【レビュー】REGZA Z7のタイムシフトをより楽しく「TimeOn」

実用的なクラウド連携。様々なTVの使い方


47Z7

 東芝の液晶テレビ「REGZA Z7シリーズ」最大の特徴は、6チャンネル同時録画の「タイムシフトマシン」機能だ。録画番組からおすすめを紹介する「ざんまいプレイ」や、番組内の“見たいシーン”だけを検索して再生できる「気になるシーン再生」などの新機能を追加し、テレビに“キャッシュ”(一時蓄積)した番組を、様々な方法で楽しめるような提案を盛り込んでいる。

 また、新クラウドサービス「TimeOn」の連携により、タイムシフトマシンの使い勝手向上やコミュニケーション機能の強化を図っているのも特徴だ。11月8日にレポートした前回のレビューでは、「ざんまいプレイ」などのタイムシフトの新機能を紹介したが、今回は、クラウドサービス「TimeOn」やタイムシフト録画時間の設定変更のインプレッションなどをお届けする。

 録画機能の基本については前回の記事を、画質や音質については、「大画面マニア」を参考にして欲しい。



■ ゴールデンタイムを中心にタイムシフト設定

 録画系の基本機能は前回のレビューで紹介しているが、Z7シリーズは、6チャンネル同時録画の「タイムシフトマシン」を搭載。別売のHDDと組み合わせることで、地デジ6チャンネルを一時的にキャッシュして、見られるようにするというのが特徴だ。

 タイムシフト用のHDDは東芝純正オプションのほか、バッファローやアイ・オー・データからも発売されているが、今回もタイムシフト録画用のHDDは、東芝純正オプションの「THD-250T1」を利用した。THD-250T1は、タイムシフトマシン用の2TB HDD(1TB×2)と通常録画用の500GBのHDDを統合しており、合計容量は2.5TB。地デジ6チャンネルを約40時間録画できる。

47Z7の背面フックにTHD-250T1を引っ掛けて装着装着例

 前回のレビューでは、24時間録画を続けて、約40時間(1日と16時間)を連続録画してテストした。もちろんそれでも便利なのだが2日弱しかキャッシュされないため、数日前のドラマなどはすでにタイムシフト録画領域から消されてしまっている。

タイムシフトの録画設定を変更

 また、Z7のタイムシフトマシンの最大の特徴と言える「ざんまいプレイ」も2日以下の録画時間だとやや物足りなく感じた。というのも、ざんまいプレイは、番組表(EPG)から、ユーザーの嗜好や視聴履歴にあわせて関連番組を紹介してくれる「ほかにもこんな番組」や、「いつもの番組」などの検索が行なえるのだが、2日弱しか番組が無いと、関連番組が少なく、自分の好みが反映されている、とまでは感じられなかったのだ。

 そこで、今回はタイムシフト録画時間を、18-27時を中心に、AM8-10時、12-13時など、普段自分がよく見る時間帯に設定し、2週間試してみた。

タイムシフト番組表過去番組表。今回の設定では約4日分を表示できる【参考】THD-250T1の24時間録画では、2日弱しか録画できず

 この設定にしてみると、ゴールデンタイムを中心に約4日分のタイムシフトが可能になる。ドラマを見ながら「ざんまいプレイ」の「ほかにもこんな番組」を選ぶと、3、4日前に放送されたドラマも関連番組として紹介される。見逃していた番組に出会えるという意味で、ぐっと実用度が上がった感じだ。

 NHKのドラマ10の「シングルマザー」の場合、最新の放送が録画されているほか、最新話のPRのために前回放送も1日前に放送している。こうしたケースでは、タイムシフトで4日分キャッシュされていれば、前回放送もさかのぼって確認できる。「ほかにもこんな番組」から、関連番組が発見できるというのは、実際に使ってみるととても便利だ。朝ドラであれば4日分を一気に紹介してくれるので、数日見ていなくても一気に視聴するといった使い方も可能になる。

 今回の設定のほうが、「ざんまいプレイ」の魅力をより実感できた。特に見たい番組がない、という場合でも、「テレビをいじっているだけで、面白そうな番組に誘導してくれる」というのはとても魅力的だ。

ざんまいプレイの「ほかにもこんな番組」。毎日放送番組は4日分が一気に表示される急上昇ワードいつもの番組

 もちろん、6TBなどより大容量のHDDで24時間連続タイムシフト録画するのが、一番いいのだが、2TBでも運用によってタイムシフトやざんまいプレイの魅力を引き出すことは可能と感じる。タイムシフトの録画時間設定は慎重にシミュレーションしておきたいポイントだ。



■ 映像を軸にクラウド連携する「TimeOn」

クラウドメニューのトップページ

 REGZA Z7/J7シリーズのもうひとつの大きな特徴が、新たに導入されたのがレグザクラウドサービスの「TimeOn」だ。

 TimeOnは、東芝の用意するクラウドサービスで、ポータルとなる「クラウドメニュー」、タイムシフトマシン録画番組から人気のキーワードで検索などができる「みどころシーン再生」、録画番組とクラウド上のメタデータを照合して、シーンの頭出しができる「タグリスト」(気になるシーン再生)、録画予約状況などを確認できる「カレンダー」、メッセージの送受信やおすすめシーンなどを紹介できる「メッセージ」、REGZA Tabletなどを利用して書き込まれた伝言をテレビで見ることができる「伝言ボード」などの機能を搭載している。

 TimeOnはネットワークサービスなので、当然インターネット接続環境が必要だ。このTimeOnのクラウドメニューは、HTML5で構築されており、ブラウザベースで動作するように設計されている。このあたりも、これまでのテレビのネットワークサービスとの大きな違いと言える。

 またクラウドメニューからは、TSUTAYA TVやT's TV、YouTube、U-NEXTなどのVODサービスへのリンクも用意。NHKオンデマンドやTBSオンデマンドなど民放キー局の各VODサービスへのリンクもあるが、これを選択すると「もっとTV」サービスに遷移するようになっている。

マイページVODサービスなどをまとめた「ビデオ」ショッピングページなどの「セレクトページ」

 TimeOnは映像コンテンツを軸に、ネットワークを連携させるサービスのため、全機能を利用するためには「TimeOnアカウント」が必要。メッセージやカレンダーなどの一部の機能は「TimeOnアカウント」が必要だが、みどころシーン再生やタグリスト/気になる! シーン再生など、録画番組関連の基本機能については、アカウント登録は必要ない。

 アカウント登録では、メールアドレスやIDとパスワードを入力する。REGZAのリモコンで、メールやID、パスワード情報を入力したり、アンケートに答えていくのは面倒だ。

クラウド設定からアカウントを作成「みんなで」、「ひとりで」といった選択も可能プロフィール設定
RZクラウドを使ってタブレットからもTimeOnアカウントを作成できる

 ただ、Android 4.0以降のタブレットを持っていれば、専用アプリ「RZクラウド」からもTimeOnアカウントを作成できる。こちらでアカウントを作成すれば、REGZAではIDとパスワードを入力するだけで、TimeOnが利用可能になる。タブレットやスマートフォンで文字入力に慣れている人にとってはこちらのほうがかなり楽だ。タブレットとREGZAは8桁の招待コードを使って認証する。このあたり、テレビとタブレットなどスマートデバイスとの連携がよく考えられている。

 また、従来のREGZAや同社レコーダで利用していたHDEXのアカウントをTimeOnアカウントとして継承することも可能となっている。


■ テレビコンテンツを探す新たな導線「タグリスト」&「みどころシーン再生」

リモコンの「気になる」ボタンで、「気になるシーン再生」が行なえる

 まずは、テレビ関連の主要機能である「タグリスト」と、「みどころシーン再生」を紹介しよう。

 タグリスト(気になるシーン再生)については、前回のレビューでも紹介しているとおり。ネットワークを経由して取得した番組のメタデータを元に、番組内の任意のシーンだけを検索できる機能だ。

 放送終了の数時間後には、番組のシーン情報(タグリスト)がTimeOnサーバー上に共有される。録画番組の再生中にリモコンの「気になる! 」ボタンを押すと、シーンのリスト(タグリスト)を右側に表示し、リストから任意のシーンを選んで再生できる。タグリストは主要シーンだけでなく、CM部も検出してシーン分割しているので、好きなシーンを選んで頭出しできる。

 タイムシフト番組では、自動的にCM部にチャプタを付与する「マジックチャプター」に対応していないので、このタグリストの機能はとても便利だ。クラウド側のチューニングが進んでいるからか、前回のレビューでは、「操作後に約1~2秒でシーンスキップ」と書いていたが、ほぼ1秒弱でスキップできるようになるなど、動作速度も向上している。


タグリスト表示方法を切り替えて小画面表示することも出来る

 また、TimeOnのアカウントにログインすることで、気に入ったシーンを友人に「おすすめ」する機能も備えている。今回は送る友人がいなかったので、テストできなかったが、今後に向けた機能が多数用意されている。ただ、幾つかうまく動かない部分もあった。例えば、タグリストを呼び出した画面で、青ボタンから[タグリスト]選択することで、ユーザーが作成した[ユーザータグリスト]を呼び出し可能なはずなのだが、ここがうまく動作しなかった。TimeOnサービスの改善は日々行なわれているとのことで、安定性向上を期待したい。

気に入ったシーンを友人におすすめできるシーン詳細
TimeOnのサーバー側のアップデートも何度も行なわれている

 約1カ月使っている間に、2回の本体のファームウェアアップデートのほか、TimeOnサービスのアップデートも何度か行なわれた。TimeOnなどクラウドへのアクセス時にアップデートの表示が出るのだが、アップデート後には、メニューの遷移速度やタグリストのシーンスキップの高速化が体感できた。

 突然レスポンスが悪くなるなど不審な挙動になる時もあるが、機能拡充とともに安定性の向上に期待したい。もっとも、アップデートにより、明らかに動作改善しているので、ネットワークサービスとの連携による「進化するテレビ」ということが、図らずも実感できている。


みどころシーン再生

 「みどころシーン再生」は、話題のキーワードから見たいシーンを絞り込んで検索できる機能。Yahoo!提供の「検索急上昇ワード」を使って、人気の番組の人気シーンを紹介してくれる。

 例えば、「京葉線」という人気キーワードで検索すると、28日に各局のニュースで放送された「京葉線の車両故障で、全線運休」というシーンがずらりとでてくる。これを見ると、ヘリを飛ばして空撮している局と、そうでない局があることがわかるなど、各局の対応の違いが確認できる。

 「ニトリ」が人気キーワードになっていたので、「なぜ?」と気になって検索したところ、800品以上の製品を一斉に値下げしたというニュースがヒット。シーンを選べば、ニュースの当該シーンから再生が始まるなど、ニュース媒体的にも活用できた。

 また、日テレの「ベストヒット歌謡祭」を検索したところ、当該番組が出てくるほか、前日から各情報番組で行なった「告知」のシーンがたくさんヒットし、頭出しできる。こうした告知は、放送局が大型企画を盛り上げるときによく行なっているものだが、盛り上げていく一連の流れが、キーワード一発で確認できるというのが面白い。ただ、昼間などの一部時間帯をタイムシフトから外しているからか、人気キーワードで検索しても「シーンがありません」と表示されてしまうこともあった。

 みどころシーン再生は、番組表のデータから絞り込んでユーザーにレコメンドする「ざんまいプレイ」にコンセプト的には似ているのかな? と想像していたのだが、使ってみると、シーンの頭出しまでできるのは体験としてかなり違う。より特定のコンテンツ/シーンを抽出して「トピック」としてテレビ番組を楽しむ機能という印象だ。

京葉線の検索結果。各局がニュースで取り上げている日テレが局をあげて「ベストヒット歌謡祭」を盛り上げているのがわかる急上昇キーワードでも、タイムシフト録画していない場合、検索結果がない場合も

 同じ番組メタデータを使っているものの、ユーザーの体験としては、「タグリスト」はより能動的に番組を探す機能、「みどころシーン再生」は受動的に人気のトピックをチェックするため、と正反対の位置づけになっているのは面白い。

 タグリスト/気になるシーン再生の場合は、番組を選んだ後の利便性を向上するものだが、みどころシーン再生は、「今の話題」、「皆の興味」を知らせてくれるサービスといえる。このように、番組との出会い方法を幾通りにも持っているのが、TimeOnの魅力といえる。


■ なぜ? TimeOnに「カレンダー」

クラウドメニューのホーム画面

 クラウドメニューでは、テレビ録画関連以外にも多くの機能を搭載している。録画番組や自分の予定をチェックできる「カレンダー」、メッセージの送受信やおすすめシーンなどを紹介できる「メッセージ」、REGZA Tabletなどを利用して書き込まれた伝言をテレビで見ることができる「伝言ボード」などだ。これらの利用には、アカウント登録が必要だ。

 まずは「カレンダー」。スケジュールの共有というよりは、録画予約状況や履歴を管理するものだ。REGZA Z7/J7以外にも、同社のBDレコーダやREGZAなど複数機器をTimeOnアカウントに紐付けることで、録画予約や録画履歴機能を統合。クラウドメニューのトップ画面からも録画履歴や録画予約状況がチェックできる。

 つまり、複数のREGZAやレグザサーバーなどを持っている場合、ここで録画予約状況が確認できるわけだ。月別表示も可能で、今後の録画状況を一覧できるというのも面白い。

ホーム画面[カレンダー]に録画予約リスト月別表示も録画状況を一覧表示

 Z7シリーズの場合、タイムシフト録画で地デジをほぼカバーできてしまうが、BSやCSは別のレコーダを使っている、といった場合は、表示機器となるZ7で一覧できるというのは便利だ。もっとも他社のレコーダの録画情報などは当然共有できない。

 正直、TimeOnの発表時には、「テレビ上で『カレンダー』と言われても使わないのでは……」と感じたが、実はカレンダーとは別の狙いがあるのだという。それは、クラウド上の録画履歴情報を管理。クラウド上に録画履歴を持っていることで、複数のレコーダをまたいだ視聴/録画実績を管理できるため、より適切なおすすめ番組のレコメンドなどが可能になるという。

 また、例えばZ7から次の機種に買い換えた際にも、TimeOnにつなぎ、自分のアカウントにアクセスすることで、テレビ側で「おすすめ」番組の情報を引継ぎ、ユーザーの利用シーンや視聴履歴にマッチしたおすすめをすぐに行なえるようになる。TimeOnはそうした未来に向けた布石になっているわけだ。

 なお、カレンダーは、2013年1月下旬に、録画以外の日常の予定書き込みや、録画/視聴予約のフレンドへのおすすめ機能なども追加予定。さらに、同じ1月には、TimeOnで「おまかせ録画」にも対応予定とのこと。カレンダーと連携することで、録画機能の進化も期待ができそうだ。

クラウドアルバム

 「クラウドアルバム」は、レグザタブレットやパソコンからクラウドにアップロードした写真をREGZAやタブレットで閲覧可能にする機能。

 また、「メッセージ」は、友人とメッセージを交換できる機能。今回は試していないが、お気に入りのシーン番組やシーン情報を友人と交換のほか、'13年1月下旬には友人からのおすすめ番組メッセージで、録画予約できるようになるという。

 伝言ボードはタブレットなどを利用して書き込んだメッセージをTV上で見ることが出来る機能。今回RZクラウドをインストールし、REGZAと同一アカウントの「Nexus 7」(RZクラウドのサポート対象外機種だが)から、メッセージを送ってみたが、もちろん問題なく表示できた。

 書き込まれたコメントに対し、「すてき!」、「ありがとう」といった返信も可能。さらに、書き込まれたメッセージの音声読上げ機能も搭載。東芝の音声合成技術「ToSpeak」を採用しているとのことで、結構しっかりと聞き取れる。

タブレットから「RZクラウド」を利用タブレットからメッセージを送信
タブレットから送信されたメッセージをZ7で表示

■ テレビにはいろいろな楽しみ方がある

 Z7のタイムシフトの録画データに対し、クラウド上のデータと連携させることで、使い勝手を向上させていくというTimeOnの位置づけは、ほかに類を見ないユニークなもの。ネットワークと連携する「スマートテレビ」のあり方は各社が提案しているが、TimeOnの取り組みは、日本ならではの録画文化を組み合わせた実用的な提案といえる。

 なお、TimeOnについては、開発陣への取材も行なっている。TimeOnの狙いやコンセプトについては、後日紹介する予定だ。

 まだサービススタート段階で、全貌がわかりにくい部分もあるが、「気になるシーン再生」、「見どころシーン再生」については、テレビの新しい楽しみ方を確かに感じさせ、積極的に使いこなしていきたい機能だ。また、おまかせ録画やカレンダー、メッセージ連携など、今後の機能強化もロードマップに加えられている。テレビの楽しみ方を多様化する提案として、TimeOnのさらなる進化を期待したい。


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(2012年 11月 30日)

[ Reported by 臼田勤哉 ]