BCN、エコポイント後に来る「テレビの次」の需要を予測

-シェア逆転で「'10年のiPodは失敗か?」


BCNの道越一郎アナリスト

 BCNは、2010年12月以降のエコポイント減額により“薄型テレビ特需”の終わりが見込まれることから、その後のトレンドとなる製品について分析結果を13日に発表した。

 この市場分析は、家電量販店など全国23社、2,357店舗(2010年12月現在)のPOSデータを集計したBCNのデータをもとに行なっている。なお、Amazonなどを中心としたネット店舗のデータも加味した形で前年同月比などを算出。発表データ内の金額は全て税抜きとなる。



■ 録画対応テレビは3割、3Dテレビは40型以上で23%台に

BCN指数は、エコポイント特需の11月に前年比2倍以上まで上昇

 BCNの道越一郎アナリストは、2011年のトレンドとして、薄型テレビの売上増に伴い、ラック型オーディオや、録画用USB HDDといったテレビ周辺機器と、新たに市場が立ち上がったスマートフォンやタブレット/電子書籍などの端末の伸びに大きな期待を示す。

 デジタル家電製品のBCN指数(116品目の実売データから、全商品の平均販売単価と販売金額の前年同月比をまとめたもの)を見ると、エコポイント減額を目前にした2010年11月駆け込み需要によるピーク時は、前年同月比2倍以上(金額ベースで213%)まで拡大。その前の4月にも、エコポイント基準変更を前にした需要が生じ、金額で138.9%まで伸びている。

 こうした駆け込み需要の反動により、2010年12月は販売金額/台数とも大幅に落ち込んでいるが、道越氏は過去3年間の実績をもとに、「台数ベースでは、エコポイント前の'08年の水準に戻っただけ」と前向き。特に11月~12月にわたり好調だったのは20型未満の小型テレビで、画面サイズ別の単価を見ると、11月~12月にかけて大型モデルが軒並み下落している一方、20型未満に限っては上昇している。これは主力の30~40型台などが品薄になって、在庫のある小型モデルが相対的に増えたことも要因ながら、「12月に20型未満が17%、というのは今までに無い数字。サブテレビの需要が顕在化している」と指摘した。

 メーカー別の販売台数シェアではシャープが依然首位だが、8月以降は下落傾向にある。「11月以降は、(在庫を切らさずに)製品がどれだけ市場に出せたかがメーカーシェアに影響している」とした。また、薄型テレビ全体の平均画面サイズと平均消費電力も12月に大きく下落しているが、これも小型モデルの割合が増えたことによるもので「1月~2月には、2010年10月ごろの水準に戻るだろう」と予測している。

テレビの販売金額構成比薄型テレビの販売台数、金額の前年同月比と平均単価台数ベースでは「エコポイント前の水準に戻っただけ」だという
画面サイズ別の台数/金額の推移小型モデルの増加により、全体の平均単価は下落メーカーシェア

 別売USB HDDや内蔵HDDなどへの録画機能付きテレビの割合は、薄型テレビ全体の3割を維持。構成比でみると、2010年12月は別売HDD利用のみのモデルが47.2%で最も多く、HDD/BD搭載モデル(BDXL対応モデル含む)が21.9%、HDD搭載モデルが12.8%、BDのみは9.5%となっている。

 3D対応テレビ(3Dメガネ同梱/別売モデル合計)は、2010年12月時点で40型以上で23.1%となった。そのうち、メガネなどが別売のモデルは15.5%、付属するモデルは7.6%となっている。薄型テレビの12月の販売台数全体に占める割合でも5%を突破した。50型台では3割、60型台では68%が3D対応モデルだという。

録画機能付きテレビの台数比率や、タイプ別構成比3Dテレビの販売台数構成比/平均単価(40型以上)エコポイントと直接は関係しないが、単体デジタルチューナも11月まで大きく伸長。3波対応モデルの割合が徐々に拡大している。売れ筋は5,000円~1万円


■ テレビの次に期待される周辺機器、スマートフォンなど

レコーダの販売台数/金額の推移

 テレビの売上増に伴い、期待されるのがレコーダやオーディオなどの周辺機器。レコーダ売上は金額/数量とも2010年11月にテレビと同じく最大の伸びを示し、12月には下落したが、単価下落は比較的なだらかになった。これはBDXL対応が大きく貢献していると見られ、BDXL対応モデルは12月時点で金額/台数ともに過半数を占めている。メーカー別シェアでは、12月はパナソニック、ソニー、シャープの順となり、東芝もこれら3強に大きく接近する結果となった。

 今やテレビの周辺機器の一つといえる録画用の外付けHDDは、2010年11月に台数ベースで186.9%まで上昇。12月は落ち込んだものの、前年比ではプラスを維持している。インターフェイス別の割合は、12月はUSBが89.9%、iVDRが4.1%、Ethernetが3.5%、Ethernet + USB両対応が1.2%となった。

 テレビ周辺に置くスピーカーなどのサラウンドシステムは、テレビラックにスピーカーを内蔵したタイプと、単体システムを比較すると、テレビと同時に売れる傾向があるラック型は11月に大きく伸び、平均単価も上昇。12月にはその反動で売上は減少した。一方、単体サラウンドシステムは12月も大きな落ち込みは無かった。

 デジタルビデオカメラは、台数は大きく伸びたものの、金額は過去3年で最低レベル。依然として単価は減少傾向にある。特徴を見ると、全体の9割以上がフルHDに対応したほか、本体の軽量化も進んでおり、「以前は300gが主流だったが、女性層を狙って200~300g未満が増えている」という。

レコーダの過去3年間の販売台数/金額と、平均単価内蔵HDDは500GB台が主流にレコーダのメーカー別シェア。東芝が3強に迫っている
外付けHDDのタイプ別構成比、メーカーシェアサラウンドシステムの過去3年間の販売台数/金額などデジタルビデオカメラの販売台数/金額の推移
デジタルカメラの販売台数/金額の推移フルHD動画対応モデルが急拡大している


■ 「’10年のiPodは失敗か?」。スマートフォンは携帯の半数に

 ウォークマンやiPodなどの「携帯オーディオ」は、2010年12月は前年比微増となったが、単価に大きな変動は無く、「市場は足踏み状態」とする。

 2010年は、ソニーのウォークマン売上台数が8月や12月にアップルのiPodを抜いて首位になったことが話題となったが、アップルは9月以降の落ち込みが激しかったことから、「もしかすると'10年新製品は失敗だったのでは」と指摘。シリーズ別に見ると、ウォークマンSシリーズが、これまでトップだったnanoを10月から上回り続けている。

 金額シェアでは依然アップルがソニーを上回っているが、12月時点ではアップル52.6%、ソニー45.7%とその差が縮まっている。平均単価は、アップルの主力製品がnanoからtouchに移行していることに伴い上昇。一方でソニーも単価に大きな下落は無く、これまでの「低価格の製品でソニーが伸びている」という図式が変わりつつあるという。

ポータブルオーディオの販売台数/金額の推移アップルの販売台数/金額の推移アップルは主力製品のスイッチで単価を維持している
ソニーの販売台数/金額の推移8月に続き、12月も台数シェアでソニーがアップルを上回った。金額はアップルが首位を維持しているがその差は縮まっているシリーズ別の販売台数/平均単価

 スマートフォンは、2010年12月に市場が急激に拡大し、販売台数で携帯電話の約半分(48.1%)となった。'08年7月を1とする指数でみると、スマートフォン本体は6.84、ケースなどのアクセサリは11.39まで伸びている。キャリア別では、NTTドコモが55.0%、ソフトバンクが25.6%、auが17.0%、イー・モバイルが2.1%となっている。OS別で見ると、Androidが78.2%まで大きく上昇。iOSは21.1%だった。

 また、キャリア別にスマートフォンの販売台数構成比を見ると、割合が高い順にソフトバンク(69.8%)、ドコモ(49.8%)、au(29.7%)となっている。各社の主な人気機種は、ソフトバンクがiPhone 4で82.2%、続いてGALAPAGOS 003SHで15.3%となっている。ドコモはGALAXY Sが35.8%、LYNX 3D SH-03Cが30.7%、REGZA Phone T-01Cが20.5%。GALAXY Tabが7.3%、Xperiaが4.5%。auはIS03が94%を占めている。

スマートフォン市場は2010年12月に急拡大OS別の構成比キャリア別の販売台数構成比
タブレット型端末(同社は「スレート型」として集計)は、iPadが発売された2010年5月より数値に表れているが、「ノートPCの市場を食っているわけではなく、単独で市場が立ち上がっている」(BCNの森アナリスト)というiPadが通年で9割以上のシェアを維持したが、11月にオンキヨーが4.6%、12月に5%まで伸びた


(2011年 1月 13日)

[AV Watch編集部 中林暁]