エソテリック、タンノイ最高峰スピーカー「Kingdom Royal」
-300mm径同軸ユニット含む4ウェイフロア型。約288万円
エソテリックは、英TANNOY(タンノイ)の最高峰スピーカー「Kingdom Royal」を8月上旬に発売する。価格は1台288万7,500円。
'96年にタンノイ70周年記念として登場した「Kingdom」の正統な系譜に連なるという4ウェイフロア型スピーカー。80周年にあたる2006年から4年間の製品開発により、「設計の全てに妥協を排して開発された」としている。
300㎜径の同軸2ウェイユニット(75㎜径ツイータと52㎜径ボイスコイルのミッドレンジ)と、25mm径のスーパーツイータ、380㎜径サブウーファで構成。4ウェイ3ドライバとなる。いずれのユニットも、このモデルのために新規設計されている。エンクロージャは、同軸ユニット部とスーパーツイータ部が密閉型、サブウーファがバスレフ型。
4ウェイユニットを搭載 |
同軸2ウェイユニット部は、タンノイ独自の「デュアルコンセントリック」方式により、ツイータとミッドレンジを点音源に限りなく近づけ、正確な定位感を実現。ミッドレンジは軽量/高剛性のマルチファイバー・ペーパーコーンを採用し、精密なエッジ巻きボイスコイルと大型フェライトマグネットを搭載。低域~中低域にかけて優れたトランジェント特性を獲得したという。
ツイータ部は焼き戻しされたアルミ合金の振動板とウェーブガイド、1.5㎏の重量級フェライト磁気回路を組み合わせたコンプレッションホーンドライバとなっており、大口径化により700Hzまで再生帯域を拡張、スムーズでリアルなボーカル再生や、細部のニュアンスまでの正確な再現を可能にしたとしている。ツイータの振動板は合金の組成と熱処理を変えながら試聴を繰り返し、数カ月にわたる開発で完成。銅クラッド・アルミボイスコイルと組み合わせ、DCT(ディープ・クライオジェニック処理)を施している。このDCTにより振動板素材の結晶境界面における残留ストレスを軽減、よりナチュラルな表現力を得たという。
スーパーツイータの振動板には、高い内部損失と低カラーレーション、61kHzまでフラットな周波数特性を持つというマグネシウム合金を採用。極薄のセラミック層をコーティングし、プラズマ加工でボイスコイルを溶着させることで接合部の加工精度を高めている。また、ネオジウムマグネットの磁気回路と背面の吸音キャビティとの組み合わせにより、高い能率やリニアリティなどを実現している。
サブウーファはマルチファイバー・ペーパーコーンを採用し、磁気回路にはフェライトマグネットを搭載。ボイスコイルは、ギャップ全長をボイスコイル全長よりも長く取るアンダーハング・ボイスコイルを採用し、過酷なピストンモーションでもボイスコイルへの磁力を均一化、低域における高いリニアリティと制動力を持つという。サブウーファ部はバスレフ型の専用コンパートメントに収納されており、理想的なドライバのサスペンションとダンピング特性が得られるよう、容積が最適化されている。背面のバスレフポートは15Hzにチューニングされている。
クロスオーバーネットワーク部は、音質面で最適な回路レイアウトを追求した結果、HF/LFそれぞれのネットワークを別のボードに配置。タンノイ史上最も大型のボードになったという。各ネットワークボードを2段積み重ねた「ダブルデッキ構造」で、ボードをラバーサスペンションと真鍮製の支柱を組み合わせてエンクロージャ底部からフローティングさせ、振動の影響を防ぐ「フリーフローティングマウントシステム」を採用。
各回路は銀入りハンダと6N(99.9999%)PCOCC配線を用いたハードワイヤリング仕様。スーパーツイータの配線には4N(99.997%)の銀単線が使用され、透明度の高い高域再生を可能にしたという。各回路部品のマウントには独自のDMT(Differential Material Technology/素材差動技術)防振コンパウンドを使用。また、DCTも施し、各部品/導体のクリスタルレベルでのストレスを軽減するとしている。
各ネットワークには、内部共振が低く、自己ダンピング特性に優れた英ICW製のClarityCap MRポリプロピレンコンデンサを採用。低損失のラミネートコア・インダクターコイルに加え、ヒートシンクにマウントされた低誘導厚膜抵抗の採用で、微細レベルのダイナミクス向上と、温度変化による音質劣化に対応するという。また、同軸ユニットのツイータ―部のインピーダンスマッチングには、カスタム仕様のオートトランスを採用し、信号劣化を防いでいる。ツイータとスーパーツイータのエナジーレベルの調整は、フロントバッフル部に配置した低損失ハイカレントスイッチにより3dBステップで切り替えられる。
エンクロージャも新設計で、HDF(High-Density Fiberboard)の削り出し加工と、バーチ(樺)材を組み合わせている。バーチ材は寒冷地域で育った高密度で音響特性に優れたものを使用している。HDFの堅牢な構造体と、それを囲むバーチ材積層合板によるサイド/バックパネルは、タンノイのDMT防振材を介してブレーシング(添木)処理で結合され、大型エンクロージャでは想像できないほど高い剛性を誇るという。
サイド/バックパネルにはウォルナット突き板を使用し、ハイグロス・ピアノラッカー仕上げ。ツヤ消し同軸ユニット部のフレームには天然イタリアンレザーを配し、ゴールドのトリミングを施している。スピーカーグリルはバー・ウォルナットをあしらったクロス編み。
背面 | 側面 | スピーカーグリル装着時 |
スーパーツイータ部のエンクロージャはHDF材を削り出した密閉型。音響的な干渉を考慮し、メインのエンクロージャから分離。前面パネル素材にはソフトイタリアンレザーを採用している。
エンクロージャ底面には移動用のキャスターを設けており、リスニングポジション確定後は、ゴールドアノダイズ処理されたアルミ製コーンフットで本体を3点支持。リアパネルにはWBT製のスピーカー端子をタンノイ独自の5ターミナルデザインで配置。バイワイヤ接続/バイアンプ駆動が可能となっている。5つのターミナルの中央はアース端子となっており、手持ちのアンプのシャーシアースを利用したアース接続も可能となっている。
HFエナジーレベル調整ピンとスーパーツイータ用グリルはそれぞれ予備を1セット付属し、6N銅のジャンパーケーブルも同梱。これらは高級木製ケースに入っている。
ユニット | 25mm径スーパーツイータ 75mm径ツイータ 300mm径ミッドレンジ 380mm径サブウーファ |
エンクロージャ形式 | 密閉型(同軸ユニット部、スーパーツイータ部) バスレフ(サブウーファ部) |
連続許容入力 | 300W |
最大許容入力 | 1,200W |
能率 | 96dB(2.83V/1m) |
インピーダンス | 8Ω |
周波数特性 | 24Hz~61kHz(-6dB) |
クロスオーバー周波数 | 120Hz (サブウーファ~ミッドレンジ) 700Hz(ミッドレンジ~ツイータ) 17kHz(ツイーター~スーパーツイータ) |
外形寸法 (幅×奥行き×高さ) | 585×600×1,275mm |
重量 | 約120kg |
(2010年 7月 27日)
[AV Watch編集部 中林暁]