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攻めのPS4。過去の名作から今のキラーまで幅広く展開

E3 2015 SCEA詳報。Vueも拡大。家族でMorpheus

 E3開催日前日のプレスカンファレンスの締めくくりは、ソニー・コンピュータエンタテインメント・アメリカ(SCEA)のものだ。こちらも結論からいえば、「ゲーム」に集中したプレゼンテーションだったといっていい。今世代のゲーム機が「ゲーマー向け」として成功しており、PS4とXbox Oneの初期の人気の差も、PS4が「ゲーマー向け」に集中したことによる。そうした傾向を考えれば、E3というゲームイベントで、PS4というゲーム機をプレゼンテーションする場では、ゲームの話をするのが当然、ともいえる。

SCEAプレスカンファレンスの会場となった、Los Angeles Memorial Sports Arena。

 とはいうものの、SCEAのプレゼンテーションと発表内容を見ると、マイクロソフトのものよりバリエーションが広く、ゲーマーの心をつかみやすいものであったように思う。それは、追う立場のマイクロソフトと、先行する立場のSCEの立場の違いを表していたように感じられる。

アメリカでのストリーミング系ビジネスは好調、Morpheusは「会場で体験」を

 まず、本連載の趣旨に沿った、「AV機器としてのゲーム機」「新しいビジュアルコンピュータとしてのゲーム機」という部分の話から始めたい。中盤に登壇したSCEのアンドリュー・ハウス社長は、タイトルの発表の多くをSCEAのエクゼクティブやワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏に任せ、そうした部分の説明に終始した。

SCEAプレジデントのショーン・レーデン氏。SCEAのローカルイベントだけに、全体を取り仕切った
SCE ワールドワイドスタジオ・プレジデントの吉田修平氏。ゲーマーにも人気のあるキャラクターであるためか、今年も「Shu」コールが上がっていた

 といっても、内容はシンプルなものだ。

 まず一つはVR。SCEが来年上半期の発売を予定している「Project Morpheus」を紹介した。といっても、VRの性質上、壇上でのデモはわかりにくいからか、「E3会場で体験してほしい」と説明するに留まった。

Project Morpheusをアピールする、SCEアンドリュー・ハウス社長

 唯一強調したのが、「家族でもプレイできる」という要素だ。他のVRギアと異なり、Morpheousには、プレイ中の映像をテレビにも表示する「ソーシャルスクリーン」という機能がある。また、外部からMoveコントローラーを使ってゲームに介入することもできる。そのため、どうしても1人でプレイするものになりがちなVRゲームを、家族でもプレイ可能なものとしてアピールすることになった。その打ち出し方が正しいかどうかはともかく、SCEがゲーム特化VRとしての差別化を考えていることは見えてくる。

Morpheousの他のVRギアにない要素として「家族で楽しめる」という点をアピールした

 2つ目が「PlayStation Music」だ。ソニーは今年の春に独自の音楽配信サービス「Music Unlimited」を止め、Spotifyと提携した上で、その機能を取り込んだゲーム機向け音楽サービス「PlayStation Music」をスタートさせている。ハウス社長は「すでにアプリは500万ダウンロードを達成し、記録的な伸びを見せている」と話す。一方、日本では、Spotifyがまだ上陸していない関係から、サービス開始の目処が立っていない。どこか寂しく感じる発表だ。

音楽サービス「PlayStation Music」の好調をアピール。そろそろ日本でのサービス開始時期を知りたいところだ

 そして3つ目が「PlayStation Vue」だ。PS Vueは、ケーブルテレビなどで配信されている「放送」をそのままクラウドに蓄積、放送とVODを組み合わせたようなサービスを実現するもの。詳しくは、以前に執筆した記事をお読みいただきたい。ローカルのテレビ広告などとの連携も必要であるため、これまではニューヨーク・シカゴ・フィラデルフィアの3都市でのみ展開してきたが、今晩よりロサンゼルスとサンフランシスコでもサービスを開始する。といっても、こちらも日本ではサービス開始の予定がない。テレビ放送は日本と米国で大きく仕組みが異なるため、PS Music以上にスタートのハードルが厳しいもの、といえる。

クラウドTVサービス「PlayStation Vue」の進捗を説明。米国内での展開都市が、ロサンゼルス・サンフランシスコを加えた5都市に拡大された

ついに「FF7」リメイクも獲得! 話題作を幅広くカバー

 発表のメインはもちろん「ゲーム」だ。アピールの軸は、マイクロソフトと同じく「独占タイトル」なのだが、いわゆるサードパーティーのタイトルも数多く紹介し、「PS4とWindows、コンソールではPS4のみ」「PS4でベータテストを先行展開」「PS4に向けてリメイク」といった形でのアピールを行なった。この辺はおそらく、PS4が販売数で大きく先行しており、マイクロソフトに対して有利な交渉を仕掛けられる、という事情もあるのだろう。

 その中で、筆者が感じたテーマは「オールドファンへのアピール」だ。

 プレスカンファレンスの最初に発表されたのは、PS3向けに発表されていながら、長く開発が滞っていた「人喰いの大鷲トリコ」。PS4専用タイトルとしてよみがえり、2016年中に発売されることが発表された。

「人喰いの大鷲トリコ」が、PS4専用としてリブート。開発開始の公表から6年を経てよみがえった

 会場がもっとも盛り上がったのが、スクウェア・エニックスによる「Final Fantasy VII」のリメイクの発表だ。海外でも非常に人気の高いタイトルで、リメイクの要望は高かったものだと聞いているが、今回PS4向けに正式に開発が決定した。それらしき風景を描いた映像が流れた瞬間に会場が大盛り上がりとなり、人気キャラクターであるクラウドの背中が写った瞬間、会場でスタンディング・オベーションが起きた。会場に足を運ぶ業界関係者や濃いゲームファンにとっては、それだけ特別なものなのだろう。

「Final Fantasy VII」のPS4でのリメイクが発表に。会場はスタンディングオベーションとなった。発売時期などは未定

 もう一つ、オールドファンが会場で歓喜したのは、セガがDreamcast向けに提供していたゲーム「シェンムー」の完結編となる「シェンムーIII」が、クラウドファンディング「Kickstarter」を介して資金を集めて開発される、と発表されたことだ。「シェンムー」はセガファンにとって思い入れ深いだけでなく、現在のゲームトレンドである「オープンワールド系ゲーム」の草分けともいえるゲームシステムや自由度を備えていたもので、非常に高くリスペクトされている。Kickstarterでの出資目標額は200万ドルだが、プレスカンファレンス終了から2時間半程度の段階で、すでに128万ドル以上の出資を集めている。目標達成はほぼ間違いない。これもPS4向けに提供される予定だ。

セガのゲームコンソール事業撤退により日の目を見なかった「シェンムーIII」が、PS4で登場。Kickstarterによる出資による開発となるが、目標額達成はまず間違いない状況。発表には、開発者である鈴木裕氏も登場した

 その他、スターウォーズを題材にした「STARWARS Battlefront」や、SCEファーストパーティーの人気作「Uncharted 4」なども実機でのプレイが公開され、タイトルの強さをアピールする形となった。ソフトの充実ぶりを見ると、アメリカ市場でのPS4ビジネスの堅調さがうかがえるし、ハードウエアローンチから2年を経過し、そろそろ最初の大きな収穫期を迎えようとしている、ということも見えてくる。

「STARWARS Battlefront」。新作映画の公開にあわせ、日本でも11月に発売。実写さながらのリアルな描写と、おなじみのメカニック・キャラクターの登場が目を惹く
PlayStationを代表するアクションタイトルとなった「Uncharted」シリーズの最新作「Uncharted 4:A Thief's End」が、2016年登場。グラフィックのリアルさで定評のあるタイトルだが、PS4でさらに磨きがかかった

布石は2年前から存在、粘土のようにCGを作る「DREAMS」とはなにか

 最後に、個人的に気になったタイトルをご紹介しておきたい。それが、Media Molecule開発の「DREAMS」だ。このタイトルは、どんなゲームになるかさっぱりわからない。だが、コントローラーを3Dマウスのように使ってキャラクターモデルを作ること、そしてそれに振り付けをして、独自のCGムービー作成やゲームを楽しめるという。同社は、ゲームでありながらなにかを「作る」作品を仕上げることで知られるスタジオだが、今回は特に飛び抜けている。ゲームというよりはCGアニメ作成ツールのようだ。

Media Molecule開発の「DREAMS」。コントローラーで3DCGを粘土細工のように作れることはわかるのだが、どんなゲームになるかはまだ不明。なんとも不思議な作品だ
2013年2月・ニューヨークで行なわれたPS4の発表会より。この時、Media Moleculeのアレックス・エヴァンス氏は、現在の「DREAMS」につながるテクノロジーをデモしている

 実はこの方向性、2013年2月にPS4がお披露目された時から存在していたもの。その時には、PS Moveを使って空間を彫刻するようにキャラクター作成をしていた。

 こうしたタイトルがPS4の拡販にどうつながるかはわからないが、PS4のプラットフォームの懐の深さを示すこと、そして技術開発の継続性を示すものとしては、なかなかに興味深い試みである。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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