藤本健のDigital Audio Laboratory
第1043回

伝説“miniKORG 700S”フィルタ搭載!コルグ初のUSBオーディオ「microAUDIO」音質検証
2026年3月9日 08:48
ヤマハ、ローランドと並ぶ日本の電子楽器メーカーであるコルグ(KORG)。これまでヤマハ(Steinberg)もローランドも数多くのオーディオインターフェイスを発売してきたが、KORGだけはなぜかこの分野に参入していなかった。
確かに、以前に記事でとりあげた「DS-DAC-100」といった機材はあったが、いわゆるオーディオインターフェイスとはかなり性格の異なるもので、DSD対応のUSB DACに録音機能も搭載した、という変わり種だった。
そうした中、ついにKORGが楽器、レコーディング、DTMという分野でのオーディオインターフェイス「microAUDIO 22」および「microAUDIO 722」を発売した。
いずれもDSPを搭載してコンプレッサやリミッタ、ノイズゲートが利用可能になっているが、microAUDIO 722のほうは、それに加えてアナログのフィルタを搭載したという、過去にないユニークなオーディオインターフェイスとなっている。
実際どんなものなのか試すとともに、音質性能やレイテンシーについてもチェックしてみた。
まずは「microAUDIO 22」をチェック
KORGがmicroAUDIO 22およびmicroAUDIO 722を発表したのは、1年前のアメリカの楽器展示会「The NAMM Show 2025」においてだ。
このときはあくまでも参考出品という扱いで、詳細のスペックや発売日の発表まではなかったものの、上位機種のmicroAUDIO 722には、KORGが1970年代に発売したKORG初の量産型シンセサイザ「miniKORG 700S」に搭載されていたフィルタと同等のアナログフィルタを搭載することが分かり、大きな話題となっていた。
そこから丸一年、進捗状況に関するアナウンスがなかったが、今年のNAMM Showの直前に2機種同時に発表され、1月24日に発売となったのだ。それぞれの税込みメーカー希望小売価格は24,750円、32,780円と、思っていたよりも手頃。USB-C接続の比較的コンパクトなオーディオインターフェイスとなっている。
スペック的には、最大24bit/192kHzに対応したオーディオインターフェイスで、基本的にはいずれも2in/2out。
ただし、ヘッドフォン出力へはメインアウトと同じ信号を送ることもできるし、別のステレオ信号を送ることもできる。また、そのミックスも可能だ。そういう意味では2in/4outとなるが、ループバックにも対応しているので、実際には4in/4outのオーディオインターフェイスとして扱えるようになっている。
デザイン的には、最近流行りのデスクトップ型。天面にノブやスイッチ類が搭載されていて、リアに入出力端子が搭載されている。
外観から順番に見ていくと、microAUDIO 22のリアは右側にコンボジャックの入力がIN1、IN2の2つがあり、その左にはTRSのバランス対応の出力が2つある。その隣にはUSB Type-C端子があり、一番左が6.3mmの標準ジャックのヘッドフォン端子となっている。
トップパネルは、左にあるノブが入力のゲイン調整で、LINKをONにするとIN 1/IN 2がリンクされステレオで操作可能となる。左下はコンデンサマイク用の電源である+48Vのファンタム電源スイッチだ。
中央上にあるMONITOR MIXは、モニターとして何を返すかを調整するもの。INにするとIN1/IN 2に入ってきた信号がダイレクトモニタリングされ、右に回してUSBのほうにしていくとUSBからの信号となり、そのバランス調整が可能になっている。
その下のMONO/STは、ダイレクトモニターする際の信号がモノなのかステレオなのかの変更ができる。
つまりIN 1のみにギターなどのモノラル信号を入れた場合、STにしておくと左チャンネルからしか音が聴こえないが、MONOにすれば両方から音が聴こえる、というわけだ。
さらに一番大きいMAIN VOLUMEはメイン出力であるOUT 1/OUT 2の出力レベル、右上はヘッドフォン出力を調整するためのものとなっている。
miniKORG 700Sのアナログフィルタを再現した上位「microAUDIO 722」
続いて、microAUDIO 722もリアを見てみると、こちらも基本的にはmicroAUDIO 22と同じ構成。
右から見てIN 1/IN 2そしてOUT 1/OUT 2、USB Type-C、ヘッドフォン出力は同様だが、USB端子の右にある3.5mmの端子はMIDI IN/OUTとなっている。外部MIDIとの接続ができるのが、microAUDIO 722の入出力上での違いだ。
トップパネルを見ると、microAUDIO 22とは違い、ノブやスイッチが多く、ちょっぴりカラフルになっている。
その大きな違いとなっているのが、真ん中の2列。
ここが冒頭でも触れた約50年前に誕生したKORGのシンセサイザ、miniKORG 700Sのアナログのフィルタをアナログ回路として再現したもの。
CUTOFFとRESONACEでフィルタを調整できるようになっており、RATEでLFOの周波数調整、INTでLFOのモジュレーション調整ができる形だ。
さらにCUTOFFの下にあるスイッチをINにすればIN 1/IN 2に入ってくる信号に対してフィルターがかけられるのだが、USBにすると、USBのオーディオ出力に対してフィルターがかけられる形となる。
また、RESONACEの下のスイッチはLOにするとローパスフィルター、HIにするとハイパスフィルター、BYPASSにするとバイパスしてフィルターがかからない形となる。
RATEの下のFREE/SYNCのスイッチは、LFOをスピードをMIDIクロックに同期させるか、フリーで動かすかを設定するためのもの。SYNCにした場合は1/2~1/32の範囲で調整できるようになっている。
INTの下のLFO/ENVのスイッチをENV側にするとLFOではなく、エンベロープフォロワーとなり、前述のRATEのノブはATACK/RELEASEに、INTはINPUT GAINとして機能する形だ。
言葉でパラメータを説明していても、なかなか実感がわかないかもしれないが、要するに、入力された信号をシンセサイザ的に音を変化させることができる。ギターを接続すればギターシンセサイザになるし、声を入力するとボーカルシンセ的なものになる、というわけ。
そのようにフィルタで変化させたサウンドをそのままDAWへレコーディングすることも可能になっているのである。
エフェクト操作はソフト「microAUDIO EDITOR」から
ところで、冒頭でmicroAUDIO 22もmicroAUDIO 722もDSPでエフェクトが使えるということを紹介していたが、これらは本体のトップパネルからはいじれない。
これを使うためにはWindowsおよびMac用に用意されている「microAUDIO EDITOR」というソフトをインストールしてコントロールする必要がある。
このソフト自体はあくまでもエディタであって、CPUでエフェクト処理するのではなく、オーディオインターフェイス内のDSPを調整する形だ。
microAUDIO 22を接続した場合と、microAUDIO 722を接続した場合でmicroAUDIO EDITORの画面が少し異なる。
ただ、いずれもFXタブを見てみると、左側がNOISE GATE、右がCOMPRESSOR/LIMITERとなっており、それぞれセッティングできる。COMPRESSOR/LIMITERのスイッチをINにすると入力に対して効くのに対し、USBにするとUSB出力に対してかけることができるというのは、先ほどのアナログフィルタと同様である。
さらに、このmicroAUDIO EDITOR、microAUDIO 722を接続した場合は、アナログフィルタのパラメータも調整可能。
先ほど紹介したノブやスイッチは完全に連動しているので、ノブを動かすとリアルタイムで画面側も追従してくれる。
しかし先ほどのトップパネル側にはなかったパラメータがmicroAUDIO EDITORの面白いところ。具体的にいうと、まずフィルターのルーティングをステレオで使うかIN 1か、IN 2かを選択可能になっている。
さらにLFOにおいてはRATE RANGEつまりRATEの設定幅をNARROWかWIDEかに設定できたりLFOの波形を三角波、ノコギリ波(SAW UP)、ノコギリ波(SAW DOWN)、矩形波、サイン波から選択できる。これらはこのエディタを使わないと設定できないけれど、回路はアナログとなっている。
そんなアナログフィルタ、デジタルエフェクトを含めたmicroAUDIO 22およびmicro AUDIO 722の信号ルーティングを示すブロックダイアグラムがこちらだ。
周波数特性やレイテンシーを測定!
以上の通り、microAUDIO 22、microAUDIO 722は、ユニークなオーディオインターフェイスなのだが、その音質性能はどうなのだろうか?
とくにmicroAUDIO 722はオーディオインターフェイスというより楽器というかエフェクトに近いものなので、あまり細かな音質をとやかく言うものでもない気はするが、この連載としては、やはりちゃんとチェックしておきたいところ。
おそらく基本的なオーディオインターフェイス機能はどちらも同じだとは思うが、アナログ回路などが付加されているとノイズが混入する可能性もある。
ここではあくまでも基本的部分にこだわってチェックするので、当然DSPのエフェクト機能もアナログフィルタ回路もオフの状態でテストした。それぞれいつものRMAAでテストした結果がこちら。
楽器的な機材だから、結構ノイズも大きいのでは……と予想していたが、思ったよりHi-Fiな機材であることが分かった。
※画像をクリックすると、全ての測定データを確認することができます
※画像をクリックすると、全ての測定データを確認することができます
ではレイテンシーはどうだろうか?こちらもいつものように、CentranceのASIO Latency Test Utilityでテストしたのが以下のものだ。
バッファサイズを44.1kHzや48kHzで4samplesにまで縮められるのが大きなポイントであり、こうすることで4msec以下に抑えることができる。
もっとも、ここまでバッファを小さくすると、マシン負荷が大きくなり、ブチブチとノイズが乗ってしまうケースも多そうだが、必要に応じて上げていくといいだろう。44.1kHzで128samplesにした場合は11.27msecという値なので、結構優秀だと思う。
以上、ちょっと変わり種のオーディオインターフェイス、microAUDIO 22およびmicroAUDIO 722をチェックしてみた。価格差もそう大きくはないので、買うならmicroAUDIO 722かなと思った次第。
USBオーディオに対してもアナログフィルタをかけることができるので、シンセ好きならmicroAUDIO 722を入手してみてはいかがだろうか?






































