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富士フイルムで動画撮影、最初のオススメは「X-M5」一択!? 中判映像制作用カメラ「GFX ETERNA 55」の魅力も
2026年2月10日 08:00
「動画撮影を意識してミラーレスカメラを選んでみたい」というニーズが増えている昨今。しかし、何を買えばいいのか、どう選べばいいのか、なかなか難しい。大きいカメラのほうが何でもできそうだが、使いこなせないのではないか。小さいカメラは発熱ですぐに止まってしまうのではないか……などなど、動画撮影以前の悩みが尽きない。
そこで、そうしたカメラの企画・開発を行なっているメーカーに直接聞いてみようというのが本稿の主旨。今回は、2025年10月にラージフォーマット機「GFX ETERNA 55」を発売した富士フイルムに話を聞いた。小型のミラーレスカメラからハイエンドの映像制作用カメラまで揃え、レンズもシネマや放送用まで幅広く手がけるメーカーならではの知見に注目だ。
今回登場するカメラとレンズは以下の通り。
- FUJIFILM X-M5 実売136,400円(ボディのみ)
- FUJIFILM X-H2S 実売383,900円(ボディのみ)
- FUJIFILM X-H2 実売306,900円(ボディのみ)
- FUJIFILM X-S20 実売192,500円(ボディのみ)
【Xシリーズ ボディ(APS-C)】
- フジノンレンズ XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ 実売47,300円
- フジノンレンズ XF35mmF1.4 R 実売94,600円
- フジノンレンズ XF18-120mmF4 LM PZ WR 実売141,900円
- フジノンレンズ XF16-55mmF2.8 R LM WR II 実売189,200円
- フジノンレンズ MKX18-55mmT2.9 実売543,950円
- フジノンレンズ MKX50-135mmT2.9 実売593,450円
【Xマウント レンズ/シネマレンズ】
- FUJIFILM X half 実売118,800円
- FUJIFILM X100 VI 実売281,600円
【Xシリーズ(レンズ一体型)】
- FUJIFILM GFX100S II 実売847,000円
- FUJIFILM GFX ETERNA 55 市場想定価格235万9,500円前後
【GFXシリーズ(ラージフォーマット)】
- フジノンレンズ GF55mmF1.7 R WR 実売361,900円
- フジノンレンズ GF80mmF1.7 R WR 実売361,900円
- フジノンレンズ GF32-90mmT3.5 PZ OIS WR 実売786,500円
【Gマウント レンズ/シネマレンズ】
富士フイルムを味わうなら「X-M5」一択?
——これから動画を始めたい人に1台目として、オススメする機種はどれですか?
米田:小型軽量で、初めての一台としても取り入れやすい価格と性能のバランスに優れた“とっつきやすさ”から、「X-M5」をおすすめします。画作り機能のフィルムシミュレーションも、動画を意識した「ETERNA」(エテルナ)を含む20種類を搭載しています。
元々は静止画を想定した画作りが多かったのですが、動画ではETERNAや、映画フィルムの“銀残し”の雰囲気を意識した「ETERNA BLEACH BYPASS」(エテルナ ブリーチバイパス)を是非試していただきたいと思います。
X-M5では、天面にフィルムシミュレーションを直接操作するダイヤルが備わっているのも特徴です。好みやシーンに合ったルックを探しながら撮影を楽しんでいただけます。富士フイルムのカメラでは、こうした特徴的な機能や、ぜひお使いいただきたい便利な機能を物理ダイヤルとして搭載することも増えています。
大石:動画の上級者の方からはミラーレスカメラ「X-H1」(2018年発売)で搭載したETERNAが好評でした。これは富士フイルムの映画用フィルムが由来です。これからミラーレスカメラで動画を始める方でしたら、せっかくですからLog収録に取り組んだほうが面白いと思います。富士フイルム公式のLUT(ラット。ルックアップテーブル)も10種類を公開していて、富士フイルムらしい画作りの世界観を楽しんでいただけます。
米田:実はX-M5でも、本格的なF-Log2での撮影が可能です。さらに音声収録についてもTEAC社製のXLRアダプターが装着できます。この辺りは、カメラのクラスにかかわらず多くの機種で対応しています。初心者として動画撮影の楽しみを知ってもらうところから、経験を積んでいった先まで、長く使ってもらえることを考えています。
X-M5の新要素としましては、カメラが横位置の状態で9:16の縦動画を収録する機能があります。ショート動画を意識したもので、15秒、30秒、60秒といった長さで撮れます。タッチパネル式のモニターを生かして、画面上のボタンで主な操作がわかりやすいようにもしています。
大石:ある時点で開発されている基本的なカメラ機能は、機種のクラスに関わらず同じように搭載しています。Xシリーズのように多品種展開をしていますと、イメージセンサーや画像処理エンジンを同じにしたり、商品化の効率のためにも一貫性があったほうが良いと考えています。カメラの基本として提供したい部分は、どんなユーザーの方に向けても変わらないからです。
——サブの動画カメラとしてオススメする1台は?
大石:私は、サブにも「X-M5」を挙げたいです。先にお話ししたような万能性があります。
米田:「X-M5」はキットレンズ(XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ)と組み合わせても小型軽量です。Xマウントのレンズには「XF」と「XC」があり、CはCompact(コンパクト)の意味です。このレンズはXCですが画質に定評がありますし、電動ズームは動画向けの操作スタイルと言えます。
また、カメラ操作に詳しくなくても失敗を減らせる「商品撮影モード」「背景ボケモード」が備わっています。動画での美肌機能が内蔵されているのも「X-M5」のアピールポイントです。フィルムシミュレーションもそうですが、撮影後の編集に手間をかけず、“撮って出し”で高品質な動画が得られることも昨今は求められています。
米田:カメラ単体で身軽に動画を撮る助けになる機能としては、電子式の手ブレ補正があります。上位機のようにボディ内手ブレ補正はありませんが、歩きながらの撮影でもブレを補正できるモードがあります。「ブースト」モードでは、ブレ補正の強度を上げつつ、フレームの揺り戻しなどでも映像がカクつかず滑らかな動きになるように工夫しています。
大石:上位機の「X-H2S」などですと、やはり本格的にリグを組んで使われるケースが増えます。
——動画の“撮って出し”需要は大きいですか?
米田:かなりあると感じています。シネマ系の高画質需要だけでなく、最近では特に短納期かつ限られた予算内で高い映像クオリティが求められる案件も増えていますし、それで富士フイルムのカメラが選ばれているところもあります。トップエンドの映像制作者にも、グレーディングなどの手間が楽になったと言われます。
大石:最近はYouTubeやInstagramなどのライブ配信で、撮って出しの映像クオリティを活用する人も増えていると感じています。「富士フイルムのカメラで配信すると、見た目がシネマルックになる」「映画みたいなルックなのに生配信」という受け入れられ方もしています。たとえば「X-M5」に「XF35mmF1.4 R」を組み合わせて配信するようなイメージです。
実は社内のオンライン会議でも、「X-M5」をパソコンにUSB接続してWebcamモードで使うのが流行っているんです。
——富士フイルムの動画対応カメラについて、どのようなシリーズ/カテゴリー展開がされているか教えてください。
大石:カテゴライズの意識はないのですが、あえて言うとすれば、「X-S20」までと、それより上の機種に分けられるかなと思います。上位機ではCFexpressカードが使えたり、拡張性があったりという観点です。
——すでに他社のカメラを持っていて、本格的に動画に取り組むために乗り換えるなら、何がオススメですか?
大石:「X-M5」を潔いカメラとするならば、他のモデルにはファインダーがあったり、求める仕様で選んでいただけるようなラインアップになっています。逆に、映像だけでなく静止画も撮れるカメラという感じで、フィルムシミュレーションを使った写真撮影も楽しんでいただきたいです。映像業界の方々と話していると、“カメラ好き”な人が圧倒的に多いですよね。レンズが好きな人も多いです。
米田:例えば「X-S20」は、「X-M5」の上位にあたるミドルクラスです。さらにハイエンドの「X-H2」シリーズまで進むと、バッテリーが大きくなったり、HDMI端子もフルサイズになり、高速なCFexpressカードに対応していてProRes HQが内部収録できたり……とレベルアップしていきます。受け皿が広く、ニーズに合わせて選んでもらえるラインアップだと自負しています。
大石:「X-H2S」ですと、4K120pのハイスピード記録も可能です。やはり映像作品を制作するとなると、スロー演出は求められます。
スチルとシネマ、レンズはどう違う?
——Xシリーズの動画機能は、どのような部分に注力して開発していますか? レンズにも工夫がありますか?
大石:やはり画質に注力しています。富士フイルムには映画用フィルムの実績もありますし、特に人肌の画作りや階調の繋がりをとても大事にしています。ラージフォーマットのGFXでは、Log記録でもより広色域なF-Log2 Cに対応していますから、安心して撮っていただきたいです。これで編集に耐える十分なクオリティが得られます。
スチルとシネマのレンズで異なるのは、シネマ専用レンズになると解像度が多くても8K(約3,300万画素)ですから、1億画素を解像する必要はないわけです。シネマ用のレンズは、シネマで使われる解像度の中で最適化されているのです。
米田:動画に合うレンズという点では「XF18-120mmF4 LM PZ WR」があります。一定速で動く電動ズーム機能がありますし、フォーカシングによって像倍率が変わってしまうフォーカスブリージングの抑制も意識しています。
また「XF16-55mmF2.8 R LM WR II」も、絞りリングのクリックをなくす“デクリック”機構が入っているのは動画を意識してのことです。スチルとシネマのレンズは境目がなくなってきていますから、その両方を見つつ、どこにバランスポイントを置くかという考え方になっています。
——デジタルカメラの動画機能は、NDフィルターやジンバル、マイクなど、そのポテンシャルを発揮するのに別途必要な機材や知識が多いです。富士フイルムのカメラにはどのような初心者サポート機能がありますか?
大石:手ブレに関しては、ボディ内や電子式の補正機構により、カメラ単体でもブレを抑えられるようにサポートしています。
米田:実はAPS-Cコンパクトの「X100」シリーズで動画を撮る方が多いんです。ご存じの通り“動画”に注力したカメラではないのですが、NDフィルターを内蔵していることが気に入られています。NDの減光量は「X100 VI」だとシャッタースピード4段分です。マイク端子も備わっています。
ラージフォーマットの魅力
——35mmフルサイズより大きな、GFXのラージフォーマットで撮る動画の魅力について教えてください。
大石:「GFX100S II」で映像を撮り始めてから感じるのですが、ラージフォーマット(約44×33mmのセンサー)で撮影した映像には“違和感”というか、いつもと違う雰囲気があります。今年の「お正月を写そう」のTVCMは「GFX ETERNA 55」で撮っていますが、「やっぱり違うな」と思います。
大石:これは立体感や奥行き感から来るもので、まさにラージフォーマットならではです。富士フイルムのイベントを映像配信するときも「GFX ETERNA 55」で撮っていますが、現場で見ていても、出来上がった映像を見ても、やはり立体感や質感に違いがあります。1億画素を超える超高画素だからというのもありますし、フォーマットの大きさもあります。写真でいう35mmと中判の違いのような感覚です。
米田:最終的に同じ画面で見るとしても、インプットの違いが出ますね。
大石:GFXシリーズに期待されているのは、やはりフォーマットの大きさです。これまでラージフォーマットというと、ビスタビジョン、IMAX、ARRIのALEXA 65など、ハイエンドすぎて使うチャンスがなかなかありませんでした。そうした世界観のフォーマットで撮れるデジタルカメラが出て、映像制作用のカメラ(後述の「GFX ETERNA 55」)も出て……という状況になりました。
ついに登場した映像制作用カメラ「GFX ETERNA 55」
——映像制作用カメラ「GFX ETERNA 55」は、どのような機種ですか?
大石:起点はミラーレスカメラの「GFX100 II」でした。これを開発しようと考えた頃には「GFX100S」という機種があり、ラージフォーマットで4K30pが撮れました。そこでの注目度や期待感が高かったので、新センサーと新プロセッサーの採用で、静止画・動画のハイブリッドなGFXシリーズのフラッグシップ機を作りたいと考えました。映像制作向けの機材としては、4K60pのスペックが必須だと考えています。
そして「GFX100 II」のポテンシャルを知った多くの方々に言われたのが、「これで映像制作用カメラは作らないのか?」でした。これだけ大きなセンサーを持っていて、“富士フイルムの色”で撮れるのに、という意味です。社内でも皆、映像制作用カメラを夢見ていました。
富士フイルムの社内には、デジタルカメラ、放送、シネマのそれぞれの世界に関わるメンバーがいて、それらを世界中に販売しているメンバーもいます。シネマルックなレンズを発売したり、世の中がシネマ寄りになったこともあり、いよいよゼロベースで「本気で作ってみますか」という流れになりました。「GFX ETERNA 55」の“55”とは、GFXシリーズが採用する44×33mmフォーマットの対角線長55mmが由来です。
デジタルカメラと映像制作用カメラでは、出てくる画は同じであるべきですが、使い勝手に関わる“お作法”が違います。そのため、いつもよりプロジェクトメンバーも多めに集めました。「GFX ETERNA 55」の構想は2022年からありました。
——お作法とは、どんなことですか?
大石:言葉の違いです。「シャッタースピード」ではなく「シャッターアングル」と呼ばれていたり、フレームレートもプロジェクトフレームレートと記録用フレームレートがあります。イメージセンサーのデュアルゲインというのも、静止画では馴染みがありません。もともと放送業界に関わっていたメンバーもいるので、そうした部分の勉強から始めました。ただ面白いのは、Logや色再現といった“クオリティ”のことについては、静止画も映像も関係なく共通認識として話せるんです。
米田:動画機能の歴史で言うと、2018年発売のAPS-C機「X-T3」が転換点です。4K 60pを撮れるのは、当時は先進的でした。その当時もインターフェースなど動画に関する取り組みはやっていましたが、画作り以外の知見は不十分でした。そのため「X-T3」以降で学んでいって、シネマレンズも発売し、「X-H1」で初めてボディ内手ブレ補正も搭載し、2020年発売の「X-T4」で静止画と動画のハイブリッドを実現したのが、ラージフォーマットの「GFX100 II」に生きています。
——映像制作用カメラの「GFX ETERNA 55」と、ミラーレスカメラのGFXシリーズでは、主に何が違いますか?
大石:ローパスフィルターが入っていて、電子式の可変NDフィルターがあり、外部バッテリーで動きます。富士フイルムのカメラはX-Trans CMOSのようにローパスフィルターを外していく歴史でしたが、ここへ来てもう一回入れるという逆の思想がありました。GFXシリーズはレンズとセンサーが非常に高解像なので、偽色やモアレも着物や本当に高周波な模様のあるスーツでは発生します。このリスクは、映像制作の現場で使われるカメラとしては排除しなければいけません。
GFXシリーズにローパスを付ける難しさは、大きなフォーマットのセンサーに、同じく大きなローパスフィルターを組み合わせることにあります。ローパスフィルターは水晶の塊みたいなものです。それを複数枚貼り付けていく必要があり、これらの水晶と位相板の厚さや平面性を保つためには、加工も貼り合わせも非常に難しい技術になっています。さらに、電子式可変NDフィルターが出入りするような可動部もある中で……となると、この「ラージフォーマット用のローパスフィルターを精密に搭載する」というのは非常にチャレンジングでした。
——電子式可変NDフィルターとはどんな仕組みですか?
大石:液晶のような仕組みで、濃度を細かく調整できます。こだわりは、明るさの変化の滑らかさです。通常NDフィルターというと入れるか入れないかですが、バリアブルとするからには滑らかに、かつスピーディーに変えたいと考えました。濃度をダイヤルで変更していると、可変NDフィルターの枠を物理的に回しているかのようなレスポンスが得られます。
——筐体について、映像制作用カメラならではのお作法はどこですか?
大石:フロントとサイドをマグネシウムにしています。堅牢かつ、イメージセンサーとレンズの光軸をずっとキープする必要があります。GFXネイティブのGFマウントにアダプターを組み合わせ、映像制作用カメラで一般的なPLマウントレンズの使用も想定されているので、どんな重さのレンズが取り付けられるかわかりません。
大石:また、操作部は本体の左右にほぼ同じように配置しています。1人で撮影しながら見るモニターは被写体側から見て右側に欲しいですし、複数人のチームで別の人が見る場合には逆側に欲しくなるからです。なので両方に対応できるようにしました。そして画面UIも、既存のXシリーズにこだわらず、現場が使いやすいようにゼロベースで作り直しました。
大石:2024年に「GFX ETERNA 55」を開発発表して以来、日々アップデートしながらここまで来ました。ようやくこれが世に出たがゆえに市場からの声もいただけるかなと思っています。
注目しているトレンドは「ワイヤレス」と「リモート」
——いま、動画界隈で注目しているトレンドは何ですか?
米田:プロジェクトベースでの納品ということで、カメラのWi-Fi機能を使ったAdobe Frame.io Camera to Cloudへのダイレクトアップロードに対応しています。軽めのProxy動画だけを先にクラウドにアップロードして、仮にグレーディングなどの作業をしておいて、本データに適用するというワークフローが可能です。映像大量生産の時代になってきているので、即納性、即時性、ワークフローの短縮が今後のトレンドのひとつの方向性かなと思っています。
大石:iPhoneをネットに繋ぐのと同じ感覚で、カメラとFrame.ioのサーバーを繋ぎます。たまたまテザー撮影やリモート録画機能用のファイルトランスミッターを開発していたところでAdobeと話をして、これらに使うプロトコルがFrame.ioへのアップロードにも使えることがわかった、という幸運がありました。
米田:リモート録画機能は、インタビュー撮影に複数台のカメラを設置するような映像撮影を想定していました。ネットワークを使った映像制作ワークフローは今後のトレンドになるかなと思っています。複数台のリモート録画をiPadやスマホから操作するようなイメージですね。
すると、シネマレンズ品質のAFレンズ「GF32-90mmT3.5 PZ OIS WR」が生きてきます。マニュアルレンズでも外付けの電動フォローフォーカスなどは使えますが、これは元々が電動のレンズですからスマートにリモート操作できます。
大石:「X-M5」に組み合わせるような、Bluetoothリモコン付きのグリップ(三脚グリップ TG-BT1)でも「GFX ETERNA 55」の撮影操作ができます。リモート撮影はブラウザベースの機能なので、撮影監督がiPhoneの画面を見ながらTG-BT1で画角を調節するような使い方が可能なんです。
よりハイエンドのトレンドですと、この手のカメラはコンサートや舞台といった中継でも使われはじめています。もちろん富士フイルムだけの需要ではありませんが、シネマ系のカメラへの期待値が高まっています。こうした意味でもリモートはトレンドと言えます。
放送用でいうと、スーパー35とフルサイズ対応のDuvoというレンズがあります。箱型からENG用までありますが、これも根強い需要があります。他社の映像制作用カメラに組み合わせて運用はリモート、ということができます。
米田:リモートのために電動も意識しつつ、映像撮影は手の感覚を大事にされている方も多いので、AFレンズのMF操作感も意識しています。「GF55mmF1.7 R WR」や「GF80mmF1.7 R WR」も基本的にはフォーカスを電気的に動かしていますが、そのタイムラグを減らすなどの操作感向上をファームウェアアップデートで実現しています。きっかけは、映像制作を意識した「GFX100 II」や「GFX ETERNA 55」が登場する過程で、撮影監督などの方々から出た要望です。そのためレンズ開発ではメカと電気のバランス感覚も意識しています。
——レンズの光学設計にも特色はありますか?
大石:シネマレンズで電動というのは珍しいです。電動でもメカ直結のような操作感を……という要望やノウハウは、Xシリーズ用のレンズ開発技術からも来ています。放送用やシネマレンズでは、操作リングの配置のこともあり、フォーカスレンズは前側にあります。しかし先の「GF32-90mmT3.5 PZ OIS WR」や「FUJINON LA30x7.8BRM-XB2」は後ろにフォーカスレンズがあるのでフォーカス群を小さくでき、レンズ自体の小型化やAF動作のレスポンス向上を支えます。こうしてミラーレスカメラ用レンズの発想がシネマレンズにも投入されているのです。
——最後に、富士フイルムの動画カメラで特に注目してほしい点を教えてください。
大石:ようやく「GFX ETERNA 55」がお客様の手元にも届き始めましたので、これから出てくる作品への期待があります。「これがラージフォーマットの画なんだ!」というのは、当社の「お正月を写そう」のTVCMなどでも見ていただけたらと思います。その色表現なども感じていただき、これがスチルカメラにも載っていますよ! という部分に期待していただきたいです。
米田:当社のラインナップは、どの機種でもある程度は共通したことができるようになっています。どちらかというと、搭載機能でクラス分けるというより上に行くほど現場向けの装備などをプラスしていく発想です。幅広いラインアップから要望に合った機種を選んでいただけるように揃えています。
また、画作りを長年やってきたメーカーなので、全てのカメラに共通する軸として「色」があります。Logで編集するにも、フィルムシミュレーションの撮って出しをするにしても、そういった色による映像の仕上がりを体感していただきたいです。
まとめ:答えのない「画質」を追い求める富士フイルム
富士フイルムのデジタルカメラは、ハードとソフトの両面で独自の世界観を構築し続けている。きっかけは2011年に発売されたAPS-Cコンパクト「X100」および2012年発売の「X-Pro1」だろう。「デジカメの進化も行き着いたな」と言われる中で、カメラを操る楽しさ、手にする喜びに訴えかけ、独自のX-Trans CMOSによる写りと組み合わせて写真愛好家の心を掴んだ。
そのため当初こそ“写真機”のイメージだったものの、着実に動画機能も進化・充実させ、ついにハイエンドの映像制作用カメラを発売するまでになった。しかし、社内にはもともと動画の素養とノウハウがあったのだ。その自負はやはり画質(色味や階調再現性)であり、写真愛好家が好むフィルムシミュレーションは今や動画のライブ配信=“撮って出し”にも大活躍。これまでカメラメーカー数社にも同様の取材をしてきたが、「画質」という明確な答えのない道をトコトン追及する富士フイルムは、きっと映像の世界でもオンリーワンのポジションを築いていくだろう。


























