レビュー

「史上最高パフォーマンス」はどのくらい!? ボーズ「SoundLink Bluetooth speaker III」を聴く

左が「SoundLink Mini」、右が「SoundLink Bluetooth speaker III」

 片手に乗せられる大きさと、そのサイズから想像できないような中低音再生能力で昨年夏の発売から人気を集めているBluetoothスピーカーがボーズ「SoundLink Mini(22,890円)」だ。先日レビューしたソニーの「SRS-X5」(オープンプライス/実売23,000円前後)など、ライバル製品も登場しているが、他ならぬボーズ自身からも新たなモデルが登場した。それが今回紹介する「SoundLink Bluetooth speaker III」(31,500円)だ。

 2月14日から発売されているもので、「SoundLink Mini」と同じように、バッテリ駆動も可能なBluetoothスピーカーだが、注目すべきは音質。というのも、「ボーズBluetoothスピーカー史上最高のパフォーマンスを誇る」という、音質への強い自信を感じさせるキーワードと共に発表された製品だからだ。

 史上最高のパフォーマンスはどのくらいのものか、さっそく試してみよう。

薄さが特徴

 まず外観から見ていこう。手のひらサイズの「SoundLink Mini」は外形寸法180×59×51mm(幅×奥行き×高さ)、重量655gで、背の低さが特徴だ。一方、「SoundLink Bluetooth speaker III」は、256×48×132mm(同)で、横幅がさらに広く、高さも2倍以上ありながら、奥行きはさほど変わらない。第一印象は“薄い”だ。

 重量は1.37kgで、サイズも含めて片手で持てない事はないが、SoundLink Miniのように気軽にヒョイと持ち運び、バッグに入れて外に行こうかというほど軽くはなく、家の中の、決まった2、3カ所を移動するような使い方になるだろう。

 似たようなサイズのスピーカーを探すと、ソニーの「SRS-X5」(221×51×118mm/約1.2kg)が挙げられる。

「SoundLink Bluetooth speaker III」
左が「SoundLink Mini」、右が「SoundLink Bluetooth speaker III」
左が「SoundLink Mini」、右が「SoundLink Bluetooth speaker III」
「SoundLink Bluetooth speaker III」は1.37kgだが、男性ならば片出で楽に持てる
SoundLink Miniはさらに軽量。室内だけでなく、バッグに入れてどこかに持って行こうという気にさせる軽さと小ささだ

 シルバーの部分はアルミだろうか? 触れるとすこしヒンヤリする。上部と底部はプラスチック製だ。筐体全体がアルマイト仕上げのアルミ製である「SoundLink Mini」と比べると、高級感や凝縮感は劣る。ただ、Bluetoothスピーカーとしては十分ハイクオリティな外観だ。

「SoundLink Bluetooth speaker III」の側面。シルバーの部分はアルミで、質感は高い
「SoundLink Mini」もアルミ筐体を採用している
ソニーの「SRS-X5」と「SoundLink Mini」を比べたところ

 底部には振動を机などに伝えないようにするため、インシュレータが貼り付けられている。気になるのは底部の端にある丸い穴と、給電ができそうな金色の端子だ。SoundLink Miniには置くだけで充電できる充電プレートが同梱されているが、SoundLink Bluetooth speaker IIIにも今後、似たような周辺機器が追加されるのかもしれない。

底部の端に気になる丸い穴が。給電用と思われる端子も見える
SoundLink MiniのACアダプタと充電用プレート。このようなモノが、SoundLink Bluetooth speaker IIIにも登場する?

 外側からユニットの様子は見えないが、内部にはネオジウムマグネットを搭載した4つのユニットが搭載されている。これが中高域を担当する。

 さらに、4つのユニットに挟まれるように、中央にデュアルオポージング・パッシブ・ラジエータを搭載。2つのパッシブラジエータを正対するように配置したもので、SoundLink Miniにも搭載されている。このパッシブラジエータが低音を担当する。もちろん、独自のDSPによる音声処理も行なわれており、従来モデルと比べて大音量での再生を可能にしたという。

ACアダプタの比較。上が「SoundLink Mini」、下が「SoundLink Bluetooth speaker III」だ

 出力W数は公表されていないが、部屋を充満させるくらいの音量は出せる。内蔵バッテリで動作するほか、付属のACアダプタを接続して充電しながら使う事もできる。なお、大音量で再生中にACアダプタを外してみたが、音量は低下しないので、ACアダプタ有り/無しで出力W数は変化しないようだ。バッテリでの駆動時間は約14時間。充電所要時間は約3時間だ。

 BluetoothのプロファイルはA2DPに対応。コーデックは公表されていない。

操作パネルは天面に並んでいる
ステータスは本体上部のインジケーターでわかる

 操作パネルは本体上部に並んでいる。電源ボタン、Bluetoothのペアリングボタン、音量に加え、AUX入力の選択ボタンも用意する。外部入力はステレオミニで、背面に1系統備えている。これにより、Bluetooth非対応の機器とも接続可能だ。

 Bluetoothの使い方はよくあるタイプで、Bluetoothボタンを押してペアリング待機モードにした上で、スマートフォンなどからスピーカーを検出。選択すれば接続できるが、パスコードを求められた場合は「0000」と入力する。特に難しいものでもないが、最近ではNFC対応のスマートフォンが増加し、Bluetoothスピーカー側もNFCサポートが当たり前になりつつある。ワンタッチのペアリングは、慣れてしまうと非常に快適なので、新製品投入のタイミングでNFCにも対応して欲しかったところだ。

 なお、ペアリング機器の情報は6台までスピーカー側で記憶できる。登録された機器が近くにある場合は、最後にペアリングをした機器を探して接続する。

 カラーバリエーションは用意されていないが、別売アクセサリとして本体に装着できるカバーを用意。カバーのカラーはグレー、ブルー、オレンジ、グリーン、ピンクがあり、価格は各4,200円。アクセサリカバーで色をカスタマイズできるのは、SoundLink Miniと同じだ。

別売アクセサリのカバーでカラーをカスタマイズできる

スケールの大きなサウンド

 AndroidスマートフォンのXperia Z1や、ハイレゾプレーヤーAK240のBluetooth機能を用いて試聴した。なお、ACアダプタを外し、バッテリ駆動状態で聴いている。

 「藤田恵美/camomile Best Audio」から「Best of My Love」を再生。冒頭のギターの響きが耳に入った瞬間に、「おっ」と小さな驚きがある。その後に入って来るヴォーカルも含め、中高域が自然な音で、付帯音があまり感じられないのだ。つまり、ギターの音がギターの音に、人間の声が人間の声にキチンと聴こえる。当たり前のようにも思えるが、なかなか質感を正しく描写できるスピーカーは無いものだ。

 1分過ぎからアコースティックベースが入る。SoundLink Miniで、小さな筐体ながら強烈な低音が出るのは学習済みなので、それよりも大型であるSoundLink Bluetooth speaker IIIでは、さぞや強烈な低音がズガンと吹き出してくるだろうと身構えていると、穏やかで柔らかい低音がふわっと吹き寄せてくる。

 若干肩透かしを食らった感じだが、どうやらSoundLink Bluetooth speaker IIIは、特定の帯域を強く強調するような音作りではなく、バランスも重視したモデルのようだ。中低域は量感が豊かで、ベースの響き成分は「ブオーン」を、サウナのドアを開けたように、熱気を帯びた空気の塊が吹き寄せてくるようだ。しかし、低域の沈み込み自体はあまり深くなく、低音自体にもあまり芯が無い。地響きのような強烈な低音を期待すると、少し方向性が違う。低音が多い楽曲を再生すると、悪くいうと「ボンつき」がちだ。

 SoundLink Miniはどうだろうと再生してみると、「Best of My Love」の冒頭から音が違う。ギターの音にも、ヴォーカルにも、綺羅びやかで金属質な響きがまとわりついている。付帯音と言うと悪い印象だが、SoundLink Miniの場合はその響きを巧みに利用し、クリアさ、爽やかさの演出へと昇華させている。

 一方で、SoundLink Bluetooth speaker IIIはニュートラルな中高域で、付帯音を抑え、音の質感の違いをキッチリ出そうとしている。モニター寄りと言っても良いだろう。正確な音という意味ではSoundLink Bluetooth speaker IIIの方が正しいのだと思うが、実際に聴き比べてみると、“濃い味付け”のSoundLink Miniも、これはこれで気持ちが良く、メリハリが聴いて、音楽をノリノリで楽しめる。ニュートラルさを重視するか、綺羅びやかで爽快な高域を魅力的と感じるか、聴く人によって評価が分かれるところだろう。

 ただ、SoundLink Miniの場合は、坂本真綾など、高域がキツ目のヴォーカルを再生すると、綺羅びやかな演出が効きすぎて、エッジがソリッドになり過ぎ、音が痛く感じる面が出てくる。その点、SoundLink Bluetooth speaker IIIの方が多くの楽曲に対応できる懐の深さはありそうだ。

 似たタイプとしては、ソニーの「SRS-X5」が挙げられるが、ソニーの方がよりモニター寄りで、音圧はSoundLink Bluetooth speaker IIIの方が豊かだが、クリアさ、ニュートラルさでは「SRS-X5」が上手に感じる。

 気になるのはSoundLink Bluetooth speaker IIIとSoundLink Miniの低音だが、交互に聴き比べると、筐体やユニットサイズの大きなSoundLink Bluetooth speaker IIIの方がやはり低音再生能力は上だ、沈み込みの深さも深い。ただ、その差は予想していたよりも小さい。

 また、前述のようにSoundLink Miniの方が全体的にメリハリが効いており、低域にも切れ込むようなソリッドな気持ちよさがある。一方のSoundLink Bluetooth speaker IIIは、音圧重視のふわっとした低域であるため、スケールの大きさは心地良いのだが、低音の輪郭だけに注目すると「ボンヤリして眠たい低音」に聴こえてしまう面もある。そのため、厳密に聴き比べると低い音はSoundLink Bluetooth speaker IIIの方が出ているのだが、聴いている最中はSoundLink Miniの方が強い低音がズバッと出ているように感じる。なんというか、SoundLink Miniの“見せ方の上手さ”を改めて実感してしまった。

 とはいえ、サイズが大きく、音圧が豊かなSoundLink Bluetooth speaker IIIが圧倒的に良い面もある。それはスケール感と音像だ。例えばオーケストラのクラシックなどを再生すると、大量の音がこちらに押し寄せてくるような迫力、圧迫されるような勢いの良さはSoundLink Bluetooth speaker IIIが文句なしに上だ。

 ヴォーカル物でも、高さのあるSoundLink Bluetooth speaker IIIで聴いていると、スピーカー上部の何も無い空間に歌手の音像が浮かび上がる。背の低いSoundLink Miniは、音量をかなり上げないと、机の上の空間にサウンドステージが留まってしまうが、SoundLink Bluetooth speaker IIIでは控えめな音量でも高さがシッカリ出てくるのだ。

まとめ

 思っていたより、音の方向性が違うので、単純に値段で並べて“上位モデル”、“下位モデル”と分けられない。気軽に持ち運べるSoundLink Miniは、パーソナルなスピーカーとして自分の近くに置いて、どんな楽曲でも、メリハリ良く、聴き取り安く、パワフルに楽しませてくれるスピーカーだ。

 一方で、SoundLink Bluetooth speaker IIIは、リビングや書斎など、決まった場所に置き換えながら、その部屋に音楽をゆったりと満たして、BGM的に素直でナチュラルな音を楽しみたいという時にマッチしそうなサウンドだ。

 極端な例だが、SoundLink Miniはスマホと接続して、映画やアニメなどを、ベッドなどに寝転んで迫力満点に楽しみたい。SoundLink Bluetooth speaker IIIは、自分と少し離れた場所にある、本棚の隅などに置いて、コーヒーを片手に文庫本でも読みながら聴きたい音……という感じだ。使われるシーンにマッチするよう、音作りがなされているのだろう。

 試聴中、編集部の他のスタッフ何人かに聴かせてみると、皆「ニュートラルさではSoundLink Bluetooth speaker III、楽しさではSoundLink Mini」と口をそろえる。確かにSoundLink Miniは、“手のひらサイズなのにこんな音が出る”という驚きが評価に加味される事もあり、聴いていて楽しい。「こんなに小さなくせに、頑張ってるなお前」と頭を撫でたくなるようなスピーカーだ。SoundLink Bluetooth speaker IIIは、そんなヤンチャな弟を見守る、落ち着いた兄貴分という風格。欲を言えば2台揃えて使い分けたいキャラクターだ。

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(山崎健太郎)