【新製品レビュー】

小型&低価格。ポータブルアンプ期待の2機種比較する

-「オーディオテクニカ AT-PHA30i」、「FiiO E1」


発売日:「AT-PHA30i」 12月18日
      「E1」発売中

標準価格:「AT-PHA30i」 12,600円
       「E1」 3,675円

 ポータブルオーディオをより高音質で楽しみたいという場合、イヤフォンやヘッドフォンを高級なものに買い換えたり、音楽ファイルの形式をロスレスフォーマットに変えるといった手法が一般的だろう。

 ピュアオーディオに例えるなら、スピーカーの交換、CDからSACDへの変更などになるだろうか。ピュアの場合、プレーヤー、DAC、プリアンプ、パワーアンプと、各コンポが単品で構成されるため、グレードアップの仕方も色々選べる。対してポータブルはプレーヤーとDAC、アンプが一体化しているため、イヤフォン/ヘッドフォン交換で満足できない場合、プレーヤーそのものを買い換えるしかない。

 そんな流れに一石を投じているのが、ポータブルヘッドフォンアンプという存在だ。簡単に言えば“バッテリで動く小型アンプ”で、これをプレーヤーに接続。より高品位にイヤフォン/ヘッドフォンをドライブし、音質を高めようというのが狙いだ。

 だが、プレーヤーのイヤフォン出力と接続する場合、もともと“満足できない音”を外部アンプで再増幅する事になる。プレーヤー内蔵アンプの駆動力では上手くドライブできない低能率のヘッドフォンを、外部アンプの力で補うといった使い方にはマッチするが、本質的な音質のクオリティアップはあまり期待できない。


■ 注目の2機種が登場

 そんな状況を変えたのがiPodのDock端子だ。Dock端子からはiPodの内蔵アンプに入力される前の音をライン出力として取り出す事ができるため、それを別体のポータブルアンプに入力。高品位に増幅して音質を高めるというわけだ。ポータブルプレーヤーをプレーヤーとしてしか使わず、本当の意味での“アンプ交換”が実現する。

 ただ、マニアックな製品ということもあり、製品自体も海外の小さなメーカーが小ロット製造しているものが多く、おのずと価格も2万円~5万円程度と、ポータブルの周辺機器としては高価。製品によっては個人輸入する必要があるなど、ハードルが高く感じられるジャンルだった。しかし、最近では日本の輸入代理店が付いたり、ヘッドフォン/イヤフォンに強いショップが積極的に取扱を開始するなど、かなり買いやすい状況になっている。

オーディオテクニカ「AT-PHA30i」FiiO「E1」

 そんな中、注目のアンプが2機種登場する。オーディオ用ケーブルなどで知られる小柳出電気商会(オヤイデ)が販売する、中国「FiiO」の「E1」(発売中/3,675円)というモデルと、オーディオテクニカが発売する「AT-PHA30i」(12月18日発売/12,600円)というモデルだ。

 特徴は大きく3つある。1つは「低価格である事」、2つ目は「極めて小型/軽量であること」、最後は「iPodを操作するリモコン機能も備えている事」だ。ヘッドフォンアンプ入門モデルの実力はどんなものか、使い勝手も含めて紹介したい。


■ リモコンの使い勝手にも違い

 まず、従来のポータブルヘッドフォンアンプのイメージと異なるのがサイズと重さだ。重量は「AT-PHA30i」が約20g(コード含む)、「E1」が約30gで、普通のリモコンケーブルとほとんど変わらない。コントローラー部のサイズは「AT-PHA30i」の方が大きく45×35×12mm(縦×横×厚さ)で四角い形状。「E1」は48×14×10.7mm(同)でスティック型になっている。

左が「AT-PHA30i」、右が「E1」RSAの「SR-71A」(右)とサイズ比較。同モデルは450ドル程度、日本円で約4万円くらいだ

 通常のヘッドフォンアンプは、HDD内蔵型iPodやiPod touch、iPhoneなどと同程度のサイズがあり、ベルトやゴムなどでプレーヤーとセットにして持ち歩くユーザーが多いが、「AT-PHA30i」と「E1」はケーブルの途中にリモコン兼アンプユニットが付いているという形状だ。最大の違いは、両製品とも電池などの電源を内蔵しておらず、iPodからの給電で動作すること。これにより小型化を実現しており、屋外での取り回しの良さは格段にアップしている。だが、iPod内蔵バッテリの消費が早くなるというデメリットもある。

SR-71AとiPodを短いラインケーブルで接続したところこの組み合わせでは、プレーヤーとアンプをバンドでまとめたり、一緒にポーチに入れたりと、持ち運びにも工夫が必要

 対応iPodは「E1」がDock端子のある全世代で、iPhoneにも対応。「AT-PHA30i」はiPod nano/classic/video/touchで、iPhoneには非対応。しかし、編集部でiPhone 3GSと接続したところ使うことはできた。

 音質の前に、リモコンの使い勝手を比べてみたい。「AT-PHA30i」は各ボタンを十字に配置しており、中央に再生/一時停止、上下にボリューム、左右に曲送り/戻し。「E1」は中央の突起状の丸ボタンに再生/一時停止、それを囲むように細長いシーソータイプのスイッチでボリューム、さらにそれを囲むように曲送り/戻しボタンを備えている。また、「AT-PHA30i」のみホールドボタンも備えている。

AT-PHA30iの操作パネル背面のクリップ部イヤフォン接続部。ホールド機構も備えている
AT-PHA30iの全体E1のパッケージE1の操作パネル。ほぼ全てがボタンだ

 どちらの製品も、曲送り/戻しボタンの長押しで早送り/巻き戻しが可能。操作に細かな違いがあり、「E1」は早送り/巻戻し中の音声が再生されず、どこまで飛んだのかわからない。「AT-PHA30i」はボタンを押している最中も早回しで音楽が聞こえ、目的の場所で止められるので便利だ。なお、iPod側の早送り/巻き戻しボタンも機能しているので「E1」の場合は本体側のボタンを使った方が便利だろう。

通常のアンプは、このようなDock端子とステレオミニを変換する短いケーブルで接続する

 もう1つ、「AT-PHA30i」には便利な機能が備わっている。ヘッドフォンアンプはライン出力された音を増幅しているため、通常は接続すると、iPod側のボリュームは効かなくなる。だが、AT-PHA30iはそれが効くのだ。iPod側で操作したボリューム情報もDock経由で受け取り、外部アンプの音量操作に反映させているためで、逆に、AT-PHA30iのボリュームを操作すると、その情報がiPodにフィードバックされ、ディスプレイのボリュームバーの表示がキチンと変化する。

 ポータブルアンプでは珍しい機能だが「ユーザーの方の利便性を考慮して、このような機能をつけました」(オーディオテクニカ)とのこと。iPod nanoやiPhoneで試用したが、音楽再生以外に本体を持って操作する事が多いiPod touchやiPhone 3G/3GSでは特に恩恵が大きい機能と言えそうだ。

 Dock接続コネクタはE1の方が大きい。AT-PHA30iは側面に、接続ロック用のボタンも装備している。両機種を実際に接続したままコートのポケットなどに入れてみたが、手を入れた弾みで外れてしまう事があるE1に対し、AT-PHA30iが外れる事は無かった。


左がAT-PHA30iのDockコネクタ部。右がE1AT-PHA30iのコネクタ側面にロックボタンを備える
E1のコネクタE1にはロックが無いE1のイヤフォン出力

表面のボタンを押さずにクリップを開けない

 また、どちらも背面にクリップを備えているのだが、E1ではクリップ留めをしようとすると、必ず操作ボタンを押してしまうので困った。表面全てが何らかのボタンで埋め尽くされており、“ボタンでない部分”が無いため、クリップ留めをしようとつまむと、人差し指が必ずどこかのボタンを一緒に押してしまうのだ。

 側面を強く抑えながら爪を立てるようにすればなんとかボタンに触れずにクリップを開けるが、試行錯誤しているうちにバカらしくなり、「押してしまったら戻せばいいや」と割り切るようになった。このように、細かな機能や使い勝手はAT-PHA30iの方が優れている。



■ ヘッドフォン/イヤフォンによって大きく違いが出る 

SRH840

 音質を比べてみよう。まず、「山下達郎/アトムの子」冒頭のドラム乱打を、iPod直接と、AT-PHA30iで比べてみる。ヘッドフォンはSHUREのモニター「SRH840」を使った。プレーヤーは第5世代iPod nanoやiPhone 3GSを使っている。

 切り替えるとすぐに、ドラムのうねるような低音の量感がアップし、解像感も向上した事がわかる。じっくり聴かなくともすぐに判断できるほどの向上幅だが、単純に低い帯域の音が大きくなったわけではなく、低域の音の1つ1つが細かく描写されるようになり、それが押し寄せてくる勢いが増すイメージだ。

 試しに、iPod直に戻してボリュームを上げても、低音の動きが曖昧なまま、ダンゴのようにくっついた低音が肥大化していくだけで、心地良さが出ない。あまり上げ過ぎるとシンバルなどの高域も一緒に大きくなってしまうので、うるさくて聴いていられなくなる。しばらく比較を続けていると、低域が波紋のように広がる音場も、AT-PHA30iの方が広い事が見えてきた。

 ステレオアンプでもAVアンプでも、アンプをグレードアップすると低域の解像感が上がり、音に一本芯が通ったように、ドッシリと安定感が出るのを経験した人は多いだろう。ポータブルヘッドフォンアンプでも、あれとまったく同じ変化が体験できる。

 JAZZ「Kenny Barron Trio/Fragile」のアコースティックベースも、AT-PHA30iを通すと一段深く沈み込む。同時に、ケニーバロンのピアノの響きもよりなめらかになる。音場も広くなり、ヘッドフォンの閉塞感が薄まった。「藤田恵美/camomile Best Audio」から「Best of My Love」を再生すると、1分あたりから入るアコースティックベースの音圧がまるで違う。ベースの弦の動きも丁寧に描写されているほか、個々の音の分離が良く、ヴォーカルとベース、コーラスの重なりが明瞭に見える。それにより、音楽が立体的に把握できるようになる。

 圧縮率の高いデータにも有効で、「YUI/I'll be」を128kbpsでエンコードしたMP3では、iPod直では高域の今にも音割れしそうなカサつき、荒れ具合を感じる。音像も薄いが、AT-PHA30iを通すと改善。音に厚みが出て、全体がなめらかになり、安心して聴いていられる。

 ここでヘッドフォン「SRH840」は固定で、アンプを「E1」に変更。すると、低音の張り出しが引っ込み、音場が若干狭くなる。「藤田恵美/Best of My Love」のベースは、「ズゥーン」と頭蓋骨に振動が伝わるように沈み込んでいたAT-PHA30iと比べると、浅くなり、弦の動きのフォーカスも甘くなる。

 「E1」の効果は無いのかと、iPod直に戻すと、低音とか高音以前に、音全体のメリハリが弱くなった事に気付く。ヴォーカル、ベース、ピアノの音像がクッキリしていた「AT-PHA30i」&「E1」と比べ、直刺しでは音像が平坦で、立体感が無くなる。「今までこんなにつまらない音で聴いていたのか」と驚いた。合わせて音場もより狭くなるため、頭内定位が気になってくる。AT-PHA30iと比べると、音の変化量は少ないものの、E1も良い方向に音が変化しているのは確かだ。

E2C
 だが、他のイヤフォンやヘッドフォンで同じような変化が起こるかというと、そうではない。ここでイヤフォンに変更し、SHUREの「E2C」を使ってみる。低価格ながらバランスの良いダイナミック型で、AT-PHA30iでドライブすると、低音の密度が上がり、最低音も一段下がる。音場の広さもアップするのが確認できた。ヘッドフォンの時と変化傾向は似ている。

 イヤフォンそのままで、アンプをE1に交代すると、「藤田恵美/Best of My Love」のベースの量感が低下。良く言えば、中低音に邪魔されず、音場全体の見通しがよくなるが、迫力は不足する。ヘッドフォンでは最低音の沈み込みは深くなったが、このイヤフォンではヘッドフォンの時ほど変化が感じられない。また、前述の“変化量”も非常に小さく、静かな部屋で瞬間的な切り換えて感じられるレベル。例えば通勤/通学の電車の中で、「昨日までの音とまるで違うなぁ」と感じられるほどの変化量ではない。

ATH-CK9
 テクニカの「ATH-CK9」はシングルのバランスド・アーマチュアを採用し、比較的低音が薄いモデルだが、AT-PHA30iでドライブすると、低音の量感が向上。弱点を上手くフォローしてくれる。他の部分の変化も大きく、音場の見通しの良さが大きく向上し、埋もれていた細かい音が良く聞こえる。アーマチュアの良さを引き出す印象だが、同時に、静かな音楽を聴いている際のサーッというホワイトノイズも目立つようになる。

 アンプをE1に交代すると、弱めの低音がさらに乏しくなり、ホワイトノイズが増加。低音の量が減ったため、音楽全体が腰高になり、硬質の寒々しい「CK7」のキャラクターがさらに強調される。こういうバランスが好きだという人もいるだろうが、個人的にはちょっと簡素過ぎだと感じた。

ATH-CK7

 チタンハウジングでダイナミック型、低域が豊かなテクニカの「ATH-CK7」は、AT-PHA30iでドライブすると豊富な低音に重量感が加わる。聴く前は「低音過多になるのでは」と考えたが、低音が増加しても音場が広くなるため、低音ばかりが目立って息苦しくなる事はない。低域の質感や分解能も向上しているため、ボンついた下品な音にはならない。プレーヤーのイコライザをいじっても到達できない音だ。

 そのままE1に変更。「Best of My Love」のアコースティックギターの弦の堅さまでは出ないが、音場が若干広がり、音像の分離も良くなり、見通しが良くなる。iPod直ではモコモコしていた低域がスッキリして、低域の描写が良く見えるようになる。低音過多なイヤフォンの場合は結果的にバランスが良くなり、「AT-PHA30iよりマッチする」と言ってもいいだろう。

 ここまでの比較で、各アンプの特徴が見えてきた。iPod直と比べ、「AT-PHA30i」は低域のレンジが拡大すると同時に、量感や解像度もアップ。音場の拡大も期待できる。対して「E1」は低域方向のレンジは拡大するが、イヤフォンの再生能力ではそれが感じにくい。中低域の量感はむしろ抑えめであるため、スッキリした音に感じるのだろう。また、こうした変化量がAT-PHA30iと比べると少なく、“アンプ交換の効果”は感じにくい。


■ マッチするヘッドフォンを探す

 アンプをAT-PHA30iに絞り、その後もボーズの「インイヤーヘッドフォン」、AKGの「K172HD」、ULTRASONE「HFI-680」、ちょっと古いがオープンエアの定番であるテクニカの「ATH-AD7」など、色々なイヤフォン&ヘッドフォンを接続してみたが、一番音が大きく変わったのがAKGの「K172HD」だ。

K172HD
 このモデルは上位機種の「K272HD」も含めて、AKGらしい非常に繊細な中高域が特徴だが、低音が薄いという難点がある。しかし、据え置き型のしっかりしたヘッドフォンアンプでドライブすると、実は低音が出ないのではなく、“出にくい”だけだった事がわかるモデルであり、AT-PHA30iでドライブするとそれが良くわかる。

 「藤田恵美/Desperado」を再生すると、スカスカだったアコースティックベースの最低音が「ズゥーン」と一気に重くなり、その低音の中にもしっかり芯がある、やわくない低音が頭に響く。ヴォーカルとコーラス、ピアノなど、音と音の合間に見える音場も広く、声の余韻が心地よく広がり、なおかつ広がった音場に密度と温かみが感じられる。音が空間に充満し、消えていく様が良く感じられるようになった。

 ムソルグスキーの「展覧会の絵」(ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)、「バーバ・ヤーガの小屋」のような低域がより重要な楽曲も、「K272HD」で迫力ある再生が可能になった。これはiPod直のドライブではまったく無理だった事だ。

 このように能率が低めで、ポータブルプレーヤーのアンプでは鳴りにくいヘッドフォンだと、苦手な部分を補い、良い結果が得られるようだ。また、フラットバランスのイヤフォン/ヘッドフォンでも低域や音場の広さに効果が出る。逆に、標準で低域が豊富なデバイスでは、その傾向がより強まるのでマッチしない場合もあるだろう。相性の良さ、悪さがあるのは、単品アンプとスピーカーの関係とまったく同じである。

RSAの「SR-71A」
 参考までに、より本格的なヘッドフォンアンプとして、サイズ比較にも用いたRSAの「SR-71A」というモデルとも比較してみよう。日本円で4万円ほどするアンプで、Dockコネクタとステレオミニの変換ケーブルには、米ALO Audioのクライオ処理された2万円ほどするモデルを使っている。

 価格帯や製品サイズ、電源部などがまるで異なるのでAT-PHA30iには不利だが、やはり低域の沈み方や安定感は、「SR-71A」の方が1歩上を行く。音像の厚さも特筆すべきものがあり、音場がより立体的に感じられる。かといって低域寄りのバランスというわけではなく、非常にフラットで、高域の抜けも良い。モニターヘッドフォンで聴くと、より素性の良さがわかる1台だ。



 

■ ポータブルヘッドフォンの世界に触れるベストモデル

 話を「AT-PHA30i」と「E1」に戻そう。気になるのは消費電力だが、目安としてiPhone 3GSでバッテリの残量を詳細表示できるアプリを用いて、同じ楽曲をループ再生しながらバッテリが5%減るまでの時間を複数回計測してみた(バックライトの輝度を上げるなどより消費の早い設定にしている)。

 その結果、 内蔵アンプの場合は約20分かかったものが、「AT-PHA30i」を繋ぐと18分弱、「E1」では19分弱という結果になった。若干AT-PHA30iの方が減りが早いが、それほど大きな差は無い。また、内蔵アンプを使った場合と比べても、急激にバッテリが無くなっていく……というほどの違いも無い。日常使う場合は「気持ち減りが早いかな?」程度の違いしか感じないだろう。

 今回両モデルを日常的に使ってみて、最も感じたのは音質もさることながら、“使いやすい”事だ。プレーヤーと同じようなサイズがあるアンプの場合、やはり持ち運びにくいし、iPod touchやiPhoneのような、本体を手に持って、ディスプレイを頻繁に操作するようなモデルと組み合わせるのは難しい。アンプも手に持たなければならなかったり、結束バンドがディスプレイにかかったりするためだ。

 その点、AT-PHA30iとE1はリモコン付き延長ケーブルと同じ感覚で使え、しばらく使っていると外部アンプを使っている事すら忘れていく。リモコン機能も手に入るため、ある意味ノーマル状態よりも利便性は上がる。Dock端子に接続するため、マイクが下部にあるiPhoneの通話との相性は悪いが、通話していない時はまったく問題がなく、iPod touchでも普通に使用できるだろう。

 高価なアンプを購入しても、扱いづらくて結局使わなければ意味がない。そういった意味で「ポータブルアンプを使ってみたいけれど、使わなくなるかもしれない」と迷っている人に、入門モデルとして最適だ。音質は確かに変化し、変化量が期待より少なくても「リモコンとして使える」という要素や1万円程度の価格が、精神的な後押しをしてくれる。現在のポータブル再生環境に不満や飽きを感じている人にはオススメしたいし、単にヘッドフォンやプレーヤーを交換する以外の選択肢が生まれる事は、楽しい事だ。だがイヤフォン/ヘッドフォンとの相性はあるので、できれば試聴可能な店舗で購入したい。

 2モデルの選択は迷うところだが、個人的には「AT-PHA30i」をオススメしたい。「E1」も確かに音は変化するが変化量は少なく、また全方位に良好な変化があるとも言いきれない。どうせ買うなら「音がよくなった!」と、明確に感じられる「AT-PHA30i」を選んだほうが良いだろう。また、ボタンの押しやすさや、iPod側にもフィードバックされるボリュームコントロールなど、「流石国内大手メーカー」と感じさせる作り込みの良さも光る。同時に、同社の参入により、マイナーだったこの分野がさらに活性化され、より製品の選択肢が増えることを1ユーザーとして期待したい。


(2009年 12月 18日)