レビュー

テレビをさらに身近に。民放5社の見逃し配信「TVer」を試す

CM付き無料テレビ配信の可能性。シンプルさが魅力

 10月26日、在京民放キー局5社が共同で立ち上げた、テレビ番組の広告付き無料配信サービス「TVer(ティーバー)」がスタートした。日本テレビ放送網・テレビ朝日・TBSテレビ・テレビ東京・フジテレビジョンの5社のドラマやバラエティの人気番組を、放送後に“広告付き無料”で配信する「キャッチアップ(見逃し配信)サービス」だ。

10月26日「TVer」がスタート

 「日テレ無料TADA!」、「TBS FREE」、「フジテレビ+7」など、各放送局も自社で見逃し配信サービスを展開しているが、それら民放5社のサービスをTVerというアプリ/Webサイトに集約し、「見逃した番組にいつでもアクセスできる」という環境の実現を目指している。

 いよいよスタートした、民放共同/公式のキャッチアップサービス「TVer」を早速試した。

アプリを落として番組を選ぶだけ

TVer

 TVerアプリの対応機種は、スマートフォンがiOS 7以降、Android 4.1以降で、タブレット用アプリは後日提供予定。パソコンは、Mac OS X 10.7以降とWindows Vista/7/8.xで、Flash Player最新版が必要。

 TVerのトップページを開くと、多くの番組がサムネイルで表示される。表示される番組は、各社のものが混在しており、[新着]、[注目]、[まもなく配信終了]と[きのう]、[おととい]などの表示メニューが用意されている。その名の通り、新着番組や、人気の高い注目番組をサムネイル付きで表示してくれるほか、番組名やタレント名での検索も行なえる。

PCブラウザの「TVer」トップページ

 検索画面はシンプルで、タレント名や番組名で検索可能。放送局ごとやドラマ/バラエティ/アニメ、放送日などを指定した絞り込み検索も行なえる。ただし、番組名[下町ロケット]で検索してもでてこなかったり、PCで[ロケット]を検索すると下町ロケットがでるが、Androidでは出ないなど、まだ安定して使えていないようにも思えた。

 かつて民放5社と電通が共同で展開していた有料の見逃し配信サービス「もっとTV」('15年3月終了)は、ページ構成や検索結果も局ごとになっており、見たい番組にアクセスしづらかったが、さすがに2015年秋にスタートするTVerは、そんなことはない。番組名やタレントの情報だけでも、見たい番組にたどり着ける。

iPhoneアプリのTVer新着
注目
まもなく終了
検索画面
Androidアプリのメニュー

 ユーザーインターフェースもこなれており、スマホアプリでも、PCのブラウザでもストレス無く番組を探せる。また、ユーザー登録などは不要で、パソコンのブラウザであれば、Webサイトを開いてすぐに利用できる。スマホでもアプリをダウンロードして、番組を選ぶだけで使える。この気軽さも魅力的だ。

 ただし、フジテレビとテレビ東京の番組再生には、別アプリのダウンロードが必要。またフジテレビは別途アンケートへの回答を強いられるなど、やや面倒なところもある。入り口は「TVer」に統一できており、番組検索まではシームレスに扱えるので、最後の再生までTVerアプリだけで完結してほしいと感じる。

 なお、iPhoneやPC版では、お気に入りの番組やタレントを登録して、更新情報を通知する[マイリスト]を備えており、番組ページでリストに登録し、好みの番組情報を取得可能。ただし、Android版にはまだ実装されていない。

マイリストに登録
マイリストで好みの番組の情報を確認できる

 また、検索結果やマイリストは、複数のデバイスで共有できず、あくまで1つのデバイス上でのブックマーク的な機能になる。現状のTVerは、見逃した番組を探し、再生することに特化したシンプルなサービスといえる。

50番組を見逃し配信。局によって番組の傾向に違い

 番組は、TBSテレビ「下町ロケット」や日テレ「有吉反省会」、テレ東「ゴッドタン」などで、約50〜60番組を用意する。放送中のドラマやバラエティが中心で、放送終了後から次回放送までの1週間の配信が基本となっている。ドラマであれば、第2話の放送後1週間TVerで第2話が配信され、翌週の第3話の放送後はTVerも第3話に切り替わるといったイメージだ。

 主な配信番組は以下のとおり。日本テレビは、自社の「日テレTADA」で配信している「エンジェル・ハート」など一部ドラマが無く、バラエティ中心。情報番組「ZIP」内の「MOCO's キッチン」、「ドロンジョ」などの番組も一つの番組として扱っているのが特徴。

 TBSやフジテレビは、ドラマのキャッチアップ配信に力を入れていることがわかる。TBSについては、自社の見逃し配信「TBS FREE」と「TVer」で同じものを出すことを基本としているという。

配信番組(10月26日現在)

日本テレビ

「偽装の夫婦」
「徳井と後藤と麗しの SHELLY が今夜くらべてみました」
「有吉反省会」
「SENSORS」
「太田上田」
「MOCO’S キッチン」(ZIP!内)
「ドロンジョ」(ZIP!内)
「1分動画笑」「ZIP!」内)
「そらジロー」(「news every.」内)
「ママモコモてれび」(「PON!」内)

テレビ朝日

「科捜研の女」
「遺産争族」
「イチから住」
「さまぁ〜ず×さまぁ〜ず」
「GO!オスカル!X21」
「くりぃむナンチャラ」
「ブラマヨとゆかいな仲間たち アツアツっ!」
「チェンジ3」
「チア☆ドル」
「鉄道・絶景の旅」

TBS

「下町ロケット」
「結婚式の前日に」
「おかしの家」
「コウノドリ」
「この差って何ですか?」
「世にも不思議なランキング なんで?なんで?なんで?」
「マツコの知らない世界」
「ニンゲン観察バラエティ モニタリング」
「がっちりマンデー!!」
「ラストキス 最後にキスするデート」
「Sing!Sing!Sing!」
「旅ずきんちゃん」
「吉田類の酒場放浪記」
「おんな酒場放浪記」
「ぐでたま」(「あさチャン」内)

テレビ東京

「YOU は何しに日本へ?(傑作選)」
「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!」
「チマタの噺」
「紺野、今から踊るってよ」
「ヨソで言わんとい亭」
「ポンコツ&さまぁ〜ず」
「ゴッドタン」
「こそこそチャップリン」
「空から日本を見てみよう+」
「コーナーセレクション」(「チャージ 730!」内)

フジテレビ

「無痛〜診える眼〜」
「オトナ女子」
「馬子先輩の言う通り」
「テディ・ゴー」
「TERRACE HOUSE BOYS & GIRLS IN THE CITY」
「アフロの変」
「TOKYO IDOL TV」
「巷のリアル TV カミングアウト!」
「全力!脱力タイムズ」
「正直さんぽ」
「久保みねヒャダ こじらせナイト」
「所さんの世田谷ベース」
「小山薫堂 東京会議」
「東北魂 TV!」
「カンニングの DAI 安☆吉日!」

画質は良好。操作性の統一を望む

 TVerでできることは、基本的に番組を選んで再生するだけのシンプルなものだ。ただし、スマホで利用する場合、「TVer」アプリのほか、フジテレビ番組再生のために「再生アプリ(フジテレビオンデマンド)」、テレ東番組の再生に「テレ東動画」の各アプリを追加でダウンロードする必要がある。

テレ東の番組を選んで再生するとアプリのダウンロードが促される
テレビ東京動画プレーヤーをインストール
フジテレビの再生アプリ(フジテレビオンデマンド)ではアンケートも

 今回はiPhone 6sと、Nexus 5、PCでテストしたが、画質には大きな不満は無し。解像度はSDで、ビットレートは300kbps〜3Mbps程度とのことだが、スマートフォンで見る限りは、HDに迫る精彩さがあり,「下町ロケット」の阿部寛の顔のシワや、工場の壁紙のディテールなどもきっちり見える。フルHD解像度のPCでフルスクリーン表示すると、流石にディテールに物足りなさは感じるが、ノイズも無くしっかりと番組を楽しめる。字幕表示や音声切り替えには対応していない。

TVerアプリの再生画面(iPhone)

 画質モードは、iPhoneが[自動]と[低画質]、Androidは、[高画質]、[中画質]、[低画質]の3段階が用意されている。PCのブラウザでは画質選択できない。ビットレートなどの詳細は公表されていないが、低画質でも案外悪くないので、パケット通信量をセーブするため、モバイル回線の場合[低画質]といった使いこなしが良さそうだ。ただ、Wi-Fi接続時のみ高画質/自動にする設定項目は用意されていない。この辺りは今後の機能強化に期待したい。

iPhoneのTVerアプリの画質選択
AndroidのTVerアプリの画質選択

 なお、上記の画質設定が利用できるのは、日テレ、TBS、テレ朝の番組のみ。というのも、フジテレビとテレ東の番組は、別途専用のプレーヤーから再生するため、操作画面や再生設定が異なっている。フジとテレ東のアプリでは画質設定は用意されていない。

 さらに、TVerアプリ再生時にタップすると出てくる、10秒戻る/10秒進むボタンも、フジ/テレ東の両局のアプリでは表示されないなど、こまかな操作の違いが気になるし、わかりにくい。操作性はきっちり統一してほしい。

フジテレビの番組再生画面
テレ東番組の再生画面

 番組を再生すると、15秒のCMが2回再生され、合計30秒待たされることになる。このCMはスキップできない。見逃してしまった番組や見たかった番組であれば、「見たい」という強い動機があるので、CMも気にならない。一方、ザッピングしながらTVerを眺めると、CM待ちにストレスを感じる。当たり前であるが、視聴者の動機や意欲次第で印象は変わるな、と感じた。

番組冒頭にCM

 番組本編内でもCMは用意されており、50分のドラマであれば3〜4回のCMが挟まれている。こちらはテレビ放送と同じようにCMが挿入されているが、TVCMより短いので、さほど気にならない。

 CMが気になるのは、再生画面で「タイムシークバー」を使って早送りした時だ。TVerアプリでは、画面下に出てくるタイムシークバーを使って早送りができるが、CMの先まで早送りしたい時でも、一度CMを再生してから、指定した場所での再生が始まる。つまりCMはスキップできない。

 広告があるからこその無料配信なので、当然といえば当然だが、「先まで一気に飛ばしたい」時にCMが入るのため、待たされてる感が高まる。プレーヤーが異なるフジテレビやテレ東の番組も、早送り時のCMについては同様の挙動だ。

 サクサクと番組の内容を確認したい時などは、「有料でもCMをスキップさせてほしい」と思うことも……。日テレの番組は、公式サイトからHuluへの誘導も行なっており、前回放送だけでなく過去の放送が見られることもアピールしている。利用者側も、ストレスの少ないテレビ視聴のために、広告付きの無料映像配信(ADVOD)と、有料定額制映像配信(SVOD)の使いわけを考えてもいいのかもしれない。

TVerでテレビをより身近に

 ユーザー登録不要で、アプリをダウンロードして、番組を選ぶだけで、無料で人気のテレビ番組が見られる。シンプルなサービスならではのわかりやすさと使いやすさは、確かに魅力的で、多くの人々に使ってほしいアプリ/サービスだ。

 かつての「もっとTV」や「トレソーラ」など、テレビ局が参加した映像配信の歴史を振り返ると、「とうとうここまで来たか」と感慨深く、また、ラジオにおけるradiko.jpのように、放送業界に大きな変化をもたらすものになってほしいとも思う。そのポテンシャルを十分に感じさせてくれるサービスだ。それ故に、局ごとのアプリ追加などの面倒な設定は、極力無くしてほしいと思う。

 生放送が見られなかったり、録画を忘れた「見逃し番組」が無料で見られる「TVer」。その登場により、テレビ番組がより気軽で身近なものになるのは間違い無さそうだ。現在の視聴デバイスは、PCやスマホでテレビ対応は検討中とのことだが、テレビなど大画面でのキャッチアップサービス実現にも期待したい。

(臼田勤哉)