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ヤマハ、DSD対応USB DAC搭載SACDとプリメイン、各25万円の「S2100」シリーズ
(2014/4/24 13:00)
ヤマハは、ピュアオーディオ「S2100」シリーズとして、USB DAC機能も搭載したSACD/CDプレーヤー「CD-S2100」と、プリメインアンプ「A-S2100」の2機種を6月下旬に発売する。価格は各250,000円。
S2100シリーズは、S2000シリーズの後継。SACD/CDプレーヤーの筐体サイズは従来モデルとほぼ同じだが、アンプのA-S2100は若干高さが増している。ピュアオーディオの最上位シリーズ「S3000」で追求した音楽性を踏襲しながら、低域のレスポンスと解像度の向上させ、小気味良さを追求したという。全段フルディスクリート構成になっており、2モデルを組み合わせればフルバランス伝送&増幅が可能となる。
なお、ヤマハは24日に、同社ピュアオーディオ製品の歩みを紹介するサイト「Yamaha HiFi History」も公開している。
SACD/CDプレーヤー「CD-S2100」
USB DAC機能も搭載したSACD/CDプレーヤー。DACにESSの32bit Ultra DAC「ES9016」を採用。8ch対応のDACだが、これを全てダブルディファレンシャル(複差動)動作で用いてステレオ使用している。IV変換にはオペアンプを使わず、ディスクリートで構成した。
USB DAC機能はCD-S3000と同等。ヤマハオリジナルのIC「SSP2」を採用し、192kHz/24bitのPCMに対応するほか、ASIO 2.3、またはDoP方式で、DSDのネイティブ再生にも対応。DSDデータは5.6MHzまで対応する。
基板のレイアウトもCD-S3000を踏襲。SACD/CDドライブメカは、CD-S3000に使ったものと同じハイプレシジョンリジッドCDメカユニットを使用している。ただし、CD-S3000はアンカーブロックに固定していたが、S2100は2mm厚のスチールアンカープレートにマウントするという違いがある。CD-S3000と同等のアルミトレイとメッシュワイヤー機構も採用している。
アナログ部とデジタル部を筐体の左右に分離配置し、それぞれに専用のトランスを採用。アナログ用にはトロイダル、デジタル用にEIコアトランスを用いている。電源用ブロックケミコンを基板上にダイレクトマウントしたり、給電ラインの直径を2ランク太いものを使うなど、給電ロスを排除し、ローインピーダンス化を徹底している。
側面には同社のグランドピアノと同じ塗装や研磨工程で作られたピアノ・ブラック仕上げのサイドウッドパネルを採用。出力はバランス(XLR)、アンバランス(RCA)、光デジタル、同軸デジタルを各1系統。入力はUSB、光デジタル、同軸デジタルを各1系統備えている。インシュレータはCD-S3000と同じタイプを採用しており、スパイク/パッド選択式となっている。
消費電力は30W。待機時消費電力は0.3W。外形寸法は435×438×137mm(幅×奥行き×高さ)、重量は15.6kg。付属リモコンの機能やデザインは従来モデルを踏襲しているが、ボタンの仕上げを変更し、表面の刻印が見やすくなっている。
プリメインアンプ「A-S2100」
A-S3000と同様に、ネジ留め結線を採用し、徹底したローインピーダンス設計を採用したステレオプリメインアンプ。定格出力は90W×2ch(8Ω)、150W×2ch(4Ω)。最大出力は120W×2ch(8Ω)、190W×2ch(4Ω)。
独自の「フローティング&バランス・パワーアンプ」とフルバランス方式プリアンプ回路を採用。出力段の左右チャンネルそれぞれの+側と-側に、計4組の電力増幅回路をフローティングし、出力段におけるプッシュプル動作の完全対称化を実現。これにより、ノイズなど外乱の影響を受けにくくなっているほか、全段フルバランス伝送を可能にしている。
パワーアンプ部は筐体内で左右に振り分けてレイアウトし、チャンネルセパレーションを確保。プリアンプ部は端子近くのリアパネル側に配置し、信号経路を最短化している。
電源部に大型EIコアトランスと、22,000μF×4個の大容量ブロックケミコンを採用。SP線や電源一次線の断面積を太くしているほか、プリアンプ部やパワーアンプ部の内部配線も、ローインピーダンス化のためにネジ留め結線を行なっている。
プリアンプ部には、JRC製の高品位電子ボリュームを採用。A-S3000に使われているものと同じ。BASSとTREBLEの調整機能も搭載しているが、それらを使わない場合は接続を切り、調整回路をスルーする事で音質を高めている。フォノイコライザーとMCヘッドアンプもA-S3000と同等のものを採用している。
フロントパネルにはアナログメーターを使った、PEAK/VU切り替え式メーターを装備。スピーカーターミナルは回しやすい形状で、真鍮削り出し。アッテネーターの切り替え、位相切替、オートスタンバイ機能なども備えている。
消費電力は350W。外形寸法は435×463×157mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は23.4kg。リモコンも付属する。
音を聴いてみる
試聴室でS2000とS2100を比較試聴した。
女性ヴォーカル&アコースティックベースで聴き比べると、S2100は情報量が増加し、生々しさが格段に向上する。高域の描写も丁寧で、ヴォーカルのサ行なのキツさが無く、よりナチュラルなサウンドになっている。かといって、高域の頭が抑えられたり、解像度が低下したわけではない。
低域はハイスピードになり、アコースティックベースのキレも向上。音の輪郭がよりシャープになっているが、吹き寄せるような音圧もアップしており、迫力と繊細さが同居している。パワフルな低音がズバッと出て、サッと消える。この反応の良さが気持ち良い。
この2つの特徴は、ブラスの強烈な音で聴き比べるとより良くわかる。S2000は、トランペットの高域を再生すると、思わず顔をしかめるようなキツさを感じる。しかし、S21000では音の大きさが同じであっても、キツイとか、耳が痛いとは感じない。音の出方自体はむしろ力強くなっているにも関わらず、このように感じるのは、高域の描写が丁寧になり、鋭い音の中にも階調や質感がキッチリ描写されているからだろう。
音場の広さも、音が出た瞬間に違いがわかるほど向上している。前述のようにキレのある低域と、階調豊かな響きの再生もできるため、音場に定位する音像も立体的で、リアリティがある。
以前聴いたS3000のサウンドは、音楽性が豊かで、ハイエンドなピュアオーディオらしい、ドッシリと腰の座った雄大な音が特徴だった。S2100は、そうした要素を感じさせる一方で、低域のトランジェントが良く、ハイスピードで音楽を元気よく聴かせる側面もある。“若々しいサウンド”と表現したら良いだろうか、ちなみに開発も若手のエンジニアが手がけているそうだ。