レビュー

ウォークマンA20はどう進化した? 付属イヤフォンでハイレゾ+NC、h.ear onヘッドフォンも

 ハイレゾ対応ウォークマンの「Aシリーズ」がリニューアルし、「NW-A20/A20HNシリーズ」として10月10日に発売された。外観はほとんどA10シリーズと変わっていないが、中身は小さな進化が積み重ねられている。特に、A20HNシリーズに付属するイヤフォンでハイレゾとノイズキャンセリング機能の併用に対応するなど、ハイレゾ周りの機能が強化されたほか、音質強化も図っている。

左がヘッドフォンのh.ear on、右がウォークマンのNW-A25と付属イヤフォン

 今回は、そのハイレゾ/ノイズキャンセル両対応のイヤフォンが付属する「NW-A25HN(16GB)」を試した。カラーは鮮やかなシナバーレッド。'14年に発売された従来のA10シリーズのユーザー視点から、A20シリーズがどう進化したのか、実力をチェックしていく。発売後に本体ソフトウェアアップデートも行なわれたので、そこで追加された新機能も試している。

今回使用したNW-A25HNのシナバーレッド
カラーは6色展開。付属イヤフォンのケーブル、イヤーピースまでカラーを統一

 価格は、ハイレゾ対応のデジタルNCイヤフォンが付属するA20HNシリーズの16GB「NW-A25HN」が実売28,000円前後。32GB「NW-A26HN」は同33,000円前後、64GB「NW-A27HN」が同43,000円前後。付属イヤフォンがハイレゾ非対応の16GBモデル「NW-A25」(実売23,000円前後)も用意する。

 新ウォークマンと同日に、ヘッドフォンの「h.ear on」というシリーズも発売された。ハイレゾ対応モデルで、型番は「MDR-100A」。新しいAシリーズと共通のカラーで展開している。実売価格は22,000円前後。鮮やかな色合いが印象的だが、音質や装着感はどう仕上がっているか、新ウォークマンAと組み合わせて聴いた。

新ヘッドフォン「h.ear on」(MDR-100A)のシナバーレッドとも組み合わせて聴いた

A10から何が変わった? NC搭載新イヤフォンを早速試す

 従来のA10シリーズがハイレゾ再生を安価に楽しめるモデルとして登場したことは'14年の話題の一つであり、個人的にも気に入っていた。いち押しのモデルとして年末特別企画の記事でも紹介している。そのAシリーズが最新のNW-A20/A20HNになって大きく変わったのは、以下の3点。

  • 付属イヤフォン(A20は別売)で、ハイレゾとノイズキャンセリング(NC)の併用に対応
  • ハイレゾ再生中にイコライザなどの音質調整が可能
  • Filled Via構造など、上位モデルの高音質化技術を採用
従来モデルのNW-A16(左)と、新モデルのNW-A25HN(右)

 もちろん、イヤフォンがハイレゾ対応でなくても音が聴けないわけではなかったが、せっかくウォークマン本体がハイレゾファイルを再生できるのに、付属のイヤフォンの再生周波数帯域が、これまでハイレゾに規定されている帯域をカバーしていなかったのは、確かに不完全だったといえる。これをカバーするイヤフォンが付属しても約28,000円~で、従来のA10シリーズ(発売時は実売25,000円~)から価格は大きく上がっていない。

NC機能の設定画面
NW-A25HNと付属イヤフォンで再生

 さっそく、「NW-A25HN」と付属イヤフォンの組み合わせで、ノイズキャンセリング機能を試した。NCはON/OFF可能で、[電車・バス]、[航空機]、[室内]の各モードと、環境に合わせて自動で設定する[フルオートAINC]から選べる点は、A10から変わっていない。

 エアコンをかけた室内や、地下鉄などで試したところ、モーター音など一定の騒音がはっきり低減されているのが分かる一方で、ONにした時の耳(鼓膜)への圧迫感はほとんど無い。従来モデルのA10と付属イヤフォンでNC機能を長距離移動時などに使っていたところ、わずかだが鼓膜が押される感覚があった。それがさらに低減されたことで、ずっと使い続けたい機能として満足度が高まった。

 音質についても、A25HNではNC ONにした時に大きな変化が無かったことはうれしい。「NCでもハイレゾ対応」というのは、ONにしても音が大きく変わらず聴けることを指しているようだ。ずっとONにしていても疲れることは無く、長く着けているとNCが効いていることを忘れてしまうこともあった。そんな時も、ウォークマンの電源をOFFにすると急に周りの騒音が聴こえるようになるため、いつもは静かだと思っている街や、電車が通っていないホームも、実は結構な騒音があることに気付かされた。

 外部の騒音が少ないということは、曲の静寂部分もしっかり聴けるため、音が出ている時との違いを味わえる。また、ボリュームを上げすぎずに聴けるので、大きすぎる音から耳を守るという利点もある。

 ウォークマンのノイズキャンセリング機能は、高いノイズ低減性能を持っていることは以前のモデルから実感していたが、付属イヤフォンまたはソニー製の一部ヘッドフォンでしか使えないという点は変わっていない。飛行機など長時間に渡り騒音がある場合は、NC機能を積極的に使っているので、筆者は長距離移動時、ウォークマンの付属イヤフォンと、NCを使わないときに高音質で聴くための2つのイヤフォンを持っていくのが普通だった。

 今回、A25HNのNCを通勤や散歩などに使ってみたところ、NC機能が特別な時だけのものでは無く、普段からONにしてもいいと思えた。ハイレゾ再生時のバッテリ持続時間も、NC OFFでは30時間、ONでも27時間と大きな違いは無い。電車や街中の移動など周囲の環境が変わる場合は、常に[フルオートAINC]にしておくことで、A25HNの良さをフルに活かせるように思う。

 なお、A10シリーズも10月13日に行なわれたVer.1.20へのアップデートにより、ハイレゾとNC機能の両方を併用できるようになった。同機能の利用に必須となる対応イヤフォン「MDR-NW750N」(ブラック/ホワイト)は実売12,000円前後。ウォークマン本体と同じカラーのイヤフォンが付属するNW-A25HN(16GB)は実売28,000円前後なので、イヤフォンだけを追加で買うと、やや割高感もある。A10ユーザーがA20へ買い替えるかどうかは、本体がどれだけ機能向上したかが重要になってくる。そういった点を続いてチェックしていきたい。

NW-A16/17もアップデートでハイレゾとNCを併用可能になる

操作系など、使って分かった細かな進化

 再生対応フォーマットはA10と同じで、最大192kHz/24bitのWAVやFLAC、Apple Losslessなど。DSD再生には対応しない。一つ大きな変更として、ハイレゾ再生をしながらイコライザなどの音質調整機能を適用できるようになった。普段イコライザを使わない人にはあまり恩恵が無いかもしれないが、これまではハイレゾ再生中だとイコライザを変更しても音が変わらなかったので、色々な音を試せるという点では進化した。

 なお、A10シリーズからイコライザの種類も少し変更されている。A10は、ヘビー、ポップス、ジャズ、ユニークと、カスタム(2つ)だったが、A20ではヘビー/ユニークの2つが無くなった代わりに、ダンス、ソウル、リラックス、低音ブースト、高音ブーストの5つが加わっている。

ハイレゾ再生しながら、イコライザも変更可能になった
イコライザの項目もA10から変化

 操作性については、前述したハイレゾ再生中のNCやイコライザ以外はハード/ソフトともに大きな変更は無く、AndroidではないAシリーズの特徴を受け継いでいる。前面の菱形をした十字+再生/一時停止ボタンと、その上に並んだBACK、OPTIONボタン、側面のボリュームボタンで操作する。

ホームメニュー
ミュージックのメニュー
音楽設定

 再生中に十字キーの上下を長押しすると、アルバムジャケットがスクロールして、アルバムから作品を探すことができる。また、A10と共通の機能だが、中央の再生/一時停止ボタンを長押しすると、再生中の曲を[ブックマーク]に登録可能。本体作成での簡単なプレイリストとして使える機能だ。

上下ボタン長押しで、ジャケットを上下にスクロール
側面のボタンやmicroSDスロット部

 10月22日には本体ソフトウェアVer1.10へのアップデートがあった。これにより、ハイレゾコンテンツのみを表示できるメニューも追加された。

10月22日のVer.1.20アップデート内容

 [ミュージック]メニュー内に、[ハイレゾ]が追加され、ハイレゾ全曲再生のほか、アルバム、アーティストでの絞り込みが可能になる。

ミュージックメニューに[ハイレゾ]が加わった
ハイレゾ楽曲を、アルバムやアーティストでさらに絞り込める

 ハイレゾのみを再生したいというケースはあまり多くないかもしれない。ただ、手持ちの曲数が増えて、どれがハイレゾでどれがCD音源だったか、把握しきれなくなり始めている人もいるだろう。これまでは再生画面まで進まないとハイレゾかどうかは分からなかったが、アップデートするとハイレゾだけに絞って再生できるようになった。筆者の場合は、新しいイヤフォンを試聴する場合に、ハイレゾ楽曲だけで音をチェックしたい時などに使えそうだ。

 一方、A10から省かれた機能が「カラオケ・語学・ダンスモード」。これらは、再生速度やキーの調整、ボーカル(センターに定位する音)のキャンセルができる機能で、適用するとハイレゾ楽曲がスキップされる。音楽プレーヤーとしてだけ使うには無くなっても問題ないが、そのメニュー自体がA20では消えているので、A10などでこの機能を使っていたという人は注意しておきたい。

 なお、A10の頃から少し気になっていたのは、「画面をすぐ消す」操作はできない点で、これはA20でも同じ。タッチパネルではないので、ポケットに入れた時に画面へ触れても誤操作することはないが、スマホの操作感に慣れていると、ポケットに入れても画面がしばらく光っている(最短15秒で消えるように設定可能)のは、バッテリのムダだと感じる。ボタン長押しなどで、再生は続けながら画面だけ消せるような機能を追加して欲しいと思っている。

 ポケットに入れて利用する時に気付いたが、もう一つ変わった点がある。A10は、microSDカードスロットを保護するカバー部分が、使っているうちに浮いてくることが多かった。カバーを強く押し込んであっても、ポケットやバッグから出し入れしていると、カバーが引っかかって外れることもあったので、中のmicroSDが飛び出ないか気になっていた。最初は個体差かと思っていたが、同様のことで悩むユーザーの意見もネット上でいくつか見かけていた。

左がA16、右がA25。microSDスロットのカバー、A16の方少し浮いている
カバー自体はA25の方が厚く見えるが、本体外側に出ている部分(下半分)はスリムになっている

 A20の側面にあるmicroSDスロットを見ると、カバーを着けた時にフラットに近い状態になり、手で触ると明らかにA10よりも引っ掛かりがない。カバーを外してみると、A10よりも少し薄くなっているようだ。普段はそれほど開け閉めする場所ではないので、しっかり閉じられているのは安心できる。

音質はどう変わった? h.earヘッドフォンも組み合わせてみる

 音質面では、フルデジタルアンプ「S-Master HX」を引き続き搭載。ハイレゾ以外のファイルを再生する際に、失われたデータを補いながら高音質再生できるという「DSEE HX」も利用できる。

 大きな変化は、ZX100シリーズと同様にプリント基板にFilled Via構造を採用した点。ビア部分を銅メッキで穴埋めすることで、電源の安定化や、配線インピーダンスを低減するというもの。はんだ素材も見直し、金属結晶の品質を向上。音域ごとのバランスや臨場感を高めたという。

プリント基板にFilled Via構造(右)を採用

 この変更内容だけでは細かな違いだけのように見えるので、あまり大きくは期待していなかったが、実際に聴いてみると、その予想はいい方向に裏切られた。A10が登場した時も、2万円台とは思えない仕上がりだと感じていたが、それをさらにブラッシュアップした印象だ。

 ここからはNC機能をオフにして、付属イヤフォン(MDR-NW750N相当)や、FitEarの「fitear」などを使ってA10とA25HNを比較した。イコライザなどは全てオフにしている。

 山中千尋「Somethin' Blue」は、ピアノやトランペット、サックスの輪郭がより際立ち、トランペットソロ時のサックスとの重なりが、より立体感を増した形で耳へ届く。また、SHANTI/Tommy Snyder親子による「タイム・アフター・タイム」は、2人のボーカルのコントラストを明確に描き分けつつ、重なるパートでは厚みのあるハーモニーとなり、同時に聴こえるバスドラムのアタック感にもキレが増している。Daft Punk「Get Lucky feat.Pharrell Williams」を聴き比べると、これまで大きな不満は無いと思っていたA10が、低域部分の歯切れが少し足りないように感じてしまった。A20では細かな音質向上技術の積み重ねが、良い結果を生んでいるようだ。

 新しい付属イヤフォンは、NC/ハイレゾの両方に対応するという機能面だけでなく、音質でもハイレゾの良さをうまく引き出しているようだ。A10シリーズの付属イヤフォン(MDR-NWNC33相当)のドライバは13.5mm径で、A25HNは9mmの高感度小型ドライバでハイレゾ対応を実現している。ユニットが小さくなったが、高域のシャープさが増した代わりに低域が減ったといった単純な変化ではなく、低域は音の広がりよりもタイトさを重視したような印象。長い間大きな変化が無かった「ウォークマン付属イヤフォン」のイメージを大きく変えた仕上がりだ。ハウジングがコンパクトになったこともあって、装着感も軽くなった。なお、ケーブルは左右長さが違う従来のU字型ではなく、一般的なY字型に変わった。

左が従来のA16の付属イヤフォン、右がA25の付属イヤフォン
イヤーピースを外したところ
外側に、NC用のマイクを内蔵

 ウォークマンのリニューアルに合わせて登場した「h.ear on」ヘッドフォンの「MDR-100A」も合わせて試した。まず目を引くのは、ウォークマン本体に合わせた鮮やかな5色展開。最近は、beatsを意識したデザインのヘッドフォンが増える中、幅広いヘッドバンドを採用した点はトレンドを押さえた感があるが、全体の色を統一しているのがユニーク。初めて見る人はこれがソニー製だとは思わないかも知れない。ハウジングにメーカーのロゴを入れない(ヘッドバンド部に入っている)のも大胆な変更だが、個人的にはメーカーロゴは控えめな方が好みなので支持したい。

h.ear on(MDR-100A)

 ユニットは40mm径の「HDドライバー」で、軽量CCAWコイルにより応答性を向上。振動板にチタン被膜を施して剛性を高めている。若年層が主なターゲットとのことで、わかりやすく低域を強調した音作りかと想像していたが、実際に聴いてみたところ、外見のインパクトに比べると低音の張り出しはおとなしめ。ウォークマンA25HNの付属イヤフォンと似た傾向で、レスポンスが良く全体のバランスを重視したようなサウンド。“ハイレゾ対応”の見本のような素直な音作りだと感じた。

カラーは5色

 ハウジングは、オンイヤーとアラウンドイヤーの中間くらいのサイズで、MDR-1Rなどに比べるとやや小さい。立体縫製のイヤーパッド部は装着感も良く、長く着けても過度な圧迫感は少なかった。なお、密閉型だがNC対応ではないので、街歩き程度であれば騒音はある程度防げるが、走行中の地下鉄などでは、A25HNの付属イヤフォンで聴いた方が快適だった。ケーブルは着脱式で、ステレオミニケーブルと、スマホ用マイク/リモコン付きケーブルを同梱している。

立体縫製のイヤーパッド
折り畳みも可能
ケーブルは2種類付属

最初の一台には文句なしで推奨。ZX100に躊躇した人も

 Bluetoothも引き続き搭載しているが、A10シリーズのBluetooth 2.1+EDRから、A20は3.0対応に進化した。NFCでペアリングでき、高音質コーデックのLDACもサポートする。なお、Bluetooth接続時はイコライザは効かないようだ。

Bluetoothスピーカーの「SRS-X33」とNFCタッチでペアリングして聴いた
高音質のLDACコーデックで伝送できる

 初代のA10登場に比べるとインパクトは小さいものの、発売後のアップデートを含め着実に機能が進化しているA20シリーズ。アドバンテージとして、付属イヤフォンがハイレゾ+NC対応に強化された点だけでも、まだハイレゾプレーヤーを持っていない人には文句なしにおすすめしたい。ハイレゾを良い音で聴きたいが、上位モデル「NW-ZX100」の価格を見て手が出なかった人も、候補に入れる価値は十分ある。

 A10ユーザーなら、約12,000円のイヤフォンを追加で買って組み合わせる手も当然あるが、インパクトが強いカラーのシナバーレッドやライムイエローなどの本体と同じ色のNCイヤフォンを手に入れるには、A25HNという選択肢に限られる。特にNC機能を使う機会が少しでもありそうな人は、イヤフォンの音の良さを活かしきる意味でも、音質向上を続けたA20HNに買い替えて後悔はしないだろう。

 操作系がほとんど変わらなかった点について大きな不満は無いが、今後の希望を言えば、ZX100で採用されている再生画面とメニュー項目の同時表示がAシリーズでもできるようになって欲しい。再生画面と、BluetoothやNCなどの設定メニュー切り替えの行き来が少し面倒な時もあるので、これらすぐ呼び出せるZX100の機能はうらやましいと思ったポイントだ。いずれにしろ、ZX100やAシリーズについては、今後もNW-ZX2など多機能なAndroid搭載モデルとは別の方向性で、音楽プレーヤーとしての使いやすさを追求し続けて欲しい。

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中林暁