J:COMとJCNを統合し、住友商事/KDDIが共同運営へ

CATVシェア50%を超える新J:COMへ。KDDIが連結


KDDI 高橋誠 代表取締役 執行役員専務(左)、住友商事 大澤善雄 代表取締役 専務執行役員(右)

 住友商事とKDDIは24日、CATV業界一位のジュピターテレコム(J:COM)を共同運営することで株主間契約を締結した。2013年2月上旬より公開買付け(TOB)を行ない、両社がJ:COMの株式を折半で保有し、両社による共同運営体制を構築する。また、2013年夏を目処にJ:COMを非上場化するとともに、'13年秋にはKDDI傘下のCATV統括運営会社ジャパンケーブルネット(JCN)をJ:COMと経営統合し、新J:COMはKDDIの連結子会社とする。

 J:COMは、運営会社16社51局、総加入世帯369万、シェア41%を誇るケーブルテレビ事業と、17の専門チャンネルを運営する番組供給事業統括などを手がける日本最大のケーブルテレビMSO(Multiple System Operator)。これまでも、J:COM発行済株式の39.98%を住友商事が、30.71%をKDDIが保有していたものの、TOBにより両社が50%ずつ出資して共同運営する体制へ移行する。これにともない、KDDI傘下で業界2位のJCNとJ:COMを統合し、全国480万の総加入世帯、シェア50%まで拡張。より効率的なCATV運営体制への移行を目指すとする。


合意内容TOBの概要今後のスケジュール

 共同運営化の目的については、「成熟市場となる日本のCATV業界における持続的成長と、企業価値向上を目指すもの」と説明。衛星や通信回線を用いた多チャンネルサービスや、VODなどのサービス多様化、タブレット/スマートフォンなどのデバイスの拡大など、CATVを取り巻く競争環境が激化する中で、住友商事とKDDIの経営資源を積極的に投下し、経営スピードの強化を図る。

共同運営化の目的統合会社の概要

 住友商事では、J:COMの深耕とともに、J:COMの事業基盤を活用した地域密着サービスや生活支援サービス、スマートハウス事業などの新規事業開拓を図る。また、商社ならではのネットワークを活用した海外メディア連携や、新事業開発、J:COMのノウハウを活かしたアジアのメディア事業進出などを目論む。

 KDDIは、マルチユース、マルチネットワーク、マルチデバイスを「au ID」でつなぐ「3M戦略」の一環として、J:COM/JCNの固定回線ネットワークに着目。固定回線とauスマートフォンの利用料のセット割引である「auスマートバリュー」は、全国のCATVの事業者98社178局と提携。「提携事業者からの申し込みが約38%まで高まっている(KDDI 代表取締役 執行役員専務 高橋誠氏)」とのことで、CATVの加入増にも寄与しているとする。固定/モバイルの連携とともに、KDDIが開発を進めているAndroid 4.0ベースのSTB「Smart TV Box」などの導入を進め、「放送を真ん中に据えながら、通信を連携させていく仕組みを作っていく」とした。

全国のCATVでauスマートバリューを拡販KDDIの3M戦略を進化

 住友商事、KDDI、J:COMの3社は、2010年6月にアライアンス関係構築の覚書を締結しており、以来運営体制などについて協議してきたことが、今回の共同運営につながったとする。特にCATVエリアにおいては、「J:COMのエリアの隣にJCNがあり、相互に接続すればより効率的になるのは明らか。もう少し効率の良い経営ができないかと、特に昨年末から検討を進めてきた」(住友商事 大澤善雄 専務執行役員)とする。

 また、住友商事の今後の展開としては、J:COMのノウハウや資産を活かした海外展開も検討。「新興国のメディア、テレビは沸騰しており、30年ぐらい前の活気のあった日本の民放の前夜のような時期。それが東南アジアのテレビ、メディアで起きている。J:COMとして海外に手をだすのは早すぎると思うが、そういう道を付けないといけないかな、と思っている」と説明。「日本のマーケットは、個人消費で135兆円と巨大だが、少子高齢化、人口減は間違いなくやってくる。われわれのビジネスも10~20年先の不安はある。将来を考えた長期視点で海外に道をつけるべきだろう」とした。

 CATV用STBの今後については、JCNでのSmart TV BOX採用が決まっているが、J:COMではまだ導入決定していない。JCN/J:COMのSTB一本化については、「JCNの採用もラインナップの一つ。いろいろなターゲットに向けたSTBを揃えていきたいし、そのラインナップとして(Smart TV BOXをJ:COMで)使ってもらえないかと相談している。J:COMの事業なので、その事業価値を向上させる取り組みとして協力できないかと、前向きに協議を進めてもらっている。事業にプラスに成るということであれば、採用していただけるのでは」と説明した。


(2012年 10月 24日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]