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“音が前から聴こえる”ヘッドフォンを体験。フォステクス新DACも登場
(2016/4/29 17:47)
4月29日~30日に中野サンプラザで開催されている「春のヘッドフォン祭2016」において、トライオードは台湾CROSSZONE製のヘッドフォン「CZ-1」を披露。アコースティックな技術により、音場が前方に定位するという性能を会場でチェックした。
また、フォステクスは夏に発売予定のUSB DAC/ヘッドフォンアンプ「HP-A8MK2」を参考出展。28日に発表した黒胡桃ハウジングのヘッドフォンや、ハイブリッド型イヤフォンなどと共に展示している。
“スピーカーのように聴こえる”ヘッドフォン
トライオードが6月下旬に発売する台湾CROSSZONE製のヘッドフォン「CZ-1」の特徴は、一般的なヘッドフォンのように、耳元にあるドライバから生成される音場が頭の中で聞こえる(頭内定位)のではなく、前方定位(頭外定位)を実現している点。
これを可能にしているのが、ADC(Acoustic Delay Chamber)という技術。主音源再生用の2つのドライバユニット(高域用/低域用)と、逆チャンネルの音源を再生するもう1つの専用ドライバユニットを左右ハウジングそれぞれに搭載している。
ヘッドフォンではなくスピーカーで音を聴くと、通常は右耳に右チャンネルの音だけでなく左チャンネルの音も聴こえてくる。これをヘッドフォンでも実現するために、逆チャンネルの音を出すユニットを左右それぞれに装備。その結果、頭の真ん中ではなく、部屋の中でスピーカーから聴いているように自然で広い音場が実現できるというものだ。
スピーカーのような聴き心地を実現するもう一つの重要なポイントが装着感。CZ-1を着けてみると、一般的なヘッドフォンに比べて側圧がソフトで、最初は少し心配にもなったが、聴いていると音が外へ逃げているような印象は全くない。
CZ-1のヘッドバンド部は、スライダーによる長さ調節と、バネの力で左右から頭を挟む関節部分を備えている。スライダー調整は、一般的なヘッドフォンとは違って上下ではなく左右方向に伸縮するもので、装着する際は、まず頭の大小に合わせてスライダー幅を調整し、バネの関節部分を広げて頭に固定。この2つの可動部分(左右で計4つ)によって、頭の大小を問わず確実に耳へフィットしつつ、圧迫感のほとんど無い快適な装着性を実現するという。
ヘッドフォン祭の会場で、トライオード製アンプを使って試聴した。少し聴いただけで、広い音のステージが実感でき、頭の中ではなく、頭の外の前方で音が鳴っているという感覚が理解できる。ハウジングは密閉型だが、オープンエア型を思わせる広大な空間表現と、豊富な情報量を両立。片側に3ドライバあるため、見た目は大きめなハウジングだが、しばらく着けていても重みや過剰な圧迫感などはほとんど感じなかった。
CROSSZONEというブランドはオーディオでは聞き慣れないが、台湾のEMSメーカーが設立したもので、CZ-1の開発には日本の大手オーディオメーカーの元エンジニアが協力。TADなどのハイエンドスピーカーの開発者も参加したとのことで、この自然な広がりの聴こえ方も、そうした経緯を聞くと納得できた。
価格は25万円でヘッドフォンとしては高級だが、パーソナルな空間でリッチな音が楽しめるスピーカーでもあることを考えると、他の高級ヘッドフォンと比べて決して高すぎるという印象はない。ヘッドフォンの音場に慣れた人にも、新鮮な感覚で聴けるだろう。他のアンプとの組み合わせも試してみたいと感じた。
フォステクスはAKMの上位DAC搭載アンプや、未発売モニターヘッドフォンなど
フォステクスは、夏に発売予定の新たなDAC/ヘッドフォンアンプ「HP-A8MK2」を参考展示した。名前の通り、'11年に発売した「HP-A8」の進化版で、特徴はDACを従来の「AK4399」から、「AK4490」(いずれも旭化成エレクトロニクス製)に変更した点。
DACの変更により、USB/SDのDSD再生は11.2MHzまでサポート(従来は2.8MHzまで)。DACの変更に合わせて、クロックなども含め全体をリファインしたという。価格はA8と同等の10万円前後の見込み。
会場には、28日に発表したダイナミック型とバランスド・アーマチュア型のハイブリッド型イヤフォン「TE100」や、黒胡桃の無垢削り出し材のハウジングとバイオダイナ振動板を採用したリファレンスヘッドフォン「TH610」などを展示。
平面型振動板を用いたスタジオモニターヘッドフォンの開放型「T20RP mk3n」と密閉型「T40RP mk3n」も展示したほか、国内未発売のモニターヘッドフォン「TR-90」、「TR-80」、「TR-70」も参考展示している。