藤本健のDigital Audio Laboratory

第546回

DSD対応USB DACの再生ソフトを比較する

3機種比較【2】。互換性と、利用時の注意点

下がティアック「UD-501」、左上がコルグ「DS-DAC-10」、右上がラトックシステム「RAL-DSDHA1」

 先週に続き、DSD対応のUSB DACに関する記事の第2弾。引き続き、ティアックのUD-501、コルグのDS-DAC-10、ラトックシステムのRAL-DSDHA1の国内3機種を取り上げて見ていく。前回は主にハードウェア面とスペックの違いについて見てきたので、今回はドライバやプレーヤーなどソフトウェア面を中心に、それぞれの互換性がどうなってるのかをチェックしていく。


ASIOとDoPは機種によって対応/非対応が分かれる

 前回の記事でも見てきたとおり、一言でDSD対応のUSB DACといってもいろいろと違いがあることが分かった。大きさ、重さの違いはもちろん、DSD64(2.8224MHz)だけの対応なのか、DSD128(5.6448MHz)にも対応しているのか、電源供給方式がどうなっているのか……。

 しかし、中でも分かりづらいのが、PCとの接続方式だ。具体的にいえばASIO対応なのか、DoP対応なのか、という点。そもそもASIOというのはドライバの名称であり、DoP(DSD Audio over PCM Flames)はDSDデータの流し方を意味するもので、比較するレイヤーが違うような気もする。が、実際には、ドライバ部分からプレーヤー部分までも一括して考える必要があり、その総称としてASIOかDoPかとなっているのだ。今回は、この点に注目してチェックしていくことにしよう。

【3機種の主な仕様比較】

TEAC
UD-501
KORG
DS-DAC-10
RATOC
RAL-DSDHA1
DSD64(2.8224MHz)
DSD128(5.6448MHz) ×
DoP対応 ×
ASIO(DSD)対応 ×
電源 AC100V USB電源供給 ACアダプタ
付属プレーヤーソフト TEAC HR Audio Player AudioGate -
サイズ
(幅×奥行き×高さ)
290×244×81.2mm 120×150×48mm 133×167×43mm
重量 4.0kg 530g 615g
実売価格 99,800円 54,780円 59,800円
ティアック「UD-501」
コルグ「DS-DAC-10」
ラトックシステム「RAL-DSDHA1」

 まずASIOはWindowsのみで利用できるオーディオドライバであり、Macでは使うことはできない。10年以上前、Mac OS 9以前はASIOドライバが存在していたが、現在のMac OS XではCoreAudioというAppleの独自ドライバが登場したのに伴い、ASIOは使えなくなった。仮にMac OS 9を搭載したマシンがあったとしても、ASIOにDSDが搭載されたのは2005年のASIO 2.1以降であるため、この古いOS上でASIOを使ったDSDネイティブ再生ということはできない。

 となるとMacで再生するための手段はDoPのみとなる。事実、ティアックのUD-501にバンドルされているプレーヤーソフト、TEAC HR Audio Playerの設定画面を見ると、Windows版にはあるASIO(表記上はDSD Native)の選択肢はなく、DoPでの利用となるのは前回も述べたとおり。まあ選択肢がないから分かりやすいというのも事実だし、付属ソフトだけに戸惑わずに簡単に音が鳴らせるというのはひとつの利点かもしれない。

TEAC HR Audio PlayerをMacで利用すると、DoP再生のみとなる

 一方、コルグのDS-DAC-10の場合は、DoP非サポートであるため、Macではネイティブ再生はできない。もっとも、DS-DAC-10がMacでまったく使えないというわけではない。DS-DAC-10はMacのCoreAudioに対応したドライバも用意されているし、DSDファイルの再生が可能なAudioGateもMac版がある。実際、これでDSDファイルを高音質に鳴らすことはできるのだが、この時にDoPが使えないため、DSDのままデータを流すことはできず、192kHzなどのPCMに変換された上で鳴らしているのだ。

 もちろん、PCMに変換されても、CDと比較して格段に高品位な音で再生することはできるのだが、より自然な音で鳴らしたいからDSDネイティブにこだわりたい、という人も少なくないはず。そういう人にとって、もしMacで使うことが前提だとしたら、DS-DAC-10は選択肢から外さざるを得ないわけだ。ただ、先ほどコルグのWebサイトのFAQ確認したところ「2013年4月中旬にDS-DAC-10を使ったMacでのDSDネイティブ再生に対応予定です。」との表記を発見。どうやらファームウェアアップデートとAudioGateのアップデートなどにより近々DoP対応する模様だが、詳細は不明だ。

AudioGateのMac版
DSDはPCMに変換されて再生された

 そしてもうひとつの機種、ラトックシステムのRAL-DSDHA1の場合、付属のプレーヤーソフトがないため、別途、DSD対応のプレーヤーソフトを用意しなくてはならならない。たとえばAudirvana Plusあたりが、その代表的なソフトであり、これを使っての再生が可能だ。設定自体はとてもシンプル。Audirvana PlusのPreferences画面においてAudio Deviceを設定した上で、Active Audio Deviceとして「DSD over PCM standard 1.0」を選んでおけばいいだけだ。これでDoPを使ったネイティブ再生が可能になる。ちなみに、このRAL-DSDHA1もティアックのUD-501もUSB Class Audio 2.0対応のハードウェアとなっているため、Macであればドライバをインストールすることなく、接続すればすぐに使えるというのもメリット。Windowsの場合、Windows 8になってもUSB Class Audio 2.0に対応しなかったため、どうしてもドライバを用意する必要がある。

Audirvana Plusの画面
設定画面でActive Audio Deviceとして「DSD over PCM standard 1.0」を選択
Macではドライバのインストール作業は不要

USB DACの付属ソフトは他の機種でも使える?

 1つ試してみたのは、ティアックのプレーヤーソフト、TEAC HR Audio PlayerでRAL-DSDHA1が使えるのか、という点。前述のAudirvana Plusは有料ソフトであるのに対し、TEAC HR Audio Playerは無料でWeb上で配布されているため、これがそのまま使えるなら便利そうだ。が、結論からいうとダメ。やはりハードウェアのチェックを行なっているのか、UD-501以外は認識されず、使うことはできなかった。

 では次にWindowsの場合を見てみよう。前回も見てきたとおり、ティアックのUD-501ではTEAC HR Audio Player、コルグのDS-DAC-10ではAudioGateを使うことでネイティブ再生が可能だ。また、ラトックのRAL-DSDHA1は付属ソフトがないため、foober2000で再生を行なったのだが、設定が一筋縄ではいかないため、ネイティブ再生ができるまでには、結構時間を要してしまった。

 ここで試してみたいのが、3つのハードウェア、3つのソフトウェアの相互間での互換性について。それぞれ、どんな組み合わせでも使えるとしたら、非常に便利そうだが、ASIO、DoPといった問題も交錯する中で、どのようになっているのだろうか? ひとつひとつ試してみよう。

 まずはTEAC HR Audio Playerについて。これがUD-501で動作するのは当然として、DS-DAC-10を繋いだ状態で、TEAC HR Audio Playerを起動し、設定画面のDeviceを確認してみたところ、ドライバとしてDS-DAC-10が見えず、設定できるのはUD-501のみ。RAL-DSDHA1でも試してみたが結果は同じ。同社サイトでも案内されているが、やはりこのソフトは自社製品以外は非サポートということのようだ。

TEAC HR Audio Player(Windows版)
DS-DAC-10やRAL-DSDHA1を接続しても、認識はされなかった
AudioGate

 ではAudioGateはどうだろうか? このソフトは、ある意味DSD普及のために、フリーウェアとして配布しており、他社のオーディオインターフェイスでもDSDファイルの再生ができるというのがポイントとなっている。もっとも、従来はネイティブ再生はできず、あくまでもPCM変換しての再生だったわけだが、DS-DAC-10の登場に伴い、AudioGateがVer2.3へとアップグレードするとともに、DSDネイティブ再生をサポートするようになったのだ。そのネイティブ再生が、UD-501やRAL-DSDHA1でできるのかを試した。

ラトックのRAL-DSDHA1を接続してAudioGateで再生

 まずUD-501を接続した状態で、設定画面を開き、ドライバを「KORG USB Audio Device Driver」を選択してみた。すると、どうもハングアップしてしまうようだ。Windows 7 64bitという環境において、再度マシンをフォーマットしてやりなおしても同様の状況に陥り、どうにも使うことができなかった。やはりネイティブ再生はDS-DAC-10以外できないのだろうか……と思いつつ、RAL-DSDHA1を繋いで設定してみたところ、こちらはあっさり動いてしまった。が、RAL-DSDHA1のインジケータを見ると、192kHzのランプがついているので、残念ながらネイティブ再生というわけではなさそうだ。


foober2000再生時には注意点も

 では、フリーウェアのfoober2000を使った場合、それぞれ3つのハードウェアでうまく再生ができるのだろうか? 結論からいえば、すべての機種でネイティブ再生に成功したが、実は機種によって設定が異なるため、ちょっと大変だった。前回、RAL-DSDHA1を使ったDoP再生について紹介しているが、改めて設定手順を含め、1機種ずつ見ていくことにしよう。

 まず3つに共通する基本設定から紹介していこう。foober2000がインストールした上で、ASIOをサポートするためのプラグイン、「foo_out_asio.fb2k-component」をインストールする。このファイルをダブルクリックするとfoober2000のComponetsの画面が出てくるのだが、この状態では「unknown」となっていて、認識されていないため、「Apply」をクリックするとASIOがサポートされる。続いて、DSD再生をサポートするためのモジュール、「foo_input_sacd-0.6.2.zip」をダウンロードしてインストールするのだが、これがちょっと難しい。

 このファイルを解凍すると、「ASIOProxyInstall-0.6.0.exe」というインストーラが入っているので、まずはこれを実行する。これは、ASIOドライバの姿をしたブリッジソフトであり、これを通じて別のASIOドライバへと橋渡しをするためのものだ。さらに、「foo_input_sacd-0.6.2.zip」にはfoo_input_sacd.dllというものが入っているが、これがDSD形式のファイルを再生できるようにするプラグイン。これに関してはインストーラが存在しないため、手動でコピーしてインストールしなくてはならない。具体的には、ProgramFiles(x86)フォルダ内のfoober2000フォルダの中にあるcomponetsへコピーするのだ。その後、foober2000を再起動すると、コンポーネントとして組み込まれるので、「Super Audio CD Decoder」を選択した上で「Apply」を実行すると、ようやくインストールが完了となる。

foober2000のセットアップ画面
設定画面
「ASIOProxyInstall-0.6.0.exe」を実行
「foo_input_sacd.dll」を、プログラムのfoober2000フォルダ内にあるcomponetsへコピー
「Super Audio CD Decoder」を選択後、「Apply」を実行するとインストール完了

 さて、前回はこのfoober2000を用いてRAL-DSDHA1を鳴らしたわけだが、もう一度振り返ってみよう。ここではOutput Deviceとして「ASIO:foo_dsd_asio」を選択するとともに、ASIOコントロールパネルで、「RAL dsdha1 ASIO Driver」を選択。DSD Playback Medhodとしては「DoP Maker 0x05/0xFA」を選び、PCM to DSD MethodとしてはSDM Type AまたはSDM Type Bを選ぶことで、ネイティブ再生ができた。ここで行なったのはDoPでの再生だったのだが、ASIOでの再生はできるのだろうか? 再びfoo_dsd_asioの設定画面を開き、DSD Playback Methodを「ASIO Native」に設定してみた。理論的には、これでうまくいくはずなのだが……。ここでプレイしてみると、大事故発生。スピーカーからは爆発音のようなノイズが「ガーーー」と出てしまい、慌ててストップ。機器を痛めるまでには至らなかったが危ないところ。この辺がフリーウェアでDoPを扱う危険なところなのかもしれない。

出力先は「ASIO:foo_dsd_asio」に
ASIOコントロールパネルで「RAL dsdha1 ASIO Driver」を選ぶ
DSD Playback Methodを「ASIO Native」に設定

 続いて、コルグのDS-DAC-10をfoober2000で鳴らせるのか試してみた。ここでも基本はRAL-DSDHA1のときと同様だが、ASIO Driverの設定をKORG USBDAC ASIOに、DSD Playback MethodをASIO NativeにPCM to DSD MethodをSDM Type Bにして再生させてみたのだが、なぜか音が出てこない。インジケータを見ると、44.1kHzでのPCM再生となっているようで、DSDになっていないのだ。なぜだろうと、いろいろと試行錯誤していたら、わかった。DSD-DAC-10のASIOドライバのコントロールパネルで、モードを「PCM」から「DSD」に変更する必要があったのだ。その結果、foober2000からDSDネイティブ再生をすることができた。ちなみにDSD Playback MethodをDoPに設定してみたところ、音は出なかった。

DS-DAC-10を再生したところ、最初に行なった設定では音が出なかった
DSD-DAC-10のASIOドライバのコントロールパネルで、モードを「PCM」から「DSD」に変更することが必要
UD-501を接続、DSD Playback MethodをASIO Nativeにして再生できた

 最後に、UD-501だが、こちらはまずDSD Playback MethodをASIO Nativeにして再生してみたところ、バッチリ。UD-501のディスプレイにもDSD 2.8MHzの表示が出た状態で再生することができた。続いて、DoPにしてみたところ、こちらも同様に再生することができた。徐々に慣れてきたということもあったのだと思うが、比較的あっさりと2種類での再生ができてしまった。

 以上が、foober2000を使った3機種でUSB DACでの再生方法だ。とにかくインストールや設定が難しく、音が出るまでには時間がかかる。またRAL-DSDHA1で起こったような事故があると、ちょっと萎縮してしまう。こうした点を見ても、あまり初心者向きのソフトとはいえないし、慣れているユーザーにとっても危険がありそうに感じた。

 最後に、3機種の音について少しだけ触れておこう。今回は音質測定手段がなかったので、客観的な評価はできないので、筆者が聴いた上での感想になるが、一番よかったのはUD-501。非常にクリアな音で、音の広がり、奥行き感もあって聴いていて非常に気持ちがよかった。おそらく、より聴き心地をよくするためのオーディオとしての味付けをしているんだろうな、というのが印象だ。それに対し、DS-DAC-10もHi-Fiなサウンドである点は甲乙付けがたい感じではあった。ただし、こちらはより原音に忠実にという音作りなのだろう、ちょっと硬めな印象を持った。いわゆるモニターサウンド的な感じで個人的には好きな音だが、一般的にはもう少し柔らかい音のほうが好まれるのかな、というように感じた。そしてRAL-DSDHA1については、前回も少し指摘したが、無音時のノイズ混入が目立ち、UD-501やDS-DAC-10と比較すると、そのノイズのせいで、数ランク下の音という印象だ。このノイズがキレイに消えてくれれば、どちらかというとUD-501に近い柔らかい音のようだが、安い機材ではないので、ぜひこの辺の改善を願いたいところだ。

UD-501-S DS-DAC-10 RAL-DSDHA1

藤本健

 リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。  著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto