樋口真嗣の地獄の怪光線
第38回
Netflix「新幹線大爆破」はドルビーアトモス大実験作品だヒャッハー!
2025年4月3日 08:00
思い返そうとしてなかなか思い出せないのは耄碌(もうろく)が始まってるのではないかと心配になりますが、初めてアトモスを観たというか聞いたのは千葉の海沿いのシネコンだったような記憶があります。ららぽーと船橋だったような……あの頃は都心よりも東京の東側の方がエッジに立った物件がいっぱいあったんだよねえ……うーん。あった。
さすがAVウォッチ!あの日あの時何があったのかをこうやって検索すると出てくるの超便利!
もはやナショナルライブラリの風格ですナ。
この記事から紐解くと2013年11月にららぽーと船橋、12月には幕張新都心のイオンシネマに導入されました。
確かに船橋までJ・J・エイブラムス版の「スタートレック」の2作目「イントゥ・ダークネス」を観に行ってサンフランシスコの街に墜落する敵の宇宙戦艦ブラック・エンタープライズ(勝手に命名)の轟音が真上から滝のように襲いかかるのに大興奮したのを覚えてます。
その翌年には家庭用のドルビーアトモスが発表され、アトモス対応のブルーレイが次々に発売されます。それからもう干支がひとまわりしちゃうほどの年月が経ち、国内二件目だった幕張イオンシネマ(の8番スクリーン)は一昨年に商売敵のIMAXシアターに改装されてしまいました。
その間ドルビーも黙って手を拱いて見てた訳ではありません。IMAXに対抗するように音だけでなく絵のクオリティも格段に上がったドルビーシネマが登場し、対応する劇場が日本中に広まります。
この規格の音声トラックはもちろん標準でドルビーアトモスになってるんだけど、そのせいでむしろドルビーアトモス“だけ”の上映環境がどっちつかずになってしまった感があります。どうせ見るならドルビーシネマになっちゃうよねえ……まあそれほどまでにドルビーシネマが素晴らしかったとも言えるんだけど、家庭で体験できるドルビーアトモスの凄さってどのぐらい伝わっているんでしょうか?
というか、すごいんだよもう。
小さいスピーカーいっぱい配置した分の音の包囲感……大きな音が鳴っているのとは違う、劇中の環境に身を置いた感じ。点から音が鳴っているのではなく、空間が音で満たされるような――
最初の頃から環境を整えて対応作品も揃えてきたから、事務所に来たみんなには迷惑承知で浴びてもらってるけどみんな笑いながら音のする方を見回すわけですよ。
IMAXのオープニングデモでやってる「ここから」「そしてここから」、ドルビーならファンタジーものに出てきそうな幼い女の子が「私の秘密が知りたい?」とサラウンドスピーカーへ回した声が聞こえるやつですな。
ただ、その時点で明らかになってるんだけど音のする方見てもそっちに画はない訳で、本来望むべき画面への集中はその時点でなくなってる。まあ技術者にありがちな慎重に均質化されたものこそ美しいという美意識からするとそんなのは邪道な訳ですよ。でもその邪道こそ蜜の味。
くたばれ常識!ぶっ壊せマニュアル!俺たちは自由の旗の下に集ったバンディッツ!ヒャッハー!
すいません還暦迎える爺さんが若者気取りでハシャいだところでミットモナイだけでございます。
とにかく常識を超えたとこまで一度やっちまいましょう!と今回は音楽だけでなくサウンドスーパーバイザーとして音響面を統括して全部見てもらうことになった楽聖・岩崎太整大師と企みました。
「竜とそばかす姫」で主人公の歌とセリフをシームレスに繋ぐためにアフレコで録ったセリフを歌をミックスするエンジニアによって“整音”した成果を活かして、全てのセリフをトリートメントしてもらいました。
爆弾が仕掛けられたことが発覚する前から修学旅行の高校生がわちゃわちゃしてたり、数十人の職員が運行管理している総合指令所とか、まあとんでもない数の音声クリップが配置されていてその交通整理だけでも地獄絵図。それを360度の空間に散らすことで両立が図れるのではないかという実験です。どっちかしか聞かせられないよ、ではなく両方聞かせたい!という願いを果たして叶えてくれるのかドルビーアトモスよ!
答えは4月23日、その前に視聴環境を整えましょう!そのためには何が良いのか?
やっとAV Watchらしくなったところで次回へ続く!