藤本健のDigital Audio Laboratory

第566回

iOS 7とiPhone 5sのDTM対応状況まとめ

「Inter-App Audio」でアプリが直接連携可能に

iPhone 5s(左)と、iOS 7をインストールしたiPhone 5(右)

 ご承知のとおり、9月20日、iPhone 5sおよびiPhone 5cが携帯キャリア3社から発売された。またそれに先駆け、前日の9月19日未明にiOS 7のアップデータがリリースされ、iPhone 5やiPhone 4sなどでも、新しいユーザーインターフェイスが利用できるようになった。

 ただ、今回のOSのアップデートは、単にユーザーインターフェイスの改良だけでなく、かなり奥のほうまで変更になっているようだ。具体的にはInter-App Audioという機能が搭載されたり、iPhoneでUSB-Audioデバイスが利用できるようになった。しかし一方で、特にサウンド関係のアプリでは動作しないものが数多くあるといった問題も顕著になっている。そこで、ここでは現状について簡単に整理をするとともに、さまざまなオーディオおよびMIDI機器の動作状況についてチェックしてみた。

Inter-App Audioでできること

 9月19日、iOS 7.0のアップデータが出てすぐに、手持ちのiPhone 5およびiPad miniに適用したところ、トラブル続出で面食らった。特にDTM系のアプリにおいては、かなりの比率で不具合が起こり、途中でアプリがクラッシュしたり、ボリューム調整が利かなくなったり、音が出なかったり……と散々な状況だった。そのため、ブログやTwitter、Facebookなどを通じて、iOS 7.0のアップデートは待て、と呼びかけたくらいだ。

 ただ、iPhone 5s/5cが発売された日には、iPhone 5s/5cだけを対象にしたiOS 7.0.1がリリース、さらに一週間たった27日には、全デバイスを対象にしたiOS 7.0.2がリリースされるとともに、アプリメーカー側もiOS 7対応のアップデータを次々と出し、だいぶ混乱は収まってきたようだ。そこで、改めて現在の状況について整理していこう。

iOS 7.0.1の画面
27日にはiOS 7.0.2が公開された

 まずはソフトウェアの状況から。iOS 7.0登場時は、とにかくトラブルだらけで、まともに使えない印象だったが、7.0.2になった現時点では、多くのアプリが普通に動くようになった。ただ、ソフトシンセ系、エフェクト系などのDTMアプリにおいては、うまく動作しないものがかなりの比率で存在する。すでにいろいろなメーカーがiOS 7対応のアップデータを出しており、そうしたものは安定して動作する。しかし、アップデータが出ていないアプリは、そもそも起動しなかったり、起動してもまったく音が出ないなど、トラブルがあるものが少なくない状況。現在使っているアプリが動作することが重要という場合は、やはりまだしばらくはアップデートしないほうが良さそうだ。

レコーダアプリなどで「マイクへのアクセスを求めています」と表示された際はOKを選ぶ

 なお、レコーダアプリやエフェクトアプリなど、オーディオ入力を利用するアプリの場合、初回起動時に「マイクへのアクセスを求めています」というメッセージが表示されるようになった。これは、必ず「OK」を選択しないと、うまく動作しなくなってしまう。もし誤って「許可しない」を選んでしまった場合は、「設定」→「プライバシー」→「マイク」で設定を修正しよう。

 ところで、DTMの観点で見たとき、iOS 7になった最大の進化点といえるのが、Inter-App Audioという機能だ。これはアプリ間でオーディオおよびMIDIのやりとり、さらには現在時間のやりとりなどを可能にするもの。これを利用するには、アプリ側の対応が必要になるが、すでにYAMAHAやIK Multimedia、Arturia、NLogなど複数のメーカーがInter-App Audio対応のアプリをリリースしているほか、WaveMachine LabのAuriaやRetronymsのTabletopなどが次期バージョンでの対応がアナウンスされている。

 では、具体的にどんなことができるのか? いろいろな使い方ができそうだが、現在出ているアプリで動作確認できたのはヤマハのMobile Music SequencerやTNR-iの音源として、別アプリのソフトシンセを組み込むというもの。ちょうど、PCにおけるVSTやAudioUnintsのプラグイン音源のように、外部のソフトシンセを利用できてしまうのだ。この際、ホストアプリであるMobile Music SequencerやTNR-iからはMIDI信号がソフトシンセへ渡り、ソフトシンセからホストアプリにはオーディオ信号が返ってくる。また、ソフトシンセ上には、ホストアプリのプレイボタン、録音ボタンなどが現れ、こちらからコントロールできるようになっている。

プラグインのように外部のソフトシンセを利用可能になる

 この2つのホストアプリにはオーディオの録音機能はないが、今後AuriaなどのDAWアプリから利用することで、ソフトシンセの演奏情報を録音したり、iRigのようなエフェクトアプリをプラグインのように利用することが可能になりそうだ。

 これまでもオーディオを連携させる仕組みとしてAudiobusというものがあった。これを利用するには、Audiobusというアプリを仲介させる必要があったが、Inter-App Audioなら特別なアプリを必要とせずに直接アプリ同士がやり取り可能になるし、MIDI信号などのやり取りができるという点でも発展的だ。Apple標準の機能となっただけに、今後多くのアプリが対応してきそうだ。

DUO-CAPTURE EXやUSB DACなどを接続。一部動作しないケースも

 では、ハードウェア側の対応はどうなっているのだろうか? 冒頭でも触れたとおり、iOS 7での最大のポイントといってもいいのは、これまでiPadのみが対応していたUSB-Audioデバイスの利用がiPhoneでも可能になったという点だ。このことについて、とくにAppleもアナウンスしていないというか、そもそもiPadでの対応も非公式なものであったわけだが、試しに使ったらうまくいってしまったのだ。

 もう少し、具体的に見ていこう。従来iPadでUSB-Audioデバイスを利用するには、30ピンDock対応機器ではiPad Camera Connection Kit、Lightning対応機器ではLightning-USBカメラアダプタを介してUSB-DACやオーディオインターフェイスに接続する必要があり、USB-Audioデバイス側はUSB Class Audio対応の機器であるという条件で動作していた。しかし、これらのアダプタはiPadのみのサポートで、iPhoneからは認識がされなかった。現時点でもAppleサイトを見る限りiPad Camera Connection KitやLightning-USBカメラアダプタはiPadのみの対応と記載されているが、ともにiOS 7においてはiPhoneで利用できるようになっている。

 まず、iPhone 5sにLightning-USBカメラアダプタ経由で、ローランドのDUO-CAPTURE EXを接続したところ、オーディオの再生および録音ができるようになった。この際、DUO-CAPTURE EX側はモードを「TAB」にしておくことで認識することができた。このオーディオインターフェイスは、内部に単3電池3本を入れる仕様となっており、この電池で駆動させることができるため、iPhone側から電源供給に頼らずに使うことができるのだ。

 また、DUO-CAPTURE EXはオーディオの入出力のみならず、MIDIの入出力も備えているが、こちらもiPhone 5sに認識されている。試しにこのMIDI入出力を電子ピアノに接続して鳴らしてみたところ、CoreMIDI対応アプリを動かすことができた。

DUO-CAPTURE EXと接続
DUO-CAPTURE EX側はモードを「TAB」に設定
MIDI入出力を電子ピアノに接続して、CoreMIDI対応アプリを動かせた
DVK-UDA01と接続

 続いて試してみたのは、インプレスジャパンが'12年に発売したムックに同梱されている16bit/44.1kHzのUSB-DAC、DVK-UDA01。これを、やはりLightning-USBカメラアダプタ経由で接続してみたところ、iPhoneからのバスパワーだけであっさり動かすことができた。これだとiPhoneのバッテリー消費がかなり大きいのではないか…と思い、途中に電源供給可能なUSBハブを挟んでみたが、その場合ももちろんしっかりと動いてくれた。

 次にオーディオテクニカのとても小さなUSB-DAC「AT-HA40USB」を接続してみたところ、今度は「消費電力が大きすぎます」というエラー表示が出て、バスパワーでは使うことができなかった。そこで先ほどと同様に、電源供給可能なUSBハブを挟んでみたところ、うまく動作した。このAT-HA40USBの場合、24bit/96kHzまでの再生が可能なので、ハイレゾ音源にも利用可能だ。

AT-HA40USBは、バスパワーでは動作しなかった
電源供給可能なUSBハブを介したところ動作した

 これらが使えるのであれば、より高性能なUSBオーディオ機器にチャレンジ、ということで、RMEのFireface UCXも接続して試した。Fireface UCXは、通常モードのほかに、クラスコンプライアントモードというUSB Class Audio対応するモードがあるので、こちらに切り替えた上で接続。電源はACアダプタから供給できるので、普通に繋がるはずと思ったのだが、なぜか認識されない。モード切り替えがうまくいっていなかったのかと思って、再度試してみてもうまくいかない。

 ここで接続先をiPad mini(iOS 7)に切り替えてみたところ、こちらではあっさり使えて高音質再生できたので、やはりiPhone 5sとの相性が悪いようだ。そういえば、Fireface UCXにはMIDIインターフェイス機能もあるので、これがどうなっているのかを確認してみたところ、MIDIインターフェイス機能はしっかり動作していたのだ。ということは、やはり電気的にはしっかり接続されているけれど、Fireface UCXのオーディオ機能が使えないということのようだ。

Fireface UCXを接続したが、認識されなかった
iPad miniでは動作した
Fireface UCXのMIDIインターフェイス機能は使えた

 さらに、PreSonusのAudiobox 44VSLでも試してみた。結論からいうと、これもFireface UCXとまったく同じ結果となった。つまりiPad miniでは動くけれど、iPhone 5sではオーディオが使えず、MIDIだけが利用できるという状況だ。

Audiobox 44VSLも、iPhone 5sでは動作しなかったが、iPad miniでは使えた

 なぜ、このようなことになったのか……。まだハッキリと原因が確認できてはいないが、DUO-CAPTURE EX、DVK-UDA01、AT-HA40USBの3製品と、Fireface UCX、Audiobox 44VSLの2製品の違いというと、前者がUSB Class Audio 1.0であるのに対し、後者がUSB Class Audio 2.0であるという点。いま手元にUSB Class Audio 2.0対応のDACがないので、そのテストができていないが、iPhoneの場合、USB Class Audio 2.0に非対応ということが考えられそう。この点については、また改めて追求してみたいと思っている。

Lightning対応オーディオインターフェイスやMIDIデバイスもチェック

 もともとiPhoneでの対応を謳っているApple認定のオーディオインターフェイスについても動作確認を行なってみた。まずLightning対応製品として、Line 6のSONIC PORTは問題なく動作。GarageBandなどで、使うことができたが、同社のアンプシミュレータアプリであるMobile PODがiOS 7対応となっていないため、現時点ではこれを使うことができなかった。おそらく近いうちにアップデータがリリースされるものと思われる。同じくLine 6のMobileInは30ピンDock接続のオーディオインターフェイスだが、Lightning-30ピンDockアダプタを噛ませて接続したところ、こちらも問題なく使うことができた。

Line 6のSONIC PORTは動作した
MobileInも、アダプタ経由で使えた

 次に、IK Multimediaのオーディオインターフェイスについても試してみた。IK Multimediaは最近、Lightning接続可能なギター入力デバイスであるiRig HD、さらにギターとマイクの入力も可能なiRig Proと続々と新製品を投入してきているが、いずれもiOS 7で問題なく使うことができた。

 同じようにTASCAMのiPhone/iPad用のマイク、iM2についても、Lightning-30ピンDockアダプタ経由で接続したら、しっかりと動作してくれた。

IK Multimediaのギター入力デバイスiRig HDと接続
ギター/マイク入力が可能なiRig Proも動作
TASCAMのiM2もアダプタ経由で利用できた

 では、MIDIデバイスのほうはどうだろうか? 先ほどと同様にまずはLightning-USBカメラアダプタを使ってのテストから。コルグのnanoKEYは、これまでのiPadの場合と同様にiPhoneからの電源供給で動作し、これを使ってソフトシンセアプリを演奏できた。また、ローランドのUSB-MIDIキーボード、A-300PROも同じように接続してみた。A-300PROはフル性能を発揮できるAdvancedドライバモードのオンとオフの切り替えができる。オフにするとUSBクラスコンプライアントモードとなるので、この状態でiPhoneと接続。やはり、電源供給に無理があるので、電源供給機能付きのUSBハブを挟んでみたところ、うまく使うことができた。

コルグのnanoKEYはiPhoneからの電源供給で動作。ソフトシンセアプリを演奏できた
ローランドのA-300PROを電源供給機能付きのUSBハブを挟んで使えた

 また、もともとiPhone対応であるMIDIキーボードとしてLine 6のMobile KEYS25、IK MultimediaのiRig KEYのそれぞれもiOS 7環境で問題なく使うことができた。

Line 6のMobile KEYS25と接続
IK MultimediaのiRig KEYと接続

 さらに30ピンDockコネクタ対応のMIDIインターフェイスについても、試してみた。やはり、、Lightning-30ピンDockアダプタ経由で試してみたのだが、Line 6のMIDI Mobilizer II、ヤマハのi-MX1、IK MultimediaのiRigMIDIといずれのCoreMIDIインターフェイスともに動作してくれた。さらにCoreMIDI規格誕生前にリリースしたLine 6のMIDI Mobilizer(初代)についても、試してみたところ、これもiOS 7でしっかり動作してくれた。この辺の互換性の継続についてはアプリ側の努力という面もあると思うが、ユーザーとしてはとても嬉しいところだ。

Line 6のMIDI Mobilizer IIと接続
ヤマハのi-MX1と接続
Line 6のMIDI Mobilizer(初代)と接続

 以上、iOS 7およびiPhone 5sのオーディオおよびMIDIの対応状況について見てきたがいかがだっただろうか? まだリリースされたばかりで、マニアックな使い方においては安定していない面もあるが、iPhoneのUSB-Audioデバイス、USB-MIDIデバイスのサポートなど、期待できる面も多く、今後が楽しみなところだ。

藤本健

 リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。  著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。EPUBマガジン「MAGon」で、「藤本健のDigital Audio Laboratory's Journal」を配信中。Twitterは@kenfujimoto