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iPhone 7レビュー。防水など地道な改善とカメラ大幅進化。iPhone 7 Plusが魅力的

 9月16日に発売を予定している「iPhone 7」の実機レビューをお届けする。本記事では、特にAV的に注目されるカメラの進化を中心にテストを行なった。結果は、スペックから読み取れるものを大きく超えるものだった。現行モデル「iPhone 6s Plus」との比較を踏まえ、その能力に迫ってみよう。

iPhone 7 ジェットブラックモデル
iPhone 7 Plus・ブラックモデル

 なお、オーディオ・ビジュアル的には、iPhone 7と同時に発表された左右分離型ワイヤレスヘッドホン「AirPods」も気になる。こちらも同時にテストし、別に記事を掲載しているので、そちらをご覧いただきたい。

 iPhone 7の機能面での注目点「FeliCa対応」については、サービスが10月下旬からスタートであるため、今回は評価が行なえていない。その点をご了承いただきたい。詳しくは発表日に掲載した別記事を参照してほしい

防水だが狙いは「故障防止」か。デザイン変更なしから見える「こだわり」

 iPhone 7は、正面からのデザインではiPhone 6および6sと大差ないように見える。だが、背面を見ると、デザインのディテールは変わっているのがわかる。特に今回レビュー用に貸し出された「ブラック(iPhone 7 Plus)」と「ジェットブラック(iPhone 7)」は、アンテナを分ける樹脂部が黒であることから、画面から背面までが、まるで一枚の板になったかのように感じられる。ケースをつけるならこの辺のディテールはあまり意味を持たないが、iPhoneを「裸」で使う人にはかなり重要な点だ。

 ただし、ボディカラーと樹脂部の色のマッチングの問題から、「一枚の板」感が強いのはまずブラック系で、次にシルバー。ゴールドとローズゴールドは、樹脂部が白で目立つ感じがする。

iPhone 7 ジェットブラックモデルの背面。艶やかに磨き上げられており、光沢が美しい。樹脂部は下部側面に移動し、目立ちにくくなった。特に黒は目立たない
iPhone 7 Plus ブラックモデルの背面。こちらはマット仕上げで、ぐっと落ち着いた雰囲気になる

 特に注目は、今回初お目見えとなった「ジェットブラック」だろう。丁寧に研磨されたボディは本当に美しく、ガラスの面から続く「一枚板」感が高くなる。ただ、研磨で表面を作った関係から、極端に固い布(例えばジーンズ)と長くこすれ合うようなところでの利用は向いていないと思われる。相応な強度はあるだろうが、アップルも「使用とともに光沢に微細な摩耗が生じる場合があります。磨耗が気になる方は、iPhone用のケースを使って表面を保護することをおすすめします」としており、「少しでも傷がつくのはいやだ」という、神経質な人には向いていないだろう。他のモデルの質感は、過去の製品のそれに近い。

 ハードウエアの特徴としてまず挙げておきたいのが、今回より「防水防塵」になったこと。スペック的には「IP67」となっており、「粉じんが中に侵入せず、一定の水圧で一定時間(30分間)水中に浸かっても有害な影響がない」ことを意味する。だから、写真のように水をかけても、水没させても、短時間ならば問題ない。日常使う際のストレスを軽減するという意味では、やはりプラスだと感じる。

iPhoneもついに防水に。少々水に浸かる程度なら問題ない

 ただ、「防水」ではあるが、水中での利用できるというわけではない点は注意してほしい。アップルは「入浴中の利用」「プールでの利用」などを保証していはいない。また、水がついた状態でタッチした場合、誤動作することもある。そうした環境に特別な配慮がなされているわけではない。

 アップル側は「濡れた場合には十分に乾燥するまで充電しないで欲しい」「Lightningコネクタを下にし、手のひらの上に乗せ、残った水が出るようにやさしく振り、風通しのよい場所で乾燥させること」、「熱をあてないこと」などを補足の注意としている。あくまで一般的な内容であり、神経質になる必要はないと思うが、iPhoneにおける「防水」が、「不注意による浸水故障を防ぐ」考え方のものであることを示している。

ホームボタンの「クリック感」=押し心地を再現する振動の強さは3種類から選べる。「設定」の「一般」に設定項目がある

 iPhone 7/7 Plusから、ホームボタンは物理的なボタンではなく、タッチセンサー式に変わった。水没が故障対策だとすれば、こちらも「ボタンが効かなくなる」という故障への対策だ。見た目にはほとんど変化がないのだが、ボタンから「ボタンに見える凹み」に変わっている。「押した感じ」は振動による擬似的なものに変わったのだが、これも、物理的なボタンによるものと大差ない、と感じる。一応、「押した感じ」を再現する振動の強さは設定で変更が可能にはなっているが、少なくとも筆者には、どの設定でも使い勝手に変化はない、と感じた。

 ちなみに、物理的なボタンではないので、電源が完全に切れている状態では「板を押している」のと同じになる。それが、電源が入ると「ボタンを押している」感じに変わる。そのギャップは面白いので、購入者は試して欲しい。

 防水防塵になり、ホームボタンがセンサー式に変わったものの、各部のボタン・スイッチ類の配置や、サイズに変化はない。防水のためにパッキンをいれつつこうした部分を変えないのは意外に大変なことで、アップルとしては「変えないこと」を重視したのだろう、と感じられる。

ヘッドホン端子の廃止には功罪あり、内蔵スピーカー音質は「劇的に改善」

 コネクタの面で変わったのは、「3.5mm径ヘッドホン端子」が廃止されたことだ。これは正直、功罪あると感じる。

 パッケージ内に付属するヘッドホンは、ヘッドホン端子廃止に伴い、Lightning接続のものに変わった。ヘッドホンとしてはアップルの純正ヘッドホンである「EarPods」であることに変わりはない。音の傾向もデザインもまったく同じである。

 違いは、従来はプラスチックのケーブル収納パッケージに入っていたものが、紙の簡易なものに変わったことである。あのケースで持ち運びしていた人には、残念なお知らせだ。

iPhone 7付属のLightning端子を使ったEarPods。ケースは紙の簡易なものになった

 なお、このケースの裏には、ヘッドホン端子とLightning端子を変換するコネクターが入っている。非常に短く、簡易なものだ。これはあくまで、iPhoneからLightningを通して出ている「アナログ出力」を使い、端子形状を変換するものに過ぎない。音質はいままでと大差ない。

 Lightning端子を使うということは、有線では「充電しながらヘッドホンで音を聞く」のが難しくなる。少なくとも付属のケーブルだけではできない。この点は意外なほど不便に感じる人もいるのではないか、と思うのだ。

Lightning版EarPodsの裏には変換コネクターが隠れている。
変換コネクター。非常に短く簡素なものだ。

 アップルとしては、簡易なものは付属のケーブル類でカバーし、より高音質な有線接続はサードパーティーに任せた上で、市場が過熱しているワイヤレスは自ら付加価値のあるものを……と考えているのだろう。その辺は、AirPodsのレビューの方で述べたいと思う。

 音という点では、内蔵スピーカーの音質が大きく改善されたことも忘れてはいけない。iPhoneはずっとモノラルスピーカーで、音としても籠もった感じだった。一方で、他社の上位機はステレオスピーカー搭載が増え、「本体だけでの音」ではかなり差があったのが実情かと思う。

 それが、iPhone 7ではかなり変わった。縦に持った時はステレオ感は低く、「音が広がった」程度なのだが(それでも大きな改善で、聴けば誰もがわかるくらい)、横に持った時の広がりは、かなり魅力的だ。もちろん、スマートフォンの小さなスピーカーなので、低音を含め弱い部分はある。しかし、格段の進歩であり、素直に評価すべき点だ。特に、スマートフォンを囲んで音楽を「聴かせあう」若い層や、ゲームを楽しむ人には、スピーカーの変化は非常に望ましいことのはずだ。

大幅に改善した写真画質、今後は「RAW」も

 iPhone 7のプロセッサーは、新たにアップルが開発した「A10 Fusion」になっている。もちろんiPhone 6s Plusからは性能アップしている。ベンチマークソフトの値では、iPhone 6s Plusに比べ3割程度スピードが上がっていた。iPhone内部の情報をチェックするアプリを使うと、内蔵メモリーはiPhone 7はiPhone 6s Plusと同じ2GBだが、iPhone 7 Plusは3GBに増強されていた。

 とはいうものの、それを「操作感」ですぐに区別するのは難しい。一般的な操作であれば、すでにiPhoneは「どのモデルでも快適」なレベルである。少なくとも2年以内に買ったiPhoneであれば、「スピードが遅くなったから買い換えたい」と思っている人はまずいないだろう。

 このパフォーマンスアップは、より別のことに生きてくる、と考える方が自然だ。それは「写真」である。正確には、「今後出てくる写真などを扱うアプリで有利になる」といった方がいいだろう。

 別のいい方をすれば、「そういうアプリを使いたくなるほど、カメラの機能がアップしている」ということでもある。

 iPhone 7に使われているセンサーは1,200万画素のもので、画素数そのものはiPhone 6sと大差ない。だが、f値は1.8に上がり、画像処理用の「イメージシグナルプロセッサ(ISP)」も刷新されている。また、iPhone 7 Plusでは広角・望遠(ともに1,200万画素)の「デュアルカメラ」になった。

iPhone 7 Plusはデュアルカメラになり、望遠・広角の2つのカメラを使って写真を構成する

 こうした変化は、数字以上にはっきりと「画質」に現れる。

 一番わかりやすく、多くの人が日常的に撮影する「食事」の写真で比較してみよう。iPhone 6sも、スマートフォンの中では「ご飯がおいしそうに写るカメラ」と言われてきた。だが、iPhone 7系の写真と比較すると、iPhone 7系の方がより「おいしそう」になっている。蛍光灯の灯りの影響が若干残っていたものが抜け、より自然な色になっている。

iPhone 7 Plus
iPhone 7
iPhone 6 Plus

 寿司の写真を見てみると、iPhone 6s Plusは比較すると、「緑」が強い。7と7 Plusは同系統だが、ノイズ感は7 Plusの方がさらに少ない。

 サンフランシスコのApple Store近くで撮影してきた写真も比較してみよう。色合いは7系の方が自然であり、6s Plusは若干エッジが強く補正されていたのだ、と感じる。同じ画素のセンサーだが、写真の精細感は7系の方が上である。

iPhone 7 Plus
iPhone 7
iPhone 6 Plus
iPhone 7 Plus
iPhone 7
iPhone 6 Plus

 発色もiPhone 6s Plusだけかなり違い、記憶の中の色にはiPhone 7系の方が近く感じる。

iPhone 7 Plus
iPhone 7
iPhone 6 Plus
iPhone 7 Plus
iPhone 7
iPhone 6 Plus

 ナイトシーンになると、iPhone 7系の強みははっきりする。弱い光の微細な表現が、6s Plusに比べはっきり良くなる。そして、こうした風景では、7 Plusの光学2倍ズームの効果が出てくる。

iPhone 6 Plus
iPhone 7
iPhone 7 Plus
iPhone 7 Plusの光学ズーム。暗い中での色が、iPhone 7系はしっかり出ている。光学ズームした写真の表現も良い。

 残念ながら帰国後の都心部は曇天で、あまり良い条件の写真が撮れなかったが、iPhone 6s Plusと7系はやはり撮れる写真の傾向が異なっている。

横浜で撮影。iPhone 7 Plus
iPhone 7
iPhone 6 Plus

 鳥居の撮影では、各機種のズームもチェックしている。デジタルズームの場合、iPhone 6s PlusとiPhone 7は5倍、iPhone 7 Plusは10倍になっていて、「寄れる」範囲が大きく異なっていることにも注目していただきたい。iPhone 7 Plusには光学2倍のズームがあり、それにデジタル5倍をかけて「10倍」である。

iPhone 7 Plusの光学2倍ズーム。都内で撮影。光の状況がコロコロ変化したので、少し写りにばらつきがあるが、特に木々のディテールが7系ではしっかり出ている
iPhone 7
iPhone 6 Plus
iPhone 7 Plus
iPhone 7
iPhone 6 Plus

 iPhone 7 Plusでは光学ズームが搭載されたこともあり、ズームのUIが変わっている。いままで通りの「ピンチ」ではデジタルズームだが、画面端の「1x」ボタンをタップすると「2x」になって光学ズームになり、そこから長押しして指を動かすとデジタルズーム、という形だ。iPhone 7の方は従来通りである。

ズームの操作は、iPhone 7 Plusで変更になった
iPhone 7のズーム操作は変わらない。

 ズーム性能があがったこともあり、厳しめだが、コンデジの最高峰のひとつ、ソニーの「RX100M3」と比較してみたいと思う。RX100M3は1インチのセンサーを積んでおり、光学で2.9倍、デジタルの「全画素超解像」で約5.8倍(2,000万画素時)となっている。撮影はすべてJPEG(2,000万画素・JPEG・ファイン設定)で行なっている。

 さすがにデジタルズームは歩が悪い。RX100M3は画像の圧縮率も低いので、ノイズ感も低い。とはいえ、光学2倍とズーム無しでは、iPhone 7もかなり健闘している、と感じる。

iPhone 7 Plus
iPhone 7
iPhone 6 Plus
RX100M3
iPhone 7 Plusの10倍ズーム
iPhone 7の10倍ズーム
iPhone 6 Plusの10倍ズーム
iPhone 7 Plusの2倍ズーム
RX100M3の2倍ズーム
iPhone 7 Plus
iPhone 7
iPhone 6 Plus
RX100M3
iPhone 7 Plusの10倍ズーム
iPhone 7の10倍ズーム
iPhone 6 Plusの10倍ズーム
iPhone 7 Plusの2倍ズーム
RX100M3の2倍ズーム
RX100M3の6倍ズーム

 iPhone 7の特徴は、「なんの設定もせず、単にシャッターを切るだけでこのくらいの写真になる」ことにある、と感じる。これはiPhoneがずっと追求してきた方向性であり、その状態での「記憶に近い色や精細感」「よりおいしそう、好ましそうだと感じる色」へのチューニングが見事だ。iPhone 6sからも大きな進歩と感じる。これに、センサーサイズに差のない、低価格なコンパクトデジカメで対抗するのはかなり厳しい。

 そして、iOS 10ではカメラでRAW撮影し、アプリで扱うための「RAW API」も整備され、今後、それを生かした本格的なカメラアプリの登場も期待できる。そうなると、「圧縮率の高さゆえのノイズ感」もある程度解消される。デジカメとしてより面白い存在になるのではないだろうか。

 しかも、iPhone 7 Plusは、出荷時には「ボケ」を再現する「ポートレートモード」(被写界深度エフェクト)をまだ搭載していない。そちらの画質も気になる。

 デザインだけを見ると「ちょっとした変化」に思えるiPhone 7だが、カメラを軸に見ると、6s世代とはかなりの進化を遂げている。ここは高く評価できるし、iPhone 7の最大の魅力ではないか、と感じる。だからこそ、iPhone 7 Plusのカメラに触れてみて欲しい。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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