西川善司の大画面☆マニア

第176回

プラズマならではの「色」と「黒」。VIERA「TH-P55VT60」

熟成を重ねたパナソニック プラズマ最終形?

TH-P55VT60

 パナソニック以外の日本メーカーはプラズマテレビからは撤退してしまった。そうした空気感から「プラズマテレビは、いよいよ最終局面に来ている」と感じている読者も多いかもしれない。

 しかし、昨今のパナソニックのプラズマVIERAは、かつてのパイオニア プラズマの名作「KURO」シリーズの成果も取り込まれており、その完成度には定評がある。今回は、VIERAの最上位VT60シリーズの55型モデルとなるプラズマテレビ「TH-P55VT60」を取り上げる。

設置性:スリムなボディにサイドスピーカー

 TH-P55VT60の、ディスプレイ部外形寸法は131.8×5.1×76.7cm(幅×奥行き×高さ)。外見だけでは、プラズマと液晶の区別は付かない。厚みは5.1cmと、いわゆる極薄テレビではないが、画面の大きさの比率からすれば十分に薄く見える。

 見た目ではプラズマと液晶の区別は付かないが、持って見ると、その重量には明確な違いを感じる。

 55型といっても、今や液晶テレビではディスプレイ部だけでは20kg未満のものも多いが、TH-P55VT60は、ディスプレイ部だけで31.5kg、スタンド込みで38.5kgだ。同サイズ液晶に対して10kg以上重いのは、前面を樹脂ではなくガラスとしていること、そして背面のフレームを放熱性と堅牢性に優れる金属製にしているためだろう。スタンド込みの外形寸法は131.8×29.6×85.5cm(幅×奥行き×高さ)。

 重量や梱包箱が一般的な55型テレビよりもかなり大きかったこともあり、今回の評価では筆者宅への搬入は断念。編集部で評価した。購入検討をしている読者は、搬入のシミュレーションも販売店とよく相談して頂きたい。組み立て作業は1人では無理で、最低でも2人、できれば3人が必要だ。

正面。光沢パネルとなるため、周囲の映り込みはそれなりにある
スタンド部底面の大きさは51.0×29.6cm(幅×奥行き)。構造としてはリジットで、スイーベル、チルトには対応しない。重さは約7kg
背面。薄いながらもがっしりとした作り。長時間稼働時はかなり熱くなる。ボディ全体を放熱板として活用しているようだ。電動冷却ファンが3個ほどあるが、動作音は小さい

 表示面はプラズマテレビなので光沢仕様となっており、周囲の映り込みはそれなりにある。相対する位置に照明や窓がある場合には映り込み対策が必要かもしれない。

 額縁は存在するが、最近液晶テレビでも流行のシームレス(段差無し)の額縁となっている。ただ、ソニーBRAVIAの「オプティコントラストパネル」のように、表示面が浮き出て見えるわけではなく、映像は、表示界面から数ミリ、奥まったところに見えている。

 額縁は上が26mm、左右が43mm、下が44mm程度。ただ、額縁とディスプレイ部の間にさらに4mmほどの未表示領域がある。これは表示映像が数ミリ奥まったところに見えるため、斜めから見たときに画面外周が額縁にクリップアウトされてしまわないようにする配慮なのかも知れない。

額縁は存在するが段差はない。デザイン上のアクセントのため透明樹脂板が突き出ているが、本稿ではここまでを額縁とした
映像パネル本体外周に約4mmほどの未表示領域がある

 スピーカーは、最近では少数派の左右に配置されるサイドスピーカー型。最近の薄型テレビは、狭額縁化にこだわり、ディスプレイ部下辺に下向きに配置させてテレビ設置台の反射音を聞かせる音響デザインとするものが多い。反射音を聞かせる音響デザインは、不確定要素が多くなるため、設置環境ごとに音質が変わってしまう可能性があり、理想からはかけ離れたものなのだが、「インテリアの見た目としてすっきりさせたい」という思惑の方が勝って多くの製品に採用され続けている。

メインスピーカーは左右に設置。しかし、額縁の肥大化にはほとんど響かず

 しかしTH-P55VT60は、音響性能にこだわりを持って開発されたようで、スピーカーを左右の額縁に正面向きで搭載した。その割にはその存在感をうまく消し去っており、見た目のすっきりさも犠牲になっていない。見事な設計だ。

 メインのステレオスピーカーは1cm×5cmの角形ユニットを2基、左右に配置した総計4ユニット構成。さらに背面には低音再生用の7.5cm径のウーファユニットも搭載し、総出力20W(5W+5W+10W)の構成となっている。

背面中央下寄りには低音再生用のウーファユニットが実装されている

 出音は、中央の定位感が良好で、さらに、左右に音がパンするするときの音像移動感も良好だ。低音は、もう少しパワー感があるといいが、「低音強調=オン」とすることで改善される。また、圧縮音声を原信号に近く復元する「デジタルリマスター=オン」とすると、音像の輪郭が際立つようになり、聴感が1ランクアップする。

 「バーチャル3DサラウンドIII」として提供される疑似サラウンド再生機能は、映画などのアンビエントサウンドをワイドに聞くにはいいが、楽曲には向き、不向きがあった。ボーカル曲などはオフにした方が聞きやすい。

 消費電力は480W、年間消費電力量は175kWh/年。同画面サイズの液晶VIERA「TH-L55FT60」がそれぞれ128W、109kWh/年であることを考えると、やはりプラズマのほうが電力消費は多い。以前と比較すればプラズマの省電力性能も向上しているが、液晶とは原理的な違いもあって、この差が埋まることは今後もないだろう。

接続性:HDMIは3系統。アナログ入力は1系統に集約

 接続端子は、正面向かって左側の背面に実装されている。側面接続端子と背面接続端子が一体化されたような接続端子コンソールにHDMI入力やB-CASカードスロットなどが集約されている。

接続端子パネル

 HDMI端子は側面に3系統。3系統全てが、3D、x.v.Color、Deep Color、1080/24pに対応。うち、HDMI1だけがARC(オーディオリターンチャネル)に対応する。アナログビデオ入力端子は、D4とコンポジットを装備するが、これらは1系統として扱われる。つまり、コンポジット/D4入力は排他利用でどちらか一方しか利用できない。アナログ音声入力端子は1系統。昨年モデルのVIERAでは2系統(別系統)だったので、1年経ってアナログ端子の撤廃が一層進んだ。

 アナログRGB接続端子としてのPC入力はないが、HDMI端子がPC接続に利用できる。アナログ音声入力は、HDMI端子の音声入力としても利用できる。ただ、この機能を利用した場合は、D4/コンポジットビデオ入力の音声入力手段を失うことになる。また、この1系統しかないステレオアナログ音声入力は、HDMI1/2/3の全てにおいて共有されてしまう(HDMI1/2/3のいずれを選択してもここの音声が鳴る)。共有仕様が進み過ぎてしまって少々使い勝手が犠牲になっていると感じる。

 PCやゲーム機を接続した際に重要となるドットバイドット表示(アンダースキャン表示)、および、HDMI階調レベルの設定は手動設定が行なえる。

ドットバイドット表示を行うためには「オーバースキャン=オフ」とする
HDMI階調レベルの設定も手動での設定が可能となっている

 ドットバイドット表示は「映像調整」-「オーバースキャン」設定をオフに。HDMI階調レベルの設定は「映像調整」-「オプション機能」-「HDMI RGBレンジ設定」から「エンハンス」(0-255)、「スタンダード」(16-235)を選択することになる。VIERAシリーズは、PCやゲーム機との接続性において、競合に比べて立ち遅れていたが、その問題は解消されたといっていい。

 側面には3つのUSB接続端子が立ち並ぶが、うち3系統目の「USB3」端子がUSB 3.0に対応した録画用ハードディスク(HDD)接続専用端子となっている。3チューナ搭載の恩恵もあって、HDD録画は視聴している番組とは別の2番組を同時録画できる。録画機能は、リアルタイムエンコーダを通しての長時間録画にも対応した本格的なものだ。

 SDXC/SDHCに対応したSDカードスロットも装備。デジカメやビデオカメラで撮影した写真や動画といったコンテンツの再生に利用できる。ネットワーク機能は最大100Mbpsの有線LAN端子のほか、無線LANも備えている。

操作性:UI一新で操作レスポンスも向上。音声入力が可能に

リモコンは2つ付属。こちらは通常リモコン

 リモコンのデザインに大きな変化はなく、昨年モデルのものからボタンの機能割り当ての変更があった程度だ。音声入力操作が可能なタッチパッドリモコンも付属する。

 ただ、OSDメニューのデザインは一新されて、操作レスポンスも向上している。見た目的にも、昨年モデルまでの無骨な20世紀的な文字とマスだけのデザインから、洗練された現代的なものに変更されている。そして、見た目だけでなく、メニューアイテムの構成も分かりやすく変更されている。

 歴代モデルでは、各設定項目がどういう規則で配置されているのか見当が付かないほど、メニュー階層の深いところに分散され、配置されていた。今期モデルでは、そうした複雑さが軽減されている。前述したドットバイドット表示設定、HDMI階調レベル設定などの設定も、映像関係の設定項目から見つけ出すことができた。地味な部分だが、本連載でもたびたび指摘してきた改善希望ポイントだったので、この対応は嬉しい。

「映像調整」メニュー
「ネットワーク設定」メニュー
「タイマー設定」メニュー
「機器設定」メニュー
「ヘルプ」メニュー
リモコン上の[?]ボタンを押すことで開く電子取扱説明書。メニューアイテムにカーソルをあてているときに[?]を押すと、その関連ページでなく、トップページか以前参照したページが開く仕様は不満

 電源オンから地デジ放送が画面に表示されるまでの所要時間は約2.0秒。これはかなり速い部類だ。地デジ放送のチャンネル切換速度は約1.5秒。こちらも高速だ。HDMI→HDMIの入力切換も約1.5秒と速い。TH-P55VT60はあらゆるレスポンスがキビキビしている。

 アスペクトモードは以下の通り。

モード 概要
フル パネル全域に映像を表示する
ジャスト 4:3映像を疑似16:9化
ノーマル 4:3映像をアスペクト比を維持して最大表示。左右に未表示領域が出る
ズーム 4:3映像にレターボックス記録された16:9映像を切り出して全画面表示
サイドカットフル 上下左右に黒帯がある16:9映像をパネル全域に拡大表示する
サイドカットジャスト 4:3映像の外周を伸張して表示する疑似16:9モード。
若干オーバースキャン気味になる
サイドカットズーム 4:3映像にレターボックス記録された16:9映像を切り出して全画面表示
スマートテレビ機能活用のために提供されるタッチパッドリモコン

 昨年の上位シリーズで搭載された「タッチパッドリモコン」が、TH-P55VT60にも付属する。

 これは、スマートテレビ機能を活用する際のカーソル移動やポインティング操作を、ノートPCのタッチパッド操作で行なうためのリモコンだ。このタッチパッドリモコンに音声入力機能が搭載されたことにより、操作性がだいぶ向上した。

 Webブラウザなどを活用した際、たしかにタッチパッドリモコンはリンクなどをポイントする際には便利だったのだが、ソフトウェアキーボードからの文字入力は結構難しかった。小さい格子で区切られたソフトウェアキーボードの各キーを的確にポイントしていくのは、かなり難しく、むしろ普通のリモコンからの10キーからの順送り入力の方が楽だったくらいだ。

 タッチパッドリモコンは、音声認識ボタンを押しながら「○○をインターネットで検索」と話しかけるだけで、自動的にWebブラウザが起動してインターネットのキーワード検索が行われる。この音声認識スピードは速いし、Webブラウザの起動も速く、ストレスはない。これまではスマートフォンに頼っていたテレビを見ていての「思いつき検索」も、この利便性とレスポンスならば使う気にもなるというものだ。認識精度は、Android端末の音声認識検索と同程度のイメージで、悪くはない。普通に使えるレベルだ。

 TH-P55VT60は、この他にもスマートテレビの機能が満載なのだが、それらについては筆者が別記事にまとめているので参照して頂きたい。

画質:さらに進化したプラズマ画質の究極形

 映像パネルは、新開発のフルHD/1,920×1,080ドットのプラズマパネルだ。昨年モデルに対しての進化ポイントは3つある。

 1つは、黒の沈み込みと、それをいかしたコントラストの向上。VIERAでは昨年モデル以降、黒表示画素がうっすらと光ってしまうことの原因となる予備放電を分散させて実行させる工夫を導入することで、黒の締まりをさらに改善させている。さらに新モデルでは、、ピーク輝度を高めることで、ネイティブコントラストを550万:1まで向上したという。

 画面全体の明るさで比較すれば、同画面サイズの液晶テレビに完全に負けているが、黒の沈み込みが限りなく漆黒に近いため、明部と暗部が同居する映像では、コントラスト感が凄まじく高く、液晶の映像に見劣りはしない。ただし、画面の暗さゆえ、室内の照明を落として見る必要はある。

【訂正】
記事初出時のプラズマパネル説明が、海外モデルについてのものになっておりました。お詫びして訂正いたします(6月6日追記)。

こうした黒表現が支配的な映像は、プラズマの黒の描写力が生きる

 2つ目の進化ポイントは蛍光体の一新。つまり、発色性能のさらなる強化だ。パナソニックによればBT.709色域(sRGB相当)カバー率は122%になり、DCI(Digital Cinema Initiatives)色域カバー率にしても98%となった。もともと、最近のプラズマVIERAは、発色がとても優秀だったが、これがさらに良くなったというわけだ。

 実際、見慣れた評価映像を見てみると、確かに純色の発色がとても鮮烈だ。赤は鋭く、緑はとても純度が高い。また、青もしっかりとした深みのある発色をしている。画調モードにもよるが、ド派手ではなく、深く味わいのある色になっており、万人うけしそうな調色だ。

 色域が広いディスプレイ(テレビ)では、人肌に赤味が強く出たりするものだが、TH-P55VT60はそういったこともなく、透明感があり、とても自然でリアルに見える。

 なお、原信号重視ならばシネマ系のプリセット画調モードがオススメだが、TH-P55VT60が誇る広色域性能を堪能できて、それでいて元の映像の発色バランスも感じたいのであれば、プリセット画調モードとしては「リビング」を推しておく。購入後はまず、このモードで見てみるといい。

「カラーリマスター=オフ」
「カラーリマスター=オン」。色域が広がる事でカラーグラデーションがより豊かに見える。写真でも赤いボディに映り込んだ空の表現がただの赤に落ち込まずに豊かな色階調として出力されているのが分かる
「ビビッド=オフ」
「ビビッド=オン」。緑色がより鮮烈になる

 3つ目の進化ポイントは、サブフィールドの増加だ。

 プラズマディスプレイでは、各RGBサブピクセルの明滅頻度でフルカラーを表現する時間積分型階調(色)生成を採用している。人間は、その明滅パターンを始まりから終わりまで見続けないと正しい色が人間の目(というか脳)に知覚されない。プラズマディスプレイでは、1フレームの映像を表示するために、複数回の明滅を行なうのだが、その全画面分の明滅パターンの一回分を「サブフィールド」という。

 なお、人間の目は映像の動きに合わせて画面内を動くので、ある画素において正しい色が知覚される前に別の画素を見てしまう事が起こりうる。これがプラズマテレビの映像を見たときに知覚される色割れや擬似輪郭、あるいはボケの原因だ。このアーティファクトを低減するためには、その明滅の周期を早める、すなわちサブフィールドを増やしていく必要がある。

サブピクセルは縦割りのRGB構造となっている

 従来モデルでは毎秒60コマ(60Hz)時の映像を10サブフィールドで表現し、さらに誤差拡散を組み合わせ6,144階調を作り出していたが、VT60では12サブフィールドを実現。誤差拡散を組み合わせることで、なんと32,768階調の実現に成功したのだ。

 プラズマディスプレイは、漆黒の表現こそ得意だが、時間積分方式で発色する関係で、低い明滅頻度で表現する暗部階調や暗色の表現ではチラツキが出てきてしまう。あえて、そうしたプラズマにとって不得意な映像を見てみてたが、チラツキ感は以前のモデルと比較すりば確かに低減されている。ただ、原理的な特性から、無くなってはいない。

 どうしてもこのアーティファクトを見たいというのであれば、「明るさオート」設定をオフにしてみるといい。暗部ではざらつきが時間方向に出現するはずだ。ただ、2メートルも離れて見れば、そうしたアーティファクトはほとんど見えない。

 画面内を動く動体を目で追ったときに知覚される、プラズマディスプレイ特有の階調割れ現象も、従来モデルよりだいぶ改善された。ただし、完璧になくなったわけではなく、肌色のグラデーションを伴った人の顔面などをスクロールさせて画面内を移動させると、微妙な色ずれや擬似輪郭がうっすらと見える。これも離れて見れば幾分か和らぐ。まぁ、プラズマテレビはあまり近くに寄って見るモノではない、といえる。

 視野角については、表示面ガラスの特性なのか、横方向は広いが縦方向に狭い。見上げるような見方や、見下ろすような見方だと極端に映像が暗くなって見える。床に寝そべって見上げるような見方は合わないかも知れない。

 VIERA VT60には、パナソニック・オリジナルの映像エンジンである「ファインリマスターエンジン」が搭載されている。

 毎秒24コマの映画コンテンツなどをカク付きなく滑らかに再生する補完フレーム技術「シネマスムース」を活用し、「ダークナイト」のブルーレイのオープニングのビル群を飛行するシーンで評価してみたが、左奥のビルの窓枠が盛大に振動してしまった。チャプター9のビル飛行シーン(0:32あたり)でも、中央のビルが盛大に縦揺れ振動をおこしてしまっていた。昨年モデルのZT5でも同様の結果になっていたので、あまりこの部分は進化していないものと思われる。安心して映画を見るためにも「シネマスムース」はオフ設定で常用が確定だろう。

 「超解像」機能も、変化はないようで、1080pでは効かせることができず、720p以下でもエッジの先鋭化と陰影の強調が行なわれるだけで、油絵シェーダーを適用したような画調になってしまい、こちらもオフ設定をオススメしたい。東芝やソニーの超解像と比べて、VIERAの超解像はやや遅れている印象を持つ。もう少し大きな進化を次期モデルには期待したい。

「きらめき効果」

 一方、新機能の「きらめき効果」の効果はいい感じで効いてくれる。

 例えば顔面や人肌のハイライト部分は最明部のハイライトまでの階調の伸びが鋭く、あたかも本当に太陽光を浴びた反射光を見ているような描写になる。車のボディや金属などの表現にもこの機能の相性は良いと感じる。この機能は好みに応じて活用してもいいと思う。

「きらめき効果=オフ」
「きらめき効果=弱」
「きらめき効果=中」
「きらめき効果=強」

 今回の評価でアニメ作品「星を追う子ども」のブルーレイを見てみたが、さすがはプラズマ、細い黒の輪郭線が鮮明に描かれる様がとても美しい。周囲が明るい色でも、自発光画素の強みで、黒い線はちゃんと沈んだ漆黒で描かれるため、それこそ紙に印刷されているような"黒"輪郭線に見えるのは感動的だった。プラズマテレビでアニメ、は結構オススメかも知れない。

 3D立体視も検証してみた。視聴タイトルは「怪盗グルーの月泥棒」。テストシーンは、いつものジェットコースターシーンだ。このシーンのトンネル内に立ち並ぶ無数の電球の描写にクロストーク(二重映り)が出やすいわけだが、TH-P55VT60では、やはりそれなりにクロストークは出てしまっている。

 VIERAを含め、最近の液晶テレビは3D映像のクロストークをかなり押さえ込めてきているので、少々残念だ。ただ、「3Dリフレッシュレート」の設定をデフォルトの「120Hz」設定から最低の「96Hz」設定にすると、3D映像のフリッカーはやや多くなるがクロストークはずいぶんと低減される。フリッカーについては、暗室にしてしまえば気にならなくなるので、3D映像を見る際には暗室にして「96Hz」設定とすることをオススメする。

3Dメガネの「TY-ER3D4MW」は別売
「3Dリフレッシュレート」設定は左右の眼用の交互表示の表示切り替え周波数を設定するもの。速度が小さい方がフリッカーは多くなるがクロストークは低減される傾向がある
表示遅延の測定の様子。ゲームモード=オン時で18ms(60Hz時、約1.1フレーム、26ZP2からの相対値)となった

 恒例の表示遅延の計測も行なった。比較対象はテレビ製品としては業界最速の表示遅延3ms(60Hz時約0.2フレーム)を有するREGZA 26ZP2だ。

 計測は、プリセット画調モードは「スタンダード」に固定し、低遅延を実現する「ゲームモード」をオンにしたときとで実践。測定結果は、REGZA 26ZP2に対しての相対値となるが、18ms(60Hz時、約1.1フレーム)となった。約1フレーム前後の遅延と言うことであれば、テレビとしてはかなり優秀な部類だといえる。

 実際に、ゲームもプレイしてみた。プレイタイトルは「METAL GEAR RISING REVENGEANCE」だ。ゲームモード=オンにすれば遅延も特に感じられず、ちゃんとプレイはできる。三人称視点のゲームなので、右スティックを横方向に入れたままにすると主人公キャラクタを画面中央に置いたまま、背景をグルグルと回転させることができるが、このような状況では、背景の明暗の大きい箇所では階調割れが知覚される。ここは致し方のない部分だ。

 それと、ゲームモード=オン時には「3Dリフレッシュモード」の変更が行なえない制限があることに気がついた。ゲームを3D立体視でプレイしたいという人はこの制限には留意しておきたい。

プリセット画調モードのインプレッション

【ダイナミック】

ダイナミック

 最も明るさを重視したモード。プラズマゆえに高輝度な画調であっても黒は十分に沈んでくれるためコントラストは維持される。

【スタンダード】

スタンダード

 輝度をかなり抑えた画調。発色も冷たい感じであまり使い勝手は良くない。

【リビング】

リビング

 発色、階調、コントラストをうまくバランスさせた画調で実質的な標準画調モードという印象。万能性が高い。

【シネマ】

シネマ

 色温度が低めでいかにもシネマ画調という画作りだが、意外にも輝度は高め。階調も発色も良好。万能性が高く「リビング」の次に試すべき画調だ。

【シネマプロ】

シネマプロ

 液晶VIERAにはないプラズマVIERA専用のハリウッドカラーリマスター画調。高画質処理は基本的にはオフ設定となるため原信号主義のユーザーにお勧め。ただし輝度は控えめで暗室での視聴を想定してチューニングされているようだ。

さらに高まったプラズマ画質

 世紀末から2000年代初頭は、薄型テレビの代名詞的な存在だったプラズマテレビ。しかし、今は孤高の存在、「プラズマ画質が好きな人向け」のテレビ製品になってきた。

 「次世代」の薄型テレビは、大型の有機ELに期待されているが、今のところは、まだハイエンドすぎて縁遠い存在だ。その意味では、プラズマは、現在の薄型テレビとしては、唯一現実的に購入できる自発光方式のテレビである。

 では、「現時点」で、プラズマテレビはどう言った人向けのものなのだろうか。

 まず、第一に「黒表現を重視したい人」にオススメしたい。周辺の画素状態からほとんど影響されないソリッドな黒表現は自発光のプラズマだから出せるものだ。

 第二に「発色を重視したい人」。蛍光体の改良もあって昨年モデルから特に色が良くなっている。今期モデルは、そこにさらに磨きがかかった。液晶VIERAにはないプラズマVIERA専用のハリウッドカラーリマスター画調は、映画ファンには強くオススメしたい。プラズマファンには、流行に乗っかって「プラズマテレビいつ買うの?」……、「今でしょ!」といいたい。

 逆に、プラズマならではの妥協が必要な点に触れると、1つは、暗部階調。これは時間積分方式の階調生成ゆえ、暗色になればなるほど発色がノイジーになってしまう。購入後、まずやるべきなのは、このノイジーさが見えなくなる視聴距離を探ることだ。2つ目は、動画性能は、以前CMで言っていたほど液晶に対するアドバンテージがないと言うことだ。「スポーツに強い」「動きに強い」というが、上で述べたように速い動きを目で追うと階調割れが知覚される分、局面によっては最新の液晶の方が綺麗ということがある。

 価格は65型のTH-P65VT60が実勢価格で45万円〜60万円前後、55型のTH-P55VT60が30〜40万円程度だ(2013年6月時点)。液晶VIERAのハイエンドモデルの60型のTH-L60FT60が30万円〜40万円、55型のTH-L55FT60が22万〜30万円で、価格差は縮まってはいるもののプラズマの方が割高ではある。

 しかし、「プラズマでしか味わえない画質」にその価値が見出せるのであれば選ぶ必然性は大いにある。

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トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちら