西川善司の大画面☆マニア

第212回

【CES】8Kレーザーバックライト液晶/湾曲有機ELの実力は!?

UHD BDと新HDR+4K TVを体感。新型NSXにも試乗

 大画面マニアのCES 2016特別編、第2回目はパナソニックブースだ。今回のCESでは東芝とシャープが出展しなかった関係から、AV関連展示を行なう日本企業勢としては、ソニーと列び、最後の砦とも言うべき存在である。

RGBレーザー光源を用いた55型8K液晶ディスプレイ

 そんな今年のパナソニックブースは、展示のコンセプトを一新。AV及びテレビ関連の展示セクションは大幅に縮小し、代わりにユニークな先端技術展示の割合を増やす方針としたのだ。

 本稿では、映像関連を中心に筆者が強く興味を抱いたものを取り上げることとした。なお、一部については、あまりにもユニーク過ぎるがゆえに、別レポートに回すこととしたネタもあることをあらかじめお断りしておく。

RGBレーザー光源採用の8K液晶ディスプレイ

 4K/8K向けのBT.2020広色域規格は、現実世界に存在する物体色の99%をカバーするものだが、これを現行の白色LEDベースのバックライトシステムを採用した液晶ディスプレイで表示しようとすると、よくてカバー率は80%前後であった。

 CEATEC 2015では、三菱電機がRGB半導体レーザー光源を用いたバックライトシステムベースの4K液晶ディスプレイを公開し、これがBT.2020広色域規格の99%をカバー出来たことを報告した。

 今回のCES 2016ではパナソニックが、同系のRGB半導体レーザー光源バックライトシステムを応用した8K液晶ディスプレイを公開。これがBT.2020の約98%をカバー出来ていると発表した。

BT.709(sRGB)とBT.2020広色域との比較。写真で見てもその違いがわかる。
NHKが撮影した8K映像デモより。暗がりの中に佇むオウムをスポットライトで照らして撮影。8K解像度ならではの羽毛表現のきめ細やかさが際立つ

 なお、このRGBレーザー光源のバックライトシステムについての詳細は伏せられていた。ただし、現状、HDR表示への対応は行なえないことは明言されていたので、エリア駆動には対応していないようである。担当者によれば、現在のこのレーザー光源8K液晶ディスプレイの公称コントラストは1,500:1とのこと。

色純度の高いRGBレーザー光源を用いたことにより、BT.2020規格の広色域表現にも対応した色鮮やかな表示を実現
日本画の大家、橘 天敬の「清生楽々天地乃間」をスキャンした画像。色再現に妥協しない用途の具体事例の一例

欧州で先行発売したLG式有機ELテレビを出展。その実力は?

画面サイズは65型。いわゆる湾曲型デザインを採用している。欧州で先行発売された本機は、ついに北米でも展開。日本の発売はいつ?

 既に欧州向けに先行発表されている65型4K有機ELテレビ「TX-65CZ950」だが、ついに北米にむけても発表となった。北米では春頃の発売を予定しているとのことだが、価格は未定。欧州では日本円で100万円前後で販売されているところをみると、同程度の価格になりそうだ。日本への導入も検討がなされているそうだが、100万円前後というのが、1つの価格指標になりそうな気がする。

 実際の映像を見てみたが、黒のしまりはさすが自発光画素と言うことで文句の付けようがないレベル。デモ映像は赤を強調する内容で、実際、その赤はやすやすとは朱色に寄らない鮮烈な赤になっていた。ハイライト部分の白伸びもよく、HDR映像とは相性が良さそうな雰囲気だ。

 表示面は左右に湾曲している。画面中央付近で見た時の、視界を取り巻いてくるようなサラウンド的な見栄えの迫力はなかなかのもの。

 有機ELパネルの自社開発を断念したはずのパナソニックが、有機ELテレビを発売……ということに驚いた読者も少なくないと思うが、基幹パーツの有機ELパネルそのものはLGから供給を受けている。ちなみに、同一世代有機ELパネルを使ったLG自身のモデルとしては「65EG9600」が該当する。LGモデルには55型モデルもあるのだが、パナソニック製としては65型のワンモデル展開となる見込みだ。

 LG式有機ELパネルは白色自発光画素にカラーフィルターを組み合わせた構成なのはご存じの通り。RGBサブピクセルの他、さらに白サブピクセルも含有するのが特徴だ。このRGB+Wサブピクセル構成はピーク輝度が稼げる利点はあるものの、明部の有彩色が白に寄る副次特性が指摘されがちだ。

 そして、この特性が「TX-65CZ950」ではどの程度低減されているかが気になるわけだが、今回の展示のデモ映像ではそのあたりを検証・確認することはできず。ただ、画質に関して本機は、THX認証を取得出来ているそうである。

 実際に、じっくりみっちりと評価するのが待ち遠しい機種である。日本での発売を首を長くして待ちたい。

デモ映像を見た限りでは納得の画質。黒のしまりは圧巻で、純色表現も良好。メリハリ系映像が主体だったので、製品版では階調表現主体の映像も見てみたいものである

Ultra HD Blu-rayプレーヤーでHDR再生、Ultra HD Premiumの4K液晶TVで表示

 4Kブルーレイこと、Ultra HD Blu-ray(UHD BD)の仕掛け人のパナソニックは、今回のCESで、Ultra HD Blu-rayプレイヤーの「DMP-UB900」を発表。ブースではその実機を展示している。

 しかも、実際に、HDR対応4K映像のアクション映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を実際に再生して、2016年モデルのHDR表示対応液晶テレビである「65DX900」に表示させるデモを行なっていた。

 DMP-UB900は、最大1万nitまでのHDR出力とBT.2020規格の広色域伝送に対応したHDMI 2.0a対応端子を装備しており、UHD BDソフトのフルスペック再生が可能。

 最初のUHD BD規格上では、4K映像はYUV4:2:0形式となるわけだが、DMP-UB900では、パナソニックが誇る4K High-Precision Chroma Processorによるマルチタッププロセスによって、高精度にYUV4:4:4へと変換して出力できる。サラウンド音声も通常はHDMI経由で出力することになるが、7.1chのアナログ出力も備えている。

レコーダーではないUHDブルーレイプレイヤー「DMP-UB900」。価格は未定で発売時期は「2016年の早い時期」と説明されている
背面。HDMIケーブルが液晶テレビの「65DX900」へと伸びていた。有機ELテレビの「TX-65CZ950」も近くに展示されていたのだがそちらとの接続デモはおこなわれておらず

 DMP-UB900からの映像を受けていたのは、今期の液晶テレビ「65DX900」。直下型バックライトを採用し、UHDアライアンスの「Ultra HD Premium」規格に準拠したものだ。当然、HDR表示とBT.2020規格の広色域に準拠した表示に対応する。

 「65DX900」の直下型バックライトシステムの詳細はブース内で示されてはいなかったが、公開資料によれば「特徴的なハニカム構造になっている」そうである。エリア駆動のブロック分割数についても「非公開」としつつも「数百ブロックはある」と説明されていた。「ハニカム構造」というキーワードから考察すると、直下型バックライトを構成する白色LEDの配置が、従来の縦横直交配列ではなく、斜めに交差するような配列・配置になっているのかも知れない。

 「65DX900」も画質についてはTHX認証を取得しており、実際の映像を見てみた感じでは前出の有機ELモデルの「TX-65CZ950」ほどの明暗差はなかったものの、十分なハイコントラスト感は得られていた。こちらも、製品版が出てきた暁にはじっくりと評価してみたいものである。

映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のワンシーンより。写真では分かりにくいが、立ち上がる火柱が自発光材質らしい「いかにもHDR」的な輝きを放っていた

8Kインタラクティブディスプレイ

 昨年のCES 2015のパナソニックブースにて、テーブル状に平置きした55型8K液晶ディスプレイを複数ユーザーで取り囲んで眺めるデモがあったが、今年はこのデモを発展させ、55型8K液晶ディスプレイを10点マルチタッチに対応させた上で、インタラクティブなコンテンツを実行させ、来場者が体験できる内容となっていた。

 用意されていたデモは3つ。1つは8Kで高精細表示された地図の特定箇所をタッチすると、それに関連した情報がポップアップするもの。ニューヨークの地図で、自由の女神をクリックすると観光情報が表示されたり、空港をクリックすれば航空機の離着陸情報が表示されると言った具合。同時多人数で使えるインフォメーションディスプレイ……といった提案だ。

インタラクティブ地図のデモの様子。一部のスポットは動画の再生にも対応していた

 2つ目は、CAD図面表示とレンダリング表示を同時に行なった上で、各図面やグラフィックスを自由に移動させたり拡大縮小、回転が出来る内容。これは製品デザインのデザインレビューを複数人で行なうようなイメージだ。

デザインレビューを想定したデモ。デザイナー各自が持つ、フルHD解像度程度のノートPCでは「1枚ずつページ送りでしか見せられないような図版」を、一度に複数広げてみせられるところにも8Kの価値がある

 3つ目は、写真素材を複数人で同時レタッチをしていく内容。拡大縮小も自在でコラージュをすることも出来る。こちらはややエンタメ/ホビー色が強い内容だ。

写真をみんなで同時多発的にレタッチできるデモ

 55型8Kというと160ppiであり、これは13〜14インチのフルHDパネルと同程度である。そのくらいの液晶パネルを採用したノートパソコンはよくあるので、そう考えると55型8Kはそれほど突拍子もない高解像度という感じでもないわけだが、1枚パネル上で同時に複数人で160ppi解像度の映像をいじったり触れたりするのはなかなかの感動体験である。

 55型で8K解像度というと、1〜2m離れて見るテレビ的活用視点では「やや過剰解像度」という感じが否めないわけだが、こうして視距離数十cmで使ってみると意外にも「必要十分な丁度いい解像度」という実感が得られたのが新鮮であった。

新型NSXがパナソニックブースに。「意外な理由」を筆者自らが検証

 パナソニックブースでは、2016年内に日本でも発売が予定されているホンダの新型自動車・NSXの量産モデルが展示されていた。

東京モーターショー2015では赤が展示されていたが、CESでは黒がパナソニックブースに出現

 「パナソニックブースでホンダ新型NSX!?」、「ハイブリッドカーの新型NSXだからバッテリがパナソニック製だとか?」と予想するかもしれないが、答えは「新型NSXはパナソニックの自動車向けオーディオソリューションの『ELS Studio Premium Audio System』を採用しているから」。

 「ELS Studio Premium Audio System」は音楽プロデューサーのElliot Scheiner氏とパナソニックが共同開発した音響デザインソリューションで、北米のホンダ車では2004年のACURA TLから「ELS Surround」システムとして提供されてきた実績がある。新型NSXでは「ELS Studio Premium Audio System」が純正採用されるということでホットトピックというわけである。

 大画面と全く関係ないのだが、個人的に「車が大好き」ということもあり、パナソニック担当者に当日交渉して実際にそのサウンドを聴かせてもらう機会を獲得。

筆者は運転席に着座。ELSサウンド担当者が大音量で楽曲を再生してくれた。東京モーターショーでも新型NSXに着座しているが、車内で大音量で試聴したのは今回が初めてである

 総出力580W、9チャンネルサウンドはかなり大迫力で、その聴感はほとんどリスニングルームに相当するものであった。新型NSXが2シーターのスポーツカーで、比較的、機密度が高い空間設計がなされていたことがそうした聴感を実現しているのかもしれない。

 フロントAピラーにツイータ×2、ドア部にフルレンジ×2、コンソール上面にセンター×1、運転席と助手席の肩口にリアスピーカー×2、そしてリアにはリアセンターとサブウーファを実装、計9個というレイアウトだ。

 室内は結構タイトで比較的ユーザーとスピーカーユニットの距離は近いものの、「スピーカーとの過剰な近接感」はなく、音像との距離感は丁度よい。指向性の強さや定位感よりは、音像自体に体積を持たせたようなアンビエントを重視したデザインがなされていると感じた。

 悔しいかな。筆者の愛車・日産GT-Rよりも、車内サウンドの質感は各段によかったことは認めざるを得ない(笑)。

写真右上にあるのがリアスピーカー。頭部と近接した位置に設置されているが聴感上はもう少し遠くにあるイメージ
ドア部分に注目。フロントAピラー付近にあるのがツイーター。ドア部の凹みにあるのがメインのフルレンジユニット

トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちら