レビュー

AndroidでもUSB接続できる小型アンプを試す

iBasso「D zero-SE」でタブレット高音質化

Androidでもポタアンとデジタル接続を

 ヒビノインターサウンドから発売されている、iBasso AudioのUSB DAC内蔵ヘッドフォンアンプ「D zero-SE」。オープンプライスで、店頭予想価格は14,000円前後と、比較的リーズナブルなDAC内蔵アンプで、薄型筐体も印象的だ。だが、このモデルには“安い”、“薄い”という特徴に加え、Android端末とのデジタル接続に対応しているという、ユニークな一面がある。

 ポータブルプレーヤーとDAC内蔵ポータブルアンプとのデジタル接続と言えば、iPodやiPhoneが定番だが、それと同じような事をAndroid端末でも実現できる。iPhoneやiPadはメモリーカードスロットを持っていないが、Android端末ではmicroSDカードなどが使える場合が多く、多数の音楽ファイルを持ち歩くにも適している。こうしたAndroidスマートフォン/タブレットが、高音質なプレーヤーとして使えるようになるとすれば非常に魅力的だ。

 このデジタル接続が可能になったのは、Android 4.1、いわゆるJelly BeanにおいてUSBオーディオがサポートされたためだ。ただし、Android 4.1を搭載した端末全てが対応しているわけではないので注意が必要だ。

薄さ11mmのポータブルアンプ

「D zero-SE」

 音を出す前に、「D zero-SE」の基本的なスペックを紹介しよう。DACはESS Technologyの24bit DAC「SABRE ES9023」を採用。HyperstreamアーキテクチャとTime Domain Jitter Eliminatorにより、デジタル音楽信号を忠実にアナログ変換できるというチップだ。

 端子は、USB入力、アナログ入出力、ヘッドフォン出力を各1系統搭載。デジタル入力はUSBのみだ。Android接続とは別に、PCと接続してUSB DACとしても動作する。なお、昨今のトレンドではハイレゾ対応を期待するところだが、この製品は16bit/48kHzまでの対応となる。価格やサイズも含めて、カジュアルな利用に向いた製品とも言える。

フロントパネルにはイヤフォン出力、ライン入出力、電源、ボリュームダイヤル
背面にはUSB入力、ゲインスイッチ、バッテリの充電スイッチを備えている

 アンプ部の最大出力は90mW×2ch(16Ω)で、ヘッドフォンインピーダンスは8〜300Ωを推奨。SN比は105dB。アンプ部にはオールインワンタイプのICヘッドフォンアンプを使わず、オペアンプとコンデンサで構成している。

 リチウムポリマーバッテリを内蔵しており、約3時間の充電で、連続25時間の使用が可能。なお、ライン出力を利用する場合はバスパワーだけで動作する。

 筐体は外形寸法は55×79×11mm(幅×奥行き×高さ)と薄型。ポータブルアンプは“小さな箱”という印象だが、「D zero-SE」の場合は“小さな板”という感じだ。スマートフォンやタブレットを重ねたり、収納時の取り回しはしやすい。重量は60gと軽量だ。

 接続用のケーブルは同梱しており、USB OTGケーブル(ホスト側:Micro B、デバイス側:Mini B)と、PC接続向けの長めのUSBケーブル、さらにステレオミニのアナログ接続ケーブルも同梱している。

ポータブルアンプとしてはかなり薄型
付属のケーブル。中央の短いケーブルがUSB OTGケーブル

Androidと接続するだけで音が出る

 さっそくAndroid端末とのUSBデジタル接続を試してみよう……とは言っても、何か複雑な設定や操作が必要なわけではない。アンプ付属のUSBケーブルを使って端末と接続。Android標準の「Playミュージック」アプリで音楽を再生すると、アンプからあっさり音が出る。PCでのUSB DAC接続を難しいと感じる人もいるかもしれないが、これであれば迷わず使えるだろう。

 ただし、1つ注意点がある。前述の通り、全てのAndroid端末にも対応しているわけではない。USBオーディオ機能に対応している端末のみで利用でき、ヒビノインターサウンドでは、GALAXY S3「SC-06D」で動作確認をしているが、それ以外の端末に関しては「USBオーディオをサポートしていても端末の仕様やAndroidのバージョンによりデジタル接続ができない場合もある」としている。可能であれば、試聴ができる店舗に、組み合わせたいAndroidスマホなどを持参し、接続させてもらい、音が出るか確認できればベストだろう。

 今回、接続相手としてスマホではなく、iriverブランドの7型Androidタブレット「ITQ701 WOWタブレット 16GB」を用意した。Googleの「Nexus 7」(2012年モデル)のライバル的なタブレットで、1,280×800ドットのIPS液晶と16GBメモリ、200万画素カメラなどを搭載。価格は19,800円に抑えている。microSDカードスロットを備えているので、音楽を沢山持ち歩くのに向いている。

接続相手のiriver「ITQ701 WOWタブレット 16GB」
microSDカードスロットも装備している

 布団の上や喫茶店などで調べ物をする際に使っているタブレットだが、WebサーフィンをしながらBGM的に音楽をヘッドフォンで楽しもうとすると、どうしても専用のポータブルプレーヤーほど、音が良くない。そこで、「D zero-SE」をデジタル接続して、音質のグレードアップをしようと考えた。

接続するとあっさり音が出た

 搭載OSはAndroid 4.1だが、D zero-SEとの動作確認モデルではないので、実際に音が出るかは繋いでみないとわからない。結論としては、USB接続するとあっさり音が出た。ただ、頻繁に抜き差しをしていたところ、ロック画面で一度Androidが固まり、強制的に再起動させた。念の為に、音楽再生を停止してから抜いたり、タブレットの電源をOFFにしてから抜くなどした方が良いのかもしれない。

Android非対応のUSB DAC/アンプでは、「Playミュージック」アプリで再生しても音は出ない

 なお、藤本健氏の「Digital Audio Laboratory」でも以前紹介されたように、アプリでUSB Class Audio 1.0やUSB Class Audio 2.0に対応し、Android向けではない、通常のUSBオーディオ機器を接続して、再生できるようにする「USB Audio Recorder PRO」のようなアプリも存在する。「D zero-SE」の特徴は、こうした特殊なアプリを使わなくても、標準の「Playミュージック」アプリでそのまま再生できる手軽さにあるだろう。

 あっさりと音が出たので、「実は普通のUSB DACでも接続するだけで音が出たりするのでは」と思い、試しに同じくiBassoの「D55」(実売33,000円前後)を繋ぎ、「Playミュージック」アプリで再生したが、当然音は出なかった。

音質は大幅に向上

標準のGoogleミュージックアプリで再生しているところ

 音が出たのは良いが、肝心なのは、USB接続でアンプを通した音と、タブレット端末直接の音と、どちらが良いかという点。さっそく聴き比べてみたい。

 まず、タブレットに直接イヤフォンを接続。「藤田恵美/camomile Best Audio」の「Best of My Love」を再生すると、ヴォーカルは引っ込みがちで、横にいるギターの余韻も広がらない。そのため音場が狭く感じられ、音像も奥行きが無い。狭い部屋でカキワリの歌手を眺めているような気分だ。

 アコースティックベースは思っていたより分厚く鳴ってくれるのだが、ヴォーカルとの分離が今ひとつ。解像感も足りず、モコモコした低音が下の方によどんでしまい、あまり意識に入らない。この楽曲は、まったりとしたトーンの中に、パーカッションの歯切れの良い「パコカコ」という音がアクセントとして入っているのだが、よどんだ低域に埋もれて耳に入ってこない。全体としてモヤッとした眠たいサウンドだ。

 D zero-SEを接続すると、激変する。低音が高音がと、細部の違いを挙げるという以前に、まったくの“別物”だ。上下のレンジが大幅に拡大すると同時に、奥行きも遥かに深くなる。ヴォーカルはグッと前に迫り出し、音に勢いと広がりが生まれる。密室に置いたカキワリサウンドから、大ホールのステージで歌う生身の人間に生まれ変わったような印象。高域の抜けはクリアで、低域の量感も大幅アップ。分解能も高まり、低域の中の細かな音が見える。埋もれていたパーカッションもキッチリ聴き取れるようになった。

Googleミュージックアプリでは、ハイレゾファイルは再生できない

 DAC&アンプとしての「D zero-SE」の傾向は、中低域が厚めで、どちらかというとパワフルな印象。コンパクト&薄型な筐体から受ける先入観を、良い意味で裏切ってくれる。かといって、低音を不要に膨らませて派手にしただけのサウンドではなく、締まりもあり、ベースの弦の動きもよく見える。ワイドレンジな高級イヤフォン/ヘッドフォンと組み合わせるのももちろん良いが、例えば低価格なシングル・バランスド・アーマチュアのイヤフォンなど、低域が弱めのモデルと組み合わせると、苦手な部分をアンプ側でフォローする形になり、良いバランスで再生できそうだ。

 もちろん、ポータブルDAC&アンプとして他のモデルと比べた場合、よりワイドレンジで、低域の沈み込みや量感が格上の上位モデルは存在する。しかし、14,000円前後という価格と、薄型筐体、Android対応というユニークさを考えると、コストパフォーマンスは悪くないだろう。気になるのはハイレゾ再生に対応していない点だが、例えば「Androidスマホに音楽は沢山入っているけれど、ハイレゾのファイルはそんなに無い」という人には必要十分な機能とも言える。

 また、ハイレゾファイルが聴けないわけではない。Googleミュージックアプリではエラーが出て再生できないが、Neutron Music PlayerやPowerampなど、より高機能な音楽再生アプリでは、ハイレゾファイルをダウンコンバートしながら再生できるものもあので、ネイティブ再生ではないが、聴けないよりは良いだろう。なお、iBasso Audioは、Android OSを採用したハイレゾプレーヤー「HDP-R10」において、ハードウェアと専用アプリを組み合わせてハイレゾ再生を実現している。1人のAndroidユーザーとして、USB接続でも気軽にハイレゾ再生が楽しめるようになって欲しいものだ。

Neutronというアプリでハイレゾファイルを再生しているところ
こちらはPowerampというアプリ。24bit/96kHzのファイルは再生できたが、24bit/192kHzのファイルは再生できなかった
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iBasso Audio
D zero-SE

(山崎健太郎)