ミニレビュー

スマホより快適にお風呂TV。東芝のポータブルレグザを試す

 世の中には長風呂が好きという人と、できれば手短に済ませたいという人がいる。筆者はシャワーを浴びる以上の時間は掛けたくない後者寄りの人間だが、それでも肌寒いと感じる夜など、たまにはちょっと長めに風呂に浸かりたいな、と思うこともある。そんなときのお供として、東芝ライフスタイルの防水10型「レグザポータブルテレビ」(10WP1)を使ってみた。

レグザポータブルテレビ 10WP1

 東芝REGZAブランドの名を関していることからもわかるように、10WP1はバッテリとチューナを内蔵した小型テレビ。“ポータブルなレグザ”と言っていいだろう。IPX5相当の防水仕様で、お風呂だけでなくキッチンなどの水回りでも利用できる。実売価格はネットショップなどでは3万円台前半ほどで、3万円を切っているところもある。

 見た目の特徴は、横から見たときの逆三角形のくさび形デザイン。しかし角を丸めた優しい印象だ。内蔵バッテリで最大約4時間駆動できる。テレビ受信用のロッドアンテナは背面に格納されている。このアンテナはスマホなどが備えているテレビ用アンテナと同じくらいの細さながら長めで、先端のプラスチックカバーの重みもあるため、触れると簡単に左右に跳ねるほど柔らかい。折ってしまわないよう、扱いには気をつけたい。

アンテナを伸ばしたところ
アンテナは背面から引き出す。細くて長い

 右側面にはLED付きの電源ボタンがあり、電源オン時は白、充電時はオレンジに点灯する。その上には音量ボタンがある。下部には2Wのスピーカーがあり、同じものが左側面にもある。

右側面に電源ボタンと音量ボタン、スピーカー
左側面はスピーカーのみ

 背面のアンテナを格納している棒状の突起に指をかけて持ち運ぶこともできるが、手が濡れていると表面がツルツルなので滑って落とす可能性もある。下から掴んで持ち運ぶほうが安定するだろう。

背面
突起に指をかけてみたところ
イヤフォン端子と節電ボタン

 イヤフォン端子はキャップレス防水。隣には節電ボタンを備え、画面輝度を抑える節電モードにしたり、画面オフにしたりできる。パッキン付きの防水カバーを開けると、充電/給電用のACアダプタ用コネクタ、USB端子と外部アンテナ端子、SDカードスロットがある。後述するようにUSBメモリ/USB HDDやSDカードを挿して、保存されている写真や動画、音楽ファイルを再生可能だ。

 ただし、SDカードは中に収めてカバーを完全に閉められるが、USBメモリは大きさによっては閉まりきらず、その場合は防水にはならない。画面にも「防水カバーを閉めて使ってください」という警告が出る。

 外形寸法は262×78×186mm(幅×奥行き×高さ)、重量は1.2kgでモバイルノートPC並み。付属品は充電用ACアダプタと防水仕様のリモコン。チャンネル切り替えなどの基本的な操作はテレビ単体でも行なえるが、1局ずつの切り替えになるので、見たいチャンネルが決まっていたりザッピングしたいのであればリモコンが便利だ。

防水カバーの下に電源入力、USB、外部アンテナ端子、SDカードスロットを備える
付属のリモコンも防水仕様

10.1型 IPSパネルで見やすさ良好

 さっそく受信チャンネルのスキャンなど初期設定を終えて、テレビを点けてみる。10.1型/1,366×768ドットのIPSパネルを採用しているため視野角が広く、どの角度からでも見やすい。フルセグ対応なので、きちんと放送波を受信できていればとても綺麗に映る。

 番組表は文字が大きく見やすい。普段メガネを掛けている筆者は、お風呂で外すと細かい文字などが見えづらくなるので、地味ながら嬉しいポイントだ。放送中の番組であれば、各番組の詳細画面から「視聴」ボタンを選ぶとすぐに放送画面に遷移できる。

番組表を表示したところ
番組詳細から放送中の画面に遷移できる

 デフォルトでは電源をつけるとテレビ機能が立ち上がるが、「スタートメニュー」から東芝のレグザサーバーやタイムシフトマシンとの連携機能や、メディアプレーヤー、設定画面などを呼び出せる。今回は試していないが、対応機器があれば過去番組をザッピングしたり、ざんまいプレイといったレグザシリーズならではの機能が楽しめる。

 メニュー移動やチャンネル変更などの操作は、前面下部にあるタッチセンサーのLEDライトが点いている間に行なえる。操作するには一度右側の「Touch Menu」を触る必要があり、何もしないでしばらくすると、LEDライトが消えてタッチ操作を受け付けなくなる。水濡れによる誤動作を防ぐためだろう。リモコンを使うことで、明るさやコントラスト、色合い、バックライトの明るさ調整などの細かな設定、操作が行なえる。

前面下部のタッチセンサーで操作
レグザサーバーやタイムシフトマシンとの連携機能も

 ここまでは準備としてダイニングで試した。ところがいざお風呂に持ち込んでみると、テレビがほとんど映らない。筆者宅の風呂は部屋と部屋に挟まれ、外に面した場所がどこにもないため、非常に電波状況が悪いのだ。しかし後述するように、地デジ受信ができなくても、本体のWi-Fi機能を使って番組視聴できる。

番組を見ながらサブメニューで各種設定切り替えなども
自宅の風呂では電波状況が悪く、テレビが映らない

Wi-Fi対応でレグザサーバーなどDTCP-IPクライアントに。nasne番組視聴も

 10WP1はWi-Fi機能を内蔵し、宅内ネットワークに繋いだレグザサーバーなどとワイヤレス連携する「レグザリンク・シェア」に対応している。DLNA/DTCP-IPサーバーとの連携も可能で、東芝の機器ではないが、筆者宅にあるnasneや、ソニーのBDレコーダ「BDZ-EW500」で録画した番組をWi-Fi経由で見ることができた。

スタートメニューで機能切り替えができる
自宅のWi-Fiルーターに5GHz帯で接続してみた

 設定画面から宅内のWi-Fiルーターに接続し、「レグザリンク・シェア配信機器選択」の画面に切り替えると、ネットワークにつながったDLNA/DTCP-IPサーバーが見える。Xperiaなどのスマホが備えるメディアサーバー機能や、「BubbleUPnP」など端末をDLNAサーバー化するアプリなどでも認識でき、ストレージ内の階層を参照できた。

「レグザリンク・シェア配信機器選択」から接続したいサーバーを選べる
nasneのライブチューナフォルダを開く

 お風呂で放送を受信できなくても、Wi-Fi環境とDLNA/DTCP-IPサーバー対応機器があれば、録りためた録画番組を楽しめる。5GHz帯でのWi-Fi接続をサポートしているので伝送される映像は安定している。テレビ番組を録画するとき、筆者は最高画質(DR画質)しか使わず、ビットレートも高いが、再生時にカクつくといったこともなくスムーズに視聴できた。また、nasneの「ライブチューナ」機能を使い、放送中の番組をほぼリアルタイム視聴することもできた。綺麗な画面で見るテレビ番組はやはり気持ちがいい。

外でも活用できるポータブルなレグザ

 基本的には屋内利用を想定したモデルだが、防水仕様なので屋外でも使えないことはない。今月初め、北海道・函館へ旅行する機会があり、10WP1を旅行カバンに入れて旅先に持ち出してみた。

函館を一望できる函館山にて

 4月ともなると北の大地とはいえ、雪が積もっているところはほぼ見当たらなかった。くもり続きで青空は拝めなかったが、意外とそれほど寒くもならず、市内観光にはちょうどいい気候だった。

「AIR」神尾観鈴の実家のモデルとなった家が函館にある。人気の蕎麦屋のようで、家族連れの客足が絶えない
懐かしい雰囲気の市電が走っていた

 投宿先は部屋に温泉が付いているタイプで、ゆったりお湯に浸かりながら人目を気にすることなく10WP1でテレビを楽しんだ。チャンネル設定は関東圏のままだったので、現地でチャンネルスキャンをもう一度やり直す必要がある。ここでもフルセグの電波は届かず受信できなかったが、ワンセグ受信で北海道のローカル番組を見ることができた。

個室温泉にて北海道のローカル番組を視聴中

 旅館には大型液晶テレビが設置されていたが、基本的には放送番組や提供されているVODしか見られない。しかし10WP1はSeeQVaultに対応しているので、対応するレコーダやメモリーカード、USB HDDを持っていれば、録画番組をあらかじめ書き出しておいて持ち出すこともできる。

 SDカードなどに保存されたJPEG静止画やAVCHD動画、MP3の音楽ファイルを再生可能なので、旅先で撮った写真や動画をフォトフレーム風に楽しむのもいいだろう。パナソニック LUMIX G7で撮ったAVCHD動画で再生できるか試してみたところ、1080/60pはコマ落ちが激しかったが、1080/60i/30p/24pであればスムーズに再生可能だった。

Bluetoothスピーカーにも。カメラ用三脚で自立も!?

Bluetoothスピーカーとしても使える

 テレビながらユニークな機能として、スマホなどとペアリングしてBluetoothスピーカーとして使える。音楽を流しながら画面を消しておくことも可能だ。屋内でスマホからradikoなどのラジオ番組を流したり、屋外でBGMとして開放感のある音楽を流してみるといった使い方ができそうだ。

 少し変わったポイントは底面に三脚穴が付いていることで、一般的なカメラ用三脚が普通に装着できる。例えば、車でキャンプ場に出かけるときに一緒に持っていき、屋外で画面を見やすい高さに設置したり、地面に直置きしたくないといったときに重宝するだろう。本体の重さが1kg以上あるので、設置時はバランスが崩れないよう三脚の脚を大きく開き、あまり高くならないようにして安定させたほうが良い。

底面に三脚穴がある
Velbonの三脚につけてみた

テレビを見るならやっぱり専用機がいい

 お風呂でテレビを見たいのであれば、チューナ内蔵で防水対応のスマホやタブレットを持っていれば手軽に実現できる。非防水の機種でも自己責任で、ジップロックなどに入れて見ることもできなくはない。

 だが10WP1と使い比べると、こちらはテレビとして作られていることもあり、10.1型の大画面ならではの迫力など、やはり受ける印象が違うと感じることが少なくなかった。それにスマホ/タブレットは日常的なコミュニケーションツールであり、テレビを見ていたらいきなり電話やSNSの通知が来て慌てたり、集中力がそがれるといったことも起こりうる。個人的には、スマホをお風呂に持ち込む前にWi-Fi接続のみにしておいたり、通知を一時的に止めるといったわずらわしい操作をしなくて済むので、テレビを見るならやっぱり専用機がいいと思う。

 キャンプなどで屋外活用できるところも要注目ポイント。実売3万円前後で手に入るのも魅力的だ。これから気温が上がって長風呂の機会は少なくなるかもしれないが、梅雨などの気温が下がる時期にお風呂でテレビを楽しみたい人や、行楽シーズンに外でテレビが必要な人におすすめしたい。

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10WP1

庄司亮一