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8Kをケーブル1本で伝送。「SuperMHL」対応チップ開発
'16年8K試験放送に向けテレビに採用へ。USB Type-Cも対応
(2015/3/17 15:42)
MHLコンソーシアムは17日、8K/120fpsやHDR(ハイダイナミックレンジ)などの映像、最大30.2chの音声を、ケーブル1本で伝送できるMHL最新規格「superMHL」の詳細や対応製品などに関する記者会見を開催。また、同日にシリコンイメージが発表した、世界初となるsuperMHL/HDMI 2.0対応ポートプロセッサ「SiI9779」などのデモも行なわれた。
8K/60p入力のテレビを開発可能なsuperMHLポートプロセッサ発表。USB Type-Cで4Kスマホ接続も
MHLコンソーシアムの主要メンバーであるシリコンイメージは17日、民生用電子機器やモバイル機器向けの最新規格として1月に発表された「superMHL」と、4K対応テレビなどで採用されているHDMI 2.0規格に準拠した世界初のポートプロセッサ「SiI9779」を発表。記者会見では、シリコンイメージ ジャパンの竹原茂昭社長が、今回発表したSiI9779を含む同社最新製品や、1月に発表した米Lattice Semiconductorからの買収などについて説明。また、MHLコンソーシアムのRob TobiasプレジデントがSuperMHL規格や最新動向について紹介した。
シリコンイメージが発表した「SiI9779」は、テレビやSTBなどの次世代ホームシアター機器向けに開発された、世界初のsuperMHL/HDMI 2.0対応ポートプロセッサ。8K/60fpsや、BT.2020の広色域、HDR、Dolby Atmos(ドルビーアトモス)/DTS:Xのオブジェクトオーディオ、ハイレゾを含む高ビットレートの音声伝送にも対応。著作権保護のHDCP 2.2もサポートする。
家電機器メーカーは、SiI9779を使うことで新世代の製品を開発することができ、superMHL出力の8Kソース機器から、8K対応テレビやモニターへ、上下どちらでも挿せるリバーシブル端子で接続可能。superMHL入力は、既存のコネクタや、MHL Altモード対応のUSB Type-Cなどにも対応し、MHL対応スマートフォンからの4K 60fps出力も可能。
SiI9779の入力はsuperMHLが1系統と、HDMI 2.0が3系統。STBなどのソース機器向けに、superMHL出力を1系統備える。superMHLは従来のMHLやMHL 2/3と互換性を持ち、HDMIは既存のBlu-ray DiscプレーヤーやAVアンプ、HDMIスティック、STBなどの機器と接続可能。入力された8K映像を、転送速度を半分にして2つの映像に分けてHDMI端子から出力することもできるという。
【SiI9779の主な特徴】
- ディスプレイ機器向けにsuperMHL入力を1ポートとHDMI 2.0入力を3ポート
- STBなどのソース機器向けにsuperMHL出力を1ポート
- superMHL仕様に基づく8K 60fps映像対応
- 新しい32ピンのリバーシブルsuperMHLコネクタ
- MHL Altモード対応のUSB Type-Cコネクタ
- HDR、Deep Color、BT.2020
- Dolby Atmos、DTS:Xなどのオブジェクトオーディオ、3Dオーディオ、オーディオオンリーモード
- ハイレゾなどのハイビットレートオーディオ出力
- HDCP 2.2のプレミアムコンテンツ保護
また、スペイン・バルセロナで3月2日~5日(現地時間)に行なわれたイベントのMobile World Congress(MWC)に合わせてシリコンイメージが発表したMHL Altモード対応のUSB Type-Cポートコントローラ「SiI7023」(USB 2.0対応)と「SiI7033」(USB 3.0対応)も展示。HTC製の4K対応スマートフォンの「HTC One M9」と4K対応テレビをUSB C-MHLケーブルで接続して映像再生するデモを行ったほか、スマホとタッチパネル搭載ディスプレイをUSB接続して、映像表示しながらタッチ操作などが行なえる点なども紹介した。
東京五輪などの8K放送を、superMHLでテレビに表示
superMHLの概要は既報の通りで、8K/120fpsまでの高解像度/ハイフレームレートをサポート(現在のMHL 3.0は、4K/30p映像まで)。さらに、最大48bitの色深度サポートや、HDRにも対応する。第4世代目に相当するが、MHL 4.0ではなく、superMHLという名称を採用した。
superMHL規格としては、8K/120fpsまでの高解像度/ハイフレームレートをサポート。さらに、最大48bitの色深度サポートや、 ハイダイナミックレンジ(HDR)に対応。
Dolby AtmosやDTS:X、3Dオーディオ、オーディオオンリーモードなどのオブジェクトオーディオに対応。音声伝送については、単に転送レートが高いだけでなく、HDMIに比べてマルチチャンネル伝送向けに機能を拡張した点も特徴としている。コンテンツ保護技術HDCP 2.2もサポート。複数のMHL対応機器(テレビやAVアンプ、BDプレーヤー)を接続して1つのリモコンで操作(RCP)可能。現在、MHLが主なターゲットとしているモバイルだけでなく、ホームシアター機器へも対応を広げた規格となっている。
新しいコネクタ形状を採用したのも特徴で、表裏(上下)の区別が無いリバーシブル仕様の端子で、8台までのマルチディスプレイに対応する。端子構造は32ピンで、ピンを1~6ペアから選んで伝送可能。双方向用や、電源用、将来の拡張を見据えた空きピンも用意している。
規格上の最大である6ペアで伝送した場合は、36Gbps×3倍圧縮により、100Gbps程度まで対応可能なことから、8K/120fps、4:2:0映像が伝送可能。さらに、将来的にはケーブルの性能向上により、1ペア10Gbpsまでレートを上げられると想定。その場合は約180Gbpsまでサポートするため、8K/120fpsの144Gbps映像を、圧縮せずに送れる可能性もあるという。
前述したsuperMHLとUSB Type-Cでの接続時は、USBのハイスピードレーンを4つまで使用でき、最高8K/60fpsまで対応。MHLコンソーシアムのRob Tobiasプレジデントは、「現在のUSB 3.0が5Gbps、USB 3.1が10Gbpsだが、superMHLやUSB Type-Cは、端子としては10Gbpsを超える設計。将来、半導体技術が進めば、転送レートは速くなる」としている。
Tobias氏は、MHL製品の現状について「対応製品は7億5,000万台が出荷され、10億台も目の前。テレビや携帯電話だけでなく、車載インフォテインメント機器にも今年から製品が市場投入される」と述べた。最新規格であるsuperMHLの導入背景については、NHKが最大120fpsの8Kスーパーハイビジョン映像で'16年に試験放送、'18年に実用放送を開始して、'20年の東京オリンピックも8Kで放送予定であることなどを改めて説明した。
一方でグローバルでも、DVB規格において定められているDVB-UHDTVフェーズ1の4K/60fpsから、次のフェーズ2以降ではより高いフレームレート、高解像度、HDR、広色域を検討中であることを紹介。Blu-ray Disc Association(BDA)が策定中の次世代BD「ULTRA HD BLU-RAY」において、最大60fpsの4K映像とBT.2020色域、HDR対応のサポートが見込まれることなどを挙げて、世界的にも4K/8Kの機運が高まっているとした。
モバイル分野のトレンドとしては、スマホなどのバッテリ容量が大きくなるにつれて、高速充電へのニーズが強まっているとし、最大40Wの給電が可能なsuperMHLが、解像度だけではない価値を提供する点もアピールした。
なお、同じくUSB Type-Cに対応しているDisplayPortなど他規格との互換性について報道陣から質問が出ると、「USBインプリメンターズ・フォーラム(USB-IF)が規格化したUSB Type-Cでは、追加機能としてAltモードを用意し、Altモードの中で、DisplayPortの信号とMHLの信号が(別々に)あるため、MHLとDisplayPortで互換性は無く、接続する場合は別途アダプタが必要」と説明した。
また、シリコンイメージも主要メンバーであるHDMI規格の8K対応についても質問が出た。シリコンイメージ ジャパンの竹原氏は「スペックについてはフォーラムで作成している段階。HDMI LLCのプレジデントのスティーブ(スティーブ・ベヌーティ氏)から話しているのは、『市場の動向に応じて、新しいスペックをリリースしていく』ということ」と回答した。具体的な仕様や規格化の時期などについては明らかにしていない。
LatticeによるSilicon Image買収で、開発製品の低コスト/高機能化も
1月に発表した通り、MHL製品などを手掛ける米Silicon Imageは、米Lattice Semiconductorによって買収され、同社の子会社となった。買収総額は約6億ドル。
Lattice Semiconductorは、FPGAやCPLD(Complex Programmable Logic Device)、プログラマブル電源管理、クロック管理ソリューションなどを手がける米国の半導体企業。
シリコンイメージ ジャパンの竹原社長は、Latticeの子会社になることについて「(シリコンイメージが持つ)MHLやHDMI、60GHzワイヤレス技術のIPをLatticeのFPGAソリューションの中で使用できる。新しいビデオ規格が立ち上がったときなどに、いち早くFPGAでICソリューションを提供可能になる。これまでシリコンイメージが作っていたチップのコストダウン化や低消費電力化を実現でき、よりステップアップした製品を提案できるようになる」とメリットを説明した。