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第417回:カード上にRCA装備の「Sound Blaster X-Fi Titanium HD」を試す

〜「THX TruStudio PC」で“スタジオ環境”を再現 〜


Sound Blaster X-Fi Titanium HD

 クリエイティブメディアから、PCI Express対応のサウンドカード「PCI Express Sound Blaster X-Fi Titanium HD」が発売された。THX TruStudio PCという機能を搭載したのが特徴であるが、もうひとつのポイントはSound Blasterとして初めて、カード上にRCAのライン入出力端子を持ったことだ。ちなみに、1997年発売のISA接続の「Sound Blaster AWE64 Gold」で、RCA出力は実現していたので、「RCA入出力搭載」が初ということになる。

 実際どんなサウンドカードとなっているのか、早速チェックした。なお、PCI Express Sound Blaster X-Fi Titanium HDの価格はオープンプライスだが、実売は2万円弱といったところである。



■ RCAを初めてカード上に装備。オペアンプは交換可能

Sound Blaster Pro 2

 個人的には、Sound Blasterに初めて触ったのは、1992年に「Sound Blaster Pro 2」を購入したときだった。倉庫を探してみたら、まだしっかり保存されていたが、PC-9801を使いながら、はじめてPC/AT互換機を導入したタイミングであり、あまりにもチープなサウンドでありながらも、いろいろな機能があって面白かった覚えがある。まだ、クリエイティブメディアの国内支社ができる以前であり、東海理化(TORICA)が輸入代理店をしていた時代だ。

 そのときから今に至るまで、さまざまなSound Blasterが発売されてきて、機能、性能は大幅に向上していった。しかし、「Sound Blaster AWE64 Gold」以外ではカード上のアナログの入出力端子がステレオミニジャックであったため、個人的にもメーカーに対して、RCAを搭載するように再三要望を出していたが、ステレオミニでも十分な性能が出せるということだったのだろう、なかなか聞き入れてはもらえなかった。確かに、ブレイクアウトボックスを使うタイプのSound BlasterにはRCA端子や、標準フォンジャックを使った入出力端子を搭載したものもあったが、きっと同じような思いでいた人も数多くいたのではないだろうか?

 それが、ここに来てようやくRCA端子を搭載した新製品が誕生した。それが、PCI Express Sound Blaster X-Fi Titanium HD(以下X-Fi Titanium HD)だ。名前のとおり、PCI Express接続の内蔵型サウンドカード。正直なところ、今さらという思いもないではないが、Sound Blasterがようやくサウンドカードから、オーディオカードになったということなのかもしれない。

 X-Fi Titanium HDは、写真を見てもわかるとおり、カード全体がシールドらしきカバーで覆われている。ただし、全体が金属でできているというわけではなく、金属の枠の上をアクリル板が覆っているという構造だ。また製品パッケージは非常にシンプルな構成であり、本体のカードと光ケーブル、RCA−ステレオミニのアナログケーブルとドライバCD、簡易マニュアルとなっている。したがって、使える端子も基本的にはサウンドカード上にあるもののみ。ミニジャックのマイクイン、ステレオミニジャックのヘッドフォンアウト、そしてRCAジャックが4つ、つまりラインインのLとR、ラインアウトのLとRとなっている。電源を入れた状態での写真を見るとわかるとおり、一番下のRCAジャックの内側が赤く光っている。つまり、ラインアウトのRは、丸コネクタでのS/PDIF出力も兼ねており、その上のラインアウトのLはS/PDIFの入力も兼ねている。小さいスペースにいろいろな入出力を突っ込むための工夫である。

金属の枠の上をアクリル板が覆っている 端子部。上からミニジャックのマイクイン、ステレオミニジャックのヘッドフォンアウト、そしてRCAジャックが4つ(ラインインのL/R、ラインアウトのL/R)

 とはいえ、これだけしかないので、従来のSound Blasterとは、かなり位置づけが異なる製品であることが想像できるだろう。Sound Blaster Pro 2など大昔の製品は別として、ここ10年くらいはサラウンドがウリのサウンドカードであり、だからこそゲームユーザーに支持されてきたシリーズであった。しかし、X-Fi Titanium HDはステレオでの入出力に完全にフォーカスを当てた製品となっている。もちろん、S/PDIFを通じて、Dolby DigitalやDTSをパススルーすればサラウンドも扱えるが、基本はステレオメインの製品なのだ。

 そのため一番の用途はCDやMP3など音楽の再生ということになる。もちろん、ステレオ再生にターゲットを絞った製品というのは各社から出ているが、そうした製品において、最近、流行っているのが、オペアンプの交換だ。ソケット上に取り付けられたオペアンプをユーザーが交換することで、音の違いを楽しめるという自作系オーディオマニア向けの趣向だが、なんとSound Blasterまでもが、それを取り入れてきた。

 カード全体を覆うカバーを取り外すと、4つのオペアンプのソケットが配置されている。小さいマイナスドライバなどがあれば、誰でも簡単にはずして交換することができる。回路図はないが、同社によれば4つとも入力用とのことだ。入出力端子に近いほうの2つがNational SemiconductorのLME49710、遠いほうの2つがJRCの2114Dとなっている。実際に交換を試みるユーザーがどれぐらいいるかはわからないが、数百円で入手できるオペアンプを交換することで、自分だけのサウンドカードに仕立て上げられるのだから面白そうだ。

カバーを取り外してみると4つのオペアンプのソケットが
オペアンプは簡単にはずして交換できる 入出力端子に近いほうの2つがNational SemiconductorのLME49710、遠いほうの2つがJRCの2114D


■ “スタジオのオーディオ環境を再現する”THX TruStudio PC

 一方、一般のサウンドカード、オーディオカードと異なるSound Blasterらしさ、という面もいろいろとある。まずは、従来のX-Fiシリーズと同様にオーディオリスニング用のエンターテインメントモード、ゲーム用のゲームモード、DTM用のオーディオクリエイションモードの3つが用意されており、用途に応じて切り替えることが可能。各モードでの機能も、徐々に強化されてきてはいるものの、基本的にほかのX-Fiシリーズと変わらないので、各機能の詳細については割愛する。

オーディオリスニング用のエンターテインメントモード DTM用のオーディオクリエイションモード ゲームモード

 

THX TruStudio PCテクノロジーを搭載

 ただひとつチェックしておきたいのが、エンターテインメントモードで利用できるTHX TruStudio PCテクノロジー。カード側にもTHX TruStudio PCのロゴが施されているが、これはライブの臨場感、映画やレコーディングスタジオでのオーディオ環境をTHXの技術を用いて実現するというもの。

 設定項目は、「THX TruStudio PC Surround」、「THX TruStudio PC Crystalizer」、「THX TruStudio PC Speaker」、「THX TruStudio PC Dialog Plus」、「THX TruStudio PC Smart Volume」の5つ。それぞれのON/OFFできるほか、パラメータの調整が可能となっている。簡単に説明すると、まずTHX TruStudio PC Surroundはいわゆるバーチャルサラウンドを実現するもので、2chのスピーカーであっても、広がりを持たせたサラウンドっぽい音に仕上げる技術。映画などのコンテンツ用には、それなりに活用できる。

 THX TruStudio PC Crystalizerは、ゲームモードとしても用意されている従来のX-Fiシリーズから搭載されていた24-bit Crystalizerを強化した感じのもの。MP3やAACなどの圧縮オーディオで失われた帯域を補間し、より広く、自然なダイナミックレンジな音に仕上げる機能だ。従来からのクリエイティブ製の24-bit Crystalizerでは、パラメータはなく、単にオン/オフするだけのものだったが、THX TrueStudio PC Crystalizerでは、効き具合を0〜100%で調整できるようになっている。聴いた感じでは、やはりEQでハイとローを持ち上げたという感じの音だが、単にオン/オフするよりも、自分の好みの具合に抑えられるのがいい感じだ。

 THX TruStudio PC Speakeは、低音をブースとさせて、迫力やインパクトを与えようというもの。ややわざとらしい音作りといえなくもないが、サブウーファーがなくても、それなりの低域感を出すことができる。

 またTHX TruStudio PC Dialog Plusは音声の音域の音を強調することによって、映画などでの会話を比較的クリアにすることができる技術。そこそこのBGMや音響効果があっても会話がクッキリと浮き上がってくる。THX TruStudio PC Smart Volumeは、曲ごとに異なる音量レベルの違いを自動測定し、音量の変化に対して自動的に最適なレベルへ調整する機能。個人的には、こうした処理はあまり好きではないが、曲ごとに音量が変わるのが嫌だという人にはいいだろう。


THX TruStudio PC Surround THX TruStudio PC Crystalizer THX TruStudio PC Speaker
THX TruStudio PC Dialog Plus THX TruStudio PC Smart Volume

 もっとも、こうした処理はかけず、できるだけストレートに音を出したいという人も多いはず。もちろん、このX-Fi Titanium HDもASIO 2.0対応のドライバが用意されているので、「Windowsのカーネルミキサーを通すと音質が劣化するので嫌だ」という人は、これを使うといいだろう。ちなみに、Cubaseから、このASIOドライバを見てみると、18in/18outとすごいスペックになっている。これは従来からのX-Fiのドライバの名残であって、実際には接続不能なポートがいろいろあるようである。

ASIO 2.0対応ドライバも用意されている CubaseからASIOドライバを見ると18in/18outと表示された


■ ノイズやクセの無いクリアな再生音

 さて、スペック上、122dBのS/Nを実現しているというだけあって、実際に試聴してもノイズはまったく感じない、非常にクリアなサウンドだ。アナログ接続で音を出したところ、本当にクセのないサウンドで扱いやすい。ただ、聴き心地を重視した音作りとか、原音の忠実さを目指したモニター性能……といった特徴はなく、その意味では面白み少ないかもしれない。

 ここで、いつものように、RMAA Proを用いた音質チェックを行なってみた。もちろん、RCAの入出力を直結させてのループテストである。44.1kHz、48kHz、96kHzの3つのサンプリングレート、いずれも24bitの量子化ビット数でテストを行なった結果を見てほしい。やはり、クセがまったくない分、RMAA Proとしての評価はとても高い結果を出している。

 オペアンプを変えると音の印象が変わるのか、RMAA Proでの結果に違いが出るのか、今回はそうしたテストをしてみなかったが、機会があれば試してみたい。


24bit/96kHz 24bit/48kHz 24bit/44.1kHz

(2010年 5月 24日)

= 藤本健 =  リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
 著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またAll Aboutでは、DTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto

[Text by 藤本健]