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JVC、カメラから安定したネット配信が可能な、Zixi対応業務用フルHDカム

Pro HDビデオカメラ「GY-HM850」

 JVCケンウッドは、JVCブランドのフルHD対応、業務用Pro HDビデオカメラ新製品として、ネットワーク配信を安定的に行なう機能をカメラ本体に内蔵した「GY-HM850」を3月下旬に発売する。価格はオープンプライス。店頭予想価格は798,000円前後。

 既発売のGY-HM750の後継モデルで、コンパクトショルダーのフォームファクターを継承しながら、ネットワーク対応や記録方式の充実、センサーの改良など、様々な点で進化したというモデル。HM650のコンセプトや技術も投入されている。カメラの外形寸法は231×419×243mm(幅×奥行き×高さ)。バッテリ非搭載時の重量は約4kg。

レンズはフジノン製の光学20倍

 撮像素子は1/3型、有効207万画素の3板式CMOS。レンズはフジノン製の光学20倍で、35mm換算の焦点距離は29~580mm/F 1.6~3.0。レンズ交換にも対応。NDフィルタも搭載し、1/4、1/16、1/64が利用可能。AF機能や光学式手ブレ補正機能、ハンドルズーム機能など、HM750に無かった機能を新たに搭載。ズームのトルクも向上し、アイリスの動き具合の滑らかさなどもアップ。AFアルゴリズムも見直されている。

 1080/60pまでの撮影に対応。独自のLSI「Falconbrid」を2チップ搭載。ファイルフォーマットはMOV、MP4(XDCAM EX)、MTS(AVCHD Progressive)、MXFに対応。MPEG-2 35/25/19Mbps、MPEG-4 AVC/H.264の50/35Mbps、AVCHDの24/17/9/5Mbps記録に対応。さらに、SD解像度でMPEG-4 AVC/H.264の8Mbps記録や、Webで利用するためのMPEG-4 AVC/H.264 3/1.2Mbps記録にも対応する。HD+SD、HD+Web、HD+AVCHDの同時記録が可能。AVCHD以外では4chのオーディオ記録も可能。

 SDHC/SDXCメモリーカードスロットをデュアルで備え、異なるフォーマットのデュアル記録や、長時間連続記録を可能にするリレー記録、バックアップ記録が可能。

 GUIも刷新。どの音声チャンネルのゲインを設定しているかなどが、よりわかりやすく把握できるようになった。外部レコーダやモニタ接続用のHDMI出力や、6ピンのJVCリモート端子、LANCリモート端子も搭載。4chオーディオに合わせたAUX入力や、3G SDI出力も備えている。

4chオーディオに合わせたAUX入力も装備
GUIも刷新された

 最大の特徴はネットワーク対応。USBホスト端子を備え、そこにWi-Fiアダプタや、有線LANアダプタ、USBスティックタイプの4G LTEアダプタなどを取り付け、カメラから直接ネットワークにアクセスできる。これにより、FTPサーバーからメタデータをカメラがダウンロードし、撮影した動画にメタデータを付与し、FTPサーバーにアップロードするという作業がPCを使わずにできる。

 さらにタブレットなどのブラウザからカメラにアクセスし、撮影した動画を端末へ転送したり、カメラの各種パラメーターを制御で調整する事もできる。

カメラ内にブラウザからアクセスしたところ
遠隔操作でカメラのパラメーターを制御しているところ

 カメラで撮影している映像を、ライブストリーミング配信する事もできる。その際、LTEなどを使ってアップロードすると、パケットロスが生じて映像が乱れる事などがある。それを防ぐために、米Zixiのプラグインソフトをカメラに内蔵。Zixiのプロトコルに対応している。

 Zixiは、FEC(Forward Error Correction/前方誤り訂正)、適応型ビットレート可変、クラウドサーバーによる再送信訂正、クラウドサーバーによるスイッチャ/メディア変換/ストレージなどの技術やサービスを提供している。カメラからの映像は、Zixiのクラウドサービスへ一度送信され、そこから各種ネット配信サービスへ配信される。この流れの中で、Zixiの技術で回線状況を常時監視。音声など、重要なパケットを手厚く保護し、FECやARQ(自動再送)などを駆使し、安定的な配信を可能にするという。配信向けには前述のWeb用録画ファイルなど、サイズの小さなファイルが利用できる。

 これにより、UDPやTCP、RTMPなどで転送した場合のパケットロス耐性が0.2%や0.7%など1%に満たないのに対し、Zixiの低遅延2秒モードでは5%、中遅延5秒モードでは30%を実現。例えば約54分の映像で1002270パケットを送信した場合でも、リカバーできなかったパケットは2パケットに抑えられるという。

Zixiプラグインソフトの役割
カメラのストリーミング配信メニューからZixiを選んでいるところ
安定した配信が手軽にできるため、式典やブライダルなど、様々な活用例が想定されている
Zixiのサービスを利用し、ブラウザから配信を制御しているところ
意図的にパケットロスを発生させて比較したデモ。右の映像はZixiのサービスを使って配信している。左の映像では絵が崩れたり、一瞬止まるなどしてしまうが、右の映像は滑らかに表示されたままだった

 なお、Zixiはクラウドを含めた有料サービスとなっており、別途契約が必要。配信の制御はブラウザ経由で行ない、複数のカメラを使っている場合、どのカメラからの映像をネット視聴者に届けるかといった切り替えも可能。これまでも、Zixiのサービスに対応させるための別売ユニットなどは存在したが、そうしたものを追加購入し、接続しなくても、カメラ本体だけでZixiに対応できるのがHM850の特徴となる。

 これにより、カメラからの安定したネット配信を実現。放送局やCATV局だけでなく、ブライダルで離れた場所で暮らす家族などに結婚式の様子をネット中継したり、大学や塾、専門学校での授業風景をネット配信するなど、新たな利用提案・市場開拓も目指している。

 なお、既存のカメラであるHM650でも、2014年5月頃のアップデートによりZixiに対応させる予定。

(山崎健太郎)