西川善司の大画面☆マニア

第191回:ソニー自慢のLED駆動に驚く最高画質4K「KD-65X9500B」

第191回:ソニー自慢のLED駆動に驚く最高画質4K「KD-65X9500B」

洗練の直下型LED駆動で自発光デバイス並みの表現力

 ソニーの薄型テレビ「BRAVIA」シリーズはハイエンドモデルが4K解像度(3,840×2,160ドット)パネル採用機になり、型番には「X」の文字が付けられるようになった。今回評価するのは、ラインナップの最上位X9500Bシリーズの65型モデル「KD-65X9500B」だ。

KD-65X9500B

 2014年ソニー4K BRAVIAは、最上位/最高画質の「X9500Bシリーズ」が65型と85型、サイドスピーカーを搭載し、音にもこだわった中核機「X9200Bシリーズ」、アンダースピーカー型で49~70型までの「X8500Bシリーズ」の3シリーズ8モデルで展開する。

 X9500シリーズは最高画質を謳い、ソニーのBRAVIAとしては久しぶりに“直下型LED”を復活。高輝度な映像表現を行なうという「X-tended Dyanmic Range PRO(XDR PRO)」や、進化したLED部分制御技術などを活かして画質に徹底的にこだわったフラッグシップモデルとなる。早速その実力を検証しよう。

 なお、今回はソニーのショールームでの数時間のみの評価となっているため、いつもの遅延測定、PC接続関連関連の定点観測テストが行なえていないことをあらかじめお断りしておきたい。

設置性チェック~直下型バックライト採用で消費電力は大きめ

極端な狭額縁デザインではないが、オプティコントラストパネルということもあって額縁段差はない

 外形寸法は149.2×10.7×89.7cm。65型ともなると大きくは見えるが、サイズにしては標準的な大きさだ。重量はスタンド込みで43.9kg。軽量になってきてはいる薄型テレビ製品ではあるが、60インチオーバーでは、剛性補強や高重心に対応するためか、スタンド部の大型化するなどでそれなりの重量にはなってくるようだ。

 KD-65X9500Bは、液晶パネルと表示側ガラス面を特殊樹脂で埋めるオプティコントラストパネルを採用している。なので、額縁境界もなく、映像が浮き出て見えるようなソニーBRAVIA特有の表示特性となっているが、外界の映り込みはそれなりにあるので、設置派、相対する位置に照明や窓が来ないように配慮したいところ。

 4KフラッグシップのX9500Bシリーズに対し、ミドルクラスとなるX9200Bはスピーカーユニットを左右前向きにレイアウトさせることで、65型で横幅が170cmを超えている。一方で、KD-65X9500Bはスピーカーユニットを、いわゆる今流行のインビジブルデザインとし、背面下部に実装しているため、横幅はKD-65X9200Bに対して20cmも狭く収まっている。

 ただ、音質に関しては、テレビ内蔵スピーカーとしては最大級の最大65W出力で、2.2chのKD-65X9200Bの方が優れている(KD-65X9500Bは最大30W)。これについてソニーは「上位モデルのKD-65X9500Bをお買い求め頂くユーザーは、サウンドバーや独自のAVシステムを持っていることが想定される」と説明している。

本体下部にある「イルミネーションLED」。本体の状態を発光色で表す

 2013年モデルの「KD-65X9200A」編でも述べたように、サイドスピーカーは音質が良かっただけに、KD-65X9500Bにこれが採用されていない点は残念だ。なお、今回は評価時間が短かったこともあり、KD-65X9500Bの音質評価は行なっていない。

 定格消費電力は374W。年間消費電力量は326kWh/年。最近の同画面サイズのテレビと比較しても大きめな値だ。同画面サイズのKD-65X9200Bでも319W、282kWh/年であり、KD-65X9500Bはかなり大きいことがわかる。これは、X9500Bが多量の白色LEDを液晶パネル直下にレイアウトした直下型バックライトシステムを採用していることが大きな要因だろう(X9200Bはエッジ型LED)。

接続性チェック~HDCP 2.2/HDMI2.0対応で4K/60Hz入力OK

 接続端子は正面向かって右側の背面と右側面にレイアウトされている。最近ではアナログ入力端子を全廃していく動きが強まる中、KD-65X9500Bは、赤白黄の端子からなるコンポジットビデオ端子+ステレオ音声端子と、D5端子+ステレオ音声端子をそれぞれ1系統ずつ備える。

接続端子パネル。アナログ系入力を今世代機も辛うじて保持。D5入力があるのが何気に嬉しい

 HDMIは、側面に4系統があり、全てが3D立体視、x.v.Color、Deep Color、CEC、そして60Hzの4K入力に対応する。つまり、HDMI 2.0対応だ。このうちHDMI1がARCに対応し、HDMI2とHDMI4がMHLに対応する。

 また、4Kチューナや4Kビデオ録再機が採用する新著作権保護機構のHDCP2.2は、HDMI1とHDMI2が対応する。

 過渡期だから仕方ないのかも知れないが、最近、HDMI端子が系統ごとに機能差が与えられてしまっているのが、家電製品としては残念である。もともとHDMI端子は、「繋げれば接続機器同士が連携し、全ての情報を相互にやりとりができる」目的で提唱され、煩雑になっていたAV機器の接続を簡単にするためのものだったはず。HDMIで繋いでいるのに「バージョン違い」、「その機能には未対応」などを確認しなければいけないのは辛い。本機だけの問題ではないのだが、今後のいずれ改善を望みたいところだ。

 USB端子は3系統配備。右側面上部に3つあるが、うち1系統は録画用のUSB HDD接続専用となる。ネットワーク系は有線LAN(Ethernet)端子のほか、IEEE 802.11a/b/g/n無線LANも内蔵する。

 また、本体上部には手動ポップアップ式のWebカメラを内蔵。こちらは、Skypeのようなビデオチャット用途に活用することになる。ジェスチャー機能や、PlayStation 4に搭載されているようなユーザー顔認識機能は備わっていない。

Webカメラを標準搭載

 今回は3D立体視の評価は行なえなかったが、採用3D立体視方式はアクティブシャッター方式になる。3D立体視用の同期信号はBluetoothベースで送出される方式で、専用3Dメガネ「TDG-BT500A」は2014年モデルのブラビアやSXRDプロジェクタのVPL-VW500ESにも対応したものになる。

操作性チェック~新タッチパッドリモコン付属。NFCでスマホ連携もラクラク

 KD-65X9500Bには、2つのリモコンが付属する。1つは、オーソドックスな縦長のバー状のテレビリモコンで、昨年紹介したX9200Aのものとほぼ同一のものだ。X9500Bでは、一部、機能とボタンの割り当てが変更になっているが、ほぼ同じものといえる。

KD-65X9500Bに付属する2つのリモコン
一般的なテレビリモコン

 もう一つは新型のタッチパッドリモコンで、スマートフォンのようなタッチ操作で、簡単に操作できる……という触れ込みのモノだ。

新開発のタッチパッドリモコン

 実際に使ってみたが、慣れるまでは少々使い方に戸惑う。リモコン上の、[ホーム][オプション]といった微妙に突起している部分がボタンになっているが、これは押すものではなく、ここに触れつつ指でなぞってメニューなどを呼び出す操作形式だ。なお、カーソル操作は上部にあるタッチパッドで行なう事になるが、こちらも特定箇所を押して操作するのではなく、スマホ的なフリック/スライド操作によって行なう。

 このタッチパッドリモコンはRF無線式なので遮蔽にも強いという利点もあるので、キッチンからの操作などにはこちらの方が適しているかも知れない。パッドを使ったスクロールなどの操作系にあわせて、メニュー画面なども新しいデザインになっている。

 ただ、ソニーのこうした“不思議系リモコン”は、世代が続かず一世代で終わることが多く、せっかく使い慣れても、新モデルで無かったことになることがしばしば。今回は、この操作系とデザインをずっと継続して進化させていって欲しいものだが、果たして……。

ユーザーインターフェイスも新リモコンに合わせて一新している

 さて、KD-65X9500BはWiFi経由で映像を入力させるMiracastに対応している。最近は、Miracastに対応したスマホが増えつつあるが、そうしたスマホの画面を無線でKD-65X9500Bに入力させて表示することができるのだ。

 でも「Miracast接続は、テレビ側とスマホ側のペアリング設定が面倒」という人も多いかと思う。KD-65X9500Bのタッチパッドリモコンは、NFC機能も搭載しているので、NFC対応スマホであれば、タッチパッドリモコンとスマホを近づけさせるだけでペアリングが自動的に行なえてしまう。

タッチパッドリモコンのNFC機能を使ってスマホをワンタッチでペアリング。あっという間にスマホの画面をKD-65X9500Bに無線伝送できてしまった。これは便利

 筆者の私物スマホでも、実際に試させてもらったが、非常に簡単にKD-65X9500Bに、自分のスマホの映像を映し出せてしまった。リビングに持ち寄った各々のスマホの映像をみんなで大画面で見せっこするような使い方も簡単にできるだろう。

画質チェック~エリア駆動+ハイダイナミックレンジ復元による自発光デバイス並みの表現力

 KD-65X9500Bは、液晶パネルに解像度3,840×2,160ドットのVA型液晶パネルを採用する。

「LEDコントロール」はエリア駆動にまつわる設定だ

 バックライトは液晶パネル直下に白色LEDモジュールをレイアウトした直下型LEDバックライトシステムで、表示映像の明暗分布に連動して直下のLEDの明暗を制御するエリア駆動(ローカルディミング)に対応する。直下型LEDバックライトの個数及び、制御ブロック分割数は非公開。ただし、65型と85型とでは85型の方が分割数は多いという。

 まず、行なったのは、前面に同一輝度値を書き込んだ映像を表示させる輝度均一性(ユニフォミティ)チェックだ。

 エリア駆動を切ったときのユニフォーミティはまずまずといったところだが、エリア駆動を入れると、これがだいぶ改善されるようになる。

エリア駆動オフ時。中央は明るいが外周、四隅は暗め
エリア駆動オン時。輝度が全域で均一になる

 テスト映像の輝度を下げていったときでも、ユニフォミティに大きな変化は見られず、エリア駆動の制御がかなり綿密に行なわれていることを感じさせる。

 続いて0%IRE-100%IREや0%IRE-30%IREの白黒グラデーションを表示させてみたが、前者、後者ともに、階調表現は正確であった。いずれのテストケースにおいても黒は漆黒のまま維持され、最明部までがリニアに繋がっている。こうした暗い白黒グラデーションの表現では、最明部の輝度が落ちると、その周囲が漆黒に引っ張られるようになって、暗部の表現力が落ちるものだが、KD-65X9500Bでは、コントラスト感が維持されつつ、それでいて映像中の最明部の輝度に引っ張られることもなく暗部情報量を一定に保てている。これは液晶テレビでは実現するのがなかなか難しい表現性能であり、筆者も少々驚かされてしまった。

 ソニー側の解説によれば、これは、映像中の暗い箇所ではバックライトを暗くして、液晶画素をハイダイナミックレンジで駆動させているために実現出来たとしている。そうすると、本来は明るくない箇所にも光が漏れて見えてしまう「HALO」アーティファクトが懸念されるが、この辺りはうまく調整出来ている。実際、50%IREの純色領域と漆黒領域を並べて表示させても、漆黒部分に目立つHALOアーティファクトは確認できず。大げさな表現だが、ここまで液晶パネルを自発光パネル的に制御できている直下型バックライトシステムは初めて見る経験だ。

 暗いシーンでは、一般に、迷光(液晶パネルに透過しなかった余剰の散乱光)による「黒浮き」が気にされるが、液晶テレビでは、液晶パネルのRGBサブピクセルに対してバックライトを透過させる原理上、迷光が特定のRGBサブピクセルに偏って通り抜けることで、赤味、青味、緑味いずれかの偽色を発する場合がある。暗い映像では映像本来の表示よりも迷光による偽色の方が目立ちやすくなることがあるだが、KD-65X9500Bでは、それがほとんどない。暗い映像シーンにおけるSN比というか情報量は、今期見た4Kテレビの中ではナンバーワンだ。

 KD-65X9500Bには、グラデーション表現を美しく再現する「スムーズグラデーション」機能が備わっている。続いて、この機能の効果を確かめるために映画「きみに読む物語」の赤単色で描かれる冒頭シーンを見てみた。

 まず、漆黒からの夕焼けシーンへのフェードインする際だが、等高線のような擬似輪郭などは知覚されず暗く淡い赤で描かれる情景に移行できている。暗い情景のフェードインは、等高線のような擬似輪郭の出やすい厳しい映像なのだがKD-65X9500Bではこれがない。

 暗い階調表現で描かれた暗い赤い夕焼け雲の描写にも擬似輪郭は見当たらず。こうした空や雲は輝度信号や色差信号で255分の1(8bitでの1違い)程度の差異で描かれた表現は、表示段階でダイナミックレンジが足りず擬似輪郭が出やすいものだが、ブラビアの「スムーズグラデーション」機能は、こうした1bit段差をスムーズに繋ぐ機能が備わっているため、美しく描けているようだ。

 肌色の顔面表現も同様で、非常になだらかで柔らかい陰影が表現出来ている。顔面の顎下や首元にできる影は、非常に暗い肌色のグラデーション表現となるが、偽色もなく擬似輪郭もなくナチュラルに見えている。

 続いて「塔の上のラプンツェル」の、「塔の外に出たい」といったラプンツェルを偽母親が「外は危ない」と説得するミュージカルシーンを見てみた。このシーンでは、漆黒背景の中を二人のメインキャラクタがそれぞれスポットライトを浴びながら動き回るのだが、ピーク明部のない全体的に暗い中で描き出される人物の肌色もリアルであった。

 かつての「超解像」ブームに引き続き、最近にわかにテレビ製品でブームとなりつつあるのが「ハイダイナミックレンジ復元」機能だ。

 「1兆(10の12乗):1」にもなるといわれる120dBに値するダイナミックレンジの現実世界の「明」と「暗」のエネルギー格差を、現在の映像信号はRGB(YUV)が各8bit深度の24dBのダイナミックレンジに圧縮してしまっている。これを疑似的に復元しようというのがハイダイナミックレンジ復元だ。超解像が撮影時に失われた解像度を疑似復元するものならば、ハイダイナミックレンジ復元は撮影段階で失われた輝度エネルギーを復元するためのものだ。KD-65X9500Bでは、これが「X-tended Dynamic Range PRO」(XDR PRO)という機能名で搭載されている。

 XDR PROでは、直下型バックライトシステムのエリア駆動を活かし、映像中の高輝度表現領域に対応するLEDをブーストさせつつ、映像信号上で圧縮されてしまっている(寝かされている)最明部付近のガンマ特性をググっと起こす処理を行なっている。これにより、単に明部輝度が増してコントラスト感が強調されるだけでなく、明部のディテール表現も鮮明に描かれるようになり、リアリティも増すというのだ。

 ちなみに、KD-65X9500Bでは、画調モード「シネマ1」だけはXDR PROはオフになっており、それ以外の画調モードではデフォルトでオンになっているとのこと。XDR PROのオン/オフは、「アドバンスト・コントラスト・エンハンサー」機能と連動しており、この設定が「弱中強」時にXDR PRO=オン、「切」時にXDR PRO=オフとなっているようだ。また、LEDバックライトのエリア駆動オフ時、倍速補間技術の「モーションフロー」を、バックライト明滅モードに相当する「インパルス」設定時にもXDR PROは無効となるようだ。

アドバンストC.E.はアドバンスト・コントラスト・エンハンサーの略

 実際に、このXDR PROの効果を確認するために、XDR PROがオンとなる「シネマ2」モードを選択して評価用映像を見てみた。

 前出の「塔の上のラプンツェル」のミュージカルシーンでは、スポットライトを浴びて歌い踊る偽母親が着るサテン生地の衣服のハイライトの質感が妙にリアルに見えていた。

 「ダークナイト」の警察署でジョーカーが尋問を受けるシーンでは、照明が当たっている机の上の明部の輝きが鋭いが、それだけでなく、その明るい部分のディテールが浮かび上がって見える。

 これは、通常では、輝度差が足りなくて埋もれてしまっていたようなハイライト周辺のディテールが、ダイナミックレンジ拡大で顕在化する効果によるもののようだ。これは超解像処理では描き出せない領域のディテール表現である。

 「ゼロ・グラビティ」の冒頭シーンでも同様の効果を確認できる。画面一杯に広がる地球、その奥から「腹」を見せながら徐々に上昇してくるスペースシャトル。この、スペースシャトルの腹の白い外壁パネルのディテールや、地球上の台風雲上に出ている雲の凹凸感などが、XDR PROの効果で鋭く光ながらもホワイトアウトすることなく緻密に描き出されている。競合機で見た場合は外壁も雲もほぼ白一色か、わずかに白の輝度段差が確認できる程度になる。たしかにKD-65X9500Bの映像表現は、「現実世界でもこう見えているはず。映像信号の仕様上、僅かな輝度差の表現に圧縮されてしまっていただけなんだろうな……」と思わせてくれる説得力がある。

 「華麗なるギャツビー」のパーティーシーンでも、エリザベス・デビッキが胸元に身に付けている宝石のきらめきと宝石の1粒1粒の多面加工された各面の陰影もきめ細かく見えており、超解像による陰影先鋭化とは違う味わいを見せていた。

 超解像による陰影顕在化が「視力が良くなったように見える」効果だとすれば、XDR PROの効果は「ガラス越しでなく、肉眼で見ているリアリティ」といった感触だ。

 この映画では、俳優達に光が強く当たるカットが多いが、顔面中のハイライト部分のグラデーションやディテールも立体的に描かれるので、照明条件に依存しない安定したリアリティを感じる事も出来た。

 超解像技術「4K X-Reality PRO」についてはどうか。

 「SAMSARA」の砂絵のシーンでは、砂の大きな粒、中くらいの粒、小さな粒のそれぞれがしっかりと描かれていることが確認され、光が当たっている箇所の砂粒の微細凹凸感も鮮明に見えていた。砂絵は、絵の具を使った絵画とは違い、盛った砂粒の分の厚みがあるわけだが、KD-65X9500Bではそうした微細な立体感もちゃんと感じられる。ハイライト部分の砂粒の微細感はXDR PROの効果によるもので、柔らかい陰影箇所の中サイズ以下の砂粒の微細感は4K X-Reality PROによって作り出されているものと思われる。こうした超解像とハイダイナミックレンジ復元の相乗効果による画質体験はKD-65X9500B特有のもので、一見の価値がある。

 発色については、昨年モデルまでは、一部、ITU-R BT.709の色域マップの外周領域を線形にDCI色域領域まで広げていたそうだが、KD-65X9500Bでは、これを非線形処理に変更したとのこと。

 今回、評価コンテンツを見た範囲では、たしかに純色に目立ったクセはなく、それでいて彩度の高い部分については伸びやかになっている印象を受けた。真っ先に気が付いたのは人肌の色あいで、昨年モデルでは肌色の一部の色が黄色に若干シフトしている印象があり、実際筆者もそれを指摘したことがあるのだが、KD-65X9500Bではそれが解消されていた。

 KD-65X9500Bは、x.v.Colorのリブランディング規格ともいえる「TRILUMINOS DISPLAY」に準拠しているわけだが、当然、本家本元なので、この辺りの色域の表現も違和感なく再現出来ていた。ソニーが販売するx.v.Color記録された「Mastered in 4K」ブルーレイを視聴する際にも安心だ。

 倍速駆動補間フレーム技術の精度についても言及しておこう。

 KD-65X9500Bが採用するものは「モーションフローXR480」という名称が付いており、「8倍速相当」のうたい文句が掲げられているが、その実、生成される補間フレームは実フレーム間につき1枚だけで、8倍速相当の480Hzでバックライトスキャニングを行なう実装になっている。

 毎回行なっている「ダークナイト」の冒頭のビル群の飛行シーンでの補間フレーム精度チェックを今回もしてみたがピクセル振動等のアーティファクトは感じられず。これまで通り、ソニーの補間フレーム技術は相変わらず優秀である。

シーンセレクト一覧

 最後に、KD-65X9500Bで映画コンテンツを視聴する際のガイドラインを示しておこう。

 「シーンセレクト=シネマ」としたときに「画質モード」は「シネマ1」と「シネマ2」が選べるが、「シネマ1」は制作者が意図するHiFiコンセプトで見るモニターライクな設定になる。

 一方、「シネマ2」は、「シネマ1」の発想を尊重しつつ、ソニーが考える高画質化処理を適用したモードになる。KD-65X9500Bの特有機能であるXDR PROは、シネマ2の方で有効になる。

フィルムジャダーの効果を温存したいのであればTrueCinema設定がお奨め

 今回の視聴評価では、一部のコンテンツはソニー側のエンジニアのお奨め設定で視聴した。その設定は、「シネマ1」に対し、「スムーズグラデーション」を切り、ガンマカーブを2.2を「標準」設定に変更。「モーションフロー」設定は「くっきり強」(補間フレームあり+バックライトスキャニングあり)とし、「バックライト」設定を一段明るくする…というものだった。これで、より一層、マスモニターライクになるとのことである。

 筆者は、KD-65X9500B特有の画質が楽しめる「シネマ2」のデフォルト設定がとても気に入った。映画特有のジャダー感を楽しみたい場合は、「モーションフロー」設定は「True Cinema」設定としたいところ。KD-65X9500Bでは、毎秒24コマの映像の4度書きの96Hz表示で楽しめる。

直下型LED+部分駆動の圧倒的な完成度

 2014年の4K BRAVIAは、ラインナップが分厚い。今回紹介したトップエンドのX9500Bの他、エッジバックライト採用機のX9200Bシリーズと、XDRを省きながら40~70型まで豊富なサイズのX8500Bシリーズがラインナップされている。全てのシリーズに65型があるが、6月下旬現在の実売価格はX9500Bが80万円前後、X9200Bが65万円前後、X8500Bが56万円前後。

 今回の評価では、直下型LEDエリア駆動とXDR PROのポテンシャルをまざまざと目の当たりにしたので、画質面のお奨めはどれかと聞かれれば、やはりKD-65X9500Bを推したい。欲を言えば、このX9500Bの画質が50型クラスにも欲しいところだ。

トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちら