボワボワする低音ではなく、タイトさがある。「ズーン」と重く沈む音と、弦が震えるタイトな描写が同居している、非常に美味しい低音だ。
ベースの響きもしっかり味わえるので、目を閉じて、音楽にゆったりと身をまかせたくなる音だ。これぞまさに、リスニングヘッドフォンとしての魅力だろう。
面白いのは、それでいてモニターヘッドフォンとしての精密さ、タイトさは兼ね備えているところだ。音像のフォーカスが甘くなったりはせず、ボーカルのブレスや、ドラムの細かな連打も緻密に描写してくれる。迫力と情報量が、見事にバランスしている。
中高域の音色が、よりナチュラルなのも気に入った。Signature FUSIONにあった、乾いた感じがSignature FUSION Open Backには無く、人の声の艶っぽさ、ベースの木の響きなどが、ホッとする暖かな質感で描写される。
「米津玄師/KICK BACK」も最高だ。刻み込むようにベースラインをタイトに描写しつつ、ドラムの低音は音圧・量感強めでズシズシと胸に迫ってくる。「やっぱりロックは低音の量感が無いとなぁ」と唸ってしまう。
クラシックのヴァイオリンも聴いてみたが、これも良い。「ヒラリー・ハーン/J.S.Bach: Violin Concertos 第1楽章: Allegro」を再生したが、質感描写がナチュラルなので、ヴァイオリンの音にも気品があり、楽器が安っぽく聴こえない。音場も適度に広いため、ヴァイオリンの響きが、空間に広がる様子も見える。
モニターヘッドフォンでパワフルな中低音を再生すると、音場が狭く、閉塞感が強くなりそうなものだが、Signature FUSION Open Backは開放型にする事で、それを防いでいるようだ。
ただ、開放型と言っても、例えばゼンハイザーやオーディオテクニカなどの開放型ヘッドフォンの音を想像していると、Signature FUSION Open Backの音は傾向が異なる。ハウジングの存在が無くなったように、どこまでも音が広がる……というタイプではなく、“モニターヘッドフォンとしては音の広がりがしっかりあり、閉塞感を感じにくい”というレベル。個人的には“セミオープン”くらいの音場だと感じる。
ただ、Signature FUSION Open Backの場合は、それによって低音のパワフルさ、量感の豊かさを獲得しているとも言えるので、これはこれで、音作りとして大いにアリだ。
まさに“リスニング用として音楽を美味しく味わう事のできるモニターヘッドフォン”を実現して見せたのが、Signature FUSION Open Backだ。
Signature PURE WHITE
同じSignatureシリーズでもう1つ、注目モデルが登場したので、最後にこちらも聴いてみよう。「Signature PURE WHITE」で、価格は33,000円と、前述の2モデルよりも手に取りやすい価格だ。
モデル名からわかるように、密閉型のエントリーモニターヘッドフォン「Signature PURE」がベースで、色味がウィンターカラーになった限定モデルがSignature PURE WHITEだ。
面白いのは、単なる色違いではなく、細かな仕様が進化しているところ。具体的には、ヘッドフォン側コネクターが3.5mm 4極スクリューロックになっているほか、イヤーパッドも刷新。内径を拡大した、スエードタイプのメモリーフォームになっている。Signature FUSION Open Backの進化点と、ほぼ同じというわけだ。
エントリーモデルだが、Signature PURE WHITEには50mmと大口径のマイラードライバーを採用しているほか、前述のS-Logic 3テクノロジーも搭載しており、ULTRASONEの醍醐味が味わえるモデルとなっている。
A&ultima SP3000と4.4mmでバランス接続して音を聴いてみたが、エントリーモデルと侮れない、かなりクオリティの高い音がする。
ハウジングは密閉型だが、サウンドの傾向はSignature FUSION Open Backに近い。音色はニュートラルで、分化能は高く、「月とてもなく」のボーカルも、クリアかつ細やかに描写してくれる。
低域の量感は控えめで、全体としては高域よりのバランスではある。ただ、タイトではあるが、低い音自体はしっかりと沈み込み深く出ており、ベースラインも聴き取りやすい。モニターとしても活躍してくれそうだ。
面白いのは、密閉型なのに非常に開放的なサウンドである事。音場が狭く感じたり、息苦しさがまったくない。これ開放型だっけ?と頭から外して再確認してしまったくらいだ。これならば、音楽鑑賞やDTMだけでなく、映画鑑賞やゲームに使うというのも良さそうだ。