小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1203回

Electric Zooma! 2025総集編。意外に保守的だった? 今年のトレンド
2025年12月24日 08:00
トレンドが見えづらい2025年
今日はクリスマスイブということで、仕事を早々に切り上げて家族とゆっくり過ごすという人も多いことだろう。筆者はこの記事が公開されるころ、健康検査で胃カメラを飲んでいるはずである。いや予約をわすれてたら今ごろになってしまっただけで、狙ったわけではない。
さて毎年恒例となった、Electric Zooma!総集編をお送りする。映像ではシネマ風やVlogは昨年から続き、堅調に推移している。オーディオでは空間オーディオや耳を塞がない系もすでに当たり前のものとなり、順調に製品が登場した。
逆に言えば、生成AIの躍進、Windows10サポート終了などソフトウェア関係の話題は豊富だったが、ハードウェアを伴うブームやトレンドは把握しづらかった年と言えるのではないだろうか。
そんな中において今年1年で本連載が取り上げた製品をジャンル分けすると、カメラ×10、オーディオ×14、プロジェクタ×6、アクセサリ×2、制作・HowTo×1、レポート×3という結果となった。カメラの中にはドローンとスマートフォンも含む。
それでは早速ジャンル別に、今年のトレンドを振り返ってみよう。
カメラ篇
今年カメラメーカーとして最も多く取り上げたのは、DJIだった。ドローンも含むので数が多くなるのは仕方がないとしても、今年は360度カメラに参入、アクションカメラでは虹彩絞りを搭載、また合体分離型カメラにも再参入と、新しい動きが出てきた。大ヒット商品となった「Osmo Pocket 3」の後継機は今年は出なかったが、ドローンがマルチカメラ搭載になってきているので、Osmo Pocketもそうなるのではないかという噂は絶えないところだ。
ドローンでは小型ドローンにも上位モデル同様の障害物回避システムを導入し、すでにこれに勝てるドローンメーカーは少なくなってきた。ただ日本では100g以上のドローンは航空法上の規制を受けるため、飛ばせる場所が限られる。そろそろこの規制も、重量だけを基準にせず、安全性能を基準に変更を考えるべきタイミングではないだろうか。
次いで今年注目が集まったカメラメーカーは、ニコンであった。過去動画カメラとして「Z5」がヒット作となったが、後継機である「Z5 II」も再びヒット作となった。
また米国シネマカメラブランド「RED」を買収したことで今後の動きが注目されていたが、REDとニコンのダブルブランドで登場した「ZR」は、多くの注目を集めた。ZRは新たに立ち上げた「Z CINEMA」シリーズの第1弾となるモデルで、ボディも従来のZ系列とは違い、シネマカメラとのミラーレス一眼のいいとこ取りをしたような設計になっている。
一方で消費者側から発生したトレンドとして外せないのが、「コンデジ復活」だ。コンパクトデジタルカメラはスマートフォンの普及とともに衰退の一途を辿り、カメラを買うならミラーレス以上ということになっていたが、昨年から中古コンデジがエモいという話になり、次第に確実に手に入る現行品に飛び火した格好だ。
もちろん、以前からもリコーGRシリーズやシグマdpシリーズなど独自をファンを獲得しているカメラはあるが、それとは傾向が違う。Vlog市場の広がりにより、自撮り動画性能にフォーカスされた。
サウンドバーの躍進が目立ったオーディオ
今年もオーディオ市場は盛況であった。ネットのストリーミングサービスが当たり前のものとなり、コンテンツが増えたことで、その恩恵が再生系の機器に回ってきているということだろう。今年初めにはAmazonもサウンドバーに参入したのは象徴的な話だと思う。作りとしては標準的だが、Amazon標準品があるというのは、マーケット的には強い。
オーディオの老舗JBLは、競合他社が苦戦する中、Bluetoothスピーカーで若い人の取り込みに成功し、上手く立ち回っている。サブウーファでも個性的なJBLサウンドを継承しつつ、リーズナブルな価格の製品を多数輩出している。
同じ海外製品ということでは、サウンドバー初参入となるMarshallの「HESTON 120」も独特の音作りで、日本にはまずないタイプの製品だった。サウンドバーも空間オーディオ対応が一段落したところで、ブランディングと音の個性で勝負が始まったという事なのかもしれない。価格が高いのが難点だが、これは円が安いせいである。
一方ハイエンド製品を多くリリースしてきたソニーは、ここで低価格商品にも力を入れてきた。「HT-B600」はサブウーファまで付いて6万円台となっており、一気に普及を狙う。
サウンドバーは音楽再生にも利用できる。テレビ音声の補強といった時代は終わり、いわゆるホームオーディオの中心になりつつある。
2chスピーカー製品では、EDIFIERのコストパフォーマンスが光った。「MR3」はDTMユーザーを意識した多彩な音響補正機能を備えながらも、価格は1万円台に抑えた。セールも頻繁にされており、かなり売れたようだ。
「M60」はEDIFIERの祖業であるPCスピーカーの系統を引き継ぐモデルで、調整範囲はMR3ほどではないが、かなり音がいじれるスピーカーである。シンプルなデザインも良い。
イヤフォンの世界でも、平面磁界ドライバ搭載で高コスパなモデルを輩出した。平面磁界ドライバの普及や認知度向上にも大きな役割を果たしたと言える。
制作系では、ワイヤレスマイクの成熟度が上がり、多様な製品が登場している。基本的には音を拾うだけなのでなかなか差別化は難しいところだが、逆にスタンダードがないことから、戦国時代はまだしばらく続きそうだ。
そんな中で「DJI Mic 3」は、多機能さを追究するという方向性に舵を切った。ノイズキャンセルやトーンコントロールなどが選択できるが、小さいレシーバ画面での設定変更はどうしても複雑になる。また現場でいちいちモードを切り替えるかという実用上の課題もある。ある程度状況を見ながら自動で設定されるような作りになっていると良かった。
オーディオの老舗ゼンハイザーも、コンシューマ向けワイヤレスマイクに参入した。この分野では後発ではあるが、元々業務用ワイヤレスマイクを手がけていたこともあって、安定度も高い。また充電ケースが多機能で必要なコネクタ類を全て格納できるなど、入念な設計が光った。
順調に拡大してきたプロジェクタ市場
日本ではなかなか定着しないといわれたプロジェクタだが、今年はエントリーモデルを中心に製品が幅広く登場し、注目を集め始めた。これも映像コンテンツがもはやテレビ放送が中心ではなくなり、ネットストリーミングサービス方向へ拡大した結果だと思われる。
今年はAladdinが小型レーザー製品で参入し、オリジナルコンテンツ搭載でエンタテイメント機器としての軸を強く打ち出した。小さいから機能が少ない、ではなく、小ささをいかした様々なアイデアは、他社にも影響を与えることだろう。
TCLは大型テレビでシェアが高い中国企業だが、「PlayCube」はボディをねじって角度を付けるという構造で、脚部構造を排して小型化できるという道筋を付けた。こうした構造の面白さというのもまた、プロジェクタの新しい切り口だろう。
アンカーの「Nebula X1」は、本体だけではオーディオが弱いというプロジェクタの弱点を、サテライトスピーカーをバンドルして解決した。今後プロジェクタは、サテライトスピーカーにしろサウンドバーにしろ、オーディオをどう充実させるかという課題と向き合うことになりそうだ。
超短焦点プロジェクタは、これまで超高級モデルか文教向けといったイメージだったが、Aladdinが商品化したことで、敷居が下がった感がある。とはいえハイエンドモデルではあるので40万円弱という価格だが、4Kでしかも投影距離が近いので明るいという特徴がある。またスピーカー性能が良く、音の面でも満足できる。壁など投影面の直下に置けることで、サイズが大きくてもあまり関係ないところが功を奏した。
総論
来年はどうやらメモリーの高騰が続くと予想されており、メモリーを内蔵する製品の値上がりや発売延期などもありそうだ。またこれだけ円安が続くと、海外製品もなかなかご紹介しづらいところである。
一方で生成AIの進化により、ソフトウェアの開発ペースが加速しているのは朗報である。映像制作でのAI活用も増えており、来年はそうした製品やワークフローのご紹介もあり得るだろうと思っている。
さらに今年好調だったDJIが、どのような展開を見せるのかも楽しみだ。日中関係がなかなか難しい事になっている昨今ではあるが、製品ベースでの影響が出ないことを祈りたい。
そんなわけで2025年のElectric Zooma!はこれにて終了である。来年は1月7日に再びお目にかかる。それでは皆様、メリークリスマス&良いお年を。











































