秋のヘッドホン祭 2010【zionote/音響少女イベント他編】

-国産・低価格のカスタムイヤフォン。モモーイも来場


 10月30日に外苑前の「スタジアムプレイス青山」で開催された「秋のヘッドホン祭 2010」。ここではzionoteやラトックなどのブースを紹介する。


■ zionote

 zionoteのブースではユニークな製品を多数展示。韓国メーカー、Smart-audioのUSB DACは、何かのエンジンのような独特のデザインが特徴。前面に設けた傾斜に、iPodやiPadなどを立てかける事ができるが、Dock端子は備えていない。

 PC接続用のUSB入力(24bit/96kHzまで対応)、光デジタル入力、AUX入力を備え、DACとヘッドフォンアンプを内蔵。PCのそばに置いてアナログ出力とアクティブスピーカーを繋いだり、ヘッドフォンをドライブするといった製品で、発売日や価格は未定。「5万円以下で販売したい」という。

エンジンのような不思議なデザインのUSBオーディオ前面の突起にiPodやiPhoneなどを立てかける事ができる背面。USB入力やアナログ音声出力、光デジタル出力を備えている

 DigiFiのOperaブランドの新製品は「Opera SILKROAD」というiPod/iPad用のDockスタンド。PCとUSB接続することで、同期ができるiPodスタンドとして使えるほか、前面にカードリーダも装備。カード内のデータをiPadなどで読み込む事もできるという。さらに、無線LANアクセスポイント機能も内蔵。旅行先のホテルなどで、LANケーブルとOpera SILKROADを接続すると、無線LANアクセスポイントとなり、ホテルの部屋の中でiPadを無線LAN接続して快適に使用できるという。15,000円程度で発売予定。

「Opera SILKROAD」iPadを搭載したところ。前面にマルチカードリーダを備えている背面。Ethernet端子を備え、無線LAN用のアンテナ端子も備えている

 また、DigiFiの製品ではないが、Kleerの非圧縮で16bit/44.1kHzの無線伝送に対応した、メスピン型のワイヤレスレシーバも参考展示。Kleerの送信機をiPodのDock端子に接続し、再生音をレシーバに無線伝送するのだが、レシーバ部分をDock搭載のiPodスピーカーに接続する事で、Kleer非対応のスピーカーも、ワイヤレススピーカーとして使えるようになるというものだという。

 Styleaudioの新製品も参考展示。PCとのUSB接続が可能な小型ヘッドフォンアンプ「CARAT-TOPAZ Signature」で、光デジタル入力やアナログ音声出力(RCA)も装備。SAPPHIREに搭載されているDACや、DDコンバータ「TII」の回路などを取り入れたハイエンドモデルと位置付けられているが、「CARAT-SAPPHIRE」よりは低価格になる予定。11月に発表・発売予定。

右にあるのがメスピンを採用したKleerのレシーバStyleaudioの新製品「CARAT-TOPAZ Signature」背面。アナログ出力と光デジタル入力などを備えている

 また、秋葉原のPCショップ・オリオスペックと共同で開発しているという、オーディオ用PCの最新試作機を今回も展示。楽器にも使われるローズウッドを側板に使い、内部パーツのレイアウトを工夫。振動や輻射ノイズなどを低減したという。各種高音質化パーツも投入予定で、ファンレスになるかどうかは未定。価格は「20万円を切りたい」という。

オリオスペックと共同で開発しているというオーディオ用PC底面。大型インシュレータを使っているのがわかる内部。光学ドライブを下部に配置している



■ ラトック

 ラトックブースでは、12月上旬発売のUSBオーディオトランスポート「RAL-24192UT1」(75,600円)を中心に展示。USB Audioの高速規格「USB Audio Class 2.0」に対応することで、24bit/192kHz音源にも対応したのが特徴。

 Windows PCでは、付属するWindows XP/Vista/7対応ドライバ(32/64bit両対応)をインストールすることで、USBオーディオデバイスとして認識され、iTunesやMediaPlayer、foobar2000などのソフトを用いて音楽再生が可能。Mac OS X 10.6以降の場合は、USB Audio Class 2.0ドライバが含まれているので、接続するだけで自動的にインストールされ、使用できる。

USBオーディオトランスポート「RAL-24192UT1」内部基板

 2個の独立した±25ppmの高精度水晶発振モジュール(22.5792MHz、24.576MHz)を搭載。パケットのデータ数からクロックを作成するのではなく、オーディオ専用クロックを基準としてアシンクロナスモードで動作することで、ジッタを低減。PCや外部機器からのノイズの影響を排除するため、コモンモードフィルタと静電破壊防止回路を実装している。

 また、24bit/96kHzまで対応の「RAL-2496UT1」とDACが異なり、旭化成のものから、ウォルフソンの「WM8523」になり、USBコントローラーも「TAS1020B」から、XMOS製のものになっている。

 さらに、参考展示としてヘッドフォンアンプの組み立てキット新モデルと、USBオーディオ機器で使用できるオーディオ用電源も紹介されていた。2011年前半の発売を予定。さらに、来年春~夏にかけては、ネットワークオーディオプレーヤーの投入も検討しているという。

一番右がヘッドフォンアンプの組み立てキット。中央がUSBオーディオ用電源背面



■ カナルワークス

 耳型をとって製作するカスタムインイヤーモニターは、海外の製品が多く、英語でメールをやりとりするなどの作業が必要になり、価格も含めてハードルが高いと感じる要因にもなっている。

 そんな中、国内メーカーでカスタムインイヤーモニターを手掛けるカナルワークスが登場。10月30日からモニター販売を開始している。モニター期間として納期が遅れる可能性があったり、簡単なアンケートに答える必要などがあるが、69,800円~と、カスタム製品としては低価格になっているのが特徴。ユニットはバランスドアーマチュアで、2ウェイの3ドライバー構成となっている。

カナルワークスのカスタムインイヤーモニターハードケースも付属する柔軟なカスタマイズが可能だ

 豊富なフェイスプレートやカラーを用意し、好みに合わせて指定できるのもカスタムならでは。中には萌えキャラのプリントアートワークも用意されている。日本のメーカーという強みを活かし、音質だけでなく、カスタマイズ指定のしやすさや、製品をやりとりする際の送料が安い事、購入後のサポートの安心感なども訴求していくという。




■ Soundgirl duoのイベントも

 美少女イラストを取り入れた萌えオーディオ読本「サウンドガール デュオ ~音響少女~ Soundgirl duo」(1,890円)を11月30日に発売する白夜書房のブースでは、ゲストとして声優・歌手・クリエーターの桃井はるこさんを招いてのトークイベントを開催。多くのファンが集まった。

 フォステクスとコラボレーションし、オリジナルヘッドフォン「mh256」を制作するなど、ヘッドフォンとの関係も深い桃井さん。会場ではフォステクスの開発者・山口さんと共に、開発秘話を披露。 山口さんは、「mh256」の開発にあたり、企画を通す段階から「(桃井さんを知らない社内の人にも、彼女の影響力などをわかりやすく伝えるために)秋葉原や萌え産業の盛り上がりなどを交えた資料を用意した」などの苦労話を披露。

 その結果、「mh256」は桃井さんのファンだけでなく、それ以外の人にも音質の良さなどが受け入れられ、好調なセールスを記録したという。逆に桃井さんは「mh256」の反響を通じて、「私のファンにも、ヘッドフォンとかオーディオが好きな人が沢山いると言う事が、今回よくわかった」と言う。

フォステクスの山口さんと、桃井さんがトークイベント「Soundgirl duo」の著者、岩井さんとのヘッドフォン聴き比べコーナーも何度も繰り返し聴いている自身の楽曲で高級ヘッドフォンを試聴した桃井さん

 さらに、「Soundgirl duo」の著者である、録音エンジニア&オーディオライターの岩井喬さんも参加し、桃井さんが各社のハイエンドヘッドフォンを聴き比べるという企画も実施。試聴機としてbeyerdynamicの「T1」、ゼンハイザーの「HD800」、ULTRASONEの「edition10」が用意された。

 いずれも10万円を超える高級モデルで、桃井さんは各モデルの値段に驚きつつも、岩井さん自身の楽曲でこれらのヘッドフォンを試聴。こうした高級ヘッドフォンの試聴は初めてという事だが、流石はアーティストの耳、「ハイハットやスネアの聞こえ方がスタジオモニターと同じ」、「家のコンポでは聞こえなかった音がしっかり聴き取れる」。「T1はニュートラルな音で、HD800はどちらかというとダイナミックなバランス」など、各モデルの特徴を的確に指摘。ハイエンドモデルの繊細な描写に触れ、ヘッドフォンの新たな魅力を堪能していた。




■ その他

セカンドスタッフのブースには、AUDEZ'Eのヘッドフォンを展示。バランス接続の「LCD-2(Balanced)」と、アンバランスケーブルが付属する「LCD-2」(SingleEnd)を用意。価格は12~13万円程度。平面磁界・前面駆動方式を採用するのが特徴で、完全受注生産となっているこちらもセカンドスタッフブース。上がコンパクトなバランス駆動対応ヘッドフォンアンプ「BLO-0169」(58,800円)。下は参考展示の専用パワーサプライ「BLOSSOM PSU」USB DAC「HD-7A」が人気のフェーズテックブースでは、ヘッドフォンアンプの試作機が参考展示された。ダンピングファクターコントロール機能を備えるのが特徴で、音の変化が楽しめる。来年3月頃の発売を予定しており、価格は10万円程度になる予定
ポーカロラインのブースでは、奥行きが短い筐体を採用したtangentの新コンポを紹介。店頭予想価格はプリメインアンプの「EXEO-AMP」が65,000円前後、CDプレーヤーの「EXEO-CDP」が45,000円前後AKGのクインシー・ジョーンズとコラボレーションした「Quincy Jones Signature Line」も一堂に展示された。詳細は既報の通り
11月25日より発売する、ORBのUSB DACとヘッドフォンアンプ+USBメモリプレーヤー、JADE-1(98,700円)とJADE-2(131,250円)今回のイベントでは初参加となる、ソニーとビクターもブースを構え、現行ラインナップを用意。多くの来場者が試聴していた

(2010年 11月 1日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]