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JVCがポータブルヘッドフォンアンプ参入。K2とフローティング構造で高音質再生「AX7」
(2014/5/8 11:00)
JVCケンウッドは8日、JVCブランドのハイレゾ対応ポータブルヘッドフォンアンプ「SU-AX7」を発表した。K2テクノロジーも搭載し、非ハイレゾ楽曲も高音質化できるのが特徴。5月下旬発売で、価格はオープンプライス、店頭予想価格は55,000円前後。
バッテリを内蔵したポータブルヘッドフォンアンプ。入力端子として前面にUSB A×1、USBマイクロB×1、背面に光デジタル×1、ステレオミニのアナログ×1を装備する。USB AはiPodやiPhoneとUSBで接続し、デジタル伝送を行ない、ヘッドフォンアンプ側のDACでアナログ変換・増幅。高音質な再生ができる。
USBマイクロB端子はUSB DAC機能を利用するためのもので、PCと接続、192kHz/24bitまでのPCMデータを再生できる。ただし、DSDファイルの再生には非対応。背面のスライドスイッチでUSB接続時の動作をiPhone/PCで切り替える。光デジタル音声とアナログライン入力は排他利用。光デジタル入力は96kHz/24bitまでのサポートだが特に「ソフトウェア的な制限はかけていない」という。
なお、充電もUSBマイクロ端子経由で行なう。PCと接続して給電しながら音楽再生も可能。ただし、音量の大きさによってはアンプ側の電池が消耗する事もあるという。
なお、iOS機器にカメラコネクションキット経由しての接続はJVCとしてはサポートしていないが、「できるかもしれない」という。
最大の特徴は高音質化技術のK2テクノロジーを採用している事。背面にON/OFFボタンを備え、圧縮音楽ファイルを再生する場合も、K2テクノロジーを適用し、高音質化して再生できるとする。K2処理では、微細な信号を表現するためにビット数を拡張、高周波帯域も拡張し、44.1kHz/16bitの信号は176.4kHz/24bitに、48kHz/16bitは192/24bitに拡張して再生できる。
【訂正】K2によるビット数/周波数拡張時の数値を修正しました(5月9日16時30分)
なお、ハイレゾ楽曲を伝送・再生している場合も、K2テクノロジーはONにできる。周波数帯域を広げるわけではないが、「波形整形の切り替えタイミングの誤差(ジッタ)を排除する工夫が入っているため、音質向上が期待できる」という。
DACにはAKM製のAK4390を採用。「癖がなく緻密で滑らか、自然に広がる空間表現を実現し、ハイレゾソースの持つ空気感をしっかりと再現できる」とする。ヘッドフォンアンプには「定番であり、音質にも定評ある」としてTIの「TPA6120」を採用している。
内部では、チャンネルセパレーションを改善するために、LR独立グランドパターンを採用。φ1mmの極太金メッキジャンパーなどを採用する事で、20kHzを超える帯域までセパレーションを確保。音量調整にはデジタルアッテネータを使い、可変抵抗器で発生するギャングエラーを回避している。また、アナログ入力向けに、アナログ専用ボリュームも用意。アナログ入力利用時はデジタル系とUSB系をスリープさせる事で、音質をアップさせる専用モードで動作する。
筐体にはフローティング構造を採用。一般的な製品では、ケースに溝を彫ってそこに基板などを固定するが、外から振動が伝わって音が変化してしまうため、ヘッドフォンアンプを置く場所によって音が変わるという事が起きてしまう。
フローティング構造は、ケースから離れたシャーシで回路基板を保持する構造で、ケースの振動が基板に伝わらないのが特徴。これにより、置く場所で音が変わらないという。シャーシには非磁性ステンレスを使用。fホールと呼ばれる穴を設け、振動を調整。「豊かで自然な響きを実現した」という。
最大出力は140mW×2ch(16Ω)。周波数特性は10Hz~100kHz(ライン入力時)。出力はステレオミニのヘッドフォン端子×1を備えている。電源は内蔵リチウムイオン電池を使用。連続使用時間はデジタルソースの場合、約5時間。
音を聴いてみる
まずK2テクノロジーをOFFにして聴いてみた。ヘッドフォンは「e☆イヤホン」のオリジナルモデル「SW-HP11」やJVCのイヤフォン「HA-FX850」などを、プレーヤーはiPhone 4Sを使っている。
「山下達郎/希望という名の光」を聴くと、まず感じるのは「クールでワイドレンジ」。ポータブルヘッドフォンアンプと言うと、パワーをアピールするような低域の力強さを誇示するタイプの製品も存在するが、「SU-AX7」はとにかくワイドレンジで特定の帯域が過度に主張する事が無く、モニターライクなサウンド。
低域の力強さはもちろんあるが、張り出す中低域の後ろにある細かな音もキッチリ再生する解像度の高さが好印象だ。かと言って、カリカリシャープにエッジを強調したサウンドではなく、階調の豊かさ、高域の質感などに、しなやかさを感じるのがJVCらしいポイントであり、SU-AX7の特徴と言えるだろう。
ニュートラルなバランスのアンプであるため、様々なイヤフォン/ヘッドフォンと組み合わせやすそうだ。ただ、モニターヘッドフォンの「SW-HP11」で聴いていると、楽曲によっては「もう少し低域に主張があっても良いかな」と感じる面もある。逆に、イヤフォン自体で低域再生がパワフルなHA-FX850と組み合わせるとバランスがとれていると感じる。
非ハイレゾ楽曲を再生しながら、途中でK2テクノロジーをONにしてみると、ふわっと音場が広がり、「藤田恵美/camomile Best Audio」の「Best of My Love」など、ギターや女性ヴォーカルの高域がよりしなやかになる。AX7はもともと音楽性豊かな、上品なサウンドという印象だが、それに磨きがかかると共に、硬さがほぐれ、自然で緻密なサウンドになる。
「どんな音質なんだろう」と難しい顔で試聴していた自分に気づき、ハッと視線が上を向き、心地良く音楽が聴ける。ハイレゾと非ハイレゾを同じ楽曲で聴き比べると、これと同様の感覚を覚えるが、その感覚と似ている。DSD再生に対応していないなど、スペック面では気になる部分もあるが、非ハイレゾ楽曲を手軽に高音質で再生できるのがAX7の大きな魅力と言えそうだ。