ミニレビュー

ライター業が捗るお手頃HDMIキャプチャ「AVT-C875」

機器レビューの画面キャプチャに大活躍。ゲーム配信も

 AVerMediaの「AVT-C875」は、HDMIで映像や音声を出力できる機器の動画をキャプチャできるキャプチャデバイス。具体的にはゲーム機のプレイ動画をキャプチャできるという製品で、AVerMediaの製品サイトでもゲーム動画を簡単にキャプチャできることが大々的に謳われている。

 しかし筆者がこの製品を購入した理由はゲーム動画のキャプチャではない。HDMI搭載機器の画面を簡単にキャプチャできるという本質的な機能が、ライター業務で活用できそうと考えたからだ。

AVT-C875

 製品レビューにおいて機器の画面写真は必要不可欠だが、キャプチャが簡単に撮影できるパソコンやスマートフォンと異なり、テレビはそのようなキャプチャ機能を備えているものは少ない。そのためレコーダなどのHDMI機器をレビューする際は、画面をカメラで撮影してキャプチャ代わりにしているのだが、撮影のたびにライティングを整えたり、テレビとの撮影角度を整えたりという作業が地味に面倒に感じていた。

 しかし、この製品を使えばHDMI機器の画面も簡単にキャプチャできるため、わざわざ撮影環境を整える手間も省けるし、カメラで撮るよりも美しく正確な画像を入手できる。

 また、ゲームのライブ配信にも興味があった。最近ではPlayStation 4(PS4)がゲームのライブ配信機能を標準で搭載しており、任天堂もTwitterでYouTubeに関するゲーム動画のアップロードを許容する発表をしたばかり。ゲーム業界がライブ配信容認の方向へ向かう中で、ゲームのライブ配信を試したいという興味も手伝ったのも購入の理由だ。

手頃な価格とPCレスの動作が魅力

 数あるHDMIキャプチャ製品の中でも、AVT-C875は2万円程度と比較的手ごろで、PCに接続しなくても単体でキャプチャできるモードも魅力だった。録画はSDカードを使うため容量に制限もあるものの、わざわざパソコンを立ち上げる必要がないというのは嬉しい。1080p録画対応で、入力は最高1,920×1,080/60fps、録画品質は最高1,920×1,080/30fpsとなる。

AVT-C875を手にもったところ
iPhone 5sとのサイズ比較
PC録画モードと単体録画モードの切り替えスイッチ
接続インターフェイス。左からPS3/コンポーネント用の専用端子、HDMI入出力、音声入出力
録画メディアはSDカード。Class 10以上が推奨されている
電源供給およびPC接続用のMini USBポート

 単体録画の方法は非常にシンプル。録画用のSDカードを装着した上でHDMIで機器間に接続し、USBを接続して電源がオンになれば準備完了。あとは本体のスイッチが単体録画モードになっていることを確認した上で本体上面のボタンを押すだけでいい。HDMIケーブルやUSBケーブルも同梱されているので、本体を購入すればすぐHDMIキャプチャが利用できる。

 ただし、本体には液晶ディスプレイなどは備えていないので、正常に録画できているか確認するために、状態を示すLEDの点灯パターンを覚える必要がある。全体が赤く光っている時は待機、赤くゆっくり点滅している時が録画時だ。赤と青が交互に点滅した場合はエラーが発生している。

接続イメージ
ランプの状態で動作状況を確認

 また、単体モードは画質を本体のみで変更できず、PCと接続する必要がある。Windowsの場合は専用ソフト「PC-Free Utility」、Macの場合は後述するキャプチャソフト「RECentral」から変更が可能だ。

Windows用の単体録画モード画質変更ソフト「PC-Free Utility」
MacはRECentralの設定から単体録画モードの画質を変更できる

PC録画モードは詳細設定も。ライターとしては静止画キャプチャが便利

 動画ではなく静止画をキャプチャしたい場合は、動画を切り出すのもいいがパソコンの専用ソフト「RECentral」を使えばもっと簡単にHDMI映像がキャプチャできる。ソフトはWindows版とMac版があり、Mac版ではライブ配信機能が利用できないほか、インターフェイスも大幅に異なるが、キャプチャ機能に関してはほぼ同等の利用が可能だ。

Windows版RECentral
Mac版RECentral

 PCでキャプチャする場合は本体のスイッチをPC録画モード側に入れ、USBでPCと接続してからRECentralを起動。操作はWindows版とMac版で異なり、Windows版は左側のメニューから「録画」を選んだ後に赤い丸ボタンを押せば録画待機モードへ移行。さらに画面下部の録画ボタンや静止画ボタンからキャプチャを保存できる。画質を変更したい場合は丸ボタンの周囲にある「初級者向け」、「中級者向け」、「上級者向け」から簡単に設定可能だ。

Windows版のキャプチャは左側の「録画」を選択してから赤い丸ボタンをクリック
ミラーレス一眼「NEX-5R」のHDMI出力を取り込んだところ。画面下部の丸ボタンで録画できる
一般設定
初心者用設定
中級者設定
上級者設定

 Mac版のRECentralはもっとシンプルで、操作部の「REC」ボタンを押すだけで録画が可能。静止画を保存したい場合はRECボタン横のカメラアイコンをクリックすればキャプチャできる。なお、Windows版と異なり、Mac版では静止画の連写キャプチャモードがあるため、動きの速い画面を静止画で抑えたいときなどは便利だ。

静止画の連写キャプチャモードも搭載
設定画面は1種類

 HDMIで接続したものは基本的にキャプチャできるので、デジタルカメラの画面インターフェイスなども簡単にキャプチャできる。一方で、HDCPでコピーコントロールされている映像はRECentralではキャプチャできない。

HDCPでコピーコントロールされている場合RECentralではキャプチャできない
WindowsやMacのキャプチャ機能で静止画キャプチャ

 今までHDMI関連の機器レビューのたびにカメラで撮影する環境を整えていたことを考えると、パソコンで簡単にキャプチャできる環境は非常に便利でもっと速く導入すれば良かったと悔やまれるほど。

ライブ配信はUstream、ニコニコ、YouTubeなど幅広いサービスに対応

 キャプチャメインで購入した製品だが、ゲームのライブ配信にもチャレンジしてみた。なお、前述の通りライブ配信が利用できるのはWindows版のRECentralのみで、Mac版では利用できない。

 今回はWii UのHDMI出力などでテストした。もちろんゲーム以外でも著作権保護がかかっていない映像であれば、同様の設定でライブ配信が行なえる。

 操作は録画とほぼ変わらず、左側のメニューから「ライブ配信」を選んだ後に画面中央の「ログイン」ボタンから利用したいライブ配信サービスを選択、ユーザーIDとパスワードでログインする。正常にログインが完了した後は青く点灯する丸ボタンを選ぶとライブ配信の待機状態に切り替わり、以降はキャプチャと同様に画面下部の配信ボタンを押せばライブ配信を開始できる。

ライブ配信機能を搭載したWindows版RECentral
画面下部中央のボタンでライブ配信を開始できる
ライブ配信サービスはUstream、ニコニコ生放送、YouTube Live、Twitchに対応。独自サーバーも設定できる

 ライブ配信サービスは「Ustream」、「ニコニコ生放送」、「YouTube Live」、「Twitch」と幅広く対応しているが、対応状況はサービスごとで異なる。UstreamはIDとパスワードを入力するだけだが、ニコニコ生放送はWeb側で一度配信を開始し、配信設定で「外部配信ツール」を選択してからRECentral側でログインすると配信できるようになる。

 また、YouTube LiveはAVerMediaのWebサイトに公開されているRECentralでは配信できなかったものの、サポートに問い合わせたところ海外でリリースされているRECentralを使うことで解決した。

 操作は非常に手軽だが、Ustreamに関しては配信するチャンネルが選択できず、YouTube Liveも配信時間などをRECentralから設定できないため、YouTubeのダッシュボードで配信イベントを修正しないと正しく配信できないといった課題もある。このあたりはある程度ライブ配信慣れしていないと何が起きているのかわからず、戸惑うかもしれない。

 こうした操作の癖はあるものの、慣れてしまえば操作はシンプルで使いやすい。また、動画のエンコードをAVT-C875が行なうため、PCのスペックが低くてもライブ配信できるのが嬉しい。Bay Trail-TことAtom Z3770搭載のWindowsタブレット「QH55/M」でも問題なくライブ配信が可能だった。

Wii U「マリオカート 8」のAVT-C875を使ったライブ配信では警告されてしまった……

 なお、ゲームのライブ配信について、任天堂がYouTubeの動画を「不適切なものを除いて」許可するとアナウンスしている。ダイジェストながらWii U「マリオカート 8」がYouTube投稿機能を搭載しているので、Wii UのHDMI出力とAVT-C875を利用してYouTube Liveでマリオカート8のライブ配信を試してみた。

 ところが配信開始してものの数分も経たないうちに警告が表示され、管理画面でも「次に違法な配信を行なったらアカウントを停止する」という通知が届いてしまった。Wii U公式の機能以外配信方法なので「不適切」なのかと思いきや、Wii U搭載のYouTube機能でアップロードした動画も管理画面で「第三者のコンテンツと一致しました」という警告が表示されてしまった。

 どうやらYouTube側の問題であるらしく、ゲーム機の公式配信機能を使ったとしてもシステムにより警告が届くことがあるようだ。アカウント停止は絶対に避けたいので、現時点ではゲーム機の公式機能を含め、やや不安が残るところだが、こうしたライブ配信の利用環境が整備されることを待ちたい。

 ゲームキャプチャ機能が強く押し出された本機だが、機器レビューを担当するライターとしては、とにかくHDMI機器の画面キャプチャツールとして便利だ。2万円程度と価格も十分にコストパフォーマンスが高く、買って良かったと満足している。

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甲斐祐樹