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デノン、USB DAC搭載“30年の集大成”ディスクプレーヤー「DCD-SX1」

DCD-SX1

 デノンは、USB DAC機能も備え、SACD/CDの再生に対応するディスクプレーヤーのフラッグシップモデル「DCD-SX1」を9月20日に発売する。価格は577,500円。

 '93年に発売し、ALPHAプロセッサを搭載した「DP-S1/DA-S1」や、2008年発売の32bitのAdvanced AL32を搭載した「DCD-SX」に続く、同社ディスクプレーヤーのフラッグシップモデル。「'82年に世界初のCDプレーヤーDCD2000を発売してから約30年、集大成となる最高のディスクプレーヤーをつくりたいというコンセプトで開発した」という。ディスクはCD/SACD再生に対応し、マルチチャンネル再生には対応しないが、ダウンミックスしたステレオ出力は可能。

DCD-SX1

 同社サウンドマネージャーの米田晋氏は、'72年に開発された世界初のPCMレコーダ「DN-023R」や、'81年の業務用CDプレーヤー「DN-300F」など、民生・業務を問わず、これまでデノンが開発してきたデジタル録音・再生機器を紹介。日本コロムビアとしてレコーディングも手掛けてきた事もあり、「デジタルオーディオのメリット、デメリットを体感しながら進めてきた。デジタルオーディオで一番問題となるのは、当時も今も同じで、デジタル化した時に失われた音楽情報の再現、再生時に正確なDA変換をしなければならない。今でこそデジタルは何気なく使われているが、人が考えたツールであって上手く使わなければならない。薬にするのか、毒にするのか、我々にはそういう責任がある」と説明。そうした長い歴史で培ったノウハウを結集して開発したモデルとして、「DCD-SX1」を紹介した。

デノンとPCM録音、CDプレーヤーの歴史
民生向けCDプレーヤーの歴史
サウンドマネージャーの米田晋氏

 「DCD-SX1」の特徴は、オリジナル技術の「Advanced AL32」と、新マスタークロックを核に、メカエンジンからDAC部、アナログ回路、電源など、全てのパートを新開発している事。さらに、高音質なUSB DACとしても利用できる。

内部構造

 「Advanced AL32」は、独自のデータ補完アルゴリズムを用いて、データをハイビット(32bit)/ハイサンプリング化して処理するもので、「オリジナルデータを損なう事なく情報量を大幅に向上させ、歪の無いクリアな再生により、微細な描写や正確な定位、豊かな低域を表現する」という。SX1の「Advanced AL32」では、そのパフォーマンスを発揮できるように、クロック回路やDAC回路など、すべての回路にチューニングを加えている。

 マスタークロックには、DCD-SX用に開発した「Advanced Master Clock Core」を採用。モジュールタイプのクロックとなり、外部からのノイズの影響を排除。電源回路もほかの回路から独立した専用電源とする事で、干渉を排除している。SXから継承した技術だが、精度はSXのものより大幅に向上。位相レベルも10分の1になった水晶発信子を使っている。また、SXでは適切に発振できるように、温度を上げるためのヒーターなどを搭載していたが、そうした回路も不要になり、ジッタの極小化とコストダウンも実現したという。

DACのダイアグラム

 DACは、32bit/192kHz対応の「PCM1795」を2基搭載し、HOT/COLDそれぞれを差動出力するモノモードで使用。「Advanced AL32」とクロックに適合させるため、32bitの電流出力型DACを選定。さらに、I/V変換回路とポストフィルター回路はフルバランス構成を採用。デジタル信号の段階から終段までフルバランス構成となり、徹底して対称性を維持したアナログ基板レイアウトになっているという。また、アンバランス出力回路も、DACの差動出力を合成して出力する差動ドライブ構成を使っている。

 メカエンジンは、SX1専用に開発したもの。砂型アルミベースを継承しつつ、さらなる低重心・高剛性を実現させた。「Advanced S.V.H Mechanism」を進化させたもので、共振ポイントを分けつつ、金属特性を調合。上部のアルミブロックと下部のステンレス・クランパーで銅メッキスチールプレートをサンドイッチしたハイブリッド・メカリッドを採用。剛性と制振効果を高めている。

DCD-SX1
DCD-SX1の内部
メカエンジンは、SX1専用に開発したもの

USB DAC機能も搭載

銅メッキシールドに入ったUSBインターフェイス部

 USBインターフェイス部分も、前述のマスタークロックで管理。44.1kHzと48kHzの、2系統のデータに対応するため、2系統のクロックを搭載。異なる周波数のハイレゾ音源にも完全対応できるという。

 対応データはPCMが24bit/192kHzまで。DSDは2.8MHzと5.6MHzの両方に対応。ASIO 2.0ドライバによるネイティブ再生と、DoP伝送での再生に対応。アシンクロナス伝送やWASAPIもサポートする。対応OSはWindows XP/Vista/7/8、Mac OS X 10.6.4以降。

 USBインターフェイス部ではさらに、PCから供給されるデータに混入するノイズを完全にカットするアイソレート機能「PC Pure Direct」を搭載。信号は高速なデジタルアイソレータで、さらにグラウンドもリレーによってPCとの電気的な結合を遮断。ノイズの無い音声信号のみがトランス結合のアイソレータを通して伝送される構成となっている。さらに、USBインターフェイスのボード自体を銅メッキシールドケースに入れる構造となっており、デジタル回路自身の高周波ノイズも遮断している。

背面

 なお、USB A入力は、外観を重視してリアパネルに搭載。フロントからの接続に対応するための延長ケーブルも同梱する。

 また、USB以外にも光デジタル/同軸デジタル入力を各1系統装備。単体DACとして利用でき、その場合は24bit/192kHzまでのPCM信号に対応する。出力端子はアナログXLRバランス×1、アナログアンバランス(RCA)×1、光デジタル×1、同軸デジタル×1。

 筐体の構造には、ダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクションを採用。電源トランスをフットの間近に配置する事で、振動を直接グラウンドに逃がし、周辺回路への不要な振動の伝播を防止。ドライブメカはシャーシの中央低い位置に配置する事で、低重心化も図っている。ボトムには3枚のスチールプレートを追加。剛性や重量を高めている。トップカバーにも、肉厚なアルミプレートを組み合わせ、その下に交差するように銅メッキスチールプレートを取り付けて共振を防いでいる。フットは鋳鉄製。

 2つの大容量トランスを搭載。2つのトランスで、向きを逆に配置する「L.C.(Leakage Canceling)マウント」となっており、互いの漏洩磁束をキャンセル。周辺回路への影響を防止した。

 消費電力は39W、待機時消費電力は0.1W。外形寸法は434×406×149mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は25kg。

音を聴いてみる

 発表会で短時間ながら試聴できたので印象をお伝えしたい。

試聴も行なった

 SX譲りの、空間にエネルギーが満ちる、繊細だがパワフルなサウンドが印象的だ。同時に、特に中低域の細かな描写が微細になり、ベースなどの張り出しの強い音が継続する楽曲でも、息切れしない、腰の座った安定感を感じさせる。“ドッシリ”と“繊細”という、ともすれば相反する要素が、高い次元で両立している。

 PCとのUSB接続では、雑味の少ない、広大な音場が展開。個々の音がクリアなだけでなく、音の無い部分にはキッチリと音が無く、定位する音像にも確かな立体感がある。同時に、ディスク再生で感じた安定感はUSB DAC再生でも感じられるため、線が細すぎない、旨味もあるPCオーディオが楽しめる。

(山崎健太郎)