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ヤマハ、ハイファイ最上位のSACD/プリメイン「S3000」

SACDはESS DAC搭載でUSB DAC機能付き。約45万円

右がCDプレーヤー「CD-S3000」と、プリメインアンプの「A-S3000」

 ヤマハは、ピュアオーディオ「S3000」シリーズとして、USB DAC機能も搭載したSACD/CDプレーヤー「CD-S3000」と、プリメインアンプの「A-S3000」を9月上旬に発売する。価格は「CD-S3000」が451,500円、「A-S3000」が493,500円。カラーはいずれもシルバーピアノブラック。

 「創立125周年という記念すべきタイミングでの発売となり、音・音楽の会社として“聴く”というかたちで音楽表現の理想を追求。これまでに培った伝統の技術を活かし、かつ、進化を遂げたハイファイのハイグレード機」と位置づけられている。全段フルディスクリート構成、かつフルバランス伝送を実現。筐体の左右側面には、ヤマハのグランドピアノと同じ塗装・研磨技術で仕上げたピアノフィニッシュのボードを配置し、ヘアライン仕上げのフロントパネルは7mmのアルミ製となっている。保証期間は、SACD/CDプレーヤーが3年、アンプが5年となる。

CDプレーヤー「CD-S3000」
プリメインアンプ「A-S3000」

SACD/CDプレーヤー「CD-S3000」

SACD/CDプレーヤー「CD-S3000」

 USB DAC機能も備えたSACD/CDプレーヤー。DACに、ESSの32bit DAC「ES9018」を採用。マスタークロックをDAC内に持つ構造で、独自のジッタ除去機能も搭載。ジッタの影響が極めて少ないDA変換ができる。入力ごとにジッタリダクションの強さを変えられるDACで、USB DAC利用時は強めにかけるといった製品にできる。

 USBインターフェイス部分には、ヤマハオリジナルのIC「SSP2」を採用。24bit/192kHzのPCMに対応するほか、ASIO 2.3、またはDoP方式で、DSDのネイティブ再生にも対応。DSDデータは5.6MHzまで対応する。ASIO 2.3準拠のヤマハ・スタインバーグ製ドライバを採用。低遅延、高スループットが特徴で、アシンクロナス伝送にも対応する。対応OSはWindows Vista/7/8、Mac OS X 10.5.8/10.6.8/10.7.x/10.8.x。

 なお、USB入力に加え、光デジタルと同軸デジタル入力も各1系統装備。CD-S3000を単体DACとして使う事もできる。出力は、光デジタル、同軸デジタル、アナログRCA(2ch)、バランス(XLR/2ch)を各1系統装備。

 I/V変換回路はディスクリート設計による一段構成で出力。スルーレートの高い構成を採用する事で、多段構成の回路による情報ロスを低減し、NFB量を減少することで、音への抑圧感を無くし、伸びやかで開放感のある音を実現したという。

 SACD/CDメカ部には、ヤマハオリジナルのローダーメカに、メタルブロック製のアンカーを追加した新設計のドライブメカを採用。前方のアンカーは2層構造になっており、製造で組み付ける際にローダーメカをアンカーに固定するネジを個体差に合わせて調整する事で、微妙なドライブ位置の調整を可能にしている。

 再生可能なディスクは、SACD、CDに加え、CD-R/RWに保存したWMA/MP3ファイルの再生も可能。

2層構造のアンカーを調整する事で、製造時にドライブの位置を微調整できる
ドライブの下に黒いアンカーがある。これを固定するネジを微調整し、ドライブの固定位置を最適化する
内部構造

 電源部は、ブロックコンデンサをデジタル/アナログ回路基板のそれぞれにダイレクトにマウント。電源回路を一体化した独自の基板構成を採用している。

 内部のレイアウトも、アナログとデジタル部を完全にセパレートした、左右対称のコンストラクションを実現。さらに、デジタル部とアナログ部で、電源のトロイダルトランスも容量が同じものを搭載している。内部配線では、ネジ止めを多用している。

 消費電力は28W。エコモードも搭載。外形寸法は435×440×142mm(幅×奥行き×高さ)、重量は19.2kg。

各基板の接続にはハンダではなく、ネジ留めの結線などを用いることで、ローインピーダンス化を図っている
背面

A-S3000

 最大出力210W×2ch(4Ω)、130W×2ch(8Ω)のプリメインアンプ。定格出力は100W×2ch(8Ω)、150W×2ch(4Ω)。プリ部とパワーアンプ部を独立させた、左右対称設計を採用。さらに、各基板の接続など、内部配線にはネジ止めを多用。ローインピーダンス化を徹底している。

プリメインアンプ「A-S3000」
ピアノを彷彿とさせる光沢のあるサイドボード

 出力素子には、+側と-側で同一極性を持つMOS FETを採用。フローティング&バランス・パワーアンプだけの特徴である、極性の違いによる音質差を無くした、完全対称設計を追求し、SNに優れた高い音場感を実現したとする。

内部はフルバランス構成。配線はボトム側を通して回路を最短化しているため、上から見るとスッキリとしている

 信号伝送・増幅は、フルバランス伝送を採用。理想的な全段バランス動作を実現するため、プリアンプ部の音量やトーン調整などの制御系回路においてもバランス動作を徹底している。

 また、トーンディフィート時には信号経路をフルディスクリート構成とすることで純度の高さを実現。急峻な信号の変化にも素早く反応できるという。

 カスタム仕様の新日本無線製の電子ボリュームを採用。ラダー型抵抗のみで構成されたもので、スルーレートの低下や、色づけなどの影響を排除している。

 ほかにも、MCヘッドアンプ付きのフォノイコライザと、ヘッドフォンアンプをそれぞれディスクリート構成で搭載している。

 電源トランスの配線は、ローインピーダンス化を徹底するため、トランス巻き線そのものを取り出し、配線用のケーブルを介することなく、ダイレクトに接続端子にネジ止めで結線。接点ロスやハンダによるエネルギーロスを抑えたという。ブロックケミコンもネジ止めタイプを採用。トロイダルトランスも音質を最優先に選定されたという。トランスと銅製シャーシの間には真鍮ベースを配しており、トランスの振動対策もしている。

 スピーカーターミナルはA/Bの2系統搭載。端子は大型で、オリジナルデザインの大型ハンドルを採用。無垢の真鍮を使用し、回しやすい形状になっており、簡単にスピーカーケーブルの接続ができ、音質劣化も抑えているという。

 フロントパネルには大型のレベルメーターを搭載。PEAK/VUの切り替えができる。入力端子はXLRのバランス×2、アナログRCA×4、Phono×1を搭載。レックアウトも搭載する。プリアウト、メイン入力も各1系統備えており、プリ部のみを使い、他のパワーアンプと組み合わせたり、逆にパワーアンプ部のみを使い、他のプリアンプと組み合わせる事もできる。

 消費電力は220W。外形寸法は435×464×180mm(幅×奥行き×高さ)、重量は24.6kg。一定時間、入力が無いと電源をOFFにするエコモードも備えている。

背面
スピーカー端子には、オリジナルデザインの大型ハンドルを採用
共振を抑え、放熱を行なうため、独特の形状が設けられた天板の裏側

音を聴いてみる

 CDプレーヤー「CD-S3000」と、プリメイン「A-S3000」を組み合わせて、まずはCDを試聴してみた。なお、試聴や撮影に使ったのは、音質がほぼ最終という試作機である。

 CD-S3000のサウンドは、ESSのDACを搭載したプレーヤーらしい、極めて情報量が多く、ワイドレンジで、ニュートラルなサウンド。音の勢いや迫力よりも、細かな表現をどこまでも微細に描くタイプのプレーヤーだ。

 それに対して、プリメインの「A-S3000」は、MOS FETらしい中域から中低域にかけての、パワー感のあるふっくらした量感の豊かさや、シッカリと沈み込み、音楽の下支えをする低域に安定感がある。この2モデルを組み合わせると、迫力よりも情報量を重視するどちらかというと高域寄りの「CD-S3000」のサウンドに、旨味の多い「A-S3000」のパワフルさが加わり、双方を引き立て合う、ベストマッチな組み合わせだと感じる。

 SACDを再生すると、CDとはケタ違いの情報量の多さが、CD-S3000では克明に描かれる。その描写の細かさを、ローインピーダンスやオールディスクリート構成などを採用した「A-S3000」がマスキングせず、良さを引き出している事がわかる。

 なお、今回はCD/SACDの試聴のみ行なえたが、CD-S3000をUSB DACとして利用した時のサウンドも、基本的にはSACDなどと同じ、情報量の多い、ニュートラルな傾向になるという。

(山崎健太郎)