第164回:最高画質プラズマVIERA「TH-P65ZT5」
~パナソニック円熟のプラズマ画質~
TH-P65ZT5 |
プラズマテレビといえば、次世代テレビの花形だったが、その先駆者のパイオニアが去り、ALISプラズマパネルで一世を風靡した日立も今期を最後にテレビの自社生産から撤退する。韓国勢も今年のCESでの動向を見る限りは、今後のプラズマテレビ新製品開発に関しては消極的だ。
今や世界的に見ても、プラズマテレビに一定の力を注いでいるのはパナソニックだけになってしまった。そのパナソニックが放つのがプラズマVIERA最高画質モデル「VIERA ZT5シリーズ」だ。今回は65インチモデルの「TH-P65ZT5」を取り上げる。
■ 設置性チェック~画面サイズの割には薄型軽量。音質も良好
画面サイズの割には額縁は狭い |
今回評価した65インチモデルのTH-P65ZT5は、ディスプレイの大きさが149.9×5.1×89.1cm(幅×奥行き×高さ)。画面サイズとしては大きいが、狭額縁化が進んでいることもあって、圧迫感はない。
額縁は実測で上が約26mm、左右が約25mm、下が約51mmで、プラズマと言うことと、画面サイズを考えるとかなり狭く、照明を消すと、ほとんど映像が浮いて見える。
ディスプレイ部の重さは約42.5kg。スタンド部込みで約48kg。以前と比べればディスプレイ部の重さはだいぶ軽くなった。ただ、サイズが大きく持つところがないので、運搬は大人3人で行なうべき。
奥行きは5.1cm。画面サイズを考えればかなりの薄さだ |
スタンドは60cm×40cmの大きさの平板デザイン。デザイン的には面白みがないが、設置面積が大きい分、安定性は高い。50型モデルは左右±10度までの首振りに対応するが、今回評価した65型は首振り無しのリジッド構造となっている。チルト機構には非対応。設置平面からディスプレイ下辺までの距離は実測で約4cm。映像の下辺は下側の狭額縁の効果も有って意外に映像は低く映る。テレビ台やローボードを選ぶ際は、ある程度この表示特性は把握しておきたい。
壁掛け設置金具「TY-WK6P1R」(47,250円)も用意されている。こちらは下向き方向に+0度(基準)、+5度、+10度の3段階チルトが可能になっている。TY-WK6P1RにTH-P65ZT5を取り付けた時の表示面の壁からの距離は約12.5cm。十数センチといえば、ちょっと前の薄型テレビの標準的な厚みだ。
スピーカーは、メインステレオユニットが4W出力の8連小型ユニットを左右下部に実装し(4W+4W)、加えて10cm径のウーハーユニット(10W)を背面にあしらった2.1ch構成だ。総出力は4W+4W+10Wの18W。音質は、薄型ボディのわりにはしっかりしており、高音の粒立ちもよく、低音のパワー感も十分で予想外に音質はよい。音量を上げたときのバランスもいい。
平板のスタンド。無骨だが安定性は高い | 裏側。上部左右にはプラズマ特有の電動冷却ファン。中央やや左側にあるのが低音出力用のウーハーユニット |
また、デジタル処理により、定位を画面の高さ中央に持ち上げる音像操作が行なわれているため、画面下部から音が聞こえると言うこともない。画面サイズが大きいと映像と音像の分離感はシビアな問題になるが、本機の場合はそうした心配は無用だ。
定格消費電力は585Wと同画面サイズの液晶の約2~3倍。年間消費電力は200kWh/年と同サイズの液晶の約1.5倍程度。以前のプラズマと比べれば十分に省電力性能が向上しているのだが、同じように液晶も省電力化しているので、なかなか差が縮まらない。
■ 接続性チェック ~USB 3.0端子を装備。USB 3.0 HDD接続時には2番組録画も
接続端子は本体正面向かって左側の背面に備えている。一体化された接続端子パネルユニットから端子群が下出し、横出しされているようなデザインだ。あまり側面からのアクセス性はよくない。
側面の接続端子 | 背面の接続端子 |
HDMI端子は横出しで4基実装されている。全HDMIが3D、x.v.Color、Deep Color、1080/24pに対応。HDMI1はARC(オーディオリターンチャネル)する。ディスプレイ面と端子に高さの余裕がないので厚みのあるHDMI端子や、HDMI-DVI変換コネクタのようなものは刺しにくい。
PC入力端子はないが、HDMIで代用可能。HDMI2は、(アナログ)ビデオ入力2のアナログ音声入力と連動できるので、HDMI2はPC入力用としての活用が可能だ。
ゲーム機やPCとの接続の際に留意したいドットバイドット表示の設定やHDMI階調レベルの設定は、メニューの深いところにあって辿り着くのが意外に難しい。ドットバイドット表示の設定は「設定する」-「画面の設定」-「HD表示領域」にて、「標準」(オーバースキャン)から「フルサイズ」(ドットバイドット)へ変更すれば行なえる。工場出荷状態では「標準」(オーバースキャン)。HDMI階調レベルは「設定する」-「初期設定」-「接続機器関連設定」-「HDMI RGBレンジ設定」にて「オート」(自動)、「エンハンス」(0-255)、「スタンダード」(16-235)から選択できる。工場出荷状態ではオート設定になっているが、PS3側を「RGBフルレンジ=フル」設定していても、正しい「エンハンス」が選択されなかった。オートはあまりあてにならないので明示設定を心がけたい。
HDMI RGBレンジの設定はメニューの見つけにくいところにある |
アナログビデオ入力で、端子として用意されているのはD4入力のみ。コンポジットビデオ入力は2系統用意されているが、2系統とも付属の変換ケーブル経由での利用になる(うち1系統はD4入力と排他利用)。D4入力も音声入力は変換ケーブルを利用しなければならず、少々不便だ。なお、Sビデオ入力端子はない。
音声出力は、光デジタル端子と変換ケーブル経由でのアナログ出力に対応。なお、アナログ出力はアナログビデオ入力2との排他利用。Ethernetのほか、IEEE 802.11.b/g/nの無線LANも内蔵している。
後述のタッチパッドリモコンのおかけでWebブラウザも使いやすくなった |
USB端子は3系統、うち[USB3]のみUSB 3.0に対応する。USB HDDへの録画に対応しており、USB 3.0対応のUSB3がHDD接続専用端子となる。USB 2.0 HDDも利用可能だが、USB3.0の接続時には、DRモードでので2番組同時録画がサポートされる(USB 2.0ではいずれかをAVC長時間録画にする必要がある)。
他のUSB端子はビデオチャット用のカメラ「TY-CC20W」を繋いだり、デジカメ、ビデオカメラなどの接続に利用でき、今回の評価では、FILCOのUSBキーボード「FKB104M/EW」の接続が確認できた。Webブラウザモード等での検索キーワード入力や、無線LANのSSIDの文字入力にも使え、なかなか便利だった。
SDメモリカードスロット(SDXC/SDHC対応)も備えており、デジカメやビデオカメラで撮影した写真や動画を収録したSDカードの再生ができるほか、リモコンの[静止]ボタンを押して止めたテレビ画面の保存用途にも利用できる。
ネットワーク機能を用いたネットワークプリンタへの接続機能、スマートフォンを使ったVIERAとの連携「VIERA Remote」機能などについては今季モデルの共通仕様。これらについては「TH-L47DT5」を取り扱った本連載バックナンバーで紹介している。
■ 操作性チェック~タッチパッドリモコンの操作系は?
リモコンは今季モデルで共通のもの |
リモコンは、今期のVIERAシリーズで共通で、前々回に紹介した「TH-L47DT5」と同一だ。
電源オンから地デジ放送番組が表示されるまでの所要時間は約4.5秒。地デジ放送のチャンネル切換の速度は約1.5秒。入力切換の所要時間はHDMI→HDMIが約4.5秒。HDMI→D4は約1.0秒。アスペクトモードの切換所要時間はほぼゼロ秒。アスペクトモードのラインナップもTH-L47DT5と同じ。
改めて実測をしてみたものの、結果は液晶のTH-L47DT5と全く同一となった。リモコンを用いた操作レスポンスに関してはプラズマ、液晶という方式に差はないようだ。
モード名 | 内容 |
フル | パネル全域に映像を表示する |
サイドカット ノーマル | 左右に黒帯を表示し、上下を若干オーバースキャンして |
サイドカット ジャスト | アスペクト比4:3映像の外周を伸張して表示する疑似16:9モード。 |
サイドカット ズーム | アスペクト比4:3映像にレターボックス記録されたアスペクト比 16:9映像を切り出してパネル全域に表示する |
サイドカット フル | 上下左右に黒帯がある16:9映像をパネル全域に拡大表示する |
今回、操作関連で触れなければならないのはTH-P65ZT5で新搭載となった「タッチパッドリモコン」だろう。
TH-P65ZT5には通常の縦長の標準リモコンとは別に、まるでパソコン用のマウスを上下逆転させたようなデザインのユニークな形状のリモコンが付いてくるのだ。
2つのリモコンが付属する | タッチパッドリモコンはまるでマウスを裏返しにしたようなフォルムだ | 基本操作用のスイッチ群は側面ではなく本体背面に実装 |
中央の丸い領域が,ノートPCのポインティングデバイスと同等のタッチパッドになっていて、ここを親指でなぞることでカーソルの移動が行なえる。TH-P65ZT5では、本体メニューのカーソル操作はもちろん、Webブラウザ上のマウスカーソル操作までをここで行なえる。同じパソニック製品のLet'snoteのタッチパッドのように、円形のタッチパッド領域の外郭を丸くなぞると、上下スクロール操作も可能。
テレビのWebブラウザのページスクロール操作は、普通のリモコンでは遅くて非常にストレスが溜まるものだが、このタッチリモコンならば親指を素早く回転させるだけでササっと一瞬でページスクロールが行なえて感動的だ。
UniphierベースのスマートTVなので、様々なアプリを動作させることができる。「リバーシ」も、コマの置き場所をマウス感覚で指定できる |
概ね使いやすいのだが、結構、難しいのはこのタッチリモコンを使ったソフトウェアキーボードの入力。タッチパッドリモコンではタップ操作は決定操作(ENTER操作)と見なされるのだが、大きくカーソルを移動させた際など、一度タッチパッドから離した指を再びタッチパッド上に戻す際などで決定操作と間違えられ、希望していない文字が入力されてしまうことが、よく起こった。
逆に言えば、これ以外に操作性への大きな不満はなく、よくできていると思う。
ただ、前回のLG「マジックリモコン」の時と同じ指摘になるが、根本的なことを言わせて貰えれば、普段のテレビ操作のときは普通のリモコン、ネット機能活用時や文字入力の際にタッチパッドリモコン……と持ち替えるのは面倒くさい。理想は2つのリモコンを統合させることだろう。
■ 画質チェック~上質なプラズマ高画質
VIERAシリーズは、液晶モデルも55インチまで拡大されたが、依然VIERAの最大サイズのプラズマの方だ。TH-P65ZT5は、プラズマVIERAとして最大サイズであり、薄型テレビのVIERAとしても最大サイズとなっているのだ。なお、以前受注生産モデルとしてラインナップしていた100インチオーバーのモデルは販売を終了している。
パネル解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)。最近では、液晶の画素は光配向技術やフリンジ電界制御やらで高開口率化しており、黒い格子筋の微細化が劇的に進んできる。それと比較するとプラズマ画素の開口率の低さは際立ってしまう。ルーペで拡大すると縦横の格子筋以外に斜め方向にもブラックマトリクスのようなものが見え、近めの視聴距離で見ていると、中間階調の面表現では、どうしても粒状感が目立つ。PC画面を映したときなどは文字を構成する線分表現が点線に見えることもある。
画素開口率は液晶と比較すると小さい | ルーペで拡大すると斜めの格子筋が見える |
TH-P65ZT5では、表示面と額縁面の段差を取り払った「一枚ガラス」デザインが訴求されているが、映像自体は表面ガラスから約5mmくらい奥まったところに見える。
「一枚ガラス」デザインと聞いて、てっきり、ソニーがブラビアの2010年モデルから始めた、前面ガラス表面上に映像が浮き出て見えるウレックス石(テレビ石)的な見え方(オプティコントラストパネル)になっているのかと思ったが、違っていた。しかし、二重ガラス構造になっていた一昔前のプラズマとは違い、画素発光がガラス内で反復反射して画素描画がボケて見えたりするようなことはない。
額縁部と映像表示面の段差はないが、実際の映像表示は前面ガラスよりも奥に見える |
明るさは、こうした開口率の低さとプラズマ画素の発光効率の特性から、同画面サイズの液晶と比べるとやはり暗い。ただ、液晶と比べるからであって、絶対的な光量としては必要十分だ。蛍光灯照明下の日本のリビングでも問題なく使えるレベルだとは思う。
絶対的な明るさは同サイズの液晶に及ばずども、TH-P65ZT5はプラズマなので、光の位相操作を行なう液晶とは違って視野角や色調変移はだいぶ少ない。
液晶は、視野角の広いIPS液晶であっても斜めから見ると発光画素の輝度が下がり、黒画素からの迷光が増すので、総じてコントラスト感が低下する。しかし、プラズマのTH-P65ZT5では画素が自発光なので、斜めの視線に対しても光量の落ち込みが少なく、また、黒画素からの迷光は視線角度に依存せずにほぼ一定なので、コントラスト感が低下しない。こうしたプラズマならではの画質特性はTH-P65ZT5においても十分感じ取ることが出来る。
自発光画素という特性から、暗部の沈み込みは素晴らしく良い。公称スペックとしては最大ネイティブコントラスト値は550万:1以上と発表されているが、暗部と明部が同居するような映像でも、暗部が明部に引っ張られず独立した暗さで表現されている。これは、液晶でいうなればドット単位のバックライトエリア駆動(ローカルディミング)であり、液晶が目指すコントラスト表現のゴールでもあるのだ。
暗部の色表現も非常に品質が高く、暗部の色味にさえ純度が感じられるほど。
絶対輝度は液晶に及ばないが、暗部の沈み込みが絶対的なので総じて、見た目の映像としてのコントラスト感は強い。暗室で見ると、上質なプロジェクタ的な画質に見える。
シャッター速度1/25sで撮影 | シャッター速度1/15sで撮影 | シャッター速度1/10sで撮影。シャッター速度を遅くしても暗い部分の暗さは変わらない。それだけ黒浮きが少ないと言うこと。こうした絶対的な黒表現の優秀性は液晶よりも優れる |
発色は、純色にクセがなく、極めて自然。昔のプラズマのように、緑は黄緑に寄っていないし、赤も朱色に寄っていない。青には深みがある。各色のバランスも良い。
肌色には透明感があり、黄味乗りや赤み過多というようなクセもない。特にハイライト付近の白に近い肌色には独特なリアリティがある。
気になった点をあえて上げるならば、やはり暗部階調のチラツキか。1mも離れれば気にならないが、プラズマ特有の時間積分式階調生成の弊害で、階調境界で細かなチラツキが発生するのだ。分かりやすいのは、PS3の起動直後のメニューの背景画面。光の帯がゆっくりと移動するのを見れば、その光の帯と暗い背景の境界付近にチリチリとした階調割れが見えるのが気がつくはずだ。
あるいはPS3が有るならば、人の顔が映った写真を表示して、これを滑らかに連続的に拡大縮小してみるといい。肌のやや暗めの陰影の境界にチラチラする明滅が見える事だろう。静止させるとこのチラツキはスッと消える。時間方向に階調の移動が伴うと起こるプラズマ特有のアーティファクトなのだ。
いわゆる動画解像度の数値では出てこない、プラズマの動画特性の弱点だ。動画特性の測定は明暗差の激しいテスト画像や輪郭の鮮明度だけで測定されるため、この中明部の階調割れの特性が数字に出てこない。以前と比べれば、だいぶ改善されてはいるのだが、やはり最新のプラズマでも、この弱点の改善には至っていないようだ。
逆にそれ以外の部分で画質的な弱点は見当たらない。
カラーリマスター=オフ | カラーリマスター=オン。赤が深まる |
ビビッド=オフ | ビビッド=オン。緑がより鮮烈に |
TH-P65ZT5はプラズマなので、液晶VIERAとは違って残像低減機能は無いが、「シネマスムース」と呼ばれる補間フレーム挿入機能が搭載されている。目的が違うだけで、算術合成した補間フレームを挿入して、フレームレートを上げて動画としての映像のカクツキ感を低減するものだ。
この補間フレームの性質は、全くTH-L47DT5と同じで、「ダークナイト」のオープニングのビル群を飛行するシーンでは振動せず、チャプター9の(ヘリコプターが着地した後のシーンの)ビル飛行シーン(0:32あたり)で振動する。また、解像度情報の高い背景の上を動体が通るとその動体の輪郭が振動する。
シネマスムースは液晶VIERAに搭載されていた残像低減機能の補完フレームとほぼ同一の振る舞いをする |
こうしたアーティファクトがとても気になるので、筆者的には「シネマスムース」は使ったとしても「弱」設定で……、できればオフにして視聴したいと感じた。
「超解像」機能は、720p以下でしか効かず、効かせたとしても、油絵みたいな画調になってしまい、あまり有用な活用方針が見出せず。
プラズマから始まった3Dテレビのブームだったが、最初期モデルのその画質は、あまり芳しくはなかった。昨年の2011年モデルでは、プラズマの3D画質は劇的に改善され面目躍如を果たしたが、今年のモデルはどうか。
本連載TH-L47DT5編の時も触れたように、液晶VIERAの3D画質がだいぶ良くなったため、クロストークの大小に関しては、プラズマだから……という優位性は感じられず。3D映像は、プラズマと液晶とで、シャッター式の3D眼鏡を掛けるという条件に差はないが、プラズマの方が絶対的な輝度が低いため、暗室でないと、その暗さが際立ってしまう。
発色については、2010年の3Dプラズマの最初期モデルは3D眼鏡を掛けたときに、色が変に見える事があったが、今は2D映像の時の色とほぼ同じに見える。映像を左右の目で交互に見ることになるフレームシーケンシャル方式の3D映像は、プラズマの時間積分式階調生成と相性が悪いとされてきたが、今は、そうした問題は克服できているようだ。
クロストークは皆無ではない。しかし、視聴距離によっては奥行き調整でこれを減らすことができた。気になる場合は試してみる価値あり |
【プリセット画調モードのインプレッション】
スタンダード |
【スタンダード】階調よりもコントラスト感を重視した画調。色温度はやや高めで、他のモードと比較するとやや冷たい色あいだ。意外にも輝度は絞り気味で暗く、階調の色割れも強く出やすい。正直、使い勝手はよくない。
シネマ |
【シネマ】色温度が下がり、階調表現に重きを置いた画調になる。モード名とは裏腹に、輝度パワーはそれなりに確保されており、発色も鮮やかだ。使い勝手はスタンダードよりも良い。映画ソフト視聴時はまずこのモードを使ってみるといい。
シネマプロ |
【シネマプロ】ハリウッドカラーリマスターによる、液晶VIERAにはないプラズマVIERA専用の画調モードだ。特殊な高画質化機能を全てオフにしているため原信号主義ならばこのモードがお薦め。その他のモードで、何らかのアーティファクトに遭遇したら、このモードに逃げればいいだろう。
ダイナミック |
【ダイナミック】明るさ重視のモード。プラズマの特性上、輝度優先の画調でも暗部の沈み込みはそれなりに維持される。コントラスト重視の画調という言い方もできるか。アニメなどとの相性はいい。
リビング |
【リビング】実質的な本機の「スタンダード」モード。階調、コントラスト、発色、そして特別な高画質化ロジックをバランスさせた設定で、蛍光灯照明下でも,本機の高画質性能を享受できる。テレビ放送の視聴は基本的にこれ一本でOK。蛍光灯照明下での映画視聴もこのモードでOK
■ 円熟のプラズマ画質。プラズマの未来は?
「プラズマVIERA史上、一番美しい」というメッセージを掲げられて登場しただけあって、プラズマの特徴を最大限に活かした「美しい黒」「安定した暗部階調で稼いたハイコントラスト画質」といった部分は液晶に対して大きなアドバンテージを感じることができた。
発色も、調教してもプラズマ特有の朱色に寄った色あいは鳴りを潜め、今では実に上品なリファレンスモニター的なチューニングとなり、「プラズマだから」とあきらめる必要も無くなった。ハリウッドの映画スタジオと強力な連携で極めた「ハリウッドカラーリマスター」により、映画ソフトの相性もよく、それこそ暗室で見た時には上級プロジェクタのような画質が楽しめる。「VIERAで液晶でなくプラズマを選ぶ理由は?」との問いに対してはこのハリウッドカラーリマスター機能だと答えることだってできるかもしれない(液晶VIERAにこの機能は非搭載)。
絶対的な暗さ、残された階調割れの課題、伸び悩む3D画質と言った部分に関しては、今後、どう改善されるかには注目していきたい。実勢価格は50万円前後。なお、50型の「TH-P50ZT5」が30万円前後、液晶VIERAの55型「TH-L55DT5」が30万円前後とそれほど変わらない。
プラズマならではの高画質を大画面で楽しめる製品がVIERA ZT5シリーズといえる。そこで気になるのは、プラズマのこれから。パナソニックはプラズマの良さを活かした製品展開を続けるとしているが、その他のメーカーがプラズマから離れていることを考えれば雲行きは芳しくない。成熟したプラズマ画質を望む人は、ZT5でその魅力を味わいつくすのもいいかもしれない。
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TH-P65ZT5 |
(2012年 8月 2日)