ミニレビュー

愛用のイヤフォンがBluetooth化!! ソニーのBTケーブル「MUC-M1BT1」を試す

 スマートフォンの普及により、デジタル機器に詳しくない人も含め、今では当たり前のものとして定着したBluetoothイヤフォン/スピーカー。電車内でも見かける事が多くなってきた。

 Bluetoothイヤフォンの利点は、ケーブルが邪魔にならない事。一度使うとその便利さの虜という人も多いだろう。だが、イヤフォン/ヘッドフォンマニアの場合、Bluetoothイヤフォンを使いたくても、大きなジレンマがある。それは“愛用のイヤフォンが無駄になる”という事だ。

 例えば、音質の良さで決めた高級イヤフォンを購入。日々活用する中で、ケーブルが煩わしいと感じ、Bluetoothイヤフォンに興味が出たとしても、なかなか購入しづらい。新たにBluetoothイヤフォンを買うと、イヤフォンが2つになってしまうからだ。音質をとって高級機を使うか、利便性をとってBluetoothイヤフォンを使うかという二者択一を迫られることになる。

 その間をとった回答となるのが、今回紹介するソニーのケーブル型Bluetoothレシーバ「MUC-M1BT1」だ。価格はオープンプライスで、実売は18,000円前後。

愛用のイヤフォンをBluetoothイヤフォンに

Bluetoothユニット+イヤフォンタイプの「MDR-EX31BN」

 ご存知の通り、Bluetoothレシーバには、レシーバ本体とイヤフォンが着脱できるものが存在する。こうしたタイプであれば、好きなイヤフォンをレシーバに接続さえすれば、愛機を“Bluetoothイヤフォン化”できる。

 ただ、Bluetoothレシーバ+通常のイヤフォンという組み合わせは、ケーブルの煩わしさからの開放という意味では、不満も残る。スマホとイヤフォンを直接ケーブルで接続しなくて良いという自由は得られるが、Bluetoothレシーバとイヤフォンをケーブルで接続する必要は残るため、Bluetoothレシーバ部をポケットに入れて、ポケットからイヤフォンにケーブルが伸び、それが結局邪魔になる。

 取り回しの良さでの理想は、レシーバを内蔵したイヤフォンと、ネックバンド型のケーブルが一体となったタイプ。体の前側にケーブルが来ないため、邪魔にならず、スポーツ向けBluetoothイヤフォンなどで採用モデルが多い。しかし、そうしたタイプはイヤフォンとケーブルが一体となっており、好きなイヤフォンに付け替える事はできなかった。

ソニーの「MUC-M1BT1」

 そこで登場するのが「MUC-M1BT1」だ。簡単に説明するならば、ケーブルの形をしたBluetoothレシーバであり、イヤフォンは付属しない。代わりに、イヤフォンを接続できるMMCXコネクタが搭載されている。

 ……とはいえ、ソニーの場合はMMCXコネクタではなく、あくまで独自の端子としており、接続のサポートも、同じ端子を採用しているイヤフォン「XBA-Z5/A3/A2/H3/H2」に限られる。あくまで“ソニー製イヤフォンの周辺機器”という位置付けだ。ただ、実際のところはMMCX端子であり、試しにShureの「SE535」を取り付けてみると、まったく問題なく接続できた。

「MUC-M1BT1」の接続端子部分
ソニー製イヤフォン「XBA-Z5/A3/A2/H3/H2」との接続をサポートしている
ShureのSE535も問題なく接続できた

ケーブルのみのシンプルなデザイン

 スペックから見てみよう。BluetoothのプロファイルはA2DPに対応し、SCMS-Tもサポートしているのでワンセグの音声も伝送できる。コーデックはSBC、AAC、aptXに対応。ソニーが今年のCESで発表し、今後対応機器を増加させると表明している新コーデック・LDACへの対応は現時点でアナウンスされていない。伝送帯域(A2DP)は20Hz〜20kHz(44.1kHz時)だ。

 一見すると単なるケーブルだが、途中に2つの小さな樽のようなパーツがついている。片方には何の突起も無く「SONY」ロゴがあるだけ。もう片方の樽には、ゴムでできたボタンが1つあり、さらに樽の蓋が開くようになっている。ボタンは、操作やペアリングを行なうもの。開いた蓋の中には、USB端子がある。ここからバッテリの充電を行なうわけだ。

小さな樽のようなパーツ。ここにインジケーター、ボタン、充電用のUSB端子が搭載されている

 リチウムイオンバッテリを搭載しており、充電時間は約2時間、連続音楽再生は約4.5時間、待受は約180時間。ボタンの下部に小さな穴が空いており、この中にマイクが入っているようだ。ハンズフリー通話も可能で、連続通話時間は約4.5時間だ。

 樽と樽の間には、タグのようなパーツがある。ここにNFCマークがあり、対応するスマホとワンタッチでペアリングできるようになっている。もう一度タッチすれば切断。接続を切ってから無操作の状態が約5分間続くと、レシーバ側の電源は自動的にOFFになる。手動で電源をOFFにする場合は、ボタンを約2秒押し続ければ良い。

樽と樽の間にあるパーツにNFCマーク。ここに対応スマホをタッチすれば、ペアリング完了だ

ナローにはならず、クリアで抜けの良いサウンド

 さっそく使ってみよう。今回はイヤフォン部に、XBA-Z5/A3/A2や、ShureのSE535を接続。プレーヤー側は、スマートフォンのXperia Z1と、ハイレゾプレーヤーであり、Bluetoothにも対応したAstell&Kern AK240を使っている。

XBA-Z5と接続したところ

 まず装着感について。イヤフォン部の装着感は、各イヤフォンによって異なるのでケーブル部のみについて書きたい。首の後ろに回して利用したところ、非常に良好。バッテリケースなどがある分、通常のケーブルより重いはずだが、それらが肩や首に乗っかって重量が分散されているのか、イヤフォンが重さで下に引っ張られるような事はない。

 便利なのがNFCによるペアリングだ。耳に装着した後で、「あ、ペアリングしてなかった」とか「ペアリングをすぐに解除したい」といった場合に、首の後ろに左手をまわしてNFCタグがついた部分をつかみ、右手でスマホをそこに近づければブラインドでもタッチができる。もっとも、後ろにいる人に「あの人、首の後にスマホを当てて何しているのだろう?」と思われてしまうかもしれないが……。

XBA-A2と接続したところ
XBA-A3と接続したところ
XBA-Z5と接続したところ

 Xperia Z1と、aptXコーデックで接続して聴いてみると、昔のBluetoothのイメージとは大きく違う、クリアで抜けの良いサウンドが楽しめる。主にイヤフォン部は「XBA-A3」を使ったのだが、A3のバランスが良く、付帯音の少ない中高域再生という特徴が、Bluetooth再生時でも損なわれていない。レンジも広く、ワイヤレス化する事で、ナローで不明瞭な音になったとは一切感じない。

 イヤフォン部はそのままで、有線接続とBluetooth接続を比較してみると、もちろん“差がない”とは言えない。違いがわかりやすいのは、音の情報量の多さ、低域の分解能だ。例えば「イーグルス/ホテルカリフォルニア」の場合、冒頭に出てくるベースの響きの中の細かな音、ボーカルのブレスや、口の開閉の様子などが、有線接続ではクッキリ聴き取れる。

 Bluetoothでは、それらが一歩後退する。有線接続にすると、音の明瞭度と細かさがアップするため、聴力が良くなったような錯覚を覚える。

 ただ、Bluetooth時の音も、決してモワモワした、ナローな音ではない。そのため、情報量が少なくなった事はわかるのだが、不快な感覚は無い。クリアで抜けの良い音である事に違いが無いので、あまりネガティブにならず、「確かに情報量は減ったけど、まあこれはこれでいいかな」という気持ちになる。

 ちなみに、AK240で有線/Bluetoothを聴き比べると、音質差が広がる。情報量の差に加え、AK240には強力なアンプが搭載されているので、有線接続ではその圧倒的なパワーを堪能できるが、Bluetooth接続ではそれが無くなってしまう。低域の沈み込み、深さ、音圧はやはり有線接続が圧勝だ。XBA-Z5/A3/A2の3機種で言えば、低音の再生能力が高いZ5などは、やはりAK240と有線接続して使いたいイヤフォンだ。

 逆に言えば、メイン音楽プレーヤーとしてスマホを使っているという場合は、有線からBluetooth接続に変えても、音質面で大きな差を感じなくて済むと言えるかもしれない。

 個人的な使い方として、朝の通勤時には、じっくり音楽を楽しむというよりも、radikoでラジオを聴いたりもするのでBluetoothを活用。帰宅時、電車の椅子に座れたり、静かな喫茶店に入った時などは有線接続でじっくり音楽を楽しむ……という使い分けをした。いずれも、お気に入りのイヤフォン部分が使えるので、有線/無線で大きく音色が変わらず、ストレスが少ない。これは非常に快適だ。

 ただ、イヤフォン部はとても小さいので、くれぐれも落とさないように注意したい。手袋をしたまま、駅で歩きながら有線/Bluetoothの交換をしようとして、外したイヤフォンを階段に落としそうになってヒヤッとした。最悪、紛失しかねないので付け替え作業は落ち着いた場所で行ないたい。

一度使うと離れられない。操作性には不満も

 概ね満足度の高い製品だが、1つ不満もある。それがボタンの操作性だ。前述のとおり、ボタンは1つしかないため、押し方のバリエーションが多すぎるのだ。例えば、音楽の再生/一時停止は“1回プッシュ”、曲送りは“2回プッシュ”、曲戻しは“3回プッシュ”、ここまでは良い。音量アップは、“1回プッシュ後、長いプッシュ”、ダウンは“2回プッシュ後、長いプッシュ”となる。

 音で表現すると「トン・ツー」で音量アップ、「トン・トン・ツー」でダウンだ。なんだかモールス信号でも打っているような気分になる。

操作ボタンは1つだけ

 覚えるだけであれば、さほど難しくはない。しかし、問題はボタンが押しにくい事だ。クリック感が明確でなく、樽の曲面に配置されているので力が入れにくく、爪の先で押したくなる。そのため、ちゃんと押せたのかどうか確信が持てない。

 「トン・ツー」で音量アップしようとして、「あれ、トンが認識されたかな?」を不安になり、再度押すと最終的に「トン・トン・ツー」になってしまい、逆に音が小さくなるという失敗がたまに起こる。

 Bluetooth接続ゆえ、操作してから、実際にスマホ側が動作するまでに一瞬タイムラグがあるので「押せたかな?」という不安にかられやすい。「トン・ツー」とやりたくて「トン・トン・ツー」になってしまい、慌てて「トン」からやりなおしても、どこが動作の区切りになっていたのかわからなくなり、トン・トン・トンと無駄に三回押してしまって別の曲が……という“てんやわんや状態”になる。

 慣れればミスも減るのだが、なぜこんな押しにくいボタンなのか、ボタンが1つだけなのかという疑問が残る。首の後ろで、何かに触れて、意図せず操作してしまう誤動作防止なのかもしれないが、それならば樽の蓋を開けて、その中にダイヤル式などのボタンを用意するなどの工夫が欲しかったところだ。右の樽を握るとボリュームアップ、左の樽でボリュームダウンなど、より直感的な操作でも良いだろう。ディスプレイなどが無く、ブラインドで操作するのが基本の製品だからこそ、今後の操作性の進化に期待したいというのが素直な感想だ。

 愛用のイヤフォンの活用の幅を広げるという意味でも、魅力的な製品だ。音質的に有線接続の代わりになるものとは言えないが、ハイエンドイヤフォンを接続しても、その魅力を楽しむに足る再生能力は備えている。

 気になるのは、ソニーが今年のCESで発表し、ウォークマンのZX2などが対応しているBluetoothの新コーデック・LDACだ。MUC-M1BT1がファームアップなどで対応するかどうかはアナウンスされていないが、可能であれば対応して欲しい。

 また、市場にはMMCX端子以外のイヤフォンが多数存在する。ソニーから登場する可能性は少なそうだが、別の端子のイヤフォンで利用できるBluetoothケーブルの拡充にも期待していきたい。

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ソニー
MUC-M1BT1

(山崎健太郎)