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「ミッション:インポッシブル」最新作BDを先行視聴。シリーズ初Atmos音声の効果は?

 パラマウント ジャパンから12月9日にBlu-rayが発売される映画「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」は、シリーズで初めてDolby Atmos(ドルビーアトモス)音声となる。同シリーズといえば、迫力あるアクションだけでなく、息が詰まるほど緊迫した駆け引きやハイテク機器なども大きな見どころ。それがDolby Atmosになってどう表現されているのか、BD発売の一足先に、Dolby Atmos Home(ドルビーアトモス ホーム)環境で視聴した。

ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション ブルーレイ+DVDセット 【2枚組】

(C) 2015 Skydance Productions and Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved.
(C) 2015 Paramount Pictures.

 「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」は、トム・クルーズ演じるIMFのエージェント、イーサン・ハントが活躍するシリーズ最新作。謎の多国籍スパイ組織“シンジケート”を秘密裏に追跡していたイーサンは、催涙ガスによって敵の手に落ちてしまう。そこで出会ったのは、謎の女と、3年前に死亡したはずのエージェント。まさに拷問が始まろうとしたその時、女は驚くべき格闘術でイーサンを脱出させる。

 仲間のブラントからIMF解体を知らされ、“シンジケート“の殲滅を誓うイーサンだが、彼は国際手配の身となっていた。組織の後ろ盾を失ったイーサンと仲間たちが挑む、究極の諜報バトルが始まる……。


(C) 2015 Skydance Productions and Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved.
(C) 2015 Paramount Pictures.

 12月9日発売のBDは、DVDとのセットで価格は4,700円。BDの英語音声はDolby Atmosで収録している。筆者は、BD発売前のネット配信版にて5.1ch音声で視聴済みだが、今回視聴した場所は、オンキヨー地下にある「マリンシアター」での7.2.4ch環境。AVアンプはオンキヨー「TX-NR3030」、BDプレーヤーは、パイオニア「BDP-LX88」。スピーカーは、フロア型のハイエンドモデル「S-1EX」などを中心としている。この環境では「ターミネーター:新起動/ジェニシス」も視聴している。「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」は一度観た作品とはいえ、改めてDolby Atmosで見直してみると様々な再発見があった。

オンキヨーのマリンシアターで視聴

ギリギリのアクションにAtmos音声が緊迫感をプラス。音楽にも注目

 まずは、テレビCMなどでも流れていた、これから離陸しようとする飛行機に飛び乗るシーンから。危険なアクションシーンもトム・クルーズ本人が演じていることはよく知られているが、飛行機のドアの部分につかまり、離陸するという命懸けのシーンも、スタントマンを使わず本人が挑戦。本人が仕上がりに納得するまで、8回も同じシーンを撮り直したという。

 以前聴いた5.1ch音声でも、飛行機が飛び立つ時の轟音はしっかり感じられたが、今回のDolby Atmos音声では、さらに一回り大きな空気の層に包まれるような感覚が味わえ、そうした中でおなじみのメインテーマ曲がスタート。厚みがあり、広い音場のオーケストラ演奏で「これからいよいよ始まる」と期待が高まってくる。

 次は、あるデータが収められた場所に侵入し、その中から目的のカートリッジを差し替えて別のデータを入れるというミッション。そこは巨大な球体の内側にいくつものカートリッジが挿してあり、中はすべて冷却のための水で満たされている。酸素ボンベが使えない場所のため、作業時間は限られている。イーサンの心臓の鼓動が、最初はBGMに隠れつつ一定のペースで鳴っているが、次第に早く大きくなり、限界が近づくと視聴している部屋全体から鼓動が鳴っているようで、緊迫感が押し寄せてくる。

 このほかにも、派手な見どころと言えば、複数のバイクとともにモロッコ・カサブランカの街を駆け抜けるカーチェイスシーン。階段や狭い路地などを、互いにぶつかりながら駆け抜け、車にぶつかったライダーがボンネットに乗り上げるといったシーンでも、映像だけでなく音でも人や乗り物の動きが把握しやすいため、そのシーンに入り込みやすい。アクション映画のBlu-rayを観ていると、時々アクションシーンの展開が早すぎて、「今どんな風に動いた?」と巻き戻して見たくなることもあるが、音声で人の位置関係や動きの軌跡などが分かり、一連の動きを把握しやすいと感じる。

 さらに、Dolby Atmosで観たことで、より深く興味を持ったのが劇中の音楽シーン。作品の見どころの一つに「トゥーランドット」のオペラ上演がある。舞台の裏では息をのむ駆け引きが行なわれているのだが、純粋にオペラのシーンとしても迫力があり、ホール残響感を立体的に再現しているのが分かる。このほかにも、舞台となっている様々な国に合わせて流れる、テーマ曲のアレンジも聴きどころの一つといえる。

より作品へ入り込めるBD作りに各社が協力

 BD発売元のパラマウント・ジャパンでは、今回の「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」がDolby Atmos採用の4作品目にあたる。これまでのAtmos作品は、'14年の「トランスフォーマー/ロストエイジ」に始まり、「ミュータント タートルズ」、「ターミネーター:新起動/ジェニシス」と続いてきた。

 パラマウントホームメディアディストリビューション ジャパンでマーケティング ブランドマネージャーを務める村上香織氏は、「シリーズの中でも、これまでの4作に比べてアクション、スパイ要素、人間関係などがバランス良く盛り込まれて、より多くの人に楽しんでいただける」ことを見どころとして挙げている。

パラマウント・ジャパンの村上香織氏(左)と、Dolby Japanの林正樹氏(右)

 また、ヒロインであるイルサ・ファウスト(レベッカ・ファーガソン)を、制作者らが“女性版イーサン・ハント”としてアクションなどでも大活躍させていることも注目ポイントとのこと。もちろん、トム・クルーズのアクションもさらに磨きがかかっており、前述した水中のシーンに向けて米軍のトレーナーと共に潜水のトレーニングに取り組んだことで、フリーダイビングで40mもの深さまで潜れる実力を付けたとのこと。こうしたエピソードは、BDのメイキングに盛り込まれているという。

 Dolby Japanでコンテンツ分野のシニア・マネージャーを務める林正樹氏によれば、劇場のDolby Atmosでも、国内で対応する16劇場/17スクリーンのうち、14スクリーンで上映され、劇場でより良い音響で体験できる機会は広がりつつあるとのこと。今回の作品はDolby AtmosのBDとして国内で発売される20タイトル目にあたるという。

 「天井から音が聴こえる」のはDolby Atmosの分かりやすい特徴の一つであるが、それは“目的”ではない。「水中の息苦しさなど、緊迫したシーンをリアルに再現することで、作品に入り込みやすくなっています。Dolby Atmosの使い方はもちろんクリエイターの自由ですが、音楽についても、これまではL/R中心で鳴らしていたのが、よりリスナー側に寄ったり、楽器を個別に配置できたりと、いろんな表現ができるようになりました」(林氏)。

 なお、この作品は、11月21日~22日に東京・池袋で行なわれる「HOME THEATER JAPAN 2015 WINTER」のオンキヨー/パイオニアの各ブースでデモ上映を実施(午前10時30分から複数回)。国内において最速でシリーズ最新作のBDを一般体験できる場所となる。

 今回、Dolby Atmos音声で聴いてみて思ったのは、何気ないシーンでも、音の表現の仕方で空間の広さや静けさなどが伝わりやすいということ。天井からも音が聴こえるのはもちろん魅力の一つだが、そうした効果音的な使われ方だけでなく、バックを流れるBGMや環境音も、主人公たちがいるのがどんな場所で、どんな心情なのかを伝える重要な手がかりの一つ。複数の任務が2つ同時並行で行なわれる緊迫した場面でも、映像と音の両方で2つのシーンが目まぐるしく変わることで、各シーンのメリハリを付けることにつながっている。アクション以外にも多くの見どころがある「ミッション:インポッシブル」シリーズだからこそ、作品そのものへ入り込むための臨場感のある音声がより重要になっていることを感じた。

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(中林暁)