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AudioQuest、初のヘッドフォン「NightHawk」。3Dプリンタやケーブル技術投入

 ディーアンドエムホールディングスは14日、米AudioQuest初のヘッドフォン「NightHawk」の日本発売を発表した。発売日は3月下旬、価格はオープンプライスで、店頭予想価格は7万円程度。同日に開催された「ポータブルオーディオ研究会(ポタ研) 2015冬」の中で発表会が行なわれた。

AudioQuest初のヘッドフォン「NightHawk」

 オーディオ機器向けケーブルなどで知られるAudioQuestが手掛けた、初のヘッドフォン。

 50mm径で、バイオセルロース製のピストン式振動板を採用。エッジ部にはゴムを使っている。バイオセルロース素材は硬く、適度な内部損失があり、自然に減衰するため、マイラー樹脂よりも正確な音楽再生ができるという。さらに、内部に補強の筒を設ける事で正確なピストンモーションを実現。空気の流れも考慮し、ドライバ構造を通って合理的に気流が流れる構造を採用。エアポケットの気流の乱れやボイスコイルの揺れなどを低減している。

 磁気回路には1.2テスラのスプリット・ギャップ磁気回路を採用。1つの大きなマグネットに切れ込みを入れる事で、仮想的に2つのマグネットが距離をおいて設置しているような状態になり、磁気フィールドの放射パターンを拡大。1つの大きな磁気回路では外れてしまうような範囲もカバーできるという。

 ハウジングに特徴があり、「リキッドウッド」という新素材を使っている。再生利用植物繊維に熱を加え、液化し、射出成型できるよう処理したもので、プラスチックや木よりも音響特性に優れながら、どのような形を作る事もできるというもの。NightHawkでは、リキッドウッドを使ってハウジングの形状を耳の形に近づけ、快適な装着感や、頭と耳にかかるストレスの軽減を実現したとする。形式はセミオープン。

リキッドウッドをハウジングに使っている

 ハウジングの裏側には、スピーカーのような支持梁を採用。不要な振動を低減している。さらに、外枠の内側にはエラストマー被覆も実施。ウールとポリエステルを混ぜた制振素材を使うことで、「滑らかで自然な周波数レスポンスを実現する」としている。

 ハウジングはセミオープンで、蝶の羽のような構造をモチーフにした、ダイヤモンド立方体の格子細工のグリルを採用。サウンドを拡散し、音楽の歪みや共振を解消。SLS法(レーザー焼結法)という技術を用いた、3Dプリントで作られている。

ハウジングの裏側には、スピーカーのような支持梁を採用
ダイヤモンド立方体の格子細工のグリルは3Dプリンタで作られている

 デザインには人間工学を採用。しなやかなヘッドバンドで、ヘッドフォン本体の重量を分散し、快適な装着ができるという。さらに、独自のサスペンションも採用、ハウジングが自由に動き、様々な頭部に対応できるとする。

 イヤーパッドは卵の殻から作っているというプロテインレザー製。パッドは後方に行くほど太くなっており、快適性を高め、ドライバの角度を最適に調整する役目も担っている。ドライバは耳の斜め前に固定するような角度になっている。

 ケーブルには、30年以上にわたる高性能ケーブル事業の経験を反映。スピーカーケーブルの「キャッスルロック」をベースにしており、高純度のPSC+導体を片チャンネルに4つ採用。発泡ポリエチレン絶縁体、カーボンベースのNDS(Noise-Dissipation System)、銀メッキの端子など、AudioQuestのスピーカー用ケーブルやラインケーブルと同じ技術が投入されている。

 ヘッドフォン側の端子は着脱可能で、2.5mmミニミニのモノラル。端子に、究極の純度を誇るというRed Copperと、ベリリウム銅ベースの金属の上に厚いダイレクトシルバーコーティングを施している。プレーヤー側の入力端子はステレオミニで、標準プラグとの変換アダプタも同梱。このアダプタも既成品ではなく、このヘッドフォン向けに作ったものだという。

ケーブルは着脱可能

 なお、NightHawkという製品名は、「迫力と解放感を伝え、心と体の高揚感を連想させ、商品の外観と雰囲気を引き立たせながらも、さらなる可能性をも感じさせる」というイメージから採用されたという。

 インピーダンスは25Ω、感度は100dB/mW。最大許容入力は1.5W。重量は345g。

オーディオのスピーカーからヒントを得て開発

AudioQuestでアジア・パシフィックを担当するショーン・シェッツ氏
NightHawkの開発を担当したスカイラー・グレイ氏

 発表会には、AudioQuestでアジア・パシフィックを担当するショーン・シェッツ氏が登壇。NightHawkの開発を担当したのが、元Westoneのチーフエンジニアであるスカイラー・グレイ氏である事を紹介した。

 グレイ氏は、2年前にAudioQuestに入社して以降、NightHawkの開発に没頭。市場で知られる他社のヘッドフォンを約100製品集め、分解して分析。1,000個以上のプロトタイプを作るなど、試行錯誤を重ねたという。

 開発にあたっては、オーディオのスピーカーからヒントを得ており、スピーカーで採用されているが、ヘッドフォンではあまり使われていない技術も積極的に検討&投入していったという。

 シェッツ氏は、「他社の製品にインスパイアされたのではなく、白紙の状態からスタートし、彼のビジョンを具現化したものがNightHawkと言える。同時に、革新的な技術や、イノベーティブな要素も多数盛りこんでいるため、開発に2年という時間がかかった」と説明、グレイ氏がこだわりぬいて開発したモデルである事をアピールした。

(山崎健太郎)