ミニレビュー

iPhone付属イヤフォンの装着感を手軽に向上。走ってもズレない「Earhoox」

 街や電車の中などで、様々なメーカーのイヤフォンを着けている人を目にする。一方で、iPhoneに付属するアップルの純正イヤフォン「EarPods」を愛用している人も、依然として多く見かけるように思う。耳穴の奥まで入れない装着スタイルが特徴のEarPodsだが、そのフィット感を高めるためのイヤーピースとして登場したのが、今回紹介する「Earhoox」だ。

イヤフォンに「Earhoox」を装着、iPhoneで音楽再生

 耳穴の手前側にあるくぼみへ“のせる”ように装着するEarPodsは、登場した'12年当初は独特なデザインや装着感について、ユーザーの意見が分かれていたと思う。ただ、iPhoneの世代が変わっても、付属品として引き続き採用されており、今も一定の支持を得ているようだ。カナル型(耳栓型)の装着感が苦手だったり、単にイヤフォンにこだわらないから使い続けているという人もいるのだろう。

iPhone付属のEarPods

 EarPodsはイヤーピースを着けなくても多くの人の耳に合う形状に設計され、着けていて疲れることがなく、耳穴を完全に塞がないながらも低域も適度に聴こえるため、付属品にしてはかなり良いイヤフォンだと思う。ただ、筆者の場合は耳穴が大きめで、歩きながら聴くと時々“外れてはいないけれど取れそうな状態”になることがあって、もう少しフィットしたら……とも感じていた。

 そんな中で興味を持ったのが「Earhoox」。Earhooxというメーカーの製品で、Amazon.co.jpでは1,500円を切るくらいの価格のため、一般的な交換用イヤーピースよりは少し高価だが、メーカー(Earhoox)の動画を見ると、運動時に装着しているシーンもあり「そこまで安定した装着ができるなら」と思い、購入した。カラーはブラック、ホワイト、ブルー、オレンジ、ピンクがあり、今回はブラックを選んだ。

Earhoox
Earhooxの紹介動画

 EarPodsの周辺を覆う形で、上部にツノのような突起が設けられている。この突起が耳穴の上部にあるくぼみにフィットすることで固定。他社のイヤフォンでも、特にスポーツ向けモデルなどでよく見かけるデザインだ。

シリコンでできた、“ツノ”付きのイヤーピース

 1つのパッケージに、L/Sサイズの2ペアが入っており、筆者はLサイズを使用した。パッケージの背面を見ると、汗や水に強く、運動にも配慮しているという説明が書かれている。素材はシリコンで、EarPodsへ装着する際に多少引っ張ってもしっかり伸び縮みして、簡単に切れてしまうような心配はなさそうだ。

パッケージなどのイラストで説明
LとSの比較

 手持ちのEarPodsにEarhooxを着けてみた。複雑な手順はなく着けられるが、注意したいのは、EarPodsには音が出るメインのポート部以外にも小さなスリットがいくつも設けられているので、それらをEarhooxで塞がないようにすることくらい。パッケージに封入されている説明図を見て装着すれば、穴を塞ぐ心配もほとんどない。

EarPodsにEarhooxを着けたところ
耳に装着

 耳に着けてみると、劇的には装着感が変わった気がしなかったので少し拍子抜けしたものの、頭を動かしたり歩いたりしても、従来はあったズレる感覚が全くないことに気付く。上部のツノのような部分も、耳への違和感は特にない。

 通勤時などに利用して特に良いと思ったのは、自分の手やカバンなど、周りのものにケーブルが軽く引っかかった場合にも簡単には耳からズレず、しっかり留まっている点。これはカナル型イヤフォンだったら当たり前のことだが、EarPodsの軽い装着感を損なわずに、安定感がプラスされたのはうれしい。

 iPhoneでApple MusicやGoogle Play Musicなどの音楽を聴いてみると、以前に比べて大きく音質が変わるとまではいかないが、耳の中でズレることが原因で音がスカスカになるといった問題は起きなかった。EarPodsの特徴でもあるダイナミック型イヤフォンの元気のいい低音などが、少ない音漏れで耳の中まで届く。

iPhoneの音楽再生で利用(写真はGoogle Play Music)

 なお、Earhooxを使っても完全に耳穴を密閉するわけではないため、駅で電車が通過する際や、車が頻繁に通る大通りなどでは、周囲の騒音が気になることが多いというのはこれまでと同じ。カナル型ほどのホールド感や密閉感まで期待はできない代わりに、EarPodsの軽い装着感を維持したうえで、多少の引っ張りにも強くなるというのが、この製品の一番の良さだ。

 Earhoox付きで装着した後、再びEarhooxを外した状態で耳に入れてみて気付いたのは、Earhoox無しだとわずかにイヤフォンが下へ引っ張られるような感じがすること。あまり意識してこなかったが、EarPodsは耳穴にのせるような装着方法のため、耳穴全体で固定するカナル型などに比べると、耳穴の下の方に負担がかかっていたようだ。Earhooxがあると、周囲を覆う部分とツノの部分に負担が分散されるのだろう。

ジョギングでも安定した装着。周囲の音も適度に聞ける

 普段使いの中で、装着安定性が高まったことが実感できたので、今度はジョギング用にも使ってみた。プレーヤーはiPhoneよりも軽いウォークマンのNW-A16に変更し、家の近くにある堤防などを走ってみた。

ウォークマンAと組み合わせて使用

 ペースは比較的ゆっくり(アプリの計測で約7.6km/時)、約6kmほどのジョギングだったが、最初はEarhooxを使わずに装着すると、走る時に上下運動の中で、耳から抜けて片方だけ落ちたり、抜けないまでも耳の中で少しずつ動くことがあった。Earhooxを着けると、動いても圧迫感はないのに、耳からはほとんど動かない。

 前述した通り、遮音性はEarPods単体と大きくは変わらないこともあって、周りの騒音は音楽とともに耳へ入ってくる。このため、後ろからハイブリッド車が静かに近づいても気付くことができたことは、安全面でメリットといえる。市販されているスポーツ向けイヤフォンでは、あえて周りの音が聞こえるようにしているモデルも少なくないが、それに似ている。

 なお、Earhooxは汗や水に強いが、EarPods全体を覆ってはいないため、イヤフォン自体が防水にはなるわけではない。EarPodsは前世代の純正イヤフォンに比べて汗や水から保護する力が向上したことをウリにしているが、防水仕様とまでは謳っていないため、雨の時などは避けた方が良さそうだ。Earhooxの着脱は簡単にできるので、運動後はイヤフォンから外して水洗いすると清潔を保てるだろう。

 “イヤーピース不要で誰でも装着できる”ことを特徴とするEarPodsだが、今回紹介したEarhooxを加えることで、不意に外れたりすることがほとんどなくなり、さらに装着感が向上することを実感できた。その結果、EarPods自体が持つ音をしっかり聴けるようになることにすっかり慣れて、もうEarhoox無しでは物足りなく感じるほど。

 今までEarPodsがズレやすいと感じていた人には特におすすめしたい。約1,500円の追加で、EarPodsの軽いフィット感を活かしたまま安定した装着ができ、時にはジョギングにも使えるようになるのは、iPhoneユーザーにとって大きな魅力といえるだろう。

Amazonで購入
Earhoox for EarPods

中林暁