西田宗千佳の
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E3 2010特別編 Kinect+Xbox 360で次の10年を狙うMicrosoft

~ビデオチャットと「EPSN」でリビング制覇へ~


 世界最大のゲーム関連トレードショウであるElectronic Entertainment Expo(E3) 2010が、アメリカ・ロサンゼルスでスタートする。

E3メイン会場となる、Losangeles Convention Center。開幕は15日のため、14日にはまだ設営中だった

 E3のスタートを飾るのは、Xbox 360を擁するマイクロソフトの基調講演だ。E3の会期は現地時間15日からだが、同社はそれより早く、情報公開を行なった。

 すでに第一報は流れているが、そこでは小型化された「新型Xbox 360」と、体感型コントローラー「Kinect(キネクト) for Xbox 360」など、様々な新商品・新サービスが発表された。その詳報をお伝えする。

 なお、新型Xbox 360については、ハンズオン記事を掲載する他、Kinect、Xbox Liveについても、別途インタビュー記事の掲載を予定している。


 


■ 前日イベントはシルク・ドゥ・ソレイユが担当。インパクトは大きいが真意は?

 実は、本日の基調講演に先駆けること半日前、現地時間13日夕方、マイクロソフトは、それまで「Project Natal」と呼ばれていた「全身操作型インターフェース」のお披露目イベントを行なっている。

 イベントは実に盛大なものだった。コンセプトアートをシルク・ドゥ・ソレイユが担当、ダンスパフォーマンスに合わせ、若干の映像とNatalの正式名称「Kinect for Xbox 360」、そしてそのデザインが発表された。

イベントは、シルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマンスを中心に行なわれた。会場外でパフォーマーが演技していただけでなく、会がスタートした後も、幻想的な舞台仕掛けで発表が進んだ。ただし、製品関連の「プレゼン」はなし

 Kinectとは、運動力学という意味の「Kinetic」とConnectの造語。関節の動きをトラックし、コントローラーを使わずに体で入力を行なう、というコンセプトにぴったりの言葉である。

 しかし、発表されたのはそこまで。あまりも幻想的すぎるシルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマンスのせいか、「Kinectがなにものなのか」といったことは、はっきりとわからなかった。会の終了時にも、「翌日朝のプレスカンファレンスをお楽しみに」というアナウンスが流れるのみだった。シルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマンスは、“ちょっと出張して踊ってもらった”レベルではなく、相当の準備を重ねて作ったオリジナルのものだった。美術デザインの点でも、パフォーマンスそのものの点でも、どれだけのお金がかかっているのか想像もつかない。「イメージ」の創出だけに力を尽くす、マイクロソフトの本気が伺えた。

お披露目イベント終了後に展示された「Kinect」実機。単なるビデオカメラではなく、赤外線センサーやマルチアレイマイクなどが組み合わせされた「専用デバイス」だ

 それだけに「では、実際にはなにが出てくるのか?」に話題は集中する。本日(現地時間14日午前)のプレスカンファレンスは、そんな状況でスタートしたのである。 


■ Kinect登場で「XBox Live」も次の世代へ進化。操作は「声」と「手振り」

 プレスカンファレンスの冒頭は、いつものXbox関連イベントの通り。Xbox 360にとって重要なゲームタイトルのトレイラーを見せつつ、それらがどれだけプラットフォームにとって重要なのかをアピールした。各タイトルについてはGAME Watchのレポートをご参照いただきたい。

ヒットゲーム「Call of Duty」シリーズの最新作「Call of Duty:Black Ops」がオープニングタイトルに選ばれた。今秋発売の人気作だけに、会場も盛り上がったメタルギア・シリーズで知られる、コナミの小島秀夫監督。今回は新作「Metal Gear Solid Rising」のアピールのために登場
Xbox Live担当のコーポレート・バイスプレジデントのマーク・ウィッテン氏

 一通り「注目・独占タイトル」の発表が終わると、次に来たのはXbox Live、そして「Kinect」の詳細についての解説だ。

 Xbox Live担当のコーポレート・バイスプレジデントである、マーク・ウィッテン氏は、「Xbox Liveは、すでに登録ユーザーが2,500万人を超えた巨大なコミュニティである」ことを強調しつつ、Kinectとの連携による、新しいXbox Liveの姿を解説しはじめた。

 Kinectは、三次元「奥行き」センサーとカメラ、そしてマルチアレイマイクを組み合わせた「複合センサー」といっていい。それをXbox 360とXbox Liveのユーザーインターフェース(UI)に生かすとどうなるのか? 最初に行なわれたデモはそれだ。


Xbox Liveの登録者数は全世界で2,500万人。ゲーム機向けのネットワークコミュニティとしては最大級のものだKinectの各部を解説。センサー系が集中しているだけでなく、モーター内蔵で「回転」するスタンドが組みこまれている点に注目

 当然のことながら、これまでXbox Liveの操作は、付属のコントローラーで行なってきた。スティックで上下左右に移動してボタンで決定、という流れである。

 だが、Kinect導入後のXbox Liveでは異なる。音声コマンドとジェスチャーが基本となるのだ。「Xbox On」と言えば電源が入り、右手を挙げればXbox Liveにログオン、メニューの移動も、腕をマウスを使うように、画面上をなぞる感覚で「動かす」ことで操作できる。選択は腕を軽く「押し込む」。奥行きセンサーがあるためにできることだ。

 音声コマンドは汎用的に使われていて、メニュー項目(例えば、映像ストアのZuneビデオストアの呼び出し)なども、音声で「Zune」とコマンドを言うことで行う。操作の流れは、ムービーの方をみていただくのがいいだろう。

【Kinectを使ったXbox Live UI】
Kinect導入後のXbox LiveのUI。パッドの他、音声コマンドで操作することもできる

 ここで重要なのは、ヘッドセットなどは「つけない」ということだ。デモでは会場の音響の問題からインカムを利用していたようだが、実際には、マルチアレイ・マイクを使ってユーザーの声とその位置を認識し、音声コマンドに利用する。

 手での操作は、映像の再生にも利用する。Zuneビデオストアでは、Sliverlight技術を使い、映像の途切れがなく、高速に反応する「1080p、5.1chでの映像ストリーミング配信」が行なわれている。この中で好きなシーンを探し出す場合などに、まるでパソコン上のビデオ再生ソフトで「タイムライン上をマウスでたどる」ような感覚で腕を動かし、好きなシーンへとジャンプできるようになっている。リモコンの「早送り」ボタンよりは気が利いている印象だ。

「アリス・イン・ワンダーランド」をストリーム再生しながら、好きな場面をサーチ。腕を軽く左右に動かして、見たいシーンを探し出す音楽再生時などにも、同じように音声コマンドと腕の操作で曲送りなどが可能

Windows PhoneもXbox Liveと連動、一部のゲームや音楽・映像配信が利用できる。日本でも利用できる日が来るか?
 この際にも、音声コマンドは併用される。「Xbox、Pause」と言えば一時停止になるし、「Xbox、Play」と言えば再生される。ちょっとしたSF映画の気分だ。音楽再生も同様。再生中に腕を動かして「次の曲へ送る」操作をしたり、声で再生を止めたりできる。

 ウィッテン氏は、Xbox 360が販売されている「すべての国で、Xbox Liveが利用可能になっている」こと、そして、Windows Phoneでもゲームを含めた配信が利用可能になることなどを紹介、その価値が高まっている、と説明した。

 先週8日、マイクロソフトは日本およびメキシコで、今秋より「Zuneビデオ」サービスを開始する、と発表した。例年このプレスカンファレンスで解説されるビデオ関連のサービスは「アメリカ市場中心」であり、日本のユーザーは蚊帳の外に置かれてきたが、ついにその点に変化が現れる。Zuneビデオサービスの詳細については、別途関係者インタビューを予定しているので、少々お待ちいただきたい。 


■ ビデオチャットと「EPSN」でリビング制覇を狙う

Video Kinectでは、Kinectの前でビデオチャットを行なう。しかし、単にカメラとして働いているだけではない

 Witten氏が次に紹介したのは、コミュニケーションのための新しいサービスである「Video Kinect」だ。その名の通り、Video Kinectはビデオチャットサービス。Kinect内蔵のカメラを使い、ビデオチャットが行なえる。

 この時、ヘッドセットなどは必要ない。音声コマンドでヘッドセットを使わなかったのと同様、Kinect内蔵のマルチアレイ・マイクを使い、自然な形で音声をひろう、という。また、カメラとマイクの連動によってか、顔の位置がカメラの中央からずれた場合、モーター内蔵の台が回転し、カメラの方向が自動で「顔がふたたび中央に来る」ように調整されるのも面白い。

 デモではロスとダラスを結び、実際にビデオチャットが行なわれたが、音声の遅延などはほとんど感じられなかった。画質も十分に美しい。写真でおわかりのように、自分と相手の映像がテレビに同時に表示されるのが特徴だ。


チャット画面。自分と相手が同時に表示される。タイムラグなどはあまり感じられなかった。利用にはXbox Live ゴールドメンバーシップが必要チャット中には、一緒に映像を見て楽しむこともできる。この辺はXbox Liveの得意技だ

 またそれだけでなく、一緒にBing経由で提供されるニュースを見たり、購入済みの映像配信を見たり、といったことも可能になっている。「ゲームについてはまだだけれど、準備中」との話だったので、考え方としては、これまでのXbox Liveでの「音声チャットによる協力プレイ」などに近い扱いとなるのだろう。

Windows Live Messengerのフレンドリストを取り込み、チャットができるようになっている。操作ももちろん「声」と「手」だ

 さらにユニークなのは、Video Kinectが「独自のサービス」ではなく、Windows Live Messengerと連動するようになっている点だ。Windows Live Messengerのフレンドリストを取り込み、Xbox 360+Kinectの強力なカメラ・マイクなどを使い、ビデオチャットが行なえるのである。このあたりは、いかにもマイクロソフトらしい連携だ。

 Xbox Live関連としては、まだ最後に「大物」が残されていた。

「これだけ揃っているけれど、多くの家庭にとって『なにか大切なもの』が足りないと思わないか?」

 そうウィッテン氏が告げて紹介したのは、スポーツ専門局ESPNとの連携だ。Zuneビデオと同様の技術を利用し、アメリカン・フットボールやサッカー、大学リーグなど3,500のスポーツイベントをオンデマンド配信する。そのほとんどがHDクオリティでの配信だ。もちろん、Xbox Liveのコミュニケーション系機能と連動、「自分がどちらのチームをひいきにしているか」といった投票を行なったり、スポーツについてのトリビアに答えたり、といったこともできる。

EPSNと提携、Xbox Liveのゴールドメンバーシップユーザーに、スポーツのオンデマンド配信を行なう。ユーザー同士のコミュニケーションなども、アバターを介して行なう

 さきほど説明した「Kinectでのコマンド」ももちろん有効。今見たシーンのリプレイを「Xbox、Replay」と叫んで再び見る、といった使い方ができるわけだ。

 しかもこのサービス、Xbox Liveの有料サービスである「ゴールド」の会員ならば無料で使える。スポーツ好きの多いアメリカ人にとっては、きわめて魅力的なサービスになるだろう。日本でもぜひ取り組んで欲しいと感じる、うらやましいサービスだ。 


■ Kinectは北米では11月4日発売。「コントローラーを使わない」操作をアピール

 そして、話題はXbox Liveから、「Kinect」で遊べるゲームタイトルへと移る。Kinect担当のクリエイティブ・ディレクター、クドー・ツノダ氏は「コントローラーをまったく使わずに遊べる体験は、完全にXbox 360だけのものだ」と語り、タイトルを順に説明していった。北米でのKinectの発売は11月4日。「ワールドワイドで年末に販売」とコメントされたものの、日本での展開時期は不明だ。以下の情報は、すべて北米のものになる。また、Kinectそのものの価格も公表されなかった。

 Kinect for Xbox 360では、北米でのスタート時に15タイトルが用意されるという。ここでは、Kinectの特徴を知ってもらうことを目的に、順不同に紹介していきたい。

Kinect for Xbox 360の北米での発売日は11月4日。日本でも年末商戦の投入が予定されている。どちらの場合も、価格はまだ未公表だ北米でのKinectローンチ時のタイトルは15。専用タイトルは8つになるという

 カンファレンスで最初に紹介されたのは、ペットゲームの「Kinect Animals」だ。ジャンル名でおわかりのように、コンピュータ内のペットとコミュニケーションを取って楽しむものだが、その「コミュニケーションの取り方」がいままでとは異なる。

 パッドのボタンを押すのでも、ペンで触るのでもなく、画面の方向に腕を伸ばし、表示されているペットを手で「撫でる」のだ。Kinectのカメラから見えないよう、自分の姿を隠すと、ペットは不安になり、画面の向こうからこちらをのぞき込んだりする。要は、テレビの画面を境として、向こう側に「ペットが実際にいる」ように接するのである。

 ペットとして登場するのは、ベンガルトラやネコの子供。これが実に「ふわふわ」で、ちょっとズルいと感じるくらいにかわいい。「アメリカのゲームってキャラクターがかわいくない」と言われることがあるが、動物の子供なら洋の東西を問わず「かわいい」と感じるので、日本でもノックアウトされる人が出そうな感じだ。

ペットゲーム「Kinect Animals(アメリカではKinectimals)」。Kinectの前で体を動かし、実際にペットを撫でたり抱きしめたりする

 もちろんもっと「アクティブ」なゲームも多い。スポーツゲーム「Kinect Sports」では、実際にその場で「駆け足」をしてスポーツをするし、急流滑りや山登りを楽しむ「Kinect Adventure」でも、体全体を使って、画面に表示された「アバター」を実際に動かして楽しむ。ジャンプするなら「Aボタン」ではなく、自らがジャンプするのである。

スポーツゲーム「Kinect Sports」のプレイ中のヒトコマ。実際に「駆け足をしてジャンプする」ことが操作になる
【Kinect Adventureプレイ動画】
Kinect Adventureプレイ中の様子。左下のプレイヤーと、画面内のアバターが同じ格好になっているところに注目。プレイ中には自分の「奮闘ぶり」が写真として撮影されるようになっている

 このあたりはWiiと路線が近い。だが、センサーを振ることが中心となるWiiとは違い、まさに全身の動作。ハードコアなゲーマーが好むかどうか、日本の住環境になじむかどうかはともかくとして、パーティーゲームとしての可能性は広がった印象だ。

 筆者がインパクトを受けたのは、ここから3タイトルである。

2011年に発売が予定されている「スターウォーズ」シリーズのゲーム。なりきって「ポーズで戦う」のが特徴

 一つ目は(実際には会見の最後に紹介されたのだが)、ルーカスアーツと共同で開発されている「スターウォーズ」タイトル。実際に自分がジェダイに「なりきって」プレイする、という意味ではこちらもWiiのものに近い印象だが、ジェダイが劇中で取る「ポーズ」を実際にプレイヤーが取ることになるわけで、なりきり度はさらに高まるだろう。

 二つ目は、Ubisoftが開発中のフィットネス用ソフト「Your Shape:Fitness Evolved」。「進化した」と名付けられている通り、Wii fitを意識しているのは間違いない。ヨガやフィットネスなど、ほぼ似たようなメニューが並んでいる。

 ただしWii Fitと違うのは、Kinectでは「全身をスキャンする」ということだ。最初に体型を取り込み、それが画面上で再現されつつ、ヨガやフィットネスを行なう。重心と重量のみを計測していたWii fitでは、上半身の動きは「自分が満足できているか否か」にかかっていたのだが、Your Shapeでは自分の動きがしっかりと画面に出るため、お手本とつきあわせつつフィットネスができる。

 しかもどうやら、Kinectのセンサーは相当の能力を持っているらしい。分解能こそ高いようには見えないが、全身スキャン時に「着ているセーターを脱いだ」というモーションや、手から離れるセーターまで、しっかりとデータ化されていたくらいなのだ。

 体感型ゲームとは別の意味で「人前でやるのははずかしい」ものになりそうだが、体型データをしっかりとるということは、フィットネスの効果もきちんと記録されていく、ということだろう。これまでの「フィットネス系ゲーム」とは一線を画する内容だ。


「Your Shape:Fitness Evolved」プレイ中。上半身を含めたポーズが、すべて画面上に取り込まれている点に注目
【Your Shape:Fitness Evolvedプレイ動画】
動作がかなりスムーズに取り込まれ、エクササイズに直結しているのがわかる

 そして最後が、音楽ゲーム「RockBand」の開発元として知られるHarmonixが開発中のダンスゲーム「Dance Central」だ。

Dance Centralを発表する、Harmonix者CEOのアレックス・リコプロス氏実在のアーティストの楽曲が提供され、楽しめるのは「RockBand」などと同じ。当然ながら、こちらは曲だけではなく「ダンス」も提供される

 同社CEOのアレックス・リコプロス氏は、「Dance Centralは、初めての、ダンスファンにとっての”アクティブ”なダンスゲームになる」と語った。プレイ感覚はまさに「ダンス」。特定のダンスパターンを組み合わせていくタイプのゲームになるようだが、その動きは相当に本格的なものに見える。

 楽曲についても、LADY GAGAやBEASTIE BOYSなど「いかにも」なヒップポップ/ダンス系アーティストのものが提供されるという。日本ではRockBandがさほどヒットしていないのでピンとこないかも知れないが、特にアメリカでは、メジャーアーティストがRockBandなどに楽曲を相次いで提供、「CDや音楽配信と並ぶ、楽曲を楽しむ一つの形」になりつつある。ダンスについて、「音楽」だけでなく「ダンスそのもの」も配信可能になるとすれば、このようなタイトルは非常に大きな意味をもってくることになるだろう。 


■ Kinect+新Xbox 360で「次の10年」を狙うマイクロソフト

米マイクロソフト シニアバイスプレジデントのドン・マトリック氏。左側にある「現行Xbox 360」が、この後「新型」に変わる白いXbox 360は実は「外側だけ」だった。中から黒い新型が現れた

 すべてのタイトルが発表しおわると、Xbox関連事業の事実上のトップである、同社シニアバイスプレジデントのドン・マトリック氏は、冒頭の挨拶に次いで再度登場した。

「今年、我々はKinectという、まったく新しい遊び方を提案する。我々は、インタラクティブ・エンターテインメントこそが、すべての娯楽のなかで最上のものと信じている。そして、時代が進めば、Xbox 360の台数は(現在の)数千万台クラスを超え、数億台に到達するだろう。それを実現するためのものが、これだ!」

 そして、演台中央に置かれたXbox 360を手にする。そして持ち上げると、中からは小さくて「黒いXbox 360」、すなわち、新型Xbox 360が登場したのだ。

「薄く、小さく、もっと静かになった。そして、Wi-Fiも内蔵され、ハードディスクも250GBになっている」

 マトリック氏は概要を次々紹介する。その上で、こう宣言した。

新型と現行型の比較。サイズも機能もかなり異なるが、価格は据え置きだ新型Xbox 360とKinect。デザインは黒で統一された

「新しいXbox 360は、"今日”から出荷する。多くの地域では、今週末から店頭に並ぶことになるだろう」

 最近はアップルですらご無沙汰になった「Today」に会場は沸いた。そしてさらに、こう続ける。「今日、会場に来ている人々全員には、ギフトとして提供したい」

 前日のイベントに続く「太っ腹な大盤振る舞い」ぶりに、会場の歓声は最高潮に達し、プレスカンファレンスは終了した。

 今回のプレスカンファレンスは、実に内容が豊富だった。プレゼントで盛り上がったことはともかく、マイクロソフトが今回を、Xbox 360にとっての「ロケットの二段目」と考え、重視していることははっきり伝わってきた。彼らがKinectで目指そうとしていることは、きわめて野心的な試みといえる。それを成功させるためには、ゲーム業界関係者の協力が欠かせない。そのために必要なアピールと投資を、いまできる最大のエネルギーで行なったのが、今回の発表につながっているといえるだろう。

 果たしてその狙いは「理想通り」実現されているのか? その辺りは、明日以降に用意されているハンズオン取材などでチェックしていく。

(2010年 6月 15日)


= 西田宗千佳 = 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、PCfan、DIME、日経トレンディなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「iPad VS. キンドル日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」(エンターブレイン)、「iPhone仕事術!ビジネスで役立つ74の方法」(朝日新聞出版)、「クラウドの象徴 セールスフォース」(インプレスジャパン)、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)などがある。

[Reported by 西田宗千佳]