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【レビュー】アップルの新イヤフォン「EarPods」を聴いてみた

−イヤーピース無しでスポッと固定。素直な高音質


新イヤフォン「EarPods」

 「iPhone 5」や「第7世代iPod nano」、「第5世代iPod touch」といった新製品を発表したアップル。いずれも注目製品だが、もう1つ注目したいのがこれらの新製品に付属し、単品販売もされる新イヤフォン「EarPods」だ。

 カナル型(耳栓型)でも、インナーイヤー型でもない、独特のデザインが特徴。なお、iPhone 5は9月21日発売、第7世代iPod nanoと第5世代iPod touchの発売は10月と、少し先になるが、「EarPods」は既に発売されており、Apple Online Storeでの単品価格は2,800円となっている(直販サイトでは1-3営業日で出荷)。

 この「EarPods」を入手したので、さっそく音を聞いてみたい。




■耳穴手前の空間で固定

装着したところ

 カラーはホワイトで、素材はプラスチック。わずかに光沢がある。気になるのは形状で、楕円形の片方が少し膨らんだような何とも言えないカタチをしている。ホワイト&光沢と相まって、棒の先に白い碁石がついているような印象だ。

 ユニットの前面が大きく空いているインナーイヤーや、ノズルの先にイヤーピースを取り付けるカナル型とは異なり、ユニットは外から見える、突起も無い。装着してみるとわかるが、耳穴に挿入したり、蓋をするのではなく、耳穴の手前にある円形の空間に、スポッと入れる着け方になる。


なんとも言えない形状が特徴 音が出てくるのはこの穴

 アップルによれば、このイヤフォン開発にあたり、光学スキャンとシリコンの型取りを使って様々なタイプの耳の3Dモデルを作成。いろいろなカタチの耳に共通する形状を求めて、124個のプロトタイプを作成。それを、600人以上の耳でテストし、この形状にたどり着いたという。

 確かに、編集部で数人が装着してみたが、「大きくて入らない」or「小さくて落っこちる」という声は無かった。また、耳穴手前の空間への“収まり”も良く、首を左右に振ったり、歩いたりする程度ではまったくズレない。開発にあたっては、ランニングをしたり、様々な有酸素運動でテストしたとのことで、「汗や水に対する保護力が従来のものより強く、耳の中での安定性も極めて高い。どんなに動きまわっても、そう簡単には落ちない」(アップル)という。

 同じように、イヤーピースを使わないイヤフォンとして、ファイナルオーディオが「PIANO FORTE II」(FI-DC1550M1/実売3,280円)を発売しているが、固定場所は「EarPods」も同じ。ただ「EarPods」の方が一回り小さく、かつ全体が“つるっ”としているので、より挿入しやすく感じる。

ファイナルオーディオの「PIANO FORTE II」と比べたところ

 いずれにせよ、カナル型のように耳穴に合ったピースを選ぶ必要がなく、誰でもそのまま装着できる簡便さが魅力だ。

 なお、ケーブルの途中にはマイク付きリモコンを備えている。従来のリモコンよりも若干長めになっているが、ボタンのレイアウトや使い方は同じ。iPhone 4Sや第6世代iPod nanoと接続してみたが、ボリューム調整や再生/一時停止、ダブルクリックで曲送り、トリプルクリックで曲戻しの操作も可能だった。

新しいマイク付きリモコン
左が旧モデル。新モデルは少し長くなった 入力プラグは同じ4極ミニ
iPhone 4Sや第6世代iPod nanoもバッチリ操作可能



■従来イヤフォンより確実に音質向上

 音質を、iPhone 4Sに付属していた従来のインナーイヤータイプと比較してみる。試聴用プレーヤーは「iBasso HDP-R10」を使用している。

 従来のイヤフォンは、インナーイヤータイプとしてはクオリティが高いが、低音が不足気味で、中高域の描写が平面的。また、高域にはプラスチック筺体が振動する付帯音もかかり、明瞭度が低下しているのがわかる。

 「EarPods」に変えると、低域の量感がグッとアップし、音楽の重心が下がる。個々の音にも厚みが出て、彫りが深くなり、音像に立体感が生まれる。また、プラスチック筺体は同じだが、明らかに付帯音が少なく、中高域が伸びやかになっており、音場が拡大。見通しの良い、さわやかなサウンドに変化した。

左が従来のインナーイヤータイプ。右が新イヤフォン「EarPods」

 この構造だと、どの程度音漏れするかも気になるところ。同じ音量で同じ曲を再生しながら、2モデルを交互に着け、シャカシャカ音がどれだけ漏れているかを第三者に確認してもらったが、「旧型の方が明らかに音漏れが多い」という。これは、実際に聴いていても実感できる。インナーイヤータイプの旧型は、指で強く押し込んでいると低音がしっかり出るのだが、普通に装着した状態では耳穴の周囲から低音が抜けてしまい、結果的に高音寄りのバランスになっているからだ。

 「EarPods」では耳穴との密着度がアップした事で、音漏れが減り、低域の描写力もアップしているようだ。ただし、カナル型のように耳穴を完全に塞いでしまうわけではないので、カナル型と比べるとそれなりに音漏れはする。逆に言えば、音量を上げすぎなければ周囲の音もそれなりに聞く事ができる。歩行時など、安全面でも使い勝手は良さそうだ。

 アップルによれば、内部の振動板を「固い素材と柔らかい素材の両方を使いながら製作した」とのこと。また、よく見ると筐体に2箇所、根元に1箇所の合計3箇所に、スリット型の切れ込みがある。これは「アコースティックベント」と呼ばれており、特に、上部のベントがミソ。「音響室の役割を担うステム内の空気が、このベントから外に流れ出るので、低音がさらに深く、よりに豊かに響くようになる」とのことだ。

 同社は「何万円もするような高級ヘッドフォンにも引けを取らない」と自信満々だが、レンジ感や、低域の沈み込み、音色のナチュラルさなど、ヘッドフォンの高級モデルと戦うには分が悪いと感じる。

 だが、プレーヤー付属のイヤフォンや、5,000円以下の低価格なイヤフォンの中では十分に戦える音質であり、例えば低音がブーミーで抜けの悪いダイナミック型や、低音が足りないシングルのバランスドアーマチュアイヤフォンなどと比べると、バランスが良く、誇張が少ない素直なサウンドは好印象だ。

 同時に、装着の簡単さ、耳穴にピースを入れなくて良い負担の少なさ、適度に外の音が聴こえる機構など、このイヤフォンならではの魅力もある。よく出来た付属イヤフォンであると同時に、高級なイヤフォンを持っていても「たまにはコレを使ってみようかな」と思わせる魅力を備えたイヤフォンと言えるだろう。


(2012年 9月 13日)

[ Reported by 山崎健太郎 ]